気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「って、おいおい、なんでそうなるんだ?」
俺の問いかけをわざとらしく無視し、ロボットは抑揚のない無機質かつ聞き取りやすい声で続ける。
「ケンドーマスク様、我々は正義の側でありたいというあなたのような人々の情熱に対して、あらゆる種類のバックアップを検討しています。今回の指示はそれに先立っての当局からの試験だと考えてください」
「しっ、しし、試験だと……!?」
「はい。我々がもたらす秩序に対する姿勢を総合的に分析し、あなたに適切な対応が行えるかどうかを確認するためです。もしあなたがこの犬を殺してでもこの街を守ろうという行動を示したなら……」
その瞬間、ケンドーマスクは感情が爆発したかのような大声でロボットの言葉を遮った。
「ふっ、ふざけるなよ!!そんな真似をしてたまるか!この子は私のような者のことを信頼し、ずっと側にいてくれたんだぞ!!」
「……」
「誰に何を言われようと私は絶対にこの子を見捨てたりはしない!それが私の正義なのだ!!」
「……」
ケンドーマスクは愛犬を抱き寄せると、その体を力強く抱きしめる。
ラブラドル・レッドリーパーの方も相棒の気持ちに応えるように短く鳴いた。
「……そうですか」
ケンドーマスクの言葉にそう呟いたきりロボットはしばらく沈黙していたが、すぐに強烈な電光を散らしながらブレードを振りかざすと冷酷な口調で告げた。
「もう結構です」
もちろんこのまま見ていてもよかった。
しかし、どうしてだかケンドーマスクたちの脳天にブレードが叩きつけられるよりも早く俺の手は動き出し、手のひらに溜まった水を指で弾丸のように撃ち込んでいた。
俺の指の圧力から解放された水の弾丸は空気の壁を貫きながらロボットの右肩に着弾すると、水飛沫と共に奴の腕を猛烈に切り裂いていく。
「へっ、えええ……?」
ケンドーマスクが呆然と呟いた時には怪物のような奴の巨体は大きくぐらつき、ブレードのついた機械の腕は湖に向かって旋回しながら弧を描いて飛んでいく所だった。
「……!」
ロボットは光学センサーをあちこちに回転させながら損害の状況をモニタリングし、ぐらつく体を懸命に制御しようと試みていたが、どうやら上手くいかず膝をつくように後ろ脚を畳み込む。
腕の付け根から血飛沫のような火花を上げたまま光学センサーをキョロキョロと動かす様子は、まるで動物のような混乱ぶりだ。
「お、おい!ボッキマン!!ななな何をして……ここ、こ、これはいったい!?」
ケンドーマスクは狼狽しながらベンチに寝転がる俺の顔とロボットの切断された痕跡を交互に見つめる。
「何もしてないけど?この雨だから水でも入ってぶっ壊れたんじゃね?つか、俺はボッキマンじゃねえしな」
「そ、そうか、雨のせいだったのか……まったく、治安当局のロボットとやらも大したことはないな!どうだ!私を見ろ!この土砂降りの中でもビクともしないぞ!」
ケンドーマスクはロボットに対して挑発的に拳を突き付けてから、雨をたっぷり吸いこんだシャツを絞り出す。
「ま、まあ、私とて命まで取るつもりはない!だが……次はないぞ?今回はこれで勘弁してやるがな……」
「…………」
「ボッキマンではない善良な一般の人よ!さあ、今のうちに逃げよう!」
いつの間に俺はこいつの仲間のような立場になっているんだろうな。
まあそれはいいとして、ロボットの様子を見る限りこのままでは終わらないだろう。