ランドソルで幸せになれる3つの方法   作:元大盗賊

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アイツの第一印象は、本当に最悪でしたよ

 

 えっ!? アイツの事が知りたいって正気ですか、()()()()? 

 

 そんなのやめておいたほうがいいですよ。アイツの事を調べたところで、何の価値もないです。

 

 ……。

 ふふん、もちろんそいつの事は知っているですよ! 

 なぜなら、ナズナはあたしの()()だからです! あんな生意気なガキンチョでも、あたしにとってみれば貴重な部下ですからね。あたしのためにこき使っているですよ。

 

 そんなことよりも、なんでお兄さんがナズナの事を聞くんですか? 

 

 ……。

 街の張り紙で見かけた? なんでもいいから手がかりが欲しい……? 何の話か知らないですけど、そこまで言うなら話してもいいですよ。

 ……別に話してもいいですけど、お兄さんが期待しているような話にならないですよ? 本当にいいです? ホントですよ? 

 

 

 ……。

 分かったですよ。

 いいですか、お兄さん。お兄さんが知りたがっているナズナっていうクソガキは、ギャングとして活動していた、どうしようもない最低野郎ですよ! 

 

 ……。

 あたしもギャングに所属しているから、同じになる? 

 

 ちっちっち。

 違いますね、お兄さん。あたしのギャングはボスに徹底的に管理されながら、律儀に働いている由緒正しいギャングです! ナズナと一緒にされては困るです! 

 

 ってアイツの話でしたね。

 そうですねえ、アイツの話をするなら、少し昔の

 をしないといけないですね。

 

 

 ナズナは昔、あたしたちとは別のギャングで活動していたですよ。

 んで、そのギャングがやっていたのが人さらいと人身売買です。

 

 ……。そういえばお兄さんって、また記憶喪失になっていましたね。

 じゃあ、最初からお兄さんに話をしていきますよ。

 いいですか、人さらいっていうのは善良な住民を誘拐するどうしようもない連中ですよ。悪いヤツですよね? お兄さんもそう思います? 

 

 ……。そうでしょう、そうでしょう。

 それで、だいたいのターゲットはまだ幼い子供たちですね。捕まえやすいですし、若いので値段もそれなりにあるからです。

 んで、人身売買っていうのは人を食べ物みたいに売り買いする事です。

 お兄さんには想像がつかないかもしれませんが、世の中目に見えていないだけで、裏では結構そういう事は平気で起きているですよ。

 実際あたしもそうでしたし。

 

 

 ……。

 ……あたしも売られる立場にいたんですよ。

 あんまりこんな話はしたくないんですけど、あたしはカヤぴいやボスと出会う前に人さらいにあったんですよ。

 

 

 あたしは、ドラゴン族が同族を探しているっていう噂を聞きつけて、ランドソルに向けて旅をしていたです。お兄さんは知らないと思いますが、ドラゴン族って妙な記憶を持っているんですよ。アストライア大陸の地形に違和感を持っているとか、王宮騎士団(ナイトメア)なんてギルドの存在はなかったとか、そんな変な記憶です。周りの人に話してもまともに扱ってくれなかったですよ。だから、同じ種族ならきっとあたしの抱えている変な記憶も理解してくれるんじゃないかって、そういう淡い期待を抱いていたですね。

 

 でもあたしはその道中でギャングに捕まったです。いきなり大勢のギャングに囲まれて、そのときのあたしはすっかり怯えてされるがままでしたよ。まあ今なら? このイノリ様にかかれば、そいつらは軽くあしらえるんですけどね! 

 

 ……。とにかく、あたしはそれからギャングの世話になった訳ですよ。世話になるって言っても単なる()()として扱われたってだけですけどね。

 美味しくない飯を無理矢理食わされて、買い手が見つかるまで手錠を付けられて、湿気ったベットとトイレしかない狭い檻の中に入れられたです。確かその頃は、いくつかのギャングを渡り歩いたですね。渡り歩くって言ってもギャングの抗争に巻き込まれたってだけですけど。後から聞いた話だと、ギャングたちはあたしがドラゴン族だからっていう理由であたしを奪い合っていたそうです。ギャングがドラゴン族を狙った理由は単純ですよ、あたしたちドラゴン族が珍しいからです。

 

 商品ですからね、それぞれに価値があるんですよ。……。野菜とか果物の値段は種類によって違うですよね。そんな感じです。人の場合は年齢とか種族とかの違いによって値段に差が生まれているですね。

