ランドソルで幸せになれる3つの方法   作:元大盗賊

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小さな羽根に触れてみたい

 

 ランドソル王国には()()を生業として生活を送っている人たちがいる。

 通称喧嘩屋。彼らは赤の他人の喧嘩を代行することで、報酬を得る至極単純な肉体労働だ。ライバル店舗同士のいざこざから、カップルの喧嘩まで報酬をもらえば、彼らは依頼主に代わって喧嘩で勝敗をつけるのである。

 

「まっ待ってくれ! これ以上腕を()()()かないで、降参だ!!」

 

 バンダナを付けた男は声を震わせながら、後ずさりしていた。腰を抜かしている男の服は、土で汚れ、所々が赤く滲んでいた。右腕はだらんと力がなく垂れ下がり、体を支える力がなくなっていた。

 

「おいおいオッサン、冗談キツいぜ。そんなお決まりの手に乗るわけねえだろ」

 

 若い女の声に、男は涙を浮かべた目で近づく者を見上げる。

 ネズミを狙う蛇のように、はたまた小動物を狙う猛禽類のように、獲物の姿を捉えた少女の眼は鋭く光り、口角を少しだけ上げる。魔物のかぎ爪を彷彿とさせる大きな右腕がより男を恐怖で震え上がらせる。

 

 少女は背中の翼を広げ、急加速し男に近づくと右手で男の胴を掴み、壁に投げ付ける。壁はその衝撃で大きく凹み、煉瓦が崩れ落ちる。

 

「がはっ……!」

 

「まだ手品はあるんだろ? オレはまだやれるぜ? さぁ、遠慮なく来いよ!!」

 

「これくらいで良いでしょうカヤさん。相手の旦那が折れてくれた」

 

 先程とは違う低い男の声にカヤと呼ばれた少女は背後を振り向く。

 

「おいおい、オレに傷を付けた相手なんだから、もう少し楽しませて欲しいんだが……」

 

 彼女の背後には、恰幅の良い二人の男が木箱に座っていた。

 人通りが全くない裏通りの空き地で行われていた喧嘩屋による喧嘩代行の勝負は、カヤに依頼した人物の勝利で決まりきっていた。カヤの依頼主である男は落ち着いた様子で声をかけており、もう一方の男はというと、両手を頭に抱えて項垂れていた。

 

「悪いなカヤさん。これで終わりにしてやってくれ。別に俺は、喧嘩相手を再起不能になるまで叩きのめす喧嘩をして欲しくないし、それを望んでいない。そもそもそういう依頼をしていないからな。俺はただ、この地域での露天販売が出来ればいいだけだ」

 

「……。言われてみればそうだな。ちょーっと熱くなりすぎちまったぜ」

 

 深く息を吐くと糸が切れたように彼女の眼は、年頃の娘のようなトゲのない柔らかなものへと変わる。

 素人が見てもハッキリと分かるほどの殺気が消えた事を依頼主が確認すると、懐から小さな紙を取り出した。

 

「わかってくれればいいんだ。……んじゃ、このエリアでの商売は俺達が独占させてもらうぜ、いいよな旦那?」

 

「ああ、それでいい。くそっ……。もっと金を積んでおけば……」

 

 露店の出店を巡り喧嘩屋に依頼していた依頼主たちが契約書にサインし始めた頃、カヤは投げ飛ばしたバンダナ男を壁から引き抜いていた。

 

「あちゃー、完全に伸びちまってる……。ちょっとやり過ぎたかな? こいつテクニックがあるのは確かだけど、オレの相手をするなら体力が足りないかなぁ……」

 

 カヤは意識を失い、全身の力が抜けているバンダナ男をその場で寝かせ、依頼主のところへと向かう。

 

「今日は助かりましたよカヤさん。それじゃあ、今回の報酬はこれだ。一応中身は確認してくれ」

 

「おう、おっちゃんの事だからそんな心配はしてねえよ……」

 

 カヤは依頼主の持つ中身の詰まった皮袋に手を伸ばすが、彼女の左手は皮袋の手元で空を切る。

 

「……カヤさん?」

 

「……わりぃ。血で前が見えなかった。また何かあれば指名よろしくな、おっちゃん♪」

 

