気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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折れた親指に涙!血塗られた独占インタビュー!②

「んっ、あっ、ちょっ!ちょっと、ま、待ってください!」

「えっ……」

 

俺の想像とはまったく違う、救いを求めるような声に思わず足を止める。

 

そこにはどこかの軍隊が使っていそうなガスマスク型のフェイスガード付きのヘルメットのような物を被った妙な男が立っていた。

 

身長は180センチ近い俺よりも低いが、平均以上はありそうだ。

 

痩せ型で、顔はよく見えないが、声からするとそれなりに若いかもしれない。

スピーカーのフィルタか何かでノイズを取り除いてから出力しているのか、フェイスガード越しでも男の言葉ははっきりと聞き取ることができた。

 

「んっ!あ、あなたはぼっ、ボッキマンさんですよね!?」

「いや違うけど」

 

俺は即答し、走り出す。

 

「ちょっ!?ん、うわぁ、はっ、は、速い!?!」

 

俺は男の悲鳴を無視し、素早く壁を駆け上るとスピードを上げる。

街並みが一瞬にして置き去りにされ、雑居ビル群を飛び越えると眼下に広がる街の景色が流れていく。

 

ケンドーマスクといい、なんでバレてしまうんだろうか?

街に出る時はフードを目深に被っているので、顔は知られていないはずなのだが。

 

「ひぃい!ち、ちょっと!待って!待ってください!」

 

しかし、驚いたことに男は俺の動きに食らいついてきたのだ。

 

「だ、だって、そのパーカーも!そ、その身体能力も!ボッキマンさんの特徴と一致してるじゃないですか!」

「へえ、そうなんだ」

 

「いえあのボッキマンさんでしょ!?」

 

「違いますね」

「ほ、本当ですか?」

「ああ」

 

もちろん俺は全力で走っているわけではない。

 

それでも男は高低差のある建物の上を百キロの超える速度で飛び回る俺の動きにぴったりと張り付いているのだ。

 

こいつは何らかの方法で身体能力を強化しているのかもしれない。

どうでもいいけど。

 

「はあっ、はあっ、ま、待って!待ってください!待って……」

 

しかし、わずか数秒で男のヘルメットから漏れる吐息は荒くなり、呼吸は乱れてしまっていた。このまま走り続けていたらこいつは倒れてしまうかもしれないな。

 

どうでもいいけど。

 

「はあっ、はあっ……!お、お願いです……しゅ、取材を!しゅざい……たすけて……」

「しゅざい……?」

 

男は走り回る俺に死に物狂いで食らいついてくる。

そして何とか声を出そうとしているのか、途切れ途切れになりながらも必死に言葉を絞り出す。

 

「こ、こないだ、殴られそ、おっ、おんなの人を、たすけてくれた、でしょっ、そ、それを、んっ、ネットで、み、見ました、はあ、はあ、あ、あなたの、ど、動画……」

 

「……」

 

そうこうしていると男はビルの屋上に這っていたパイプに足を取られ、顔面からコンクリートに激突しそうになる。

 

しかし、気がつくと俺は男の体を抱きかかえて立ち止まっていた。

 

……何をやってるんだろうか。

 

「あ、ありがとうございます、あ、あ、あなたが、はあ、はあ、ボッキマンさんで間違いないですね……はあ、はあ……」

 

「だから違うんだけど」

「はあ、はあ、はあ、す、すみません、もう、動けない……です……」

 

そう言うと男はずるりと崩れ落ち、へたり込んでしまう。

 

「おい……」

「はあ、はあ……」

「大丈夫かよ、それ」

「え……?」

 

男のブーツの足先が破れ、折れた足の指が露出している。

 

どうやら先ほどパイプに引っかけた時に怪我をしたようで、親指の爪が真っ二つに割れて血塗れになっていた。

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