気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「あなたには巡回警備中のドローンの妨害と破壊および、共有地の土壌を無断で掘削して汚染しようとした疑いがかけられています」
「掘削?大げさな奴だな。ちょっと穴を掘って死んだネズミを埋めてやろうとしただけだろが」
「考えうる限り最悪の行為です。開発の計画を妨げ、ひいては公共の福祉を損なう重大な違反行為と言わざるを得ません」
「ははは、お前みたいな無駄に図体のデカい物分りの悪いロボットを保管する場所があるんだから、死んだネズミを埋葬する場所くらいあったっていいじゃんか」
「私はあなたと議論をするために来たわけではありません」
ロボットはわずかに頭部を左右に振って俺の言葉を否定しようとするが、その仕草はまるで人のようで……いやこんな、人殺しだけやらせてりゃいいようなロボットにそんな機能を搭載する必要なんてあるのか?
まあどうでもいいか。
「ま、埋葬を……?ネズミの……お、お前が?」
「……ああ?」
ケンドーマスクはロボットの言葉に信じられないといった表情で、いや、剣道の面のせいで表情はよくわからないが、何故か驚いたように顔を上げて俺の真意を図ろうとしているようだった。
「どうか賢明なご判断を」
ロボットはそのままさらに俺の方へと接近しようとする。
しかし、その動きを止める存在があった。
それは先ほどまで恐怖に身をかがめながらも、健気に相棒を守ろうとしていたラブラドル・レッドリーパーだ。
思わず口を開く。
「ラブラド……おい、どうした?俺のことは守らなくていいんだぞ?」
「……」
「お、おい、ラブラドル・レッドリーパー、よ、よせ。相手は巨大ロボットだぞ、ち、治安当局のヤバすぎる奴だ!」
ケンドーマスクが愛犬のレインコートを掴んで懸命に制止しようとする一方、犬の方は主人の言葉に耳を貸さず、ロボットの前に立ち塞がったまま牙を剥き出しにして大きく唸り声を上げている。
「こ、ここは素直に指示に従った方が……お、おい、ボッキマン!お前もラブラドル・レッドリーパーを説得してくれ!」
「るせーな、俺はボッキマンじゃねえし。そもそも俺に何の関係があるっつうんだよ」
普通に考えれば化け物じみた鋼鉄の塊に対し、愛らしい大型犬が何か出来るとは思えない。だが、ロボットは警戒しているのか一定の距離を保ったままラブラドル・レッドリーパーの動きを観察しているようだった。
ロボットは俺たちのやりとりを無視して話を続ける。
「私たちはこの街の人々を守るために作られました」
「へー、それで?」
「私たちの使命は街の安全と人々の生命を守ることです」
「ふーん」
「私たちに敵対するということはこの街の人々と敵対することと同様です」
「あっそ」
俺はベンチに座ったままスニーカーを脱ぐと、靴底に溜まった水を出しながら続ける。
しかし、ひどい土砂降りだ。
数年前からこの種の突発的な大雨が問題になっていることは記憶していたが、相変わらずこれといった解決策は取られていない様子だ。
「お前みたいな立派なロボットを信じて送り出したこの街の人々が、かわいいわんちゃんを傷つけるようなことを許したりするわけがないだろ?お前のことをみんな嫌いになっちゃうかもしれないぞ?」
「私は任務遂行のために実力で脅威を排除することがあらゆる機関の決定により許可されています」
「あのな……目の前の犬をよく見ろよ。なんのつもりか知らんがそれが脅威に見えるのか?レインコートを着ているだけのゴールデン・レトリバーだろ?」
「えっ!?ゴールデン……!?えっ!!」
驚いた様子のケンドーマスクは、愛犬のレインコートを捲り上げるとラブラドル・レッドリーパーの顔や毛並みを確認する。
どうやらラブラドル・レッドリーパーのことをラブラドール・レトリバーだと本気で信じ込んでいたようだった。