 カヤは血を拭いしっかりと皮袋を受け取ると、表通りへ続く道に歩みを進める。身体のあちこちから血を流し、上体をふらつかせながら歩く彼女の足取りは、決して軽やかなものではなかった。

 

 

 

 

 

 

「ナズナぁ! いるかー?」

 

「あれ、カヤぴいじゃないですか。今日はずいぶんと帰りが早いですね。どうしたんですか、喧嘩にでも……」

 

 カヤがギルドのアジトへと戻ると、座っている椅子をゆらゆらと動かして暇を弄んでいたイノリが目に飛び込んできた。机の上には紙の束とペンが用意されており、動かした形跡がない事が見て取れる。

 

「負けるわけねえだろ、喧嘩は勝った。ただよ……傷口が塞がんなくてさ……」

 

 カヤは引き攣った笑顔で白い歯をイノリにちらつかせながら、皮膚が抉られ血が溢れ出る左手の手のひらを見せた。

 

 

 

「じゃあ、分からないことがあれば質問してね」

 

「「「は──い」」」

 

 雲が一つもない青空の下、天井のない廃墟には子どもたちが集まっていた。彼らは古ぼけた椅子に座り、手に筆記用具を持ち、テーブルの上に置かれた問題用紙を凝視していた。

 

 ロンクーファミリーでは、ギャングの仕事を進める傍らで、育ててくれる親のいない身寄りのない子どもたちへの支援を行っていた。発案者はボスであるホマレ。子どもたちへ食料の配布や住処の提供、生きていくために必要な教育を施していた。

 ただ、ここ最近はホマレが子どもたちと接する機会が減ってきている。ドラゴン族だけのギルドである、ドラゴンズネストのギルド活動や、ギャングでの仕事に加えてランドソル王国の貴族院議員やギルド管理協会といった王国内で影響力を持つ人物たちとの接待に力を入れているためだ。

 ロンクーファミリーやドラゴンズネストの認知度が高まっている中、ランドソル内での影響力をより強固とするため、外堀を埋めているのである。

 

 そんな忙しいホマレに代わって、子どもたちの面倒を見ているのがナズナという訳である。

 ナズナは問題を解く子どもたちの周りを歩きながら、一人ひとりに声をかけていた。

 

「ナズナー! これってなんて読むの?」

 

「ん? この記号は、()()って言うんだ。前に割り算って教えたでしょ、その計算だよ」

 

「ナズナちゃん、これ分かんない」

 

「そんな事言ってもなあ。まずは自分の中で何が分からないのか整理してみよう。そしたら、ボクにもう一回聞いてね」

 

「えぇ〜それが分からないから聞いているのに〜ケチッ!」

 

「……特別だよ? まずは問題で何を求めようとしているのか……」

 

 子どもたちが問題を解くために口々に発せられた甲高い声は、壊れかけている壁に反響し、心地よい風と共に周囲に響き渡る。周囲を見渡しても人影は見当たらず、彼らがいる廃墟と化した建物がずらりと立ち並ぶばかりだった。

 ロンクーファミリーのテリトリーの中でも、ほぼ中心に位置するこの廃墟群は脅威に晒されることのない安泰の地であり、子どもたちが伸び伸びと学ぶには最適の環境ともいえるだろう。

 

「ナズナ!」

 

「なんだ、今日はみんなよく質問するじゃないか。どうした?」

 

「イノリちゃんがナズナを呼んでるよ!」

 

 

 

 

 

 

「ガキたちの面倒を見てる時に悪いな」

 

「気にしちゃダメ。まずは自分の心配をしてよカヤさん」

 

「んなこと言ってもよぉ。お前の回復魔法、ボスからやっとお墨付きをもらったんだろ? ……お前を信用しなくてどうする?」

 

 ナズナは血に染まる包帯が雑に巻かれているカヤの左手を確かめながら、黄土色に輝く指輪を懐から取り出して左手の中指に嵌める。

 

 椅子に座っているカヤの表情がいつもより青白くなっているのは確かだった。

 彼女はドラゴン族ということもあり、他の種族と比べて頑丈である。とはいえ、身体のあちこちから血を流している彼女の意識を保てるのは時間の問題だった。

 

「……じゃあ始めるよ。……大地の精霊よ、この者に癒しの力を」

 

