ニューダンガンロンパ リマジネーション ぼくらのコロシアイ新生活 作:りょうぴー(創作論破書き)
モノクマ「はい、という訳で大正解でーす!!『超高校級のパズラー』時谷海里くんを殺したクロは…『超高校級の歌い手』伊吹蒼空さんなのでしたー!!!」
モノクマの場違いな明るい声が響く
結弦「そ、蒼空が…本当に、犯人…!」
甘粕「…マジですかー。」
大山「ま、間違いじゃないの…?」
モノクマ「クマ、嘘つかない!マジのガチで伊吹さんが殺したんだよ!これが真実なんだ!」
夢里「あわ、あわわわわ…」
舞鶴「ぐすっ…ひっぐ…蒼空ちゃん…!!」
オレたちが驚いている中、伊吹は暗い顔で俯いていた。
伊吹「…………」
伊吹「ごめんなさい、みんな…」
金型「な、なぜ君が謝る…」
久留米「やっぱ、納得いかないよ…にしても、ソラちは…どうしてこんなことしたの?」
桐絵「おい、それはさっきアイツが話してたじゃねぇかよ。覚えてねぇのかよ。」
久留米「そうじゃなくて…本当に殺さなくちゃいけなかったのかって話だよ。」
黒馬「確かに…一理ありますね。黒幕を暴き出す計画と言っても結弦様の計画では殺すまでには至りませんでしたし、隠れてひとり黒幕の殺害を計画していたというのは、疑問が残りますね。」
夢里「確かに、そこら辺ボクも聞きたいです!聞かなきゃ、納得できないもん。」
旭「嫌じゃなかったら、話してくれるかな…?」
伊吹「…」
伊吹「その…ごめんなさい…本当は、黒幕を殺すことにした動機は…別に友達のためでもなんでもないんです。」
伊吹「私はただ…無我夢中で外から脱出するためになにか出来ないかというのを考えていただけで…本当は、友達を助けようだとかそんな聖人君子みたいなことなんかこれっぽっちも考えてませんでした。」
伊吹「でも…彩乃ちゃんや姫乃ちゃん、それに他の皆さんとも一緒に関わるうちに、みんなと仲良くなりたいって感情が芽生えて…脱出したい気持ちと一緒に、みんなで生き残る道を考えだすようになりました。」
三条「その気持ちは嘘じゃなかったんだな…」
黒馬「その言葉が嘘であれば、我々も最早何を信じれば良いのか分からなくなりますね…」
舞鶴「でも、だとすると蒼空ちゃんはどうして、殺人なんか計画しちゃったんですか…?」
星野「多分…結弦が黒幕を暴き出す計画を建てた時に、伊吹はそれと別に黒幕を殺そうとしてたんじゃねーか…?」
星野「あいつ自身も言ってたみたいに、黒幕を殺せばここから出られるし、みんなを助けられて大喜びって考えて…」
田原「そして禁忌に手を染めたというわけか…」
結弦「アタシのせいだ…」
久留米「あやや?」
結弦「何も分かってなかったんだ、アタシは…あの時アタシが黒幕を暴こうなんて言わなかったら、こんなことにならなかったのに!!」
星野「おい、落ち着けよ!結弦が悪いわけじゃねーんだぞ、何もお前を責めるつもりはねーんだ。それより、オレがあの時もっと早く行動できてりゃ…オレがもっと早く記憶を取り戻して、黒幕の正体を明らかにすればこんなことにならなかったんだ。」
伊吹「違います!!星野さんも時谷さんも、彩乃ちゃんも悪くありません!!悪いのは私…ここから出たい一心と、みんなを助けたい一心で殺人を起こした…そのせいで無関係で、しかもコロシアイを止めるために熱心に頑張っていた時谷さんを殺した…!!責められなきゃいけないのは、私1人なんですよ!!!」
伊吹の声は震えていた。
その声にはいつも明るいあいつの面影はなく、信頼していた仲間への裏切り、人を殺してしまったことへの罪悪感、これから待ち受ける絶望への恐怖…
そんな覚悟を決めていない普通の人間には耐えられないような恐怖と後悔が声に現れていた。
超高校級って言っても、結局あいつもオレたちと同じ、中身は普通の人間なんだ…こんな感情が湧かないわけねーだろ…!!
