ニンジャスレイヤー2次創作短編集   作:佐藤特佐

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◇◇◇◇
登場キャラクター:ニンジャスレイヤー ヤモト・コキ ブラックソバ(オリジナル)
時系列:原作第一部(ラスト・ガール・スタンディング以降)でお好きにカイシャクしてください。


バトル オブ オーミソカ

 

重金属酸性雨の降り注ぐ夕方のネオサイタマ。重々しいアトモスフィアを醸し出す街に「実際安い」「アカチャン」といった不似合いなネオン看板が輝く。ここはネオサイタマのなかでも郊外に位置するエリアである。この時間帯はマケグミサラリマンの帰宅ラッシュであり、道は実際混んでいる。

その人の流れの中を背の高い男が逆行していく。男の目指す方向にあるのはジンジャ・カテドラルだ。

「オハギあるよ」「実際安い」「激しく前後ドスエ」といったキャクビキの勧誘を無視して男は進む。今日はオーミソカというのにキャクビキとは、まさにマッポーめいた光景だ!

 

 

「マケグミエリアはスシソバばっかりだ…。伝統的なソバ・スープ(注:汁に浸ったソバのこと)を食べてる人はいないのか」ドンブリ型の頭部のニンジャが、ビルの上を飛び回っていた。「さっきわざわざ並んで食べた『タイショウソバ』のソバ・スープは絶品だったもんだ。それに比べてスシソバなど邪道…!」そのニンジャは吐き気を堪えるような仕草をすると「ストレス発散するか。」と言う。彼の目にジンジャ・カテドラルが映った。

 

ニンジャの言う通り、名店「タイショウソバ」には長蛇の列ができていた。日本本来のトシコシ・ソバを提供している店は実際少ない。スシソバではなくソバ・スープを求め、多くの人が店で食べようとするのだ。

その列の最後尾に、制服を着た、肩くらいの長さの髪の女子高生がいた。その胸は平坦であった。

「……なっがー…。」彼女…ヤモト・コキはため息を吐いた。息が白い靄になり宙を漂う。(もうインスタント・ソバを買って、公園とかで食べた方がいいかもな。)ヤモトはそう思い、列を離れ、店の外に備え付けられているインスタント・ソバ販売機へ向かった。

「どれにするドスエ?」インスタント・ソバ販売機の合成マイコ音声。ヤモトは一番安いザルソバにしようかと思った。(…でもな……今年最後の日なんだから、ちょっとくらい…ね。)彼女は思い直し、温かいキツネ・ソバのボタンに手を伸ばした。「キャバァーン!」UNIX音が鳴り、取り出し口のフスマが開く。ハッポー・スチロールゥーのドンブリに入れられた、温かいキツネ・ソバ。ヤモトはそれを両手で大事そうに持ち、店の隣の公園に向かった。

 

 

◇◇◇◇

 

今日はオーミソカだ。ジンジャのボンズたちが年を跨ぐように10800回鐘を鳴らす「除夜の鐘」が行われる。実際うるさいが、古事記にも書かれている伝統的行事なのである。

 

 

ボンズたちはトシコシ・スシソバを食べながら、鐘を鳴らし始める時刻を待っていた。スシソバはその名の通りスシのシャリにソバを乗せた食べ物だ。一般家庭でも普及しており、オーミソカにはこれを食べるのが風習だ。

「オイシイネ」「うん、オイシイ」「オカワリあるよ」「オイシイヤッター」

 

 

その時である!ジンジャ・カテドラルの入り口が観音開きに開かれ、何者かが入ってきた。すでに外は暗いため、その者の影しかわからない。

「コンバンワ。鐘撞きはまだヨ。あなた、実際早く来すぎたネ…」ボンズの1人がそう言いながら入場者に近づく。「一緒にトシコシ・スシソバ食べ……アイエエエ!?」ボンズが驚いたのも無理はない。その人物はニンジャだったのだ!ナムサン!ボンズたちは一斉に失禁した。

「ドーモ、ボンズのみなさん、ブラックソバです。」「ア……アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

ブラックソバはジンジャ・カテドラルに土足で上がり込んできた。なんというブッタへの冒涜!

「それはスシソバか?」ブラックソバが聞く。「アッハイ」

その答えを聞いたブラックソバの顔がみるみる歪む。「ザッケンナコラー!」「アイエエエ…!?」

「イヤー!」ブラックソバはスシソバののせられた食卓を投げ飛ばした。チャブダイガエシである!しかしこれはマケグミ家庭ではチャメシ・インシデントであり実際珍しい光景ではない。「火事とチャブダイガエシは江戸のサクラ」というミヤモト・マサシのコトワザを思い出さずにはいられない!

