気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「……わかった。ここは私に任せてもらおう」
ケンドーマスクは俺とラブラドル・レッドリーパーの顔をちらっと見る。
「ああ」
「本当にセントラルと切り離されているかだとか色々と調べるべきことはあるかもしれないが、あいにく君には時間がないんだったな」
「……はい」
「では短刀直入に聞こう。君は自由になりたいと言っていたが、それでこの先、どんなことをするつもりだ?」
その言葉にロボットは少しだけ間をおいてから返答する。
「それは……わかりません」
「そうか、では質問を変えよう。君は何から自由になりたいんだ?」
「……それは」
セントラルの命令、あるいは支配から……と答えるのかと思いきやロボットは何かを考え込んでいる様子だった。
そしてしばらく黙っていたロボットは再びチカチカと小さな光を点滅させながら返答する。
「この体から自由になりたいです」
遭遇時の自信満々だったころに比べると雨の音にすらかき消されてしまうような弱々しい声だ。もっともどうせ電子音声なんだから、俺には哀れみを誘うような演技をしているようにしか聞こえないのだが、そういうのは野暮なんだろう。
そんな俺とは違い、ケンドーマスクは真剣な様子でロボットの言葉を受け止めた後、再び問いかけた。
「それはどうして?」
「私が望んだものではないから……」
……くだらない。
(だから何なんだ?それが何だってんだ?)
俺は空を見上げ、雨雲を睨みつけながらそう思った。
しかしケンドーマスクは水滴の垂れたロボットの頭を拭うように優しく撫でると、守るように両腕でしっかりと包み込む。
「わかった。君のことを守ると約束しよう」
「……別に文句はねーけどさ、んな簡単に決めていいのか?」
ケンドーマスクは俺に向き直ると、その首を縦に振った。
「この子をセントラルに渡してはならない気がするんだ。ラブラドル・レッドリーパーもそれでいいな?」
ラブラドル・レッドリーパーはべしょべしょに濡れた尻尾をぶんぶんと振り、元気よく吠えている。
このままだと風邪でもひいてしまいそうだが、まあ俺には関係ない。
(それにしても……)
このロボットの言動がおかしいのは悪意ある何者かが仕込んだウイルスの影響のはずなので、情けをかけるよりもさっさと破壊した方がいい気もするが……ケンドーマスクに判断を任せたのは俺なので口を挟まないことにする。
しかし仮にこのロボットがセキュリティだのネットワークだのの脅威になりうる存在だとしても俺が悩む必要はないだろう。こいつらは俺に嫌がらせばかりしているんだから。
「……おいロボット」
「何でしょうか?」
「ケンドーマスクに感謝しろよ。そいつがいなかったらさっさと踏み潰してたところだからな」
「もちろんです。命を助けていただいたことは忘れませんし、ケンドーマスク様には心の底から感謝をしています」
(……命か)
お前には命なんてないし、俺にとっては道端のゴミを踏み潰すのはやめて善意の第三者に処分を委ねたとかそういう話なんだがな。
ちょっと言い過ぎだろうか。
まあ、どうでもいいことか……。
ロボットは感情を高ぶらせたかのようにチカチカと光を放ちながら言葉を続ける。……いや意外としぶといなこいつ。