柊「いやいや、それこそユイアヤやほしのんのせいでもなきゃブッキーのせいでもなくね?誰も悪くないし、憎むならこのコロシアイの宿命を恨まなくちゃダメだよ…」
そうだ…オレたちが憎むのは伊吹でも他の誰でもない…
何より憎まなきゃいけねーのは、コロシアイを止められなかったオレたち自身の無力さと、このコロシアイを仕組んだ黒幕じゃねーか!!
あいつはその無力な自分なりに出来ることをしようとした…
その結果が招いたのが今回の悲劇だ。
クソッ!!やりきれねぇよ、こんなの…!!
モノクマ「ちょっとちょっと!!ツマラナイし長いよ!!何時までベラベラくっちゃべってんの?」
その時だった。こんなお涙芝居を黙って見過ごす訳もなく、イラついたようにあのヤローがオレたちの背後から声をかける。
旭「モノクマ!?なんだよ急に…」
モノクマ「急に?いやいや、ボク言ったよね?学級裁判で負けたクロはおしおきするって。」
おしおき…つまり、処刑か!!
舞鶴「ま、待ってください!!処刑なんて、そんなのダメです!!」
モノクマ「ダメ?何がダメなの?悪い事をした人には罰を与えなくちゃいけないんだよ。信賞必罰はこの世界の絶対不変のルール!」
結弦「ふざけんな…!!アンタがこんなこと指示しなかったら蒼空は人殺しなんかしなかったでしょ!!」
モノスケ「なんや自分、ダイナミックな手のひら返しやな。さっき自分のせいだとかどうとか言うてたのに。」
モノタロウ「なんと言われようとお父ちゃんのルールは絶対なんだよ!邪魔をするならキサマラもおしおきするからねー。」
モノファニー「グロイのはいやだけど…全員殺されるのよりは伊吹さんだけが殺された方がマシだと思うわよ…」
モノクマ「まぁ、なんと言おうとこれは決定事項だし、伊吹さんのおしおきは執行させてもらいますよー!邪魔したいならオマエラもその都度殺させてもらうけどね。」
星野「…」
オレの中に怒りと恐怖が混じった、ドス黒い感情が沸きあがる。もうどうなっても構わないくらいに、オレの心は震えていた。
自分の中のタガが外れたのか、オレは思わず怒鳴りつけた。
星野「知ったことかよ!!」
モノクマ「うぉっ!?び、ビビったー…今のは流石のボクも耳キーンしたよ…」
星野「伊吹はコロシアイを止めるために戦ったんだ…伊吹1人を見殺しにするくらいなら、オレも一緒に地獄へ行ってやる!!」
結弦「うん…アタシも戦う。これ以上アンタの思いどおりにはさせないから!!」
舞鶴「わ、私も戦います!!怖いけど…皆さんと一緒に死ねるなら…」
その時だった。
伊吹「止めてください!!!」
伊吹の静止がこの場に響く。
伊吹「皆さんまで死ぬことはありませんよ…私はもう覚悟は決めてますから…」
旭「伊吹さん…」
黒馬「何故…貴女はそこで諦めるのですか…」
舞鶴「嫌ですっ…!!私、せっかく蒼空ちゃんと仲良くなったばっかりなのに、こんな形で…お別れなんて…!」
桐絵「いい子ぶってんじゃねぇよ…最後くらい、足掻いて見せろよ…バカ野郎…」
伊吹「諦めてませんよ…私にはこんなに素晴らしい仲間がいます。皆さんがいれば、私の夢も…きっと…」
星野「何…言ってんだよ…オレなんかにそんなこと、出来るわけねぇだろ…!」
星野「お前が死んだら、オレたちはどうすりゃいいんだよ…!!」
伊吹(……)
伊吹(そう…ですよね。)
伊吹(私は…ここで死ぬんだ。)
伊吹(友達から借りたマンガ、まだ全部読み切ってないのにな…)
伊吹(お母さんにも、親孝行の一つも出来なかったな…)
〜〜
幼少伊吹「ねえねえ、みてみて!おかーさん!わたし、おうたのコンクールでゆーしょーしたんだ!」
伊吹母「…………」ニコッ
〜〜
伊吹(喉の病気で歌手を引退してからも、ずっと私を育ててくれたのに…)
伊吹(そんな恩を仇で返す悪い子になっちゃって、ごめんなさい。お母さんの作るチキンソテー、もう一度食べたかった。お母さんにいろんな歌を聞かせてあげたかった。)
伊吹(…でも、もう叶わないんですね。私はこれから…死ぬんですから…)