 ナズナはカヤの左手をギュッと握りしめて跪き演唱を始めると、ナズナから現れた光が彼女を覆うように集まりだした。カヤの全身を覆う黄色い光は、ギルドハウス全体を照らすほどの強い輝きを放つと次第に床の下へと消えていく。

 

「……どう?」

 

 息を切らしているナズナの頭にカヤは血が止まった左手を置く。

 

「だいぶラクになったよ。さすがだなナズナ」

 

「……そんなことないよ」

 

 目線を逸らしたナズナの頭をカヤはそのまま左手でくしゃくしゃと撫でる。整えられていない黒髪の触り心地を堪能するカヤに、ナズナは不満げな表情で見つめる。

 

「……獣人族じゃないんだから別に嬉しくないよ」

 

「別にいいだろ? 念願だった魔法が使えているんだから褒めてるんだよ。それに、お前は普段から()()()()にベタベタ触っているんだ、お互い様だよ」

 

 ナズナが回復魔法が使えた事を喜ぶカヤは、不満げな表情を浮かべるナズナの頭を飽きるまで触り続けていた。

 

 

 

 

 

「そっか。じゃあお前の回復魔法は……」

 

「うん、その指輪の魔力に補ってもらっているんだ。というか、ほとんどそれのおかげ」

 

 薬と新しい包帯を貰い、椅子で休んでいたカヤはナズナが身につけていた指輪を手のひらで転がしていた。

 

 魔法を扱うためには主に二つの方法がある。一つは自分自身が持つ魔力を使用するもの。そしてもう一つは、魔力が封じ込められている魔法具を使うもの。人が持つ魔力は、生まれつき持っている素質が大きく影響しているという定説は、誰もが知っている常識である。魔力の量は鍛えていけば成長は見込めるものの、その成長の幅は魔法使いとしての素質に大きく関係している。

 

 ナズナの魔法使いとしての素質はどうかというと、ホマレから『びっくりするくらいセンスがないねぇ〜』という折り紙つきの評価を受けている。

 魔法使いとしての道を諦める方が、むしろ有意義な時間を過ごせるとまであると言われる始末だ。そんなナズナが回復魔法を扱えたのは、カヤが持っている指輪型の魔法具のおかげである。

 

 魔法具とは、魔法の力を恒常的に利用できるようにした道具である。

 相手の攻撃を軽減させる防具から、装着した人物の能力を向上させるアクセサリーまで様々な種類の魔法具が存在する。

 

 ナズナが使った指輪の場合、指輪の宝石には、大地の精霊の力を借りる魔法が込められているため、魔力を持たないナズナでも回復魔法を使うことができたのだ。

 

「なるほどね、便利なものが出回っているもんだな」

 

「表通りの武器店のおじさんが話していたんだけど、最近魔法具の武器がランドソル内に流通し始めたらしいんだ。炎を宿す剣とか、癒しの力がある大盾みたいなものとか。カヤさんが相手にしていた喧嘩屋の話を聞く限り、多分魔法具の投げナイフを使っているね。ナイフに風の魔法が込められていて、一度投げたナイフの軌道を変えられるんだって」

 

「……よくわかんねえけど、つまりは道具の力に頼って喧嘩をしていたって事か?」

 

「そんな感じ。はい、お茶だよ」

 

「おう、サンキュー」

 

 

 カヤは湯気の立つティーカップを受け取ると、代わりに黄土色の宝石が輝く指輪を代わりに差し出した。

 

「まあ回復魔法を使えても、まだお前を冒険には連れていけないな。うちのギルドで回復魔法が使えるのは貴重だし便利っちゃ便利だけど、咄嗟の回復ができねえだろ。毎回これを使うなら、さっきみたいに悠長に呪文を唱えないといけないんじゃないか?」

 

「……うん、その通りだね」

 

 受け取った指輪をナズナはじっと見つめていた。

 

 

 

 ナズナは冒険を知らない。

 ギルド管理協会で依頼を受けて、ランドソルから飛び出し、魔物を倒して、報酬を得る。イノリやカヤから聞く話で冒険者という存在がどのようなものか、だいたいの想像は出来ている。

 最近では新しく見つかった島の調査のため、ギルド管理協会の依頼でドラゴンズネストが島に赴いたのは記憶に新しい。

 