 ちなみに人族(ヒューマン)に比べて他の種族の魔族や獣族(ビースト族)、エルフ族の方が値段が高いです。

 

 理由……? そ、そんなの知らないですよ! ……。多分そういうシュミのへんたいが高値で取引しているってだけです。……とにかく! ドラゴン族はものすごい価値があったから、ギャングがあたしを奪い合っていたです。

 

 そうして何度もギャングの抗争に何度も巻き込まれたのですけど、しばらくして一つのギャングに落ち着いたです。

 そのギャングっていうのが、ナズナがいたギャングです。

 

 アイツのいたギャングは大きいギャングでしたよ。

 それなりに勢力を伸ばして、色んなシノギに手を出していて、人さらいの方もそれなりに稼ぎがあったみたいです。そこでアイツは、見張り番をさせられていたです。

 

「はい、今日のご飯ね」

 

 薄暗い地下牢の前でナズナは一日に二回ご飯を置いていたです。いつも黒いマントを羽織って見張っていたですね。

 まあ、それが仕事だったんじゃないですかね。アイツ、人さらいの担当をしていたみたいで、あたしみたいな拐った人たちのターゲットを見つけたり、捕まえたり、見張りをしていたです。商品の管理をして、取引が決まった商品を連れ出したりとか……。ずっとそんな感じでしたよ。

 

 

 

 それで、アイツは仕事だと言い張って、いつもご飯を食べるあたしの様子をじっと見ていたのは今でも覚えているです。

 

『……何か用ですか』

 

『別に。()()の様子を見ていただけ。死んじゃったら困るから』

 

 松明に照らされたアイツは無愛想な顔であたしを見ていて、いつも腹が立ったですよ。なんでってそりゃ、アイツがあたしをモノのように扱っていたからですよ! 魔物の見せ物小屋みたいにずっと監視して、しまいには服を脱いで身体の状態を見せろなんて言うんですよ! へんたい以外の何者でもないですよ! 

 

 

 ……。

 でもその人を部下にしているのはなぜ? 

 ふっふっふ。まあ経緯については追々話すですよ。

 

 そうしてしばらく牢屋生活を続けていた時に、

 もう一人牢屋に連れてこられたバカがいたんですよ。

 

 

 

『おいドラゴン族のちびっ子。喜びな、お前の新しい仲間を連れてきてやったぜ』

 

 ギャングの怖い髭面のオッサンが、じゃらじゃらって鎖の音を部屋に響かせて何かを、あたしの正面にある空いてた牢屋に投げ入れたんです。

 

 頭と背中から生えている赤い羽根は、どこにでもいる魔族と何ら変わりなかったのですけど、赤い大きな尻尾と、魔物の右腕みたいな太くて大きな青紫色の鉤爪からすぐにドラゴン族って本能的に分かったですよ。

 

 そうですよ、お兄さんも知っている人です。あたしの後に捕まったのがカヤぴいだったです。

 

 

 

『ここはどこだよ』

 

『地下室』

 

『……オレに何をした?』

 

「別に何もしていないよ。喧嘩に負けたあなたをこうしてボクらが運ばせてもらっただけ」

 

 目を覚ましたカヤぴいは見張りをしていたナズナにずっと質問攻めをしていたです。そりゃそうですよね、その時カヤぴいはランドソルで喧嘩屋の仕事をずっとしていたのに、急にあんな薄暗い部屋に閉じ込められてびっくりするのも無理ないです。

 

 

「何が喧嘩だ。数に物を言わせて襲って、変な薬も撒き散らしやがって。はぁ……。それで、オレをこんなところに押し込めてどうするんだ? ガキ」

 

「……随分と口が悪いようだね。需要があるかもしれないけれど、話す態度には注意した方がいいよ」

 

「んだと!?」

 

「君にはこれから、君を買ってくれる人たちが出てくるまでここで生活をしてもらうよ。特に君のようなドラゴン族が流通したという情報はないから、珍しくて値段がつかないんだ。現にもう一人買い手が付かないストックがいるし。だから、君も買い手が見つかるまではゆっくり休んでいてね。すぐに()()()()を見つけてあげるから」

 

「そうかよ。……何がご主人様だよバカにしやがって……。クソっこんな場所」

 

「すぐに脱出できるならやってみるといいよ。無理だろうけど」

 

「ほう、言うじゃねえか。喧嘩屋に喧嘩を売ったんだ。オレがここから出て、お前らをブチのめしても文句を言うんじゃねえぞ?」

 