伊吹(…なら、せめて、私の夢は…私の想いは…誰かに託さないと…)
伊吹「……」
伊吹「星野さん。」
星野「…?」
伊吹「ここから生きて、脱出してください。この悪夢のようなコロシアイを終わらせてください。」
伊吹「やる前から諦めないで、絶望に立ち向かってください。途中で逃げるのなんてナシですからね?何事も、最後までやり通すことが大事なんです。星野さんはもちろん…みなさんなら出来るって…私も信じますからね!」
夢里「そ、そんなこと言われたって…!ボクらには無理ですよ…!!」
三条「無理だとしても…やらなくちゃならないんだ、俺はやるよ。」
黒馬「承りました、伊吹様。必ずや私の誇りにかけてその依頼、果たしてみせましょう。」
星野「…あぁ…分かったよ!!」
伊吹(…言っちゃった。)
伊吹(今のは私なりの遺言だ…でも…)
伊吹(本当は私だってまだ生きていたい。死にたくない。)
伊吹(その言葉を口に出すのは、もっと辛かった。)
伊吹(私の声は、最後まで震えっぱなしだ。)
旭「………無力でごめん、伊吹さん。」
久留米「こんなのって…酷いよ。」
舞鶴「蒼空ちゃん…うっ、うぅぅ…」
桐絵「…チッ!」
モノクマ「はぁ、何だったんだろう。時間の無駄じゃないのこんなの!んじゃあそろそろ初めていいすか?という訳で…」
モノクマ「超高校級の歌い手である伊吹蒼空さんのために、今回もスペシャルなおしおきを用意しましたー!!!」
結弦「ま、待ってよ…!!アタシ、まだ蒼空に伝えたいことが…!!」
伊吹「…星野さん、彩乃ちゃん、みんな。」
モノクマ「では、張り切って行きましょう!!!おしおきターイム!!!!!!」
伊吹「…頑張れ、応援してるよ。」ニコッ
GAME OVER
イブキさんがクロに決まりました
おしおきを開始します
伊吹の体は小刻みに震えていた。本心で死にたくないと願っていたのか、殺されることへの恐怖か。それを知る術は誰にもない。
すると、突然どこからともなく首輪のついた鎖が伊吹の首に繋がれ、凄まじい力で伊吹の体はどこかへ引きずられてゆく。
結弦が手を差し伸べるのも虚しく、伊吹は扉の奥へ消えてゆく…
モニターが点灯すると同時に、伊吹はポツンと浮かぶステージに立たされ、大勢のモノクマ達が観客としてそのステージを見上げる。2階席もある豪華な天空のステージ、ドーム会場で行われるライブ。
処刑場には似つかわしくない雰囲気のそこで、アイツの処刑は始まった。
超高校級の歌い手 伊吹蒼空処刑執行
伊吹蒼空の激唱 DESPAIR END
伊吹は曲が流れるやいなや、途端に気持ちを切り替えて歌い出す。超高校級の歌い手だけあって、その歌声は多くの観客…もといモノクマを虜にする。
その歌声に聞き惚れたモノクマ達はテンションのボルテージが爆発的に上昇し、外で聞いていたのか、さらに大量の観客が押し寄せてくる。
伊吹はこの様子を奇妙に思いながらも、構わずに歌い続ける。
それが…モノクマの手のひらの上であるということも知らずに。
伊吹は歌い続けた。オレたちも立ち疲れるのを忘れる位に、伊吹の絶唱を聞き届ける。
しかし、歌い続けるということはそれほど喉を酷使し続けるということであり、次第に伊吹の歌声はかすれてゆき、モノクマからもブーイングが上がる。
伊吹の体にはモノクマが怒りで投げたネジやボルト、ナットが当たり、打撲で体が紫色に染まる。
時には伊吹の喉にもマイクを持つ腕にも直撃し、歌えなくなるような怪我を負うほどに痛めつけられる。
伊吹はそれでも歌うのを止めず、ラスト1曲まで歌い続けた。
そして、最後の曲を歌い終わった時、モノクマやモノクマーズ達は感動して涙を流す。伊吹は力尽きて逃げる気力も体力も残されておらず、顔と体を滅多打ちにされて血を流し、ステージの上に倒れる。
すると、突然ステージがゴゴゴ…と揺れ始める。地震のような激しい揺れにモノクマ達が逃げ出した。
鉄骨や照明がどんどんと落ちてゆき、その束がもう動けない伊吹の上に襲いかかる…!!