 冒険者。

 ギャングに身を落とす前に少しだけ憧れていた職業だった。自分のような小さな子供でも武器や魔法を使って活躍しているという噂話をよく聞いており、それならば同じくらいの年齢の自分にも冒険者が務まるのではないか、と。当時のナズナは安易にそう思っていた。しかしながら、ナズナは冒険者としての素質がなかった。剣を振る能力も魔法を使う才能もなかった。

 だから冒険者という道を諦めて、ギャングになるという選択肢を選んだ。それなのに、今ナズナの目の前にはもう一度冒険者になれるという選択肢が現れたのだ。

 

「絶対に覚えるよ。そうじゃないと教えてくれたボスに示しがつかないから」

 

 どれだけ無茶をしようとも、()()で扱える程の回復魔法を会得する。それがナズナの答えだった。

 

 

「まあ深く考えすぎるんじゃねえぞ。魔法のことはよくわかんねえけどさ、魔法に慣れていけばマシになるだろうし、なんなら期待しているんだぜ? ボスったら、ちょっとでも機嫌を損ねちゃうと回復魔法を使ってくれないんだ。そういう時にいてくれたらありがたいんだから」

 

 まあだいたいイノリのばっちりなんだけどよ、と付け加えたカヤは笑いながらお茶に手をつけた。

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ戻るかな」

 

「戻るって、もしかして喧嘩しに?」

 

「当たり前だろ? お前も知っての通り最近は喧嘩屋もそれなりに有名になってきているからな。もっとオレの顔を売っておかないと」

 

 カヤが身体に巻きつけていた包帯を外していく姿を見て、ナズナはすぐに彼女の手を掴む。

 

「ダメだよカヤさん! ボスが言っていたんだ。回復魔法は身体の治癒力を一時的に活性化させただけだって。身体に負荷をかけている事には変わりないんだよ!」

 

「つってもよ。オレは回復魔法に不慣れってわけじゃねえし、それに血は止まったから別に……」

 

「とにかくダメだよ! ……明後日にまた新しい島に行く事になっているでしょ? もしカヤさんが行けなくなった時の事を想像してみてよ!」

 

 

「うーん……。言われてみれば、イノリを一人にさせたくないな」

 

 何かと問題を引き起こすイノリとボスだけでの遠征を、お互いに想像した二人の意見は一致した。

 

「とは言ってもやる事ねえしなあ……」

 

 カヤは常に喧嘩に明け暮れた日々を過ごしていた。時折、()のお願いを聞く事もあったが、今のように喧嘩をしない日というのはありえない。自己鍛錬の為にランドソルを離れ、魔物の相手をしたいが正直に言えば物足りない。強さを求めるならば、最近見つかった島の魔物との戦闘が望ましい。

 かといってギルド活動の一環としての資料作成という用事もあるが、それはナズナに委任しているもので、何より彼女の性に合わない作業だ。

 

「んんっー! ダメだ我慢出来ねぇ!」

 

 カヤは全身を大きく広げながら立ち上がり、大きく伸びる。

 

「やっぱりさ、喧嘩はしねえから顔を売りに行くだけでも……」

 

「……カヤさん」

 

「なんだよ、そんなに不満か? 大丈夫だってオレにだって自制心は持っているんだ。エルビス島への遠征には空きなんて作らないからさ」

 

 カヤは最近のナズナに言いくるめられることが増えてきていた。一体誰の背中を見て育ってしまったのか、ナズナの口から出てくる理路整然とした説明(言い分)に反論できる余地がないのだ。

 

「違うよカヤさん」

 

「じゃあどうし……」

 

 ふといつもとは雰囲気の違うナズナに気づいた彼女はその視線を追う。

 

「……オレの羽がどうしたんだ?」

 

 ナズナの視線は彼女の顔よりも少し左側に向けられていた。そこにあったのは、カヤの背中に生えているドラゴン族の羽だった。

 

「怪我しているから治さないと」

 

「……まあ確かにナイフで羽根を切りつけられたけどさ、大したことないって」

 

「けど、赤く滲んでいる」

 

「少しな、気にすることねえよ」

 

「ダメだよ。治すから座って」

 

 カヤはナズナに言われるがまま、椅子に腰掛けて背中をナズナに見せる。

 全身に付けられた切り傷は回復魔法による治療によって回復をしたものの、ナズナの魔法の力はまだ不完全であった。

 

