気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「お前らだって勃起くらいするだろうが」
投げつけられた車を片手で受け止めて、地面に叩きつけてやると衝撃の波と共にアスファルトが放射状に陥没し、立っていられないほど揺れが辺りを襲った。
叫び声を上げながらめちゃくちゃに銃を撃っていた隊員の手をひねり、銃身をへし折り、胸元を押し込むように蹴りを入れるとパワードスーツのフレームが歪み、背中から激しい煙と共に火花が吹き出した。
(こいつらのパワードスーツってどうやって動いてるんだっけ)
パニくったのか殴りかかってくる隊員を軽くヘッドロックしてやると、ばきんとヘルメットが砕ける音がして、叫ぶような声が返ってくる。
今の俺はさながら暴力の嵐だ。
手足がおかしな方向に曲がった治安部隊の連中が、風に巻き込まれたゴミのように吹き飛んでいく。
やがて嵐が収まった時、そこには恐怖だけが残っていた。
気を失い、あるいは骨でも折れたのか、呻き声を上げてうずくまる治安部隊。
科学技術の粋を結集させたであろうパワードスーツはどれも装甲が剥がれ、フレームはねじ曲がり、あるいは折れて血液とは異なる色の液体を垂れ流していた。
野次馬の様子も様々だ。
腰を抜かして動けなくなっている奴、泣きながらどこかに電話してる奴、スクラップになった車の前でダンスしながらへらへらと自撮りしている奴。
俺を通報したであろうドローンは戦闘に巻き込まれたのか、いつの間にかぺしゃんこになっていた。
「……」
しかし、 そんな中、ただ一人だけ俺の前に立ちふさがる者がいた。
先ほどの中年女だ。
その髪は乱れて、膝には少し血が滲んでいたが大きな怪我もなく、瞳には不気味な輝きが残っていた。
「チンコマン!」
「違うってば」
「チンコマン!」
「だから違うって」
「なんでもいいからロボットをやっつけてちょうだい!」
「……ロボット?」
「チンコマンはロボットよりも強い!」
「なんだよロボットって……言っとくけどな、こいつらは人間だぞ」
俺はそう言って転がった治安部隊の一人を顎で示したが、女は俺の言葉など気にする様子もなく再び叫び出す。
「チンコマンはロボットよりも強い!」
「マジか……」
治安部隊をボコったのは今回が初めてではないので何の感慨もない。
しかし周囲の野次馬からすれば、おばさんを捕えようとした治安部隊に俺が怒って暴れたようにしか見えなかっただろう。
それがどうしてだか落ち着かず、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
「早くロボットをやっつけてちょうだい!」
……それにしてもこいつが言っているロボットってなんだ?
まあどうせ俺のことを馬鹿にしているんだろうけどな。
ロボットとやらがこの女に何をしたのか知らないが、機械を壊したいだなんてどうせろくでもない話だ。
「……いつか気が向いたらな」
お気に入りのパーカーの埃を払い、改めてフードを目深にかぶり直すと俺は歩き出した。
「チンコマン!チンコマン!チンコマン!」
そんな俺の背中を馬鹿にするように女はいつまでも叫んでいた。
(ボッキだのチンコだの……言ってて恥ずかしくないのかよ)
道行く連中が全員足を止めて俺を見ているように感じたが、恥ずかしさはなかった。
俺は不死身の体と無敵の力を持つ男。
だからって、俺に何をしてもいいってことにはならないんだからな。