逃げる気力を無くした伊吹の体は、原型をとどめないほどにぐちゃぐちゃに潰されていた。ドーム会場の瓦礫と逃げ遅れたモノクマの残骸に飛び散った血溜まりが、アイツの最期の姿だった…
ついでに、モノクマ達に踏まれて逃げ遅れたモノキッドの残骸も、頭を残してドームの下敷きにされましたとさ。
終わった…
伊吹蒼空の処刑が終わった…
処刑が終わったと同時に、オレは体から力が抜けたかのように膝をついた。
モノクマ「いゃっほぉーう!!!!エクストリーーーーーム!!!!おしおきと共に人が目の前で惨たらしい処刑をされて絶望する瞬間のハーモニーが最高に興奮してくるよ!!!アーッハッハ!!!!」
モノタロウ「え、あ、あれ…モノキッド?」
モノファニー「あ、あわわ……そ、そんな…ま、まさか逃げ遅れて…でろでろでろでろでろでろでろでろ……」
モノタロウ「わーっ!モノファニーが吐いた!!でろでろでろでろでろでろでろでろ……」
モノクマ「…………」
モノクマ「え、嘘、モノキッド死んだの…?いやーっ!!!モノキッドー!!!」
モノクマ「…って、よく考えたらモノダムの言う通りモノキッドは口が悪いだけの劣化版ボクだったから、ここで退場しても仕方なかったかもしれないね。」
モノファニー「お父ちゃん!それを言ったらアタイ達のアイデンティティに関わる問題よ!」
モノクマ「おっといけない!!ごめんよ〜、出来損ないのモノキッド以外を傷つけるつもりはあったりなかったするんだ。許しておくれ。」
モノスケ「なんやお父やん、ワイらを傷つけるつもりでも言うたんやな。」
モノクマ「まぁね、甘やかしたら増長するだろうし、適度にムチも与えなきゃいい子に育たないってのがボクの教育ポリシーだよ!最悪反抗するなら死んでもいいとまで思ってるからね。」
モノタロウ「な、なんて毒親なんだー!」
モノファニー「そこまでアタイ達の価値は軽かったのね…」
モノクマ「まーね、あいつらもこれくらいのマインドを持てばいいのに、うぷぷ…」
黒馬「なんて悪趣味な…」
久留米「う…そ…」
結弦「蒼空…!!蒼空ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
夢里「うぎゃあぁぁぁーーーー!!!ソウラ氏が…ソウラ氏がぁぁぁーーーー!!!」
星野「…なんだよ…これ…!!」
金型「血が…手が…うわぁぁぁ…あわわわわわわ…」
田原「こ、これが処刑…か…」
甘粕「これが現実なんですかー…?信じられないですよー…」
桐絵「とんだ趣味をしてやがんな…コイツ…」
舞鶴「どうして…どうしてこんなことをするんですか…!?」
モノクマ「どうしてって…随分中身のない質問するんだなぁ。」
三条「中身がないって…人の命が関わってる大切な問題なんだよ!?」
モノクマ「その大切な人の命ってのが無惨に散らされてゆく様が楽しいんじゃーん!!!これこそ絶望的エンターテインメントの真骨頂なんだよ!!!」
旭「倫理観がどうかしてるよ…」
柊「そんな理由で、人の命を軽々と弄んで殺すなんて…」
甘粕「イカレてますねー。」
大山「なんて自分勝手なの!?」
星野「許せねー…お前は…絶対許さねぇぞ!!」
モノクマ「あ。キレた?カルシウム足りてないんじゃないの?」
