それは、吾輩が禍爲鬼の気配を追い、近隣を飛びまわっていた時の事である。
不意に吾輩の元へと届いた一通のメール。
それだけならば何の事は無いが、問題はそのメールの内容。
『何してんだ? もうすぐ二時間目始まるぞ(笑)』
差出人は
おかしいのである。
高校には吾輩たちの葬者としての活動に疑問を抱かせないような仕掛──
吾輩が居ないことを指摘できるのは指者のみ。
まさか、
とりあえず、同じ教室にいるであろう
メールを送ってみると、すぐさま返信があった。
どうやら
この現象には二通りの心当たりがある。
一つ目は指者としての覚醒が浅い場合。
本人の気の持ちよう次第で影響力が変化するのである。
この場合は
二つ目は効果は発揮されているが意識されていない場合。
簡単に言えばスマホを手に持ちながらスマホを探しているような状況である。
こちらは効果自体は発揮されているので、それを指摘すればそれで終わる。
できれば後者であって欲しいのである。
さしあたってメールで
その後、昼休み前までに二体の
どちらも大した相手では無かったであるが、最近
少々調べてみる必要があるかもしれないのである。
学校に戻ってくると、丁度昼休みが始まったばかりであった。
さっそく栄養補給の為に購買でパンを購入。
今日はカツサンドとホットドックにするのである。
飲み物は牛乳な気分。
それを持って教室に行くと、いつものようにマイフレンド達が机をくっつけて食事をしようとしていた。
丁度いいので吾輩もお邪魔するのである。
「お、
「……あ……冬至」
「俺は別にかまわねーぜ。そう言えば冬至と一緒に昼飯食うのって久しぶりだよな」
まぁ、確かにそうであるな。
ここ最近食事中も葬者の──と言うか『
先日ようやく終わったのであるが、ちょっと溜めすぎてしまっていたである。
されどそれをそのまま言うわけにもいかぬので、それっぽい理由をでっち上げる。
吾輩のキャラ的にこれで納得してもらえるであろう。
「ここ暫く食事の時間も惜しんで発明を続けていたであるからな。ようやく一段落付いたので皆と食事が出来るようになったのである。それに……ちょっと確かめたい事もあるであるし」
さて、
会話の中で分かれば良いのであるが。
知広なら直接確認する方法もあるであるが、吾輩も
どうにかして
「それじゃ、いただきますっと」
「「「いただきます」」」
とりあえずは腹ごしらえが先であるかな。
お、マイフレンド竜樹はマイフレンド雫の愛妻弁当であるか。
羨ましいであるな。
吾輩も今度知広に頼んでみるであるか。
「あれだけ体力あるならもうちょっと走れそうな気もするんだが」
「……お祭りの時は……竜樹凄い……運動神経も……テンションも」
食事中の話題は
確かに祭りの時は凄いであるな。
まぁ、
状況から見て効果は「お祭りの間は超人的な能力を発揮する」あたりであろうか。
希少度で言えば10を最大として6といったところであるかな。
同様の
名前は確か…………ふむ、度忘れしたのである。
「火事場の馬鹿力みたいなもんなのかな。雰囲気とテンションでリミッター外れるとか」
ふむ、別に問題は無いであろうし、核心を突いてみるのである。
「おそらくギャグ補正なのである」
あ、即座に否定されたである。
本当であるのに。
そう言えば、マイフレンド竜樹の素の筋力はどのくらいなのであろうか。
ふとそんな事を思ったので吾輩の白衣を着せてみることにする。
色々仕込んでいるので普通の人には結構重いのである。
「前から思ってたんだが何でお前はいつも白衣を着ているんだ?」
愚問であるぞ、マイフレンド竜樹。
それは当然、吾輩が《《そういうキャラ》だからに決まっているのである。
そう言えば
丁度良いのでカミングアウトしておくであるか。
別に隠してもないであるし。
せっかくなのでたっぷり焦らしてからドヤ顔でそれを告げてみるのである。
それを聞いた
大方『その白衣はキャラ作りかよ』などと考えているのであろう。
実際作っているであるし。
吾輩の
特定の人物像を完全に成りきる
要するに意図的に二重人格を作る
希少度は2と言った所。
表裏の激しい人は大抵持っているであるし。
あ、特撮とロボ好きは元からなのである。
それはともかく、マイフレンド竜樹は吾輩の白衣は重すぎると言って着てくれなかったのである。
まぁ、普通はまともには着れないであるよな。
そうこうしている内に話はどうやら
どうせなので吾輩も乗便する。
元々
もし
と思ってたら直球で聞かれたので、体を動かすのは好きだと答えておいたのである。
本当であるぞ。
とりあえず納得はしてもらえたようである。
何やら賑やかであるな。
そう言えば藍姫氏も源成流古武術を習っていたのであったな。
せっかくなので
「まぁ、上がってくれよ」
そう言った