 そう啖呵を切ってカヤぴいは、じゃらじゃらって鎖を引きずって牢屋の鉄格子をこじ開けようとして、一発殴ったんです。ホント昔からカヤぴいは脳筋バカですよね。思い出しただけでも呆れるです。普段のカヤぴいなら、あんなオンボロの鉄格子なんて簡単に壊せるんですよね。でも、その時だけは違ったです。

 

「……君たちドラゴン族に付けている手錠は凶暴な魔物を使役するために使う道具だよ。魔物本来の力を抑制させる効果があってね。知り合いの魔物使いからもらったものだよ」

 

「痛ってぇ.あン? 魔物……だと?」

 

「そうだよ。ドラゴン族の力っていうのは、他の種族と違って能力の高さが計り知れない。なんだったら国外で彷徨いている魔物よりも凶暴な力だと思ってる。君の喧嘩屋の姿を見て確信したよ。君みたいに噂を聞きつけてやってきたドラゴン族たちをそのまま捕まえたら、一体何をされるか想像もできないからね」

 

「……まさかお前らが噂を流したのか? ランドソルでドラゴン族が同族を探しているって! オレたちを誘き出すために!」

 

「……それはどうだろう? ただボクたちはその噂話に乗っかっただけだからね。早いところあなたたちを売り払っておかないと、噂を流している本物のドラゴン族に遭ったら大変だし」

 

 そう言ってナズナは回復薬をカヤぴいに投げ付けていなくなったです。

 

 アイツ、ずっとあたしたちの事を観察していたんですよ。気味が悪いですよね、ホント。

 どうやってあたしたちを見つけたのか知らないですけど、少なくとも事前準備をするほどドラゴン族を見張っていたんですよ。

 

 そのあとあたしとカヤぴいは、少しの間牢屋生活を共にしたです。

 

 ふふっ、そうですよ。ナズナは本当に悪いやつですよ、あんなガキンチョなのに反吐が出るくらいに邪悪でしたよ! 

 

 え? ナズナは結構ドラゴン族にかなり詳しいのか? 

 さあ、どうですかね。アイツ、ボスの命令でドラゴン族に関する調査とかをしているみたいですけど、元々詳しいってわけじゃないですね。

 ただなぜか知らないですけど、アイツのドラゴン族を探す鼻は確かですよ。実際ナズナがいち早くカヤぴいがドラゴン族だっていうことを見つけたくらいですからね。

 

 

 

 その後は……。そうですね。3日も経っていない頃でしたね。あたしが食事と睡眠以外にやる事がなくなって呆けて汚い天井を眺めていた時でしたね。

 すっかり牢屋からの脱出も試さなくなったカヤぴいが急にベッドから身体を起こしたんです。

 

 

「どうしたんですか、カヤぴい?」

 

「いつもとは違う誰かが来る。あのクソガキじゃねえ」

 

 いつも聞こえる足音とは違うって妙に警戒しているカヤぴいが言うんで、あたしが牢屋の奥に引き篭もった時だったですね。

 

「へえ〜、牢屋に入れられても感覚が鈍っていないんだぁ〜流石喧嘩屋さんだね」

 

 食事を持って来ていたナズナじゃない女の声が地下牢に響いたんです。あたしたちがいたのはナズナのアジトです。いつも聞いていたギャングじゃない声だったのであたしもすぐにわかったですよ。恐る恐る毛布にくるまりながら、通路に近づいたですよ。

 そしたら、牢屋の外には見慣れない紫色の服を着た女の人が立っていたです。

 

「誰だお前? オレの知る限り、あのギャングの仲間にいなかったはずだが……」

 

 誰だったか……何て野暮な事は言わないですよ。

 お兄さんの想像通り、ウチのギルドのボスですよ。

 

「せいか〜い⭐︎私はホマレ。ドラゴン族のギルド()()()()()()()()として、二人を助けに来ました〜」

 

 

 

 

「ドラゴン族の……」

 

「ギルド……ですか」

 

「ほら二人とも、ぼうっとしていないでこんな薄暗いところから出よう〜 あっ、でも先にこの鍵で色々外さないとだね」

 

 ボスは随分と楽しそうに、何なら鼻歌混じりに手に持っていた鍵で、あたしたちは牢屋の外に出たんですよ。あっさりしすぎて、逆に罠なんじゃないかって思ったですよホント。でもツノも翼も鱗の尻尾もあったんでドラゴン族なんだなって思ったですよ。

 

「……さっきドラゴン族のギルドって言っていたけど、キミもドラゴン族なのか?」

 