 

「スシソバなど邪道。おめでたいトシコシにはソバ・スープを食べた方がはるかに良い!」ブラックソバは高らかに言い放った。「スシソバ、ダメなのナンデ?」ボンズの1人が尋ねる。「頭が悪くなるからだ…貴様のようにな!イヤー!」

ブラックソバはボンズに右手の人差し指を向けた。すると…なんと、ゴウランガ!ボンズの体が頭から足へ、細かく切断されたではないか!麺のように細く長く分解されたのだ!この様子を見た残りのボンズはさらに失禁した。数人はすでに気絶した。

これこそがブラックソバのセイメン・ジツである。指を触れずにさまざまなものを麺にしてしまうのだ!コワイ!(注:セイメン=製麺)

「ソバ・スープこそがオイシイ。いいね?」「ハイ、スミマセン」ボンズたちはそろって床に頭を擦り付ける。ドゲザである!「ソバ・スープ、食べるよね?」「ハイヨロコンデー!」

ブラックソバは先程セイメンしたボンズの破片をドンブリにのせると、懐からヨロシサン醤油を取り出してドンブリに注ぐ。「ハイ、一人前イッチョアガリー!」ナムサン!ブラックソバは細切れにしたボンズの身体をソバにしたのである!「アイエエエエエ…」当然誰も食べる勇気はない。「ダイジョウブ?味合わない?塩味もあるヨ」ブラックソバの悪魔的囁きに、ついにそのボンズも白目を剥いて失神した。

 

 

「実際情けない。」ブラックソバは失神したボンズたちの口に、ヤカンで白い液体を流し込んでいく。ソバユだ!しかしただのソバユではない。数百倍に濃縮した高濃度ソバユである!ソバユを流し込まれたボンズは、その強酸性により体内から溶かされる。ボンズが液体化し、タタミに染み込んでいく。なんという地獄めいた光景か!

 

ボンズは残り2人だ。「ちょっと早いけど、除夜の鐘鳴らしに行こう。いいね?」「ハイヨロコンデー!」

 

 

ブラックソバと2人のボンズはジンジャ・カテドラルの外に出た。冷たい風が吹き抜けて木々が揺れ、不気味なアトモスフィアを演出している。

「鐘を鳴らしたまえ。」「アッハイ」ボンズは撞木を揺らし、鐘をつく。撞木は縄で屋根に固定されており、これを揺らすことで鐘をつくことができるのである。

 

ボーーン ボーーン

 

しかしブラックソバの表情は不快になっていく一方だ。「ブラックソバ=サン、いかがなさいましたか?」

「……つきかたが弱い!音が汚いし小さい!」ナムサン!実際このボンズはスゴイ級のウデマエであり、これは適切な鳴らしかたであった。

「ワシが鐘をつく!どきなさい。」ブラックソバは撞木を結んでいた縄を外すと、代わりにその縄にボンズを結びつけた。「ナンデ?縄ナンデ??」

賢明なる読者諸君は、すでに何が行われようとしているかお分かりだろう。

ブラックソバは、ボンズを撞木の代わりにして鐘を鳴らそうとしているのである!ナムアミダブツ!

「おぉブッタ…。あなたは眠っているのですね。」ボンズが覚悟したその時!

 

 

「wasshoi!」

 

掛け声と共にもう一体のニンジャが現れた。赤黒いニンジャ装束、メンポには「忍」「殺」の文字がショドーしてある。

「ドーモ、はじめまして。ニンジャスレイヤーです。」新たに現れたニンジャ…ニンジャスレイヤーは両手を合わせてお辞儀をした。「ドーモ、はじめましてニンジャスレイヤー=サン、ブラックソバです。」ブラックソバも両手を合わせてお辞儀をする。アイサツはニンジャのイクサにおける絶対の礼儀である。古事記にもそう書かれている。

 

 

お辞儀終了から0コンマ3秒、両者が動いた。「イヤー!」ニンジャスレイヤーの右腕がムチのようにしなる。スリケンを2枚連続投擲!「イヤー!」ブラックソバはバク宙でこれを回避!「イヤー!」ニンジャスレイヤーがスリケンを4枚連続投擲!「イヤー!」ブラックソバはバク宙でこれを回避!「イヤー!」ニンジャスレイヤーがスリケンを8枚連続投擲!「イヤー!」ブラックソバはバク宙でこれを回避!

