気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「ええー、すげーなこれ?」
おっさんに見せびらかすように刃を動かしてみるが、反応はない。
ただ頭を抱えて丸くなっているだけだ。
……さすがにちょっと怖がらせ過ぎたかもしれない。
「えーっと、大丈夫?」
「い、いや、はい……」
おっさんは鼻をすすりながら言う。
まあ、こんなおっさんにいつまでもかかずらっても仕方ないかもしれないが、ケンドーマスクとのことが頭にあった俺はもう少し話してみることにした。
「けどあんたこんなモン、どうやって手に入れたんだ?」
「え、いや、ちょっと危ない感じの整形外科で……」
「……それで金が無くなったから賞金稼ぎの真似事を始めたのか?」
「いや、違うんですよ!賞金稼ぎは昔からやってまして、その時から腕に障害を負ってて……そこに大金も転がり込んだんでいい頃合いかなって……」
「大金?」
「い、いやその、デカい仕事の案件があって、気前よく前金が……」
「へえ、そんならまだまだ他にも機能があったりするんだろ?」
「は、はい……」
おっさんはしょげ返っていたが、ご自慢のアークウルフの機能についてぽつりぽつりと語る内に、だんだんと落ち着きを取り戻してきたようだ。
「このアークウルフはですね、戦う為の道具というだけではなく生活をより快適にする為の……」
ギラギラとした目つきでアークウルフを見つめながらおっさんは説明を展開していく。
例えば超高周波を使った全身マッサージ機能。
それからスマホの充電機能にギターを弾くだの大根のかつら剥きだの予め登録しておいた動作を繰り返すためのAIマクロ機能だとか、16連射機能だとかとどうやらかなり金をかけたようで、組み立て費用だけで高級車一台が買えるらしい。
「色々出来るのはわかったけどさ、それって戦闘の中で咄嗟に扱い切れるのか?何が出来るかとか迷ったりしないのか?」
「え!?あっ、いや、それは確かに……お、おっしゃる通りです……」
どうやらおっさんが腕を義手に替えたのは最近のことらしい。
これまでの稼ぎをつぎ込んでアークウルフを手に入れた上に、賞金稼ぎとしてのコードネームもわざわざ『牙獣丸(がじゅうまる)』からバイオニック・アークウルフに改名したそうだ。
まあ、嬉しいのはわかるがいきなり義手を使った格闘戦に持ち込むのはリスクがあるだろう。
「牙獣丸のがよくないか?」
「え?そ、そうですかね?なんかダサいって言われたんで」
おっさんは少し納得いかない表情で頭を掻く。
おっさんのもっさりした外見だとバイオニック・アークウルフよりは、牙獣丸を名乗る方が似合っているような気がするがどうでもいいことだ。
「あのお~……お、俺、これからどうなるんですかね……?」
今にも泣き出しそうなしょぼしょぼした目で問いかけてくるおっさん。
「ん?ああ、ちょっと気になったんで質問したいことがあってさ。それを聞いたら最後にしようかなって思ってるよ」
「はい!」
おっさんは泣き出しそうな顔から一転、今度は救いの神でも見るようなキラキラとした目で俺のことを見つめてくる。
なんというか調子のいいおっさんだな。
「その……俺はボッキマンじゃないんだけどさ、噂じゃボッキマンってめちゃくちゃ強いんだろ?戦車を投げ飛ばしたり、岩山に穴を開けたりとかさ」
「え、いやー……はい!もちろんです!ボッキマンは地上最強の怪じ……超人ですから!」
おっさんの媚びるような言葉を無視しながら続ける。
「だから疑問なんだけど、戦車を持ち上げるような奴にあんた一人で挑むっておかしくないか?おまけに重火器を携帯するわけでもなく、こんな刃物のついた腕だけでボッキマンをどうにか出来るって?」
「え、えっと……それはあ……ですね」
おっさんは急にしどろもどろになると、狼狽え、視線を泳がせる。
「あんたの考える地上最強ってそんなにハードルが低いのか?」
俺はあえて意地悪な聞き方をしてみることにした。
嫌味のつもりだったのだが、おっさんの返事はまあまあ納得できるものだった。
「……いえ、そのぉー……ボッキマンってしばらく暴れてないんで、もしかしたら今は弱っているんじゃないなーって……それで」
……言われてみれば確かにその通りかもしれない。
これまで大暴れしていた奴がいきなり行方をくらましたら、普通は死んだとか弱っているもんだと思うだろう。