気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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鉄の極地オオカミ③

「それです!それがアークウルフなんです!か、返してくださいよ!お願いです!」

 

「これがアークウルフならあんたの名前はバイオニックか」

「い、いえ、じ、自分はバイオニック・アークウルフでそっちはアークウルフです!ご勘弁願います!お願いしますよ!」

 

「ふーん……」

 

俺はへこへこと頭を下げるおっさんを後目に、おっさんの肩からもぎ取ったバイオニックアームことアークウルフを弄りまわす。

 

「あ」

 

すると何かの拍子にスイッチでも入ったのか、アークウルフの手の甲からガシャリとレーザーポインターのような装置が飛び出し、おっさんは悲痛な叫び声を上げた。

 

「うわあっ!こ、壊れる!もっと丁寧に……」

 

「丁寧に?」

「あっ、いや……すみませんでした……」

「……これってレーザーポインターか?」

 

「はい、対人戦時の目潰しやかく乱用です。後はキャンプなどの野外活動にも……」

「レーザーポインターなんかキャンプでどう使うんだよ」

 

俺はおっさんの目の前でアークウルフの指の何本かを引っ張ってみせる。

 

「うっ、うわあぁあっ!か、勘弁してくださいよ!高出力のレーザーポインターなので薪に着火したり、紐を切ったり出来るんですよ!」

「へえ、他にも何かあったりすんの?」

 

「ええ、あ、あの……」

 

「何?」

「い、いや、他には、その……薬指を右に回して……」

「うん」

「それから手首を下に向けるように曲げてください」

「こうか?」

 

アークウルフがガシャリと金属の擦れ合う音を鳴らしながら動き、手首が下を向く。

 

「……で?」

「それで中指の第二関節の辺りをぐっと押し込んでもらえれば……」

「ややこしいな~大丈夫かよ」

「は、はい」

 

「まったく……」

 

言われた通り中指を押した瞬間、アークウルフの手首から刺激臭のする煙が立ち上がり、火花と共に爆発的な勢いで周囲にガスがまき散らされた。

 

「うおあぁああっ!!」

 

おっさんは鼻水を吹き出しながらガスを避けるように転がると、壁にぴったりと背中をくっつける。何なんだ?

俺はガスに包まれたままおっさんに呼びかけた。

 

「おい、どうした。何なんだよこれ?」

 

「……」

「おい……」

 

「いやあの……さっ、さ、催涙ガスです!すみません!言うのが遅れました!」

 

「「……」」

 

「……もしかして俺のことを騙そうとしてたとか?」

「め、滅相もございません!誤解ですよ!」

 

顔面を紅潮させながらはっきりとした口調で言い放つおっさん。

……なーんかこいつ、信用出来ないなあ。

 

まあ別に不意打ちしてくれたっていいんだけどさ。

変に往生際がいいより根性を見せてくれる奴の方がマシだと俺は思ってるし。

 

「じゃあさ」

「はい……」

 

俺は再びアークウルフを揺らしながら尋ねる。

 

「俺に殴りかかった時に剣みたいなのが飛び出てたけどあれはどうやんの?」

「え?あれは……いやー……」

 

「どうした?なんか不満でもあんのか?」

 

「い、いえ……。あーと……あれはですねー……」

「うん」

「……てます」

 

おっさんは諦めたように顔を背けながら消え入りそうな声で告げる。

 

「なに?聞こえねえよ」

「……お、親指を、カチッて音がするまで折りたたむように握ると飛び出す仕組みになってます……」

 

言われた通りにアークウルフの親指を折り曲げて拳を握らせると、前腕から機械仕掛けの刃がジャキリと飛び出した。

 

三日月のような形状で、刃渡りは20cmといったところか、うっすらと青白い光を纏い、微妙に振動しているのか静かに空気を震わせる。

 

「なるほどなあ……」

 

これで俺の首を刎ねようとしたってわけか。

 

おっさんは俺の様子を青ざめた様子でじっと見つめ、そして引きつった表情で問いかける。

 

「……い、一応、聞きますが……それをどうするおつもりで?」

「ああ、ちょっと切れ味を試させてもらうわ」

 

「えっ!ちょっ!!ええーっ!!?ひいいっ」

 

俺は刃をそっと手の平に押し当てると、そのままぐいっと押し込むようにスライドさせる。

 

だが不死身の体は傷一つつかない。

ギコギコとノコギリのように刃を動かしてみるが薄皮一枚切れる気配はなかった。

 

しかしおっさんは俺の手がぼとりと落ちるとでも思っただろう。

足をジタバタさせながら両手で顔を覆うと、ふてぶてしい図体をぶるぶると震わせて、悲鳴のようなものを上げる。

 

「ひあだあーっっ?!!!あぐうあああっ!げえあああ……うぎひいいぃ!!」

「…………」

 

まるで自分が切られたかのような反応だ。

 

さっきまで俺のことを殺そうとしてたくせに、何考えてんだろうなこいつ。それともこのまま殺されるとでも思っているのか。

 

「まあ、見た目は結構かっこいいよな……」

 

俺はそう言うとしゃがみ込み、足元に転がっていた石ころにアークウルフの刃を押し当てる。

 

するとジュッと溶けるような音と共に何の抵抗もなく刃は石の中に沈んでいった。

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