 

 

決定打が不可能と判断したニンジャスレイヤーは、ブラックソバに接近戦を挑む。両者のカラテがワン・インチで激突!「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」ニンジャ動体視力をお持ちの読者には見えるだろう、凄まじい速度で攻防が展開されている様子が!

 

「イヤー!」ニンジャスレイヤーが深く踏み込み、渾身の一撃を見舞おうとした、その時。ブラックソバは懐から何かを取り出した。ナムサン!これは強力な打撃武器マガリネギ・ボーである!

「イヤー!」「グワー!」踊りかかってきたニンジャスレイヤーのメンポに命中!ニンジャスレイヤーはたまらず床を転がる。「ボーで叩いてやる。ネギトロになるがいい、ニンジャスレイヤー=サン!」マガリネギのサーベルめいた美しい曲線。これで叩き続ければ敵は実際ネギトロになるだろう。

 

勝利を確信したブラックソバがニンジャスレイヤーに駆け寄り……おぉ、ゴウランガ!ニンジャスレイヤーは咄嗟に足掛けをし、ブラックソバを転倒させた!ブラックソバはマガリネギを取り落とす。逆にマウント・ポジションをとったニンジャスレイヤーの連続打撃が炸裂する。右ストレート!「イヤー!」「グワー!」左ストレート!「イヤー!」「グワー!」右!「イヤー!」「グワー!」左!「イヤー!」「グワー!」

 

しかし、いつの間にかブラックソバの右手にはソバの麺が一本握られている。そんなもので戦局を変えられるはずが…おぉ、ブッタ!ブラックソバはマウント・ポジションのニンジャスレイヤーの首にソバ麺を巻き付けると、力いっぱいに締め上げる!「グ、グワーーー!」マウント・ポジションから落ち、苦しむニンジャスレイヤー!攻撃に集中しすぎて他を見ていなかったのだ。インガオホー!

 

ニンジャスレイヤーは自身の首に巻き付くソバをちぎろうとするが、この麺はヨロシサン特製麺であり実際頑丈だ。ちぎれない!ブラックソバはニンジャスレイヤーのワン・インチ後ろに立ちどんどん強く締めてくる。ニンジャスレイヤーといえど、この状況で真後ろの相手を攻撃するのは不可能だ。

「死ね、ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」ニンジャスレイヤーの意識が遠のいていく。ニンジャスレイヤーの復讐はここで終わってしまうのだろうか?

 

その時、彼のニューロンに声が響いた。「フジキド。ソバなど恐るるに足らず。食らってしまえばいいのだ。」「ナラク…。」

 

カッと目を開いたニンジャスレイヤー!そして彼は叫ぶ。「ソバ万歳!!」ブラックソバは驚き、その一瞬、締め付けが弱くなってしまった。ニンジャスレイヤーは脱出!「ブッタファック!」ブラックソバは吐き捨て、「まあいい。ここで麺にしてやる、ニンジャスレイヤー=サン!」と宣言した。右人差し指をニンジャスレイヤーに向ける。あの恐ろしきセイメン・ジツの構え!

「イヤー……グワーーーーーー!?」ブラックソバの人差し指が切断された!切られた指が血を吹きながら地面に落ち、それはウィンナーめいていた。キモイ!

ニンジャスレイヤーが一瞬でワン・インチまで距離を詰め、ケジメしたのだ。敵前で無防備に指をちらつかせるのは、実際悪手だった。ケジメしてください、と言っているようなものだ。インガオホー!

 

そしてニンジャスレイヤーは立て続けにカラテを叩き込む。

「イヤー!」「グワー!「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」「グワー!「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」「グワー!「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」サツバツ!もはやニンジャスレイヤーの一方的な暴力である。

「イヤー!」「ワ…ワシはただ…グワー!」「イヤー!」「本来のトシコシ・ソバをっ…グワー!」「イヤー!」「取り戻したかっただけ…グワー!」「……だからと言って無関係な人を殺し、傷つけていい理由にはならん。イヤー!」「グワー!」

 

ニンジャスレイヤーはブラックソバの首を絞める。「本当にソバが好きならそんなことはしないはずだ。ソバは実際奥ゆかしい食べ物なんだぞ!」「奥ゆかしい…?アッ…アバー!」

 

ニンジャスレイヤーはマウント・ポジションから再びパンチを連発する。「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」「グワー!」「イヤー!」「…タイショウのソバ……グワー!」「……なんだ?」「…お主のように、本当にソバを愛する者に出会ったのは初めてだ…。グワ!」