「そうだよ⭐︎私もカヤちゃんやイノリちゃんと同じドラゴン族。会えて嬉しいなあ〜」

 

「……じゃ、じゃああたしたちが聞いていたドラゴン族を探しているっていう噂は……」

 

「は〜い、私が流しました〜 アストライア大陸ってもの凄く広いでしょ? 一人で探すってなったら、途方もない時間が掛かっちゃうからね。だから、ランドソル王国で噂を広めたんだ。それなら商人や冒険者、いろんな人たちがランドソルに訪れるから探すには最適かなって思ってね」

 

 お兄さんはずっとここに居たから分からないかもですけど、ランドソルはアストライア大陸じゃ一番栄えている場所ですからね。人の出入りも桁違いです。冒険者ギルドの本部があるくらいですから、特に冒険者にとってみれば聖地みたいな場所でもあるから尚更です。ランドソルじゃない小さな街の冒険者ギルドに寄ってみたら、その違いには驚くはずですよ。

 

「……助けてくれたのはありがたいんだが、キミはどうやってこの地下牢にやってきたんだ? それに見張りはいるんだ、ぐずぐずしていたら……」

 

「お、カヤちゃん鋭い〜 でも大丈夫。ギャングは私が魔法でえいっ⭐︎ってやっつけたから心配は要らないよ。それに今日はギャングたちが出払っているから、尚更簡単だったよ〜」

 

 ボスはそんな調子の良い事を言って目を細めながら微笑んでいたです。実際に地下牢から地上に上がった時には、ギャングの姿は影も形もなかったです。後から聞いた話だと、あたしたちを助け出した時にギャングの幹部たちを全員王宮騎士団(ナイトメア)と協力して逮捕させていたみたいですね。おかげであたしとカヤぴいはそのまま、ドラゴンズネストのアジトに向かうことができたですよ。

 

 

 そんなわけであたしは、ドラゴンズネストの幹部としてギャング界を牛耳っているわけですよ! 

 

 それで、あたしたちがボスから救い出されてからどれくらいですかね。1週間くらいでしょうか。丁度、あたしたちを捕まえていたギャング集団が王宮騎士団に捕まったっていう情報が流れた頃ですね。あたしたちがギャングとしての第一歩を踏み出そうとした時に、ボスが新しいメンバーを見つけたって言いに来たんですよ。

 

「じゃーん、私たちの新しいメンバーを連れてきちゃった⭐︎ 」

 

 手錠にかけられたナズナを連れてです。顔はボテっと腫れていましたし、絶対に何かのやりとりをしていたのはすぐに分かったです。

 あたしたちを売ろうとしていたギャングは王宮騎士団によって壊滅させられて、メンバーも牢屋に入れられることになったんですけど、なぜかボスがナズナをそこから連れ出したんですよ。

 ボスが言うには、見どころがあるから連れてきたって言うんですけどね。正直、何を判断してナズナをスカウトしたのか意味がわからないです。

 ぶっちゃけあたしとカヤぴいは信用していなかったですよ。

 ……そりゃそうですよ、あたしたちに変な手錠を付けて売ろうとした輩ですからね。最初はあたしたちは反対していたんですけど、ボスの命令には叶うわけないです。ことごとく却下されたですよ。

 でもまあ今では、ファミリーとドラゴンズネストの裏方仕事を担ってくれる貴重な存在にはなっているから助かっているのは事実ですが。

 

 まあそんな感じですかね。アイツの話は。別に大した話じゃなかったですよ。

 

 

 ……。

 なんだかナズナの生い立ちを話しちゃいましたね。

 

 ……。別にあたしはアイツの事なんて微塵も興味はないです! ましてや、あんな変態だったなんて知りたくもなかったですよ!! 

 

 ……。

 それで? お兄さんはこの話を聞けて満足ですか? 

 

 ……。なるほど、ナズナが流していたドラゴン族に関する捜索情報を聞いてお兄さんがあたしのところに来たと。たしかにナズナはボスの命令でドラゴン族に関する情報を調査するように言われているらしいですけど。

 それで? お兄さんはなんでドラゴン族の事を? 

 

 ……。

 

 ドラゴン族っぽい知り合いが最近出来たから、ドラゴン族について何か教えてほしい? 

 

 

 ……。

 ……。

 

 

 もっとそれを最初の言うです!!! 

 いいですか? これはあたしの手柄ですからね!! 

 ナズナにはぜっったいに言っちゃダメですからね!! 

 

 

 

 

 

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