気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「ふーん、わかったぞ……お前な、あれだろ。動画配信者だな。通行人にいちゃもんつけて視聴数を稼ごうってタイプのやつ」
「な、なに!?このケンドーマスクをあんな低俗な連中と一緒にするんじゃない!!」
顔面を守る面金(めんがね)の間からちらちらと見える男の目は使命感に燃えており、ふざけていたり冗談を言っているようには思えない。
どうやらこいつは本気で正義の味方をやっているらしいが、それならなおさら意味不明だ。金にもなんにもならなければ暴行傷害で投獄、果ては返り討ちにあって殺される可能性まであるのにどうしてこんなマネをしているのか?
しかし、次の瞬間ケンドーマスクとやらは叫び声を上げてうずくまってしまった。
もちろん俺はケンドーマスクに指一本触れていない。
「ぐああっ、なっ!?ちょっ、ちょっと!ラブラドール・レッドリバー!ラブラドール・レッドレバー!やめろ!痛い!」
相棒だったはずの犬が突然ケンドーマスクに襲いかかり、足首に噛みついて引きずり倒したのだ。
「痛い!痛いって、マジでちょっと!?ああ!離せ!離せ!離せって!」
「ええ……」
「なんで?!ラブドール・レトリーバー!ラブラドーラ・リトリバー!ランドリー!バーバー!ぐうわっ!!」
ケンドーマスクはラブラドル・レッドリーパーの顎を掴んで必死にこじ開けようとしているが、ビクともしない。
傍目には犬がいきなり凶暴化したようにしか見えないだろうが、相棒の足首に噛みつきながら俺の動きを警戒するラブラドル・レッドリーパーの目はいたって冷静なものだった。
俺には目の前の相手の危険性に気が付いたラブラドル・レッドリーパーがケンドーマスクを守ろうと必死に引き留めているように感じた。
「エサが足りなかったんじゃね?じゃあな、これからはちゃんと可愛がってやれよ」
「ぐうああっ、待て!待て!く、くそっ!覚えていろ、ボッキマン!必ず私が成敗してやるからな!」
捨て台詞を背に受け、その場から早々に立ち去る。
ケンドーマスクとかはどうでもよかったが、またドローンだの治安部隊だのに絡まれるのは面倒だったからだ。
それにしても、ネットで話題の怪人物がいるからと言っていきなり襲いかかってくるなんて随分と物騒なことをするもんだな。
……もっとも今どきこんな頭のおかしい奴は珍しくもないか。
「まあ、いっか。とりあえず走るか」
気分転換に俺はもう少しだけ走ることにした。
そしてしばらく走った後で、とんでもないことに気がついてしまい、足を止めた。