ニンジャスレイヤーは片手を敵の首に添えながら、攻撃の手を止め話を聞く。ブラックソバは掠れた声で続けた。「タイショウソバ。世界一美味いから行ってくれ…。」「………。カイシャクしてやる。ハイクを詠め、ブラックソバ=サン。」「……年の瀬に…美味しいオソバ…ショッギョムッジョ…」「イヤー!」ニンジャスレイヤーのチョップがブラックソバの首を刎ねた。「サ…サヨナラ!」ブラックソバは爆発四散!その煙は細く長く、空へと昇っていった。

 

ニンジャスレイヤーはふと思い出し、ボンズたちの方を振り返った。が、すでにジンジャにはもう誰もいない。(……生きていた2人は逃げ延びたようだな。)オーミソカにニンジャに襲われるとは、なんて不運なボンズたちであっただろうか。死んだボンズたちにニンジャスレイヤーは手を合わせ(モクトー)、しばらくすると彼は暗闇に姿を消した。

 

 

◇◇◇◇

 

フジキドはニンジャスレイヤーの装束のまま、公園の人気のない暗い道を歩いていた。今は、装束を解きたくない。(フユコ、トチノキ…。)ジンジャ・カテドラルでの悲惨なボンズの姿が頭によぎり、マルノウチ・スゴイタカイビルのあの日の光景と重なる。(ニンジャはお主の仇。殺すのだ。)ナラクの声がニューロンの奥から聞こえる。(そうだ。ニンジャを許してはならない。ニンジャ、殺すべし。殺すべし。)実際、フジキドの手は血で汚れている。しかしもう後戻りはできないのだ。仇を取るその日まで、彼はその重圧の苦しさに耐えようと決意していた。

「明日はモチ・ケーキ食べるの?」「オイシイヤッター!」「では、タッシャデナ!」「ヨイオトシヲー!」木々で隔てられた隣の道から、楽しそうな会話が聞こえてくる。フジキドは意識しないようにしていたし、実際普段は意識にも留めないだろう。しかし、今は。このタイミングでは。フジキドは心が締め付けられ、心臓が潰れるような思いだった。読者諸君にもわかるだろう、彼の心境は実際複雑なのだ。

フジキドの行く先に誰かがいる。「ニンジャ装飾を脱がなければ……」そこまで呟き、彼は気づいた。「あの人は……なら大丈夫か。」そして。「ちょっとだけ…」

 

 

ヤモト・コキは、公園の人気のない場所でベンチに座り、1人でキツネ・ソバを食べていた。体の中、ニューロンの髄まで温かくなる思いだった。ズルズル、とソバを啜るヤモト。

ふと見ると、向こうから誰か歩いてくる。(こんな暗い道を誰が…?)赤黒いニンジャ装飾の人物が重々しい足取りで歩いてくる。ヤモトは彼に以前出会ったことがあった。彼女はこちらの方へ歩いてくるニンジャスレイヤーを見つめる。ニンジャスレイヤーはヤモトに気づいていたが、あえて無視してベンチの前を横切るようだ。

その時。

「ヨイオトシヲー。」ヤモトはニンジャスレイヤーに声をかけた。「………」驚き、立ち止まるニンジャスレイヤー。こちらに微笑みかける彼女の顔を見つめ、フジキドは固まる。数秒の沈黙の後、ニンジャスレイヤーは再び歩き出した。

(アイツを殺せ!ニンジャだぞ、フジキド!)(黙れナラク!)フジキドは自身のニューロン内で対話する。

彼は実際エシャクだけしようと思っていた。ここで出会ったのも何かの運命。イチゴ・イチエというミヤモト・マサシのコトワザの通りだ。しかし、彼はエシャクすらできなかった。

(声をかけてくれたのに、何も返せなかった…)いや、まだ間に合うかもしれない。3歩歩き、ニンジャスレイヤーはヤモトの方に振り返ると…彼女はこちらをまじまじと見ながらソバを啜っていた。

フジキドは胸の前で両手を合わせると、深くお辞儀する。最大の感謝を込めて。

数秒後、ニンジャスレイヤーは踵を返し、去っていく。その足取りが少しだけ軽くなっているように見えるのは気のせいだろうか。

 

 





遂に書いてしまった…ニンジャスレイヤーは中毒性がありますな…。
また良いネタが思いついたら書きたい。

それではヘッズの皆さん「タッシャデナ!ヨイオトシヲー!」
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