気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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ネズミ花火
鉄の極地オオカミ①


俺の名は没木一歩(ぼつきいっぽ)

 

不死身の体と無敵の力を持つ男。

 

ただしその評判は芳しいものではない。

なにしろ別にいい事をしているわけではないからな。

 

だからこういう奴に絡まれるのも仕方がないかもしれない。

 

「俺の名はバイオニック・アークウルフ!!」

 

防弾チョッキを着込んだ男が大声で名乗りを上げ、青白く光る刃が取り付けられた巨大な機械の腕を振りかぶる。

 

どうせ次のセリフはボッキマンよ、覚悟しろだろう。

 

「ボッキマンよ、覚悟しろ!」

 

ほらな。

 

…………。

 

大した話じゃない。

 

注文していた新しいスマホを受け取りに行くついでに外を出歩いていたら、路地裏で武装した男に襲われた。それだけの話だ。

 

もう何度目になるだろう。

ありふれた……とまでは言わないものの、治安部隊をボコったあの一件からこういうシチュエーションに遭遇することが多くなった。

 

『人違いじゃ?ボッキマンじゃないけど?』

 

『ええーっ!?そうだったんですか?いやー勘違いしてしまいました。どうもすみませんでした』

 

『いえいえ』

 

そんな微笑ましいやりとりでその場が収まることはほとんどない。

たいていは暴力沙汰になる。

 

もちろん俺は以前のようにビルの上を走り回っていたわけではない。

 

ジョギングコースをぐるりと走り、ベンチに座りながら崩れた山をぼーっと見て、そろそろ家に帰ろ……いやスマホを取りに行こうかと思った矢先にこうなった。

 

もう問答無用だ。

 

「おっさん、あんた迷惑動画配信者か?通行人にいちゃもんつけて視聴数を稼ごうっつうアレか?」

「俺は賞金稼ぎだ!賞金稼ぎのバイオニック・アークウルフだ!」

 

賞金稼ぎだというおっさんは腕を振り上げたまま律儀に俺の質問に答えてくれる。

 

こんなの相手にせずさっさと走り去ればいいだろうと思われるかもしれない。

俺もそう思う。

 

しかしこうやってバカ正直に顔を見せてくれたんだからちょっとは相手をしてやってもいいだろうとも思う。

 

「……」

 

スポーツ刈りでダルマのような体型の、街並みにはまったく溶け込んでいないおっさんだ。

 

使い込まれた防弾チョッキの縫製は所々がほつれており、しかもおっさんの体型と合っていない。機能性は最悪だろう。

 

だがその冷たく光る機械の腕は本物だ。

精巧な造りで、おもちゃにはとても見えない。

 

まだ真新しい金属製の指先は小さなモーターが神経をかき混ぜるような音を立てながら俺を威嚇するようにうごめいている。

 

相当に自信があるのだろう。

人間の首くらい簡単にねじ切ってしまいそうだ。

 

「なら一応言っておくけどな、人違いだぞ。俺はボッキマンじゃない」

「いいや!貴様こそボッキマンで間違いない。俺のアークウルフがそう告げている」

 

「……わかった、なら来いよ。その義手を試してみたいんだろ、見てやるよ」

 

「よくぞ言ったボッキマン!では死ぬがいい!!」

 

言うやいなやおっさんは足を踏み出し、一瞬で俺との距離を詰めると叩きつけるように腕の刃を振り下ろしてきた。

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