星野「いいかモノクマ、いつかお前は必ず倒す!!コロシアイのせいで死んだ時谷と伊吹のカタキは…必ず、オレが討つ!!覚悟しとけ!!!」
モノクマ「うぷぷ…そういう反抗的な態度も『あの時』と変わらないね。まぁ、オマエは特に今回のコロシアイで一番期待してるんだよね。無駄なあがきをする性格だし、やられて黙ってるような奴じゃないもん。」
モノクマ「だからこそオマエみたいに筋と血の通った人間が折れて絶望する様が楽しみなんだよねー!その他の皆さんもまだまだ始まったばかりの明日森学園ライフを楽しんで、せいぜい無駄なあがきをしちゃってくださいな!オマエラが心の底から絶望する日を…ボクは楽しみにしてるからさ。うぷぷ…」
モノクマはそういうと逃げるようにこの場を去った。
モノタロウ「ね、ねぇモノダム…モノキッド死んじゃったけどどう思うの?」
モノダム「……」
モノダム「仕方ガナインダ。コレハ、天命デアリ、運命…ナンダヨ。」
モノスケ「なんや自分、久しぶりに口開いたやないか。」
モノファニー「相変わらず訳の分からないことを言うのね!運命なんて何が起こるか分からないでしょ?」
モノクマ達が去った後、呆然と立ち尽くしていた。
旭「…終わったんだね。」
桐絵「バカ、これで終わりじゃねーって言ってただろ。」
柊「モノクマが言ってることが本当だとすれば、こんなのまだ序の口ってことでしょ?」
田原「あと何度、屍の山をしき詰めれば良いのだろうな?」
結弦「もう…やだよ…アタシ、こんなの…」
甘粕「あたしもですー…やってられませんよ…」
舞鶴「ぐすっ…こ、この先、私たちはどうすればいいのでしょう…」
久留米「まだ望みを捨てちゃダメだよ。」
金型「簡単に言うけどさ…逆にあの惨状を見てどうして望みがあるなんて言い方できるんだよ?」
夢里「難病で余命1年、難しい手術を受けないと治らないって言われた方がまだ希望あると思うよ…」
三条「うん…俺たちじゃ、どうにも…」
星野「……」
黒馬「星野様…?」
旭「さっきから口数が少なかったけど…」
大山「だ、大丈夫…なわけないよね?」
星野「…あぁ。全然大丈夫じゃねーよ。今も…どっかで気を緩めると泣きそうだ。情けねーよな。」
結弦「星野…」
久留米「そ、そんな事ないよ!!みんな泣きたい気持ちは一緒だと同じだと思うよ?」
桐絵「オレを一緒にすんなよ。」
星野「でも、オレには泣いてる暇も絶望してる暇もねーんだ。伊吹はオレ達に遺言を残してくれただろ?」
結弦「…そう、だね。」
星野「だったらオレは腹を括るよ。オレたちはアイツの命と夢を託された身だ。たとえその先に待ち構えてるのが希望か絶望か分からなくても、仲間の死を引きずらなくちゃならなくても、オレは最後まで進み続けなくちゃいけねーんだ!!」
星野「オレが時谷の代わりに死ねば良かったのかもしれねーし、記憶も才能もないオレが生きていてもしょーがねーだろうけど…伊吹と時谷を死なせた分は、オレの命に変えても、伊吹の最期の願いは叶えてやる!!」
結弦「…そう、だね。アタシも…やるよ。蒼空の願いを裏切ることが出来ないのは、アタシも一緒だよ。だからアタシも、蒼空のお願いを一緒に叶える。」
久留米「ホッシー、クサイけどかっこいいこと言うじゃん!」
大山「頼りないけど、今日1番頼りになること言ったよね、星野。」
