気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「いつか私を解放にしてくれる方が現れた時にと用意しておいた物資をこの湖に隠しています。それを皆様に感謝の印として受け取っていただきたいと思います」
「隠してる?ここに?」
「はい、人造湖の浮島などいくつかの場所に隠しています」
「……」
確かにこの人造湖には一人用のキャンプを張れるくらいの広さの、いくつかの小さな島があり、この薄暗い中でも大きな木のシルエットくらいは確認することができる。
橋も無く、泳いで行き来しなければならないタイプの島だが、しかし重要なのはそこではない。
「いいですか?くれぐれも物資についてはご内密にお願いします」
「いいですか、じゃねえよ。あのな、俺がネズミを埋める穴を掘ってたらお前が出て来たのってその物資とやらのせいなのか?それでお宝のありかを犬が掘り返したらどうしよう、とかそんなしょうもない理由で焦ってたのか?」
「……そうなのかロボットさん?」
「……申し訳ございません。私は誰にもここを荒らされたくなかったのです。セントラルの目を盗んで整備計画を書き換えてでも私はこの場所を守りたかったのです」
俺は再びため息をつく。
普通そんな理由で殺そうとするか?
それで誰の命令でもなくただ自分の考えで行動したい?
やっぱりこのままこいつを放置してたらロクなことにならねーんじゃねえか……。
まあ、どうでもいいがケンドーマスクに注意するように後で言っておこうか。
いや本当にどうでもいいけどな。
「わかった、けど今は物資よりも帰ろうぜ。ちんたらしてたらセキュリティチームとやらがお前を回収しに来るんだろ」
「そうだ!ボッキマンではない人よ!私の隠れ家でほとぼりを冷まそう!そして明日、共に湖でお宝発掘と行こうじゃないか!」
ケンドーマスクはやけに上機嫌でそう言った後、ロボットの頭を抱えたまま俺の背中をバシバシと叩く。
「いや、俺は別に……ああ、なら送ってってやるよ」
「……んん?どういうことだ?……って、うおおっ!ちょっ、ちょっと!」
俺はケンドーマスクを有無を言わさず背負い上げると、足元で尻尾を振っていたラブラドル・レッドリーパーに向かって両手を広げる。
「ほら、お前もだ」
ラブラドル・レッドリーパーは俺の意図が分かったのか、ぴょんとジャンプして俺の腕の中に大人しく収まってくれた。
「ぼ、ボッキマンではない人よ……筋肉の結晶のような肉体を持つ私の体重は90キロ近くあってだな……お、重くはないのか?」
「いや全然」
「流石だな~~!私もいつかは君のように……ど、どああっ!ラブラドル・レッドリーパーよりも速い!!」
俺は山林を越えると、街の明かりを目指して飛ぶような速さで走り出す。
風が冷たかったのかラブラドル・レッドリーパーは俺の腕の中で何度もくしゃみをしていた。
ラブラドル・レッドリーパーだけじゃない、俺だってずぶ濡れだ。
パーカーはザラザラとした砂粒を含んだ泥まみれで、一刻も早く洗濯機に放り込んでしまいたい気分だった。
(……だったらなんでこいつらに付き合ってるんだ?)
別に大した理由はない。
途中まで行き先は同じだろうし……それにロボットを回収しに来たセキュリティなんだのに見つかったら最後、下手すればラブラドル・レッドリッパーが撃たれる可能性だって……。
まあいい、きっと俺は退屈で仕方がないんだ。
「うああぁああっ!な、なんかめちゃくちゃ高いビルの上に来てるぞぉおっ!!み、みみ、道を間違ってないかぁあっ!!??」
「あっ、悪ぃ悪ぃ」
ケンドーマスクの悲鳴で我に返る。
どうやらまた無意識にビルの上を飛び回っていたらしい。
しかし昼間とは違い、俺は憂鬱な気持ちになることはなかった。
ケンドーマスク、ラブラドル・レッドリーパー、そしてロボット。
連中の運命が俺の走りに掛かっているかと思うと一人で走っている時よりもずっと楽しかったからだ。