竜樹と禍の葬者 ~祭礼盛華の世界日記~   作:黒い翠鳥

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第T1話 古柳冬至の記憶の断片1

それは、吾輩が禍爲鬼の気配を追い、近隣を飛びまわっていた時の事である。

 

不意に吾輩の元へと届いた一通のメール。

それだけならば何の事は無いが、問題はそのメールの内容。

 

『何してんだ? もうすぐ二時間目始まるぞ(笑)』

 

差出人はmy friend(マイフレンド)竜樹。

おかしいのである。

高校には吾輩たちの葬者としての活動に疑問を抱かせないような仕掛──理装器(テキストツール)による認識干渉──がされている。

 

吾輩が居ないことを指摘できるのは指者のみ。

まさか、my friend(マイフレンド)竜樹も指者になってしまったであるか!?

とりあえず、同じ教室にいるであろうmy friend(マイフレンド)雫に連絡を取ってみるのである。

 

メールを送ってみると、すぐさま返信があった。

どうやらmy friend(マイフレンド)雫の方でも何かあったようで、一度認識干渉が効果を発揮せず、my friend(マイフレンド)雫と直接会ったら効果が発揮されたそうなのである。

 

この現象には二通りの心当たりがある。

 

一つ目は指者としての覚醒が浅い場合。

本人の気の持ちよう次第で影響力が変化するのである。

この場合はmy friend(マイフレンド)雫の姿が見えない事で疑り深くなって認識干渉を跳ね除け、姿を見て安心したことで影響を受けるようになったといったところであろう。

 

二つ目は効果は発揮されているが意識されていない場合。

簡単に言えばスマホを手に持ちながらスマホを探しているような状況である。

こちらは効果自体は発揮されているので、それを指摘すればそれで終わる。

 

できれば後者であって欲しいのである。

 

さしあたってメールでmy friend(マイフレンド)雫に監視を頼み、禍津鬼(まがつき)の討伐へと向かう。

my friend(マイフレンド)雫から逃げ切った禍津鬼(まがつき)も気になるであるし、とっとと済ませるのである。

 

 

 

その後、昼休み前までに二体の禍津鬼(まがつき)を討伐する事に成功。

どちらも大した相手では無かったであるが、最近禍津鬼(まがつき)の出現数が増えているであるな。

少々調べてみる必要があるかもしれないのである。

 

 

 

 

 

 

学校に戻ってくると、丁度昼休みが始まったばかりであった。

さっそく栄養補給の為に購買でパンを購入。

今日はカツサンドとホットドックにするのである。

飲み物は牛乳な気分。

 

それを持って教室に行くと、いつものようにマイフレンド達が机をくっつけて食事をしようとしていた。

丁度いいので吾輩もお邪魔するのである。

 

「お、my friend(マイフレンド)達よ。吾輩も混ぜてもらっても良いであるか?」

 

「……あ……冬至」

 

「俺は別にかまわねーぜ。そう言えば冬至と一緒に昼飯食うのって久しぶりだよな」

 

まぁ、確かにそうであるな。

ここ最近食事中も葬者の──と言うか『()()()使()()』としての仕事をしてたであるし。

先日ようやく終わったのであるが、ちょっと溜めすぎてしまっていたである。

されどそれをそのまま言うわけにもいかぬので、それっぽい理由をでっち上げる。

吾輩のキャラ的にこれで納得してもらえるであろう。

 

「ここ暫く食事の時間も惜しんで発明を続けていたであるからな。ようやく一段落付いたので皆と食事が出来るようになったのである。それに……ちょっと確かめたい事もあるであるし」

 

さて、my friend(マイフレンド)竜樹はどちらなのやら。

会話の中で分かれば良いのであるが。

知広なら直接確認する方法もあるであるが、吾輩もmy friend(マイフレンド)雫もあの理装器(テキストツール)との相性が悪いのが悔やまれる。

どうにかしてmy friend(マイフレンド)竜樹に「ざしきわらし」まで来てもらうか、駄目なら知広に来てもらうのである。

 

「それじゃ、いただきますっと」

 

「「「いただきます」」」

 

とりあえずは腹ごしらえが先であるかな。

お、マイフレンド竜樹はマイフレンド雫の愛妻弁当であるか。

羨ましいであるな。

吾輩も今度知広に頼んでみるであるか。

 

 

 

「あれだけ体力あるならもうちょっと走れそうな気もするんだが」

 

「……お祭りの時は……竜樹凄い……運動神経も……テンションも」

 

食事中の話題はmy friend(マイフレンド)竜樹の体力の話になっているのである。

確かに祭りの時は凄いであるな。

まぁ、my friend(マイフレンド)竜樹自身気付いていないであろうが、それは固有原理(パーソナルテキスト)なのである。

状況から見て効果は「お祭りの間は超人的な能力を発揮する」あたりであろうか。

 

希少度で言えば10を最大として6といったところであるかな。

同様の固有原理(パーソナルテキスト)の持ち主を二人ほど知っているであるし。

名前は確か…………ふむ、度忘れしたのである。

 