お邪魔するのである。
道場の中には大きな人だかりが出来ていて、その中心に居るのは二人の女性。
ほぅ、これは中々であるな。
流れるような攻防の応酬に目が奪われる。
片方が藍姫氏であるから、もう片方が──
「凄いであるな。藍姫氏が相当な手練れである事は知っていたのであるが、夏芽嬢……であったか? も引けをとっていないのである」
「あの二人は戦績が割と近いからな。お互いライバルみたいなもんで、いい刺激になってんだ」
なるほど、確かに総合的には同じ位であるな。
才能も有るのであろうし、努力も積んでいると見える。
だが、一つ決定的に足りないものがあるであるな。
それ故に藍姫氏に対して遅れを取り、結果同程度の総合力となっているのであろう。
これが古武術ではなくスポーツ等ならまた違ったであろうが。
お、藍姫氏が仕掛けた──いや、仕掛けさせたであるな。
「一撃! それまで!」
予想通りこうなったであるか。
どうやら夏芽嬢の方は
戦いを見ていれば大体分かるのである。
まぁ、この国では実戦経験など葬者でもなければそうそう有るものではないであるが。
「夏芽のヤツ、半歩踏み込み過ぎたな。おそらく正拳は囮で逸らされるまでは想定通りだったんだろうが、その直前に藍姫さんが────」
「藍姫氏にうまく誘い込まれたであるな。あの位置関係では二の矢が継げないのである。あえて分かりやすい隙を作ることで────」
「そうだな。警戒させることで動きを────」
夏芽嬢が踏み込んだ時に一瞬怪訝そうな反応をしていたである。
常人には分からない程度の反応であったであるが。
なに? 代科女史は三拍子そろって人気があると?
あぁ、確かにそうであるな。
天花氏が絡まなければ。
一般的に見てスタイルも良いであるし、気立ても良い。
頭も回るのであるが何故か天花氏の事となると要領が悪い。
忠義心が空回りしているのであるよな。
いくら
デメリット系の
おや、夏芽嬢がこちらへ来たであるな。
おそらく近所のお兄さん的なニュアンスなのであろう。
そして先の試合について駄目出しする
それによって夏芽女史は肩を落としているようであるが、そう落ち込むなである。
別に
更に成長して欲しいと言う親心──いや、兄弟子心であるか。
「この年で藍姫氏相手にあそこまで健闘しているのであるし、吾輩としては凄いと思うのであるがな」
なので吾輩もちょっとフォロー入れておくのである。
「あ、ありがとうございます……えっと──」
「そう言えばお互いに初対面だったな。紹介しておこう」
何やら自己紹介の流れになったであるな。
ふむ、夏芽嬢は
そう言えば弟妹がいると言っていた記憶があるであるな。
「こちらこそ、よろしくお願いするのである。吾輩は古柳冬至。
「え? 吾は……あ、はい。よろしくお願いするッス」
ちょっと驚いているようであったな。
おそらく吾輩のキャラについてであろう。
「なんで白衣なんッスか?」
夏芽嬢よ、よくぞ聞いてくれたである。
「何か大変な事が起きた時に『こんな事もあろうかと』と言いながら秘密のアイテムを取り出す場合、白衣だと映えるであろう? 中に色々仕込んでいるのである」
発明家にとってアレは一度は言ってみたいセリフであるよな。
実は吾輩、実際に言ったことがあるのである。
仲間内での密かな自慢であるが、その時は白衣では無かったのが悔やまれる。
そうこうしている内に
道場関係の用事らしいであるな。
そして入れ替わるように藍姫氏がやって来た。
丁度良かったである。
「藍姫氏、こんにちわである」
「うむ、こんにちは。古柳が来ているとは珍しいな」
「ちょっと所用なのである。そうそう、丁度良いので紹介しておくのである」。
とりあえず先に
指者に覚醒していれば
とりあえず
「こっちが吾輩のフレンド、陰宮竜樹である。祭りでパワーアップするギャグ補正持ちなのである」
その紹介文句に言いたい事が有りそうな
「こちらが吾輩の同志、藍姫椿氏である。学校は違うが吾輩より一つ上の学年であるし面倒見も良いのでもしここへ入門する気なら色々聞いてみると良いのである」
その紹介を受けて藍姫氏も挨拶を交わす。
しかし藍姫氏よ、吾輩色々と言うほどは言ってないのである。
その後、
今の内に藍姫氏への要件を済ませておくであるかな。
「古柳、少々良いか?」
そう思っていると先に藍姫氏から声をかけられた。
「彼が連絡にあった指者に覚醒したかもしれん人物か?」
藍姫氏が周囲に認識干渉を展開しながら聞いてくる。
周りに聞かれると言い訳が面倒な話であるからな。
「そうなのであるが、まだはっきりとは分かっていないのである」
あれ以降、今のところ指者に覚醒したようなそぶりは無いであるからな。
「あとで知広に確認してもらうであるが、藍姫氏にも気に掛けておいて欲しいのである」