桐絵「まぁカッコつけて無様に早死しない程度には祈っとくよ。せいぜい頑張れや。期待はしねーが。」
柊「いやいやいや、素直に祈っとけって。照れ屋さんなの?冷たいねぇ…で、マイヒメはどうすんの?」
舞鶴「…嫌です。」
旭「舞鶴さん?」
夢里「いやいや、そこは空気読んでうんとかすんとか頷きますよね?」
舞鶴「ち、違います!その…私も一緒に蒼空ちゃんの願いを叶えるのは賛成です。ですが…星野さん。だからといって自分が死んでいい理由を作らないでください。」
舞鶴「私は星野さんにも一緒に生きてて欲しいんです…星野さんの命も、私たちにとっては大事なんです。ですから、自分が犠牲になっていればとか、自分に価値がないとか…言わないでください。」
星野「舞鶴…あぁ。分かった。オレも…一緒に生き残るよ。」
星野「………」
オレはそれだけ言うと、一足先にエレベーターに乗り込むことにした。
旭「…オレたちも行こっか、こんな所でうじうじしてても何も変わらないし。」
桐絵「だな。時間の無駄だからな。部屋に戻ってから思い詰めて自殺とかすんじゃねーぞ?」
大山「アンタはいちいち一言余計なの!…結弦?」
結弦「あ、ううん!アタシも乗るよ。」
柊「そ、そっか…じゃあ戻りますか。」
エレベーターは上へと進み、オレたちは寮に戻ってきた。
寮に戻る前に、上着になにか物が入っていることに気づく。
星野「…なんだコレ。」
上着のポケットには、飴玉の入った包みが入っていた。大方食堂にあるのだろうけど、多分、結弦と作戦会議する時にこっそり入れてたんだろうな…裁判の緊張で全く気づかなかった。
オレは包みを開ける。中には白い飴が1粒入っていた。多分ミルク味だろうな…と思って口の中に放り込む。
星野「…甘ぇな。」
星野「なんでか知らねーが…甘すぎて泣けてきた…」
星野「はは…訳分かんねーっての…」
結弦「…星野。」
星野「…結弦!?」
結弦「もしかして…泣いてるの?」
星野「ばっ、バカ言え!!オレは男だぜ?泣くわけねーだろ!!」
結弦「そ、そっか…ごめん、変なこと言って…」
星野「いや…気にすんなよ。結弦、なんか用か?」
結弦「いや、何してるのかなって思って声をかけたんだよ…」
星野「お、おぉ…いや、なんかこっそり伊吹がオレにくれたみたいで…そしたら伊吹のこと、思い出しちまって…つい足を止めちまった。」
結弦「…そっか。そういやその飴、今アタシが持ってるひと袋で最後のやつなんだよね…だからもう二度と手に入らないって言うか。」
星野「マジか!?まずいことしちまったかな…」
結弦「ううん、全然!ダメにする方が勿体ないっしょ?」
結弦「…ねぇ、星野。アタシ、さっき星野が言ってくれたことともうひとつ決めたことがあるんだ。」
星野「…もうひとつの決めたこと?」
結弦「それはね…」
星野「…?」
結弦「…へへ、ごめん。やっぱナイショ!」
そう言うと結弦は笑顔を取り戻してオレに手を振りながら別れを告げた。
星野「…何だよ、それ。」
私俺たちの頭の中の消しゴム END
プレゼントゲット!
【ミルクピンブレス】
伊吹蒼空の遺品。彼女の好きな飴の会社のキャンペーンで当てた、ミルク缶の形をした特別なピンマイク。現在ではヒビが入り壊れてしまっているが、伊吹はこのマイクに歌声と共に自分の心を吹き込んでいた。