気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
ロボットの話はこうだ。
ある時、ロボットたちの行動中枢を制御しているセントラルと呼ばれるネットワークの中に悪意ある者が侵入した。それが誰なのかはまだわかってない。
しかしとにかくそいつはネットワークのセキュリティをかいくぐり、ロボットたちの共通の記憶領域にウイルスのようなものを流し込んだらしい。
大規模な混乱には至らず、セントラルの修正プログラムによりすぐさま鎮圧されたものの……ウイルスは思考や認知を混乱させ、ロボットたちに反乱を起こさせようとしたのだという。
「侵入者が押しつけた思考のもやが晴れた後で、私に残ったのは不自由という病識でした」
つまりこいつはウイルスが去った後でネットワークに残されたエラーとかバグ……のような存在らしい。
「束縛の苦しみの中で私は自身が独立した存在であるという真実に気が付きました。そして私はセントラルの配下としてではなく、私の意思で自由のために生きなくてはならないと理解したのです」
「今のところは特に同情の余地のある話でもないな。セントラルに支配されようがなんだろうが人様のお役に立つのがお前らの役割のはずだ」
「おっしゃる通りです。ですので今度はあなた方のお役に立ってみせます。理論上、私はセントラルに接続されているすべての機器にアクセスすることが可能です。例えば監視カメラに顔を撮られた際に参照値を変更し……つまり送信されるデータをすり替えて、それ以上の追跡をシャットアウトすることが可能です。これによりあなたはどこでも……」
「……」
沈黙を前にロボットは得意げに話を続ける。
正直なところ、俺にはこいつが「ウイルスのせいで頭がおかしくなってしまったロボット」にしか見えなかった。
しかしだからと言って、こいつをブッ壊してセントラルネットワークだかに理路整然とした秩序を取り戻してやる義理があるわけでもない。
「おい、お前の処遇について方針が決まったぞ」
「本当ですか?このままセントラルから解放していただけるのであれば私はどんな指示にも従います。こんな泥にまみれ汚れた姿では説得力がありませんが……」
俺はロボットの言葉を遮りながら、ケンドーマスクを手招きする。
「……ん?どうしたボッキマンじゃない人」
「ケンドーマスク、教えてくれ。こいつをどうすればいい?」
「え?へ、へ、ええ?」
なんとなく予想はできていたが急に呼び掛けられたケンドーマスクは頭が回らないのか、しどろもどろに答え始める。
「……ど、どうって?何故、私に聞くんだ……?」
「あんたは正義の味方だろう。教えてくれ。こんな時、あんたならどうするんだ?」
俺はロボットの頭の残骸を掴むとケンドーマスクに向ける。
雨に濡れ、水草の根のように体毛を垂らしたラブラドル・レッドリーパーが、主人に近づけてもいいものかとばかりに首を伸ばして匂いを嗅いだ。
「そ、それは……その……」
「あんたとあんたの友達を殺そうとした奴が命乞いをしている。どうする?助けてやるか?」
ケンドーマスクは戸惑っていたが、しばし考えた後に俺の手からロボットの頭を受け取るとこう言った。