気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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鉄の極地オオカミ⑤

「なるほどな。そう言うことか、よくわかったよ。でも俺はボッキマンじゃないからな」

 

「お、おっしゃる通りです……」

「ほら、もういいよ」

 

「うお、あっ、あっ」

 

アークウルフを顔面に突き出してやるとおっさんは残った片方の手で奪うようにひったくる。

 

そしてすかさず肩口の逆さまになった茶碗型の接続部にアークウルフを近付けた。

 

すると接続部から、磁石に吸い寄せられた砂鉄のような小さなケーブルが無数に伸びて瞬時に装着が完了する。

 

まるで映画だ。思わず感心してしまう。

 

「おー……すげえじゃん」

 

だがおっさんは俺の予想を遥かに上回るバカだった。

 

「……その……本当にボッキマンじゃないんですね……」

「だからさ、違うって言ってんだろ」

 

そう言うとおっさんはにやりと笑った後、意を決したように息を吐き出す。

 

「てめえ!!人をコケにしやがって!もう許さねえからな!!」

 

……いや、なんでそうなるんだよ。

 

そのあまりの変わり身の早さに俺は呆気にとられてしまった。まあ変に落ち込まれるよりは全然いいんだけど。

 

「悪かったって……えっと、バイオさん?だっけ」

「バイオニック・アークウルフだ!!ナメ腐りやがって!お前のような奴ぁあなあ!」

 

おっさんは目を血走らせながら腰を落とし、アークウルフの肘を押さえたまま手のひらを俺に向ける。

 

まるでそのままビームでも撃ち出すかのような構えだ。

 

「誰かが性根をぶっ叩いてやる必要があんだよ!!」

「わかったから静かにしてくれって……」

 

「お前にはまだ説明してなかったな!アークウルフの最終兵器について!!」

 

おっさんが肘の辺りで指を動かすとアークウルフの手首がぐるりと回転し、銃口のようなものが飛び出した。

 

「冥途の土産に見るがいい!!モノフィラメントワイヤーの超高速射出装置!!その名も牙獣閃(がじゅうせん)!!20m内なら1インチの鉄板を二枚貫通し!そして象さえも瞬時に昏倒させる高圧電流を流し込むことが出来る!!」

 

「ああ、まあ……すごいのはわかったから」

「わかったならあの世でご先祖様に教えてやるんだな!自分がどんな風に死に至ったかを!!」

 

「おいあんた、俺の性根を叩き直したいのか殺したいのかどっちなんだよ」

「るせえ!地獄で閻魔に説教してもらえ!!!!」

 

銃口から火花が炸裂すると共に、矢じりを組み合わせたようなアンカーが猛烈に射出される。

 

(最終兵器ねえ……)

 

1インチの鉄板を二枚貫く、というのはライフルなどの武装と比較してどれほど強力なものなのか?

 

だが、空気を切り裂きながら一直線に向かってくるアンカーを何気なく掴み取った時点でそんな疑問などどうでもよくなっていた。

まるで節分の大豆でも掴んだような気持ちだ。

 

(んで……この後は高圧電流だっけ)

 

そんなことを考えながらアンカーに結束されたワイヤーを軽く巻き取るように引っ張った途端、叫び声が上がる。

 

「なななっ!!?うおおおわあっ!!!んいいいいっ!?」

 

野太い悲鳴に目をやると、カタパルトで射ち出されたジェット機のような猛スピードでおっさんの巨体がこちらにすっ飛んでくるのがわかった。

 

どうやらアークウルフごとワイヤーに引っ張られてしまったらしい。

何やってんだコイツ……俺は何が起こったのか理解できずにしばし呆然となる。

 

「ぶぐむょっっ!!?」

 

慌てて受け止めようとしたものの一手遅く、おっさんはそのままの勢いで俺に激突、おっさんは死んだハエのようにぼとりと地面に落ちた。

 

しかしその間抜けな一連のアクションとは裏腹にかなりのダメージがあったようで、おっさんは這いつくばりながら苦しそうにのたうち回る。

 

一方で俺の体は微動だにしなかった。

おっさんとの衝突時にはかなりスピードが出ていたものの、俺は重さも衝撃も何も感じなかった。

 

痛くもなければ痒くもない。

 

俺の体にはただ風に撫でられたような感覚があっただけだ。

 

「ぶううー……あ、あはあ……い、いはい(痛い)あーおうふふっへぺはいぼおぉお(翻訳不能)」

「なあ……バイオのおっさん、大丈夫か?」

 

「は、歯が、歯があぁ……」

 

おっさんはぶくぶくと血の混じった泡を吹きながら、そんなことを口にする。

 

「病院呼ぼうか?いや救急車……」

 

病院が来たら怖いよな。

 

いや、そんなことよりポケットをまさぐるもスマホがない。

しかし当たり前だろう。まだ店にスマホを取りに行ってないんだから。

 

「ごめん、やっぱ自分で呼んでくれる?」

 

俺はうずくまったままのおっさんに問いかけたが返事はなく、代わりに聞こえてきたのは怒りの混じった荒々しい吐息だった。

 

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