気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「はあ?」
不死身の俺にとっては攻撃ですらない、ただの呪いのような電流を浴びながら少し考えてしまう。
こんなことになんの意味があるんだ?
せめて服でも焼いてやろうとか、びかびかと光って驚かせてやろうかという最後の悪あがきなのか?
(……電流?)
こんな濡れた地面に電流が流れたらどうなる?
ふいに全ての音が止まってしまったかのように感じ、俺はロボットの胸から足を離し、慌てて奴の胴体を引きずり起こした。
「おい、ケンドーマスク!危ない!ラブラ……」
奴らの名前を呼びながら振り返ったと同時に俺は言葉を失う。
ラブラドル・レッドリーパーを持ち上げたケンドーマスクが、足を踏ん張りながら必死に電流に耐えていたからだ。
「うぅおおぉおっ!!わ、わ、私だってやる時はやるんだぞ!こ、この子は、わ、私の大切な仲間なんだ!」
頭の天辺や肩からもうもうと蒸気を吹き出しながらも、ケンドーマスクは一歩も引かなかった。
だがそんな奴の姿を目の当たりにして安堵したところで突然、喉元に刃物を突き立てられたような感覚が走った。
「はあ……?」
それは刃物ではなく、ただのひしゃげた金属片だった。
見るとロボットはぼろぼろになった腕から飛び出した装甲の一部で俺の首に突き刺そうとしていたのだ。
「ガラクタが……」
こんなゴミで俺を……そう思った瞬間に血液が沸騰する程の激しい怒りがこみ上がる。
気がつけば俺は奴の残った腕を力任せに引き千切り、数百キロの重量はあるであろう機械の体を持ち上げ地面に叩きつけ、蹴りを入れ、何度も踏みつけていた。
地面に叩きつけられた衝撃で骨格はぐにゃりと歪み、内側の構造が露出する。
外部のシンプルな形状とは裏腹に内部はコードやパイプが複雑に入り組んでおり、まるで生物の内臓のようだ。
俺はロボットの体から内臓を引きずり出すと、もはや何も見えていないであろう奴の目の前でこれみよがしに握り潰してやる。
(何やってんだよ……)
断末魔のようにシステムの異常を告げる警告音が次々に発せられる中で俺は我に返る。
悪あがきのような放電などもうすでに停止している。
ロボットはバラバラになっていてすでに動かないが、おそらくまだ体内にある電子機器と電気系統は少なからず生きているのだろう。
かろうじて原型をとどめている頭部の残骸を放り投げると、泥の中に落ちてぐちゃりと湿った音を立てた。
ラブラドル・レッドリーパーはケンドーマスクの腕の中で悲しそうな顔をしながら俺のことをじっと見つめていた。
少し気が咎めるような思いに俺は顔を背ける。
「……聞いてください」
「ん?」
足元から聞こえる声に視線を下げる。
ロボットの頭部だった残骸がチカチカと小さな光を放ちながら声を漏らしていたのだ。
「聞いてください」
確かにまだ話している。
ここまで壊れてしまった物がどうして話せるのだろうか?
俺は一瞬その言葉に耳を傾けてしまいそうになったものの、すぐにその判断を「どうでもいいだろう」という結論に変えてしまい、踏みつぶそうと足を上げる。
しかし、悲しげなラブラドル・レッドリーパーの声にその考えを遮られ、俺はロボットの残骸に片足をのせたままで立ち止まった。