「火事場の馬鹿力みたいなもんなのかな。雰囲気とテンションでリミッター外れるとか」

 

ふむ、別に問題は無いであろうし、核心を突いてみるのである。

 

「おそらくギャグ補正なのである」

 

あ、即座に否定されたである。

本当であるのに。

 

そう言えば、マイフレンド竜樹の素の筋力はどのくらいなのであろうか。

ふとそんな事を思ったので吾輩の白衣を着せてみることにする。

色々仕込んでいるので普通の人には結構重いのである。

 

「前から思ってたんだが何でお前はいつも白衣を着ているんだ?」

 

愚問であるぞ、マイフレンド竜樹。

それは当然、吾輩が《《そういうキャラ》だからに決まっているのである。

そう言えばmy friend(マイフレンド)竜樹には言ったことが無かったであるな。

丁度良いのでカミングアウトしておくであるか。

別に隠してもないであるし。

 

せっかくなのでたっぷり焦らしてからドヤ顔でそれを告げてみるのである。

それを聞いたmy friend(マイフレンド)竜樹は……何か呆れているであるな。

大方『その白衣はキャラ作りかよ』などと考えているのであろう。

実際作っているであるし。

 

吾輩の固有原理(パーソナルテキスト)の一つ、『想造人格(貴方に憧れて)』。

特定の人物像を完全に成りきる固有原理(パーソナルテキスト)

要するに意図的に二重人格を作る固有原理(パーソナルテキスト)であるな。

 

希少度は2と言った所。

表裏の激しい人は大抵持っているであるし。

あ、特撮とロボ好きは元からなのである。

 

それはともかく、マイフレンド竜樹は吾輩の白衣は重すぎると言って着てくれなかったのである。

まぁ、普通はまともには着れないであるよな。

 

そうこうしている内に話はどうやらmy friend(マイフレンド)竜樹がmy friend(マイフレンド)咲人の道場に行くと言う流れになっているのである。

どうせなので吾輩も乗便する。

元々my friend(マイフレンド)竜樹には張り付いている予定であったしな。

もしmy friend(マイフレンド)竜樹が指者として覚醒していた場合、一人でいるのは危険なので護衛の為である。

 

my friend(マイフレンド)竜樹よ、意外そうであるな。

と思ってたら直球で聞かれたので、体を動かすのは好きだと答えておいたのである。

本当であるぞ。

とりあえず納得はしてもらえたようである。

 

 

 

 

 

 

my friend(マイフレンド)竜樹の案内で舞波家の道場にやって来たのである。

 

何やら賑やかであるな。

my friend(マイフレンド)咲人によると、どうやら藍姫氏と夏芽と言う人が手合せをしているらしいのである。

 

そう言えば藍姫氏も源成流古武術を習っていたのであったな。

せっかくなのでmy friend(マイフレンド)竜樹にも紹介しておくであるか。

 

「まぁ、上がってくれよ」

 

そう言ったmy friend(マイフレンド)咲人に連れられて、道場の中に入る。

お邪魔するのである。

道場の中には大きな人だかりが出来ていて、その中心に居るのは二人の女性。

 

ほぅ、これは中々であるな。

流れるような攻防の応酬に目が奪われる。

my friend(マイフレンド)咲人が言うだけの事はあるであるな。

片方が藍姫氏であるから、もう片方が──

 

「凄いであるな。藍姫氏が相当な手練れである事は知っていたのであるが、夏芽嬢……であったか? も引けをとっていないのである」

 

「あの二人は戦績が割と近いからな。お互いライバルみたいなもんで、いい刺激になってんだ」

 

なるほど、確かに総合的には同じ位であるな。

地力(じりき)で言えば夏芽嬢の方が上であろう。

才能も有るのであろうし、努力も積んでいると見える。

だが、一つ決定的に足りないものがあるであるな。

それ故に藍姫氏に対して遅れを取り、結果同程度の総合力となっているのであろう。

これが古武術ではなくスポーツ等ならまた違ったであろうが。

 

お、藍姫氏が仕掛けた──いや、仕掛けさせたであるな。

 

「一撃! それまで!」

 

予想通りこうなったであるか。

どうやら夏芽嬢の方は()()()()()()()であるな。

戦いを見ていれば大体分かるのである。

まぁ、この国では実戦経験など葬者でもなければそうそう有るものではないであるが。

 

「夏芽のヤツ、半歩踏み込み過ぎたな。おそらく正拳は囮で逸らされるまでは想定通りだったんだろうが、その直前に藍姫さんが────」

 

「藍姫氏にうまく誘い込まれたであるな。あの位置関係では二の矢が継げないのである。あえて分かりやすい隙を作ることで────」

 

「そうだな。警戒させることで動きを────」

 

my friend(マイフレンド)咲人も藍姫氏の誘導には気付いていたようであるな。

夏芽嬢が踏み込んだ時に一瞬怪訝そうな反応をしていたである。

常人には分からない程度の反応であったであるが。

 

なに? 代科女史は三拍子そろって人気があると?

