気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「おはようございます。今日もいい天気ですね」
「夕方だろ」
「何か私に手伝えることはありませんか?」
「金貸してくれよ。500円でいいから」
「3分以内に身分証を提示してください。確認が出来なかった場合、あなたは拘束されます。提示できない何か特別な事情がある場合は……」
その日の始まりはこれまでと何も変わらなかった。
俺はまずいつも通りの時間に起床し、シャワーを浴び、パーカーに着替え、そしてランニングに向かった。
街中をハエのように飛び回る監視用のドローンを握り潰して、警備用のロボットの上半身をもぎ取り、銃を向けてくるバカ野郎共の乗る車があれば蹴りを入れて横転させた。
何十いや何百回とくり返してきたことだ。
近頃は邪魔をされることも少なくなったが……後は真っ直ぐに家に帰り、汚れた服を洗濯機に投げ込んで、シャワーを浴びれば終わりだ。
これが俺の日課、いや、習慣だった。
今思えばかなりおかしいが、それでも俺は何も感じていなかった。
……この時までは。
ランニングの後の夕暮れ時の街中を、スマホを見ながら散歩していたらドローンにまとわりつかれていることに気がついた。
特に珍しいものでもない。
ドローンはこの街では最もポピュラーな警備システムの一つだ。
導入当初は混乱があったものの、今ではすっかり街の風景として溶け込んでいる。
しかし、俺にとってはただ鬱陶しいだけの存在でしかない。
何やらカメラのようなものをこちらに向けて、執拗に俺の顔を確認していたから試しに殴りつけてやろうとしたその時だった。
ドローンに話しかけられ俺はそれに応じていたのだ。
「……??」
自分がドローンの言葉に応えていたことに気がついたと同時に疑問が頭をよぎる。
(あれ……?俺、何やってんだ?)
ドローンと会話をする趣味はなかったはずだが、自分がいつの間にかそんなことをしているのに驚いたのだ。
なんで返事してるんだ?
なんでスマホなんか見てるんだ?
なんで家に帰ってないんだ?
500円くらい貸してくれたっていいじゃないか?
……と、まるで他人事のように疑問が次々と浮かび上がる。
慌ててスマホをポケットに突っ込むと、自分が勃起していることが不自然に感じて、また驚いてしまった。
「ええー……どうなってんだよこれ?」
言っておくが、別にスマホでエロ動画を見ていたわけではない。
特に興奮するようなサイトをのぞいていたわけでもなく、ただ紅葉狩りを楽しんでいる観光客の前にカッパが現れたとかいう記事を読んでいただけだった。
なんでそんなもんを読んでいたのかもよくわからないが、それはどうでもいい。
ドローンがしつこく何かしゃべっていたが、もう耳には入ってこなかった。
今の自分の状況を理解したい気持ちで一杯だった。
どこか人気のない場所で落ち着きたかったが、その時になってようやく辺りを取り囲まれていることに気がついた。