立花響(♂)は少女達に愛される 作:勝機を零した、掴み取れん
青髪のロングヘアーの少女──風鳴翼は、響の部屋を訪れていた。
「響……? いるかしら?」
彼女は部屋の扉を複数回ノックした後、声をかける。しかし、反応は帰ってこなかった。
「……鍵は空いてる」
それに気づいた彼女は思わず部屋の扉を開けてしまい、中に入ってしまった。
そして、そのまま奥の方へ進んでいくと、響がベッドで寝ていることに彼女は気づいた。
「すぅ……すぅ……」
「ふふ……寝ている響も可愛いわね」
寝ている彼の姿を見て、翼は優しく微笑んでいた。
「ぐっすり眠ってる……任務で疲れてるのね。起こす訳にもいかないし……戻りましょ」
部屋から出よう。そう思う彼女だが、響の寝顔から視線を外すことが全く出来ていなかった。
「……ごくっ」
彼の魅力的でありながらも無防備な姿に、翼は思わず息を呑んでしまう。
響はぐっすりと眠っている。少しぐらい動いたところで目が覚めることはないだろう。つまり、ある程度の事なら好き放題出来るということだ。
「……少しだけ……少しだけなら大丈夫……よね?」
自分の邪な感情を抑えることが出来なかった彼女は周囲を見渡し、誰も居ないことを確認してから、響を起こさないようにゆっくりとベッドへと潜り込んだ。
(……私ったら、本当に何をしてるのかしら)
響と添い寝するような形になった翼は、こんな行動をしてしまった自分に呆れていた。
とはいえ、本心ではとても嬉しいと思っている。
(でも……響って本当にいい匂いしてるわよね……)
彼には何か惹き付けるようなフェロモンがあるのだろうかと翼は考える。
「……んっ」
「……!」
そんな事を考えていた時、急に彼は翼がいる方に寝返りを打った。
そのため、今の翼は至近距離で彼の寝顔を見つめている状態だった。
(響の顔がこんな近くに……!)
彼のどこか魅力さを感じる寝顔を、翼は惹き込まれるように見つめていた。
胸の高鳴りが止まらない。彼女にとっても中々ない経験である。
そして翼は思う。
触れたい……その魅力的な顔に自身の証をつけてみたい。
今の彼女は、響に対して邪な感情しか抱いていなかった。
(ほんの少しだけ……唇が触れても……大丈夫よね……?)
恐る恐るでありながらも、確実に自身の唇が……彼の唇へと近づいていく……その時。
「……うぅ」
「……!?」
急に響は何かに魘されるかのように、苦しい声を出し始めた。
「響……? 大丈夫……?」
「……たす……けて」
彼は天井に向かって右手を伸ばした。それは誰かに助けを求めている、もしくは何かにしがみつこうとするように。
そんな辛そうにしている彼の右手を、翼は両手で優しく包み込むように握った。
「大丈夫。私がそばに居るから……大丈夫よ……響」
先程まで彼を邪な感情で見ていた彼女の姿はどこにもない。
普段通りの凛々しく、真剣な表情をした彼女は優しく声をかけていた。
「つ……ばさ……さん」
そうすると、彼は落ち着いたのか……彼女の名前を呼びながら、再び優しい寝息へと戻った。
(響……もしかしたら、あの時の事を……)
翼は、彼がどんな悪夢に魘されていたのか、なんとなく理解してしまった。
(そう……響にこんな運命を背負わせてしまったのは、私のせいだ)
(私があの時……響を護る事が出来ていれば……貴方が天羽々斬と融合することも……戦う運命を背負わせることもなかった……!)
約一年前に起きたツヴァイウィングのライブの惨劇。彼が二課に所属するきっかけにもなってしまったその悲劇は、翼にとっても重く突き刺さるものだった。
(どれだけ時間が経っても忘れない。あの時の、血だらけになっていた響の姿を……)
その時の光景がフラッシュバックすると、彼女は握っていた手の力を強くさせてしまった。
先程まで、響を落ち着かせるために握っていたものだったのに……気づけば自分が、彼に縋るような状態になっていた。
(……響は、こんな私を許してくれるのかな? ううん……きっと、許してくれないよね)
(だから私は……強くなって……響の剣として戦い、響が戦わなくてもいいようにしないといけない)
(そして……響がどこにもいかないようにしないと……)
(そうでないと……響が私を護ってくれたことも……私が生きている意味もないから……)
そう心の中で呟き、うっすらと涙を浮かべる彼女の瞳は、光を通さないくらい……暗かった。
防人系女子になる前の翼さんの口調本当にわからん。
ちなみにクリスはアナザーの方をイメージしてます。