「わかった。任せておけ」
それを確認したかっただけのようで、そう言うと藍姫氏は夏芽嬢と
二人の運動に参加しながら様子を探るつもりなのであろうか。
吾輩はどうするであるかな。
うーむ、せっかくなので吾輩も鍛錬しておくであるか。
ちなみに
「
舞波家道場からの帰り道に吾輩はそう尋ねる。
直ぐに体力切れを起こした
案の定肯定的な答えが帰って来たので、もう一つ聞いてみる事にするのである。
むしろこちらが本命である。
「ふむ。では、吾輩の雄姿は見てくれていたであるか?」
もし認識干渉が有効であれば、当たり障りのない答えが返ってくると思うのであるが。
「冬至って思った以上に運動できるんだな。見直したわ」
これは、普通に効いているようであるな。
明らかに普通ではないトレーニングをしていたであるし。
「……そうであろうな。体力はあって困ることはないから鍛えているのである」
さて、そろそろ
マイフレンド竜樹が一人暮らしを始めたと言う情報は既に入手済み。
カレー以外の料理が作れないと言うのもである。
なので誘導は比較的楽だと思うのであるが。
失敗したら知広に来てもらう事になるので気合を入れねばな。
ところで、道場を出たあたりから
『ざしきわらし』に到着して知広と合流。
ついでに料理の注文も済ませたのであるが──
さっきから入口付近をうろうろしているのである。
偶然を装う為にタイミングを計っているのであろうか。
「あ、海月さん。こんにちわなのです」
ようやく入ってきたであるか。
一緒にどうであるかと手招きすると、素直にこちらに来たのである。
「
実際には
相変わらずよく食べるであるな。
まぁ、
「……冬至……竜樹は……どうだった?」
「一時間でへっばってたのである」
「……そっちじゃ無い」
ちょっとした冗談なのである。
指者だったかどうかであるな。
「はて? では『今の所問題はない』の方であるか?」
「……違う」
違うであるか?
「……なっちゃんの方……あ……冬至……知らなかったっけ」
「何なのであるか……」
もしや質問の意味から違ったであるか?
なっちゃん……あの場にいて『な』のつく……な……な……夏芽嬢?
「和風ハンバーグ定食と配管工戦隊セットお待たせいたしました」
その時、丁度知広が料理を持ってきたのである。
相変わらず速いであるな。
流石、料理を速く美味しく作る
丁度良いので知広に
「あ、知広。例の件、今からでも良いであるか?」
「はい、大丈夫なのです」
了承の意を返して知広が
「『
その瞬間、世界の色が変わる。
窓から見える空が灰色に変わり、太陽はまるで日食のように黒く染まる。
周囲の物体は
その中で吾輩たちだけが色を纏い、音源となる。
うーむ、相変わらずな世界であるな。
知広の持つ
相違空間に現実の複製を作り出す
同時に特定の相手を結界内に取り込む事機能も持っており、戦闘などの際に物的被害を気にしなくて良くなるなどのメリットが得られるのである。
漫画やアニメーションの現実バトル物で良く出てくるアレであるな。
しかしそう都合の良い物ではない。
なぜなら
限定的ではあるがある意味
知広もこれを使用中は完全に戦力外になるほどには。
吾輩であればこれを使用しつつ並の
下手をすれば発動したはいいものの敵を誰も取り込めずに
強力な
なので便利ではあるが実際にはあまり使われていないのが現状なのである。
そして結界内に取り込む相手の条件は大まかに言って指者と
この指者には覚醒が浅い者も含まれる。
つまり、
わざわざ確認するだけでここまで大がかりな
さて、肝心の
「居ないであるな」
「……居ない」
「と言う事は、違ったようなのです」
そこにマイフレンド竜樹の姿は無い。
やれやれ、これで一安心であるな。
単にそれっぽく見えただけであったか。
では、ホッとしたところで食事に戻るのである。
知広、『違偕結界』の解除を頼むである。
「あ、でも、禍爲鬼を一匹取り込んだのです」
「なぬぅっ!?」
なお、その
周囲の被害を一切無視できるなら、
食事も終わり、
こっそりしなくても一緒に帰ればよいと思うのは吾輩だけであろうか。
現場に到着し、発見した
するとあっさりと
手ごたえが無さすぎる相手であったが、産まれてそう経っていない
ある程度
となると、どこかに
戦闘終了の報告をすると、今度は別の場所で
ふたたび急行して退治すれば、今度は更に別の場所で発見される。
それを何度か繰り返していると、随分と遠くまで来てしまっていた事に気付く。
まさか。
吾輩の脳裏に一つの不安が浮かぶと同時に、更なる
しかも、既に
場所は────了解である。
吾輩はすぐさま
そして二十秒ほど飛行すると、相手の周囲に高い建物がなかった事もあって望遠レンズに
到着まであと数秒。
生きているであるか!?
