立花響(♂)は少女達に愛される   作:勝機を零した、掴み取れん

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昔描いた作品を自分なりにもう一回作り直してみたいと思ったので再投稿です。


一人ぼっちだった少女

 

 

 

私立リディアン音楽院の地下に存在する特異災害対策起動部二課の本部。

 

その廊下を、緩いパーマのかかった茶髪の少年──立花響は歩いていた。

 

「流石に半日近く任務に付きっきりは疲れたな。部屋に戻って少しだけ寝よう……」

 

どうやら彼は二課としての任務を終え、こちらに帰ってきていたようだ。大分疲れている様子なのも見てわかる。

 

「あっ……おかえり、響……!」

 

部屋に戻ろうとした彼だったが、正面から来た一人の少女に声をかけられた。

 

「ただいま……クリス」

 

とても可愛らしい顔に、()()()()()()()()()が良く似合っている少女──雪音クリスは、彼の姿を確認すると嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「今任務終わったところ?」

 

「うん、少し疲れたし……部屋に戻って仮眠を取ろうかなって」

 

「そっか……お疲れ様。私もさっき学校終わったところで疲れちゃった……。だから私と一緒に寝よ?」

 

クリスの思いもよらない発言に、彼は少し動揺してしまう。

 

「えっ……いや、別に一緒じゃなくても……」

 

「ダメ……かな? 私……響と一緒にいたい」

 

「うっ……」

 

甘えたいという表情を浮かべるクリスに、響は心を揺さぶられてしまう。響は彼女のこういった所にとても弱いのだ。

 

「……わかった。良いよ」

 

だから彼は先に折れてしまった。どの道、断った所で面倒な事になるのがわかりきっていた。

 

「本当!? ありがとう、響! 大好きっ!」

 

クリスは嬉しさのあまり、飛びっきりの笑顔を見せる。それを見た響は、顔を赤くしてしまう。

 

「その笑顔で、そういう事言うのはズルでしょ……」

 

彼女の狙っているのか天然なのかわからないあざとさに、思わず小さな声で呟いてしまう。

 

「……なんか言った?」

 

「……何も言ってないよ」

 

「そう……じゃあ、早く響の部屋に行こう?」

 

そう言ってクリスは、そのリディアンの制服の上からもハッキリとわかる豊満な胸で、響の右腕を包み込むようにして抱きしめた。

 

「あの……クリス……胸、当たってる」

 

「……男の子ってこういうの好きじゃないの?」

 

「いや……好き、だけどさ……」

 

嬉しい気持ちもあるが、恥ずかしい気持ちもある。思春期真っ只中の響には今にも逃げ出したい状況だった。

 

「なら……良いでしょ?」

 

そんな彼の気持ちも露知らず、クリスは彼を無理矢理連れていくかのようにして部屋へと向かっていった。

 

(……全く、俺の気持ちも考えてくれ……)

 

理性がどこかへ飛んでいってしまいそうになるのを耐えながらも、響は彼女がわざとこういう事をしているのだと再確認するのだった。

 

 

────

 

二人がしばらく廊下を歩いた後、響の部屋へと到着した。

 

「響の部屋って本当に何も無いよね」

 

彼の部屋の中は寝るためのベッドと、着替えを入れるためのクローゼット、軽い食事をとるためのテーブルだけが置かれたシンプルなものであり、女の子であるクリスからすれば何も無いと言われても仕方ないものだった。

 

「まあ……寝るくらいでしかこの部屋使わないし……」

 

任務などで部屋にいる時間があまり少ない彼はこのくらいで丁度良いと思っているようだが。

 

「……やっぱり私の部屋で一緒に過ごすのが良いと思う。その方が私も嬉しいし」

 

「女の子と同じ部屋になるのはちょっと……」

 

彼がそう言うと、クリスは不機嫌そうな顔になる。彼女は響に拒否される事を非常に嫌がるのだ。

 

「私と響が出会った頃なんて、廃墟で二人きりの生活してたのに……今更じゃない?」

 

「あの頃と今は状況が違いすぎるでしょ? あの時は生きるので必死だった訳だし」

 

「……まあ、いいよ。いつか私が居ないと何も出来ないようにすればいい話だし……」

 

クリスは何かを暗躍するかのような表情で呟く。

 

響はそんな彼女の顔と言葉に気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「さすがにこのベッドに二人は狭いな」

 

それからしばらくした後、ベッドに入った二人。

彼の部屋のベッドは一人用のため、お互い密着した状態で横になっていた。

 

「私は狭い方が響と近くにいられるから嬉しい」

 

そう言ってクリスは更に密着する。その際に彼女の大きな胸の感触と、女性特有の良い匂いに響は思わず顔を赤くしてしまう。

 

「俺は良くないんだけどね……」

 

そんな彼の反応が嬉しいのか、クリスは優しく微笑んでいた。

「……響、あの時……私の事を助けてくれて、本当にありがとう」

 

布団の中でクリスは自分の右手で、彼の左手を絡めとるように握った。

 

「昔からそうだった……助けてって、何度も何度も叫んでも……誰も助けてくれなかった。辛かった。誰かを信じる事も出来なかった。だけど……響だけは、私の声に応えてくれて……助けてくれた」

 

彼女の手を握る力が強くなる。少しだけ痛いと、響は感じてしまった。

 

「響が居なかったら、私はずっと一人ぼっちだった……響が居てくれたから……私は今も生きていられるの」

 

ずいっと、顔を近づけるクリス。それはもう、お互いの唇が触れるくらいに迫っていた。

 

「だから……私の傍から離れちゃダメだよ?」

 

クリスは不安そうな表情で彼の顔を覗き込む。

 

「……大丈夫だよ。あの時……クリスを護るって約束したから。勝手に居なくなったりしないよ」

 

響は安心させるために、右手で彼女の左頬を優しく撫でた。

 

「……ありがとう、響。おやすみ」

 

その言葉に安心したのか、クリスは彼の胸の中に顔を埋め、しばらくすると優しい寝息を立て始めた。

 

「うん……おやすみ」

 

そして彼女が寝た事を確認した響も、すぐに眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

 




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