気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「……どうした、ラブラドル・レッドリーパー?我々の敵、ボッキマンはそちらではないぞ!!」
ケンドーマスクにも耳を貸さず、犬はただ一点を見つめながら牙を剥き出しにしながら警戒を続けている。
「おい、ボッキマン!お前が何かしたのか!」
「……ああ、ボッキマンじゃねえけど、ついさっきな。だからそいつが来た」
「そ、そいつ……?」
「!」
俺が「そいつ」の来る方角をあごで示してやると、それに応えるかのように土砂降りの雨を切り裂きながら巨大な鋼鉄の塊がゆっくりと浮かび上がった。
「ぎひえいいぃいっ!!?」
ケンドーマスクは悲鳴を上げながらラブラドル・レッドリーパーの体を抱きしめる。
「ひっ……こ、これか……?これをお前は仕組んでいたというのか!この卑劣なるボッキマンめ!!」
「ちげーよバカ、そいつが勝手に俺を追っかけて来たんだよ」
そうは言ったが、こんな奴がやって来るとは俺も思ってなかった。
おそらくは治安当局の手で送り込まれたロボットで鎮圧兵器の一種なんだろうが、少なくとも俺の知っている限りでこんな機体はこれまで見たことがない。
例えるなら蜘蛛の化け物のような外見をしたそのロボットは、メカニカルな複数の関節からなる八本の脚をそれぞれ動かしながら流麗かつ軽快な……。
そう、例えるなら忍者のように土砂降りの雨の中を音もなく滑るように移動しながらこちらに接近してくる。
(でけーな)
四メートルほどの高さはありそうだ……まあもっとアホみたいにデカいロボットをブン殴ったことがあるけどな。
光学センサーが至る所に配置されたその上半身はまるで蜘蛛や人というよりはカマキリに見えるが、それよりも異彩を放っているのは2メートルはあるであろう巨大な鋼鉄の腕だ。
上半身に対して不釣り合いなまでに大きく、武器の類は持っていないようだったが、どうせ機関銃でも内蔵しているんだろう。
「お、おおぁお、ほぁあ……」
偉そうにしていたケンドーマスクはその威容を前に震え上がり、愛犬にすがりついたままその場にべちゃりと座り込んでしまう。
ラブラドル・レッドリーパーの方も怯えているのかその尻尾を丸めていたが、それでも相棒を守ろうと唸り声を上げて踏みとどまっていた。
「おはようございます」
ロボットはそんなケンドーマスクを一瞥するでもなく、俺たちの前に割って入るようにして停止すると穏やかな口調で挨拶を始める。
「今が何時だと思ってんだよお前は」
「市民の皆様、ご安心ください。私たちはこの街の人々を守るために作られました。現在の時刻は16時38分、ちょうど太陽がその仕事を終え、夜の訪れを告げる頃となりますが、皆様の生活はまだまだ続いていくことでしょう。私はこの地の守護者として……」
「はっはっは……おい、聞いたかケンドーマスク。街の人々を守ってくれるんだとよ、もうお前が正義の味方をやる必要はないんじゃないか?」
「う、うるさい!!」
ロボットは俺たちのやり取りを無視して言葉を続ける。
「あなた方お二人には当局から出頭していただくよう要請がありました。なお、今回の要請を拒否した場合、その身の安全は一切保障されないことを予告しておきます」
「え、ケンドーマスクもかよ?」
どうせこいつはドローンをぶっ壊した俺を追っかけて来てたんだろうが、ケンドーマスクのことまで拘束しようするとは以外だった。
まあ、ケンドーマスクも好き好んで正義の味方なんてやるような頭のおかしい奴だし、俺が知らないところで何かやらかしていてもおかしくないけどな。
ベンチにもたれかかったままへらへらと笑う俺に対し、ロボットは頭部の光学センサーからどこか冷ややかな視線を俺に向ける。