なぁ!? 何故か
しかも吹っ飛ばされたぁ!!
不味いである!
あの高さでは
お、知広が駆けていくのが見えるである。
あの速度なら何とか間に合う。
先に連絡が来て向かっていたのであろう。
知広、グッジョブである。
となれば、
む、
しかしもう遅いのである!
「ブレイブ・バースト・ナッコォォォ!!」
吾輩の拳が
体を捻って避けようとした
しかしこの感触は核を外してしまたようであるな。
そのまま吹き飛んだ半身が修復される前に追撃を加えようとして──
「っ!!」
それを瞬時に攻撃と認識。
幸いにして大した攻撃では無く、防御障壁によって霧散したのである。
今のはエネルギー弾の
攻撃が放たれた方向を見ると、蝙蝠の翼手のような翼を持つ人型の何かがいた。
距離にして約一Km弱。
奇襲に失敗したと思ったのか、それは攻撃が防がれたのを見ると悠然と何処かへ飛んでいこうとする。
すぐさま追いかけたい気持ちはあるであるが、今ここを離れたらマイフレンド達があの
そう思って意識を戻したのであるが、あの
慎重に気配を探ってみるが、見つからぬのである。
これは逃げた可能性が高いであるな。
残念である。
先ほどの奇襲が無ければ確実に──
ちょっと待つである。
先ほどの攻撃、奇襲にしてはお粗末ではなかったか?
もし、あれが奇襲では無く単に注意を向けさせる為だけの物であったとしたらどうであるか?
それを防がせることで
つまり、あの攻撃は
同族である
その内、通常の
そして
ならば可能性として最も高いのは通常ではない
「ああっ……ああぁっ……あああああっ!!! 見つけた!! 見つけたぞ!!! 始祖の
ま、待て!!
残った理性を総動員して『
現れかけた狂気を押さえつけ、人格を二重に再構築。
何とか
今ここから離れるのは不味いのである。
しかし、
『
まぁ、あんな事になれば分からないでも無いであるが……
……うむ、自分で言っていれば世話は無いであるな。
さて、人格も安定したようであるし、知広の所に戻るのである。
もちろん、先の鵺のような
そう考えて、吾輩は残心をしたまま知広たちの所に戻るのであった。
あの夜から二日が経過した。
吾輩は現在、葬者としての務めを果たし『ざしきわらし地下基地』に帰還途中である。
知広と
おかげで動ける葬者が吾輩を含めても二人しかいないであるが……まぁ、仕方ないであるか。
結局あの後、鵺型の
横槍を入れてきた人型の何か──そもそも
あの時は安易な推測から始祖の
吾輩としたことが、その程度で取り乱すとはまだまだ未熟であるな。
その後、
問題は
落下の衝撃は知広が受け止める事で事無きを得たであるが、吹っ飛ばされた衝撃で内臓をやられていたようなのである。
自分を回復するのと他人を回復させるのでは後者の方が圧倒的に難易度が高い。
すぐさま
もちろん念のためすぐさま元指者の医者を呼んで見てもらったのである。
とりあえず外傷は完治させたであるが、意識は二日がたった今でも戻らぬ。
そろそろ強制的に寝かしつけるであるかな。
傍に居たいのであれば
それはそれとして指者の件に関しては完全に裏をかかれた形になったである。
何にと問われれば運命にと答えるであるかな。
夕食時には間違いなく
昼間のあれはあくまで認識の齟齬が生み出したイレギュラーであったのだ。
しかし、吾輩たちと別れてから
しかも状況が状況であったし、もう五体満足な内に確保できただけで良しとせねばならぬであるか。
始まりから大変であるが、指者になってしまったからには更に大変であるぞ。
なに、ちゃんと指者を辞める方法もある故、安心するのである。
その為には、吾輩たちも惜しみなくサポートするのである。
故に──故に早く目を覚ますのであるぞ、
それからすぐ、知広から
手直し分が終了しましたので予告通りここで一旦更新を停止させていただきます。
基本的にはメインの別作品を優先するつもりですが、折を見てこちらも更新できたらと思っていますので、その時はまた読んでいただければ幸いです。
新年三が日、お付き合いありがとうございました。