境内に出て、神之門を抱えたまま階段の途中にある石畳に飛び降りる。
「『開け!工房よ!』」
落下地点の石畳に白い扉が出現する。
「え?どうなって…?」
「『拘束せよ』。後でまた開けるから。じゃあまたねぇ〜」
「あ、ちょっ!?」
コートのポケットに忍ばせておいた魔法を施したワイヤーで神之門を縛り、扉の中に封じ込める。
「さてと、これでとりあえずはいいのかな?」
階段の上の方向を向くと感情が読めない表情をした神主こと、今劇が立っていた。
「…神之門さんを返して貰ってもいいですか。それは私の巫女なのです。」
「お前のでもネェだろ、クソ野郎。っていうか、完全に掌握出来ていないくせに。」
憎悪とスリルのピリピリとした空気が、寒さのせいか肌に痛い刺激が伝わってくる。
「何の話でしょうか?」
「…今からする話は、“かも知れない”話だ…」
一泊おき、無常は語り始めた。
「……魔道具や、神器、
「それには、悲劇的な話の物から喜劇的な話の物まで様々な形で存在する。もちろん、子どもへの教育的な意味合いで
「ならば、人はどうか?今劇さんはどう思う?」
彼の顔から完全に色が消えた。
人は怒ると、顔が真っ赤に染まるというが、彼の場合はどうやら無色透明らしい。
今劇が黙ったままなので、無常は話を続けた。
「おいおい、そんな顔すんなよ。『会話』ってものを楽しもうぜ。
「話は戻すが、―――私は世間一般で言われる『アーティファクト』と呼ばれるモノには人がルーツとして関わっているモノは沢山あると考えている。
「それが、どのような立場として関わったのかは分からないモノも多いと思うが、今ここで重要なのはそこじゃない。
「あんたが
「まぁ神官やってるし、当然か。その血筋のおかげで、お前はその御神体を万全振るう事が出来る。
「だからこそ、
「だがしかし、
「
「だってほら。彼女にもそれを扱う資格はあるのだから。
いきなり語りすぎたかも知れないが、こういうのは言葉にして出さないと伝わらないし、自分の頭の中を整理するためにも助かる。
今劇は表情を変えずに御神体がついた杖を強く握りしめる。
「…完全に掌握出来ていないというのは、どういう事だ?」
「あーそれはだね…『アーティファクトが対象人物へ持つ忠誠心を測る魔法』っていう魔法があってね。それで見てみたら96パーセントっ出ててさ。何が足りないんだろうね?…」
さて、お話はこんなものか。
それじゃあそろそろお仕事しますか。
身体の筋肉をぶらぶらしながらほぐしていく。
「『お互いに同価値だと思っている物と取引を行う魔法』『自分の魔法に1分間の制限時間をつける魔法』。」
お互いの距離の中心地点に天秤が浮かび上がる。
「魔法っていうのはさ、便利な物でさ。この魔法は同価値の物を交換出来る魔法なんだ。」
天秤が大きくこちらへと傾く。
「…だから何だというのか?もしかしてその女と交換したいのか?」
「いいや、違う。話を続けるぞ?」
「魔法っていうのは組み合わせ方で色々生きてくるんだよ。じゃあここで問題な。この取引を行う魔法を強制的に解除した時と
「…何が違うというのだ?」
「…ハハッ、だからお前はいつまで経っても神之門もその御神体も自分の手中に入れる事が出来ネェンだよ!」
思わずゲラゲラと笑ってしまう。
あんな凄い物を使っているのに…猫に小判とか豚に真珠みたいな物と近しく感じてしまう。
いや、まぁ神之門の血筋もあっての事なのだが。
「あ、それと…答え合わせの前に聞くんだけどさ。」
「彼女達は、もうとっくの昔に死んでるんだろ?」
ついに、今劇が何も話さなくなった。
顔は無の表情を表していてどこか不気味に感じられる。
杖を上げ、何かぶつぶつとつぶやいている様だが話を続けていく。
「定期的にやっている能や歌舞伎ってさ、ちゃんと練習しないといけないって聞いたんだけどさ。」
「ここの様子を見るかぎり、その練習をしている様子も見れない。」
ポケットからガラケーを取り出して此処の神社のホームページを見せる。
「次の公演は年末。もう1週間しかないのになんの準備をしてないじゃないか。」
神之門さんが言っていた“ ここにいたら…時間の感覚が変なの…”という言葉。
それは、年末には彼女達は能や歌舞伎を
そして、
「40年前、ここに訪れた大学生達は何らかの原因で死んでしまった。けど、お前の持っている其れで生きているかのように
40年前に何があったのか俺は知らない。
だが、彼女達の記憶が一部失われている風に見えた事から恐らく、今劇が深く関わっているに違いない。
その証拠にか、今劇の顔は歪んでいた。
「…クソガキ。何でお前が40年前の事なんか知ってる?」
「…さあ?何でだろうな?それより分かったのか?二つの違い「んな事どうだっていい!!」」
見下ろしていた今劇の額には無数の汗が見え始めていた。まるで今が真夏かのように。
「なんで…?何で?…もういいだろう…?あいつらをしっかりと生き返してやった!本来なら死んでいる所を……なのに何でお前みたいな空気を読めないクソガキが全部ぶち壊すんだよ!?」
「…確かに、俺がここに来なかったらあんたらは今まで通り幸せな生活を送っていたかもしれないな。」
だけどな。
「お前のその御神体を俺が回収、もしくは封印する事で金がもらえるんだ!ごめんごめんw」
「…………は?なんの話だ…?」
だってほら、その報酬でしばらくはお金に困らないし、ねぇ?
それに。
(僕はこれを、“日常の幸せ”だとは絶対に思えない。)
「自分の“幸せ”を押し付けるような事はしたくないんだけどさ。
そろそろ一分立つ。話は区切らせて貰おう。
「あ、そうそう。答えあわせなんだけどさ、」
1分が、終わった。
天秤はこちらに大きく傾きながら消え去る。
「!?」
「お?これはこれは…」
魔法を自分で解除した場合、取引がなかった事にされる。
だが、時間制限のせいで解除された場合は“強制終了”という処理になり、強制的に対象からランダムで対価の徴収されるのだ。
今回、僕の手に渡ったものはほんの僅かの魔力だ。
所謂、外れというやつだな。まぁ、魔法の情報だけだしな…
「お前…何をした?魔力が減っている…?」
「『お互いに同価値だと思っている物と取引を行う魔法』『自分の魔法に1分間の制限時間をつける魔法』。」
流石に、今ので完全に警戒されたらしい。
今劇が無常に対して見る目が、めんどうなものを見る目から敵対者を見る目へと変わっていた。
「…もういい…構えろ。」
この後の事を考えていると境内に複数の人影が見えた。
出て来たのは、猟師が持ってそうなデカい銃を構えた例の大学生達だった。
目は虚で、文字通り操られているのが見える。
「無常君。今から君を殺しますが…そんな
銃口がこちらに向く。
殺意のない目は、何処か魚のような目をしている様にも見える。
彼らのトリガーに指をかける小さな音が、微かに聞こえた。
自分の耳の鼓膜を震わせる。
いや、耳だけじゃなくなりそうだ。右手が震えそうになるのを強く握りしめて堪える。
「私達の幸せのために、どうか死んでください。」
どっちもクズなんだよなぁ…
投稿頻度どれくらいがいい?
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現状維持。
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2000文字以上で不定期投稿。