気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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熱風乾燥犬①

「あんたずいぶん叫んでたが高い所が苦手だったのか?」

 

「い、いや、その、苦手ではないんだが、いきなり地上50メートル以上の高さを飛び回られると、なんというか覚悟というか心の準備というか……あっ!あそこだ!私の隠れ家はレンガ造りの建物の隣だ!」

 

「わかった」

 

俺は指図通りに薄暗い路地へと降りるとケンドーマスクたちを降ろしてやる。

どうやらここが正義の味方の隠れ家らしいが……。

 

(……なんか思ってたのと違うな)

 

いや、ある意味イメージ通りか。

 

そこは雑居ビルの路地に張られたキャンプ用のテントだった。テントと言っても寝っ転がることしか出来ないような体高の低いソロキャンプ用のシンプルなヤツだ。

 

こんなもんここに勝手に置いていいのか……なんてことは聞くまでもないだろう。

 

ただあれだけ土砂降りだったわりにはテントは大して濡れてない。

どうやら立地はかなり工夫しているようだ。

 

「ゆっくりして行ってくれ!そうだ、私が握ったおにぎりがまだ残ってるんだ。食べるかい?」

 

「い、いや、いい……」

 

袖を引かれ仕方なく、逆さになったバケツを椅子の代りに腰を下ろす。

 

テントの中はランタンやバーナーやフライパンなどのキャンプ用の調理器具、それから寝袋や圧縮ビニールパックに包まれた着替えが散乱しており、お世辞にも綺麗とは言えないもののここで暮らしているのは間違いないようだ。

 

テントの周囲に水の入ったペットボトルが何本も置かれているのは理解できなかったが、まあ体を洗うのに使っているのか風に飛ばされないように重石にでもしているんだろう。

 

「そ、そうか?だが遠慮しなくてもいいんだぞ!」

「……あんたずいぶん苦労してそうだな」

 

「……うん?まあこんな隠れ家なんてもんは仮だよ仮!私やラブラドル・レッドリーパーをつけ狙う輩から身を守るためにも、転々としながら作戦を立てる必要があるからな!」

 

テントからバスタオルを取り出したケンドーマスクはラブラドル・レッドリーパーに被せてぽんぽんと体を撫でるように拭いてやっていた。

 

寒いのか、ラブラドル・レッドリーパーはタオルの中から頭だけを出しながらしきりにくしゃみをする。

 

タオルを渡されたが何となく顔を拭く気になれず、手の中でほぐすようにわげわげと捏ねるように弄ぶ。手持ち無沙汰だ。

 

聞きたいことがないわけじゃない。

 

金にもならないだろうになんで正義の味方なんてやってるのかとか、ラブラドル・レッドリーパーが不思議な力を持っている理由とか。それから本当に酒を盗もうとしたのかとか。

 

しかしそういうのを全部すっ飛ばして、俺はケンドーマスクに向かって話しかけていた。

 

「ロボットの言っていた物資とやらが手に入ったら、あんたももっといい暮らしが出来るかもな」

「そ、そうだ!ロボットさん、物資というのはどういった物なんだ?モノによっては一刻も早くここに運び込む必要があるぞ!」

 

「……」

 

「……ロボットさん?」

 

ロボットは地面に転がったまま何の反応も示さない。

マジかよ、もしかして電池切れか?それともやはり損傷が酷すぎたのか?

 

「おい、なんか言えよ」

 

ほとんど無意識にロボットの頭を蹴り飛ばそうとして、慌ててその足を止めた。

俺に比べるとケンドーマスクはずいぶん必死だ。彼はロボットの頭を何度も揺さぶりながら呼びかける。

 

「どうしたんだ?まさか……何とか言ってくれ!」

 

「……失礼しました。心配をおかけして申し訳ございません」

「おお!」

「不可解な感覚に困惑しておりましたので返事が遅れてしまいました」

 

「不可解な感覚?」

 

「セントラルの支配下から解き放たれた喜び、そして不安。あなた方との出会いとその運命。それから現在、私が置かれている状況に奇妙なものを覚え、それらを解析する必要があったのです」

 

「あっそ」

 

ケンドーマスクはロボットの言葉を聞くと、ほっとしたように息を吐いた。

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