気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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鉄の極地オオカミ⑥

「があああ……な、ナメやがって……あっ、アークウルフにはな……!まだまだ豊富な機能が搭載されてんだよ!」

 

「勘弁してくれよ。今日はもういいじゃんか……アークウルフの貴重な実戦データも手に入ったことだし、な?」

 

「ガキが知った風な口を利いてんじゃねえ!!俺のプライドが許さねえんだよ!」

 

おっさんはやけくそ気味に怒鳴るとアークウルフの指を捻ったり手首を回したり、ガチャガチャと弄り回してこの状況を打開できる手段を探す。

 

「ちくしょうが……勝ち逃げするつもりか?ふざけやがってよお!」

「勝ち逃げってあんたなあ……対戦ゲームやってるんじゃないんだよ、早く病院行こうぜ」

 

「びょっ、びょういん!?バカ言ってんじゃねえ!!もっかい仕切り直すんだよ!いいか!?次の攻撃でアッと言わせてやるからな!黙って見てろよ!!」

 

カエルのように地面に這いつくばった体勢で足をバタつかせるおっさん。

まるで駄々っ子だ。もうほっといて逃げるか?

 

だが、そう思った瞬間、おっさんが気持ちの悪い声を上げてじたばたと身悶えをしはじめた。

 

今度はなんだ。

いい加減にしてくれ。

 

「あひゃああああ!ぜ、ぜっ、全身がくすぐったくて気持ちいい!高周波マッサージ機能が暴発したぁああぁっ!!あひゃひ!ききき気持ちいい!!」

 

「ええ……」

「ほわああぁあははぁああぁん!?!体がふわふわするるよぉおおっっ!!!」

 

「……」

 

「くっ、くそお!!これでもない!!ひゃひひ!ああ、これでもないかああ?!ふうひゃひひ!くそ!!つ、次こそは……」

 

「おいおい……あんた賞金稼ぎでやってくならもっと用心深くしなきゃだめだよ」

 

俺が何を言おうとおっさんは相変わらずアークウルフを探り続けて反撃を試みる。

だが、扱いなれてないのか動揺しているのか、指先や肘から電動ドライバーやコンセントみたいなものがカシャカシャと出てくるだけだ。

 

一体こんなことの何がそこまで重要なんだ?

 

困惑しながらもおっさんを抱え起こしてやろうとしたその時、アークウルフから飛び出したレーザーポインターの赤い光がおっさんの目を射ち抜いた。

 

「ぅあぎっっ……!??」

 

おっさんの眼球に黒っぽい穴が空き、血の混じった体液が逃げ出すように穴から飛び散る。

 

「おっ、おいおっさん!?!何やってんだよ!!」

 

気がつけば俺はアークウルフの手首ごとレーザーポインターを握り潰すように引き千切っていた。

そこまでする必要はなかったかも知れないが、その時はレーザーの赤い光を止める方法がわからなかったのだ。

 

アークウルフの手が完全に破壊されたことも知らないおっさんは目を押さえたまま呻き続ける。

 

「あっ、ああっ、いた痛、痛たたたっ……目、目が……目がたたた、あ痛っ痛痛……」

 

「おい、スマホを貸してくれよ。病院呼ぶから……」

 

目を押さえるおっさんの指の間からみるみる血が染み出し、ぽたぽたと音をたてて俺の腕に落ちた。

 

……どうやら失明するかも知れないほど酷いらしい。

 

さすがに病院……じゃなくて救急車を呼ぶしかないだろう。

だが俺にスマホがない以上はおっさんのスマホを使うしかない。

 

あるいはもう背負って病院まで連れてってやるか、通行人にスマホを借りるか……。

 

(……つかめんどくせーな。俺は別になんも悪くねーのになあ?)

 

なんでこんなアホなおっさんにここまでしてやらなきゃいけないんだ?

こっちはただ喧嘩を売られただけなのに。ヘタに相手をしたのがよくなかったのか?

 

けどこのままほっといたら、今度は目玉をサイバーに改造したおっさんが嫌がらせしてくるかもしんねーしなあ……。

 

そんな風に迷っていると後ろに何か気配のようなものを感じる。

振り向くと一台のドローンが俺の様子を興味深そうに見ているのがわかった。

 

「おい、何を……」

 

ドローンは何度も何度も俺の顔を確認するようにカメラのピントを合わせている。

気分はよくなかった。

 

ほとんど無意識にドローンを叩き落とそうと振りかぶった腕を慌てて止める。

 

ドローンより今はおっさんだ。

 

「……おっさんがレーザーポインターで遊んでいて怪我をした。救急車を呼んでくれ」

「すでに手配しております。緊急搬送車両到着まで2分ほどお待ちください」

 

「ん?あ、ああ、やるじゃんか……」

 

ドローンは呻いているおっさんではなく、執拗に俺の周囲をくるくると旋回しながら撮影し続けている。

カメラのレンズに隠しきれない好奇心のようなものを感じ取ってしまうが、どこか不自然な挙動だ。

 

(気持ちわりいなこのドローン……)

 

やがて俺をフレームから外すとドローンは改めて俺の間近にまで寄ってピントを合わせ直す。

 

「おい、お前さっきから……」

「あなたは一体何なのですか?」

 

「……はあ??」

 

……何なんだこいつは?

何というか質問の内容が不自然だ。

 

お前は誰だ名を名乗れとか身分証明書を見せろとかならともかく『何なのか』とはどういうことだ?

 

「熱分布や反響分析の結果からあなたがそこに存在していることは確実です。しかし不思議なことにそれらのデータを継ぎ合わせてあなたを観測しようとすると、途端にノイズが発生し、認識を妨害されるのです。あなたの体温も脈拍も映像データさえも非常に不安定で強い力によって瞬時に散乱させられてしまいます」

 

ドローンはそう言うとレンズの奥で赤い光を明滅させ続ける。

 

俺にはその様子がまるで信じられないものでも見るように目を見開いているようにも見えた。

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