「前にボスが言っていたんだけれどね、回復魔法を使う時って治療したい場所をイメージするといいって言っていたんだ。けれど、自分自身に持ち合わせていない()()に対してだと、無意識のうちに排除してしまうみたいなんだ。カヤさんの場合は尻尾とか羽とか」

 

「ああ、ナズナは人族(ヒューマン)だから、そこんところは難しいのか」

 

「みんなのために注意しないといけないね。……大地の精霊よ、この者に癒しの力を」

 

 素肌を晒している背中に指輪をつけた手を当て、ナズナは再び魔法の演唱を始める。

 ナズナの温かな小さな手を背中で感じている事に気恥ずかしくなっているカヤは、思うことがあるもののその感情を押し殺して、ナズナに身を委ねる。

 少しばかり恥ずかしさはあるものの、ギルド内で回復魔法を扱える人物が増えるのは大きなメリットになる。今後の冒険を進めていくにあたり、人員を増やせばその分活動範囲も広がり、ギルド管理協会の依頼の選択肢の幅が増え、報酬も上がるからだ。

 そんな未来への投資のために、回復魔法を使う経験値をナズナに積ませなければならない。

 

「……終わったか?」

 

 背中から手が離れ、魔法を使い終わったか聞かれたナズナは応える。

 

「いいね、羽って」

 

「お前何を言って……ひゃいっ!!?」

 

 ナズナはぶつぶつと呟きながら、赤い羽毛で覆われるカヤの羽を両手で優しく撫でる。

 

「右翼と左翼の大きさが違うって事は飛ぶ為じゃないから……」

 

「お前! なに勝手に触って、って逃げるな!」

 

「ダメだよカヤさん、まだ治療中だから」

 

「んなわけあるかエロガキ!」

 

 後ろに回り込むエロガキを尻尾で足を払い、潰れたカエルのような鳴き声を上げ、床へばり付いた変態不審者の首根っこを掴み上げた。

 

「いくら治療のためとはいえ、むやみやたらに触って良いことと悪いことがあるくらい、お前も分かるだろ?」

 

「だってカヤさんの羽がすごく魅力的に見えちゃって……」

 

「そりゃどうも。褒めてくれるのは嬉しいがそういうのはもう少し……」

 

「カヤさんはドラゴン族の特徴ってなんだと思う?」

 

「……なんだよ急に。そうだな……やっぱツノと羽と尻尾が生えていていれば、ドラゴン族って事になるんじゃないか? ギルドのメンバーを見る限り、そんな感じだし」

 

「でも、魔族の中には、ツノも尻尾も羽も生えている人たちもいるよね?」

 

「……言われてみれば確かに」

 

 カヤは仕方なく、ナズナを地面に降ろして椅子に腰掛ける。

 

「じゃあ鱗で……ってそれを言ったらオレがドラゴン族じゃなくなるか」

 

「うん。実は今ボスからドラゴン族の捜索の再開を依頼されていて、丁度大地の精霊の力も借りれるようになったから大規模な捜索を考えているんだ。探す上でドラゴン族の特徴を抑えておこうと思っているんだ」

 

「確かに言われてみれば考えたことがなかったな」

 

「ボスやイノリちゃんの羽と尻尾は鱗で覆われているけれども、カヤさんの翼だけは鱗じゃなくて鳥類みたいな羽毛で覆われている。類似するような特徴が何なのか、ボクたちはまだはっきりとした認識ができていないと思うんだ」

 

「んな事言ってもよ、それならお前は前にどうやってオレを捕まえたっていうんだよ。ドラゴン族を狙っていたって言ってただろ」

 

「それは、カヤさんが喧嘩屋を始めた頃に自分でドラゴン族って名乗っていたから……」

 

「……そういえばそんな事もあったな」

 

 少しだけ頬を赤くするカヤの横で、ナズナは空になったティーカップへとお茶を注ぐ。

 

「ボクの知る限り、ドラゴン族の存在を知っている人は多くないから改めてカヤさんの意見を聞きたいけれども……いい?」

 

「……他にやることねえし、いいぜ。けど、その前に……」

 

「その前に?」

 

「話を逸らして、オレの羽を勝手に触った事をチャラにしようとした事について、よく話し合おうじゃないか、エロガキぃ?」

 

 

 カヤの殺気を感じた頃には既に手遅れであり、みっちりと教育を受けたナズナであった。

 

 

 

 

 

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