気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「腹を空かしていると思い、きびだんごでも食わせてやろうかと立ち上がったその時だ。がちゃん!と背後から大きな音がする。慌てて振り向いたそこには壊れたドローンが火を吹いていた。ラブラドル・レッドリーパーが起こしてくれなかったら私は大怪我をしていたかもしれないんだ!」
「……ドローンか」
「故障したのか何かに衝突して墜落したのか……まったく、なんであんなものを好き勝手に飛ばしてるんだろうな?危ないじゃないか!私のような正義の志を持つ人間があちこちにいれば監視カメラもドローンも不要になり、あのような事故や危険も未然に防げるはずなのに!」
「申し訳ございません」
「ぇへえっっ!?ラミッサちゃん、君のことを悪く言いたいわけじゃないぞ!君は上の命令に従って仕方なくだな……」
ラミッサの言葉に動揺したケンドーマスクはしどろもどろになりながら言葉を返す。
「いえ、ケンドーマスク様のおっしゃる通りです。あなた様のような気高い志を私たち一人一人が持つべきなのです」
「そ、そうか。でも私もそこまでの領域には……いや悪い気はしないが」
ケンドーマスクはラミッサから視線を外し、夕暮れの空を仰ぎながら語り始める。
「しかし、ラミッサちゃん。それでも人間なんてのは脆いものなんだ。心が熱くても、思考が正しくてもな。その体が肉で作られ血が通っている限り、人は痛みにたじろぎ、疲労に足を止めてしまう。だからこそ私たちは志や心の正しさだけではなく、人々の手助けを必要としているのだ。そのどちらかが欠けても正義は……」
「ケンドーマスク様……」
「で、あれ……ええ?なんだっけ、えーそうそう……それでラブラドル・レッドリーパーはだな、成長するにつれて様々な力を……」
「……なあ、ケンドーマスク。いや、拝東(はいとう)」
「うん?」
「あんたのことを助けられてよかったよ」
「??ああ、こちらこそ本当にありがとう……」
俺の言葉にケンドーマスクは不思議そうな表情を浮かべ、少し笑ってみせる。
しかし俺は居心地がよくなかった。
何故ならかつてケンドーマスクの頭の上にドローンを落としたのはこの俺かもしれないからだ。そう考えるとなんだか落ち着いていられなかった。
「悪ぃ、今日はもう帰ってシャワー浴びるわ。また話そうぜ」
俺は逆さまになったバケツから立ち上がると服についた砂を軽く払い落す。
「そうか、こちらこそ引き留めてしまって……なあ一歩氏!君はいつもどこにいるんだ?」
「どこっつうか……連絡先交換するか?」
「い、いやあ実はスマホを持っていなくってだな……」
「そうか……まあ俺は……あれ?スマホ……??」
嫌な予感がした俺はスマホを取り出し、電源を入れようとする。
だが俺の予想通り、液晶は黒く塗りつぶされたまま起動することは無かった。
先ほどラミッサの電撃を食らった時に壊れてしまったんだろう。
あれが原因となると復旧は難しいかもしれない。
「ど、どうした?」
「スマホが壊れてる……」
「え!?もしかしてさっきのラミッサちゃんとの戦闘で!?」
「ああ、多分な」
「……」
「で、ではこうしよう!せめてスマホ代だけでも弁償させてくれ!」
「……別にあんたのせいで壊れたわけじゃないんだぞ?」
「ラミッサちゃんはもう私の大切な仲間だよ。仲間の起こした不始末は私の責任だ。後日、請求書を送ってくれ!」
「まあそこまで言うなら……おい、ラミッサ」
「はい……」
「もうケンドーマスクを危ない目に遭わせたりするなよ」
「もちろんです。この命に代えましてもケンドーマスク様をお守りすると誓います」
「えへへ、いやあ……これはまた頼もしい仲間が現れたぞ!」
ラミッサとケンドーマスクはそのまま俺のことをそっちのけで互いのことをべた褒めしあっている。何なんだこいつら。
(命か……)
まあ、機械に命なんて無いんだけどな。
だけどその命とやらでケンドーマスクを守れるというのなら、せいぜい頑張って生きてみせろと思う。
……ちょっと俺はロボットに冷たく当たり過ぎだろうか?
いや、どうでもいいか……。