あぁ、確かにそうであるな。

天花氏が絡まなければ。

 

一般的に見てスタイルも良いであるし、気立ても良い。

頭も回るのであるが何故か天花氏の事となると要領が悪い。

忠義心が空回りしているのであるよな。

いくら神守(かみもり)の家系だとはいっても少々……

デメリット系の固有原理(パーソナルテキスト)でも持っているのでは無いであろうか。

 

おや、夏芽嬢がこちらへ来たであるな。

my friend(マイフレンド)竜樹を兄ぃと呼んでいるが、my friend(マイフレンド)竜樹は一人っ子の筈である。

おそらく近所のお兄さん的なニュアンスなのであろう。

 

そして先の試合について駄目出しするmy friend(マイフレンド)咲人。

それによって夏芽女史は肩を落としているようであるが、そう落ち込むなである。

別にmy friend(マイフレンド)咲人も卑下している訳ではないであるし。

更に成長して欲しいと言う親心──いや、兄弟子心であるか。

 

「この年で藍姫氏相手にあそこまで健闘しているのであるし、吾輩としては凄いと思うのであるがな」

 

なので吾輩もちょっとフォロー入れておくのである。

 

「あ、ありがとうございます……えっと──」

 

「そう言えばお互いに初対面だったな。紹介しておこう」

 

何やら自己紹介の流れになったであるな。

ふむ、夏芽嬢はmy friend(マイフレンド)咲人の妹であったか。

そう言えば弟妹がいると言っていた記憶があるであるな。

 

my friend(マイフレンド)咲人に紹介された夏芽氏がお辞儀して来たので吾輩も簡単に自己紹介するのである。

 

「こちらこそ、よろしくお願いするのである。吾輩は古柳冬至。my friend(マイフレンド)咲人の友人なのである」

 

「え? 吾は……あ、はい。よろしくお願いするッス」

 

ちょっと驚いているようであったな。

おそらく吾輩のキャラについてであろう。

 

「なんで白衣なんッスか?」

 

夏芽嬢よ、よくぞ聞いてくれたである。

 

「何か大変な事が起きた時に『こんな事もあろうかと』と言いながら秘密のアイテムを取り出す場合、白衣だと映えるであろう? 中に色々仕込んでいるのである」

 

発明家にとってアレは一度は言ってみたいセリフであるよな。

実は吾輩、実際に言ったことがあるのである。

仲間内での密かな自慢であるが、その時は白衣では無かったのが悔やまれる。

 

そうこうしている内にmy friend(マイフレンド)咲人が何処かへ行ってしまったである。

道場関係の用事らしいであるな。

 

そして入れ替わるように藍姫氏がやって来た。

丁度良かったである。

 

「藍姫氏、こんにちわである」

 

「うむ、こんにちは。古柳が来ているとは珍しいな」

 

「ちょっと所用なのである。そうそう、丁度良いので紹介しておくのである」。

 

とりあえず先にmy friend(マイフレンド)竜樹に紹介しておくのである。

指者に覚醒していればmy friend(マイフレンド)竜樹も世話になるであろうし。

とりあえずmy friend(マイフレンド)竜樹を手招きで呼んだ後、藍姫氏に紹介する。

 

「こっちが吾輩のフレンド、陰宮竜樹である。祭りでパワーアップするギャグ補正持ちなのである」

 

その紹介文句に言いたい事が有りそうなmy friend(マイフレンド)であるが、吾輩嘘は言っていないのである。

 

「こちらが吾輩の同志、藍姫椿氏である。学校は違うが吾輩より一つ上の学年であるし面倒見も良いのでもしここへ入門する気なら色々聞いてみると良いのである」

 

その紹介を受けて藍姫氏も挨拶を交わす。

しかし藍姫氏よ、吾輩色々と言うほどは言ってないのである。

 

 

 

その後、my friend(マイフレンド)竜樹が夏芽氏と運動することになったようである。

今の内に藍姫氏への要件を済ませておくであるかな。

 

「古柳、少々良いか?」

 

そう思っていると先に藍姫氏から声をかけられた。

 

「彼が連絡にあった指者に覚醒したかもしれん人物か?」

 

藍姫氏が周囲に認識干渉を展開しながら聞いてくる。

周りに聞かれると言い訳が面倒な話であるからな。

 

「そうなのであるが、まだはっきりとは分かっていないのである」

 

あれ以降、今のところ指者に覚醒したようなそぶりは無いであるからな。

 

「あとで知広に確認してもらうであるが、藍姫氏にも気に掛けておいて欲しいのである」

 

「わかった。任せておけ」

 

それを確認したかっただけのようで、そう言うと藍姫氏は夏芽嬢とmy friend(マイフレンド)竜樹の所に戻ってゆく。

二人の運動に参加しながら様子を探るつもりなのであろうか。

 

吾輩はどうするであるかな。

うーむ、せっかくなので吾輩も鍛錬しておくであるか。

理装器(テキストツール)を使って超人的なトレーニングをしていれば、もしかしたらmy friend(マイフレンド)竜樹がツッコミを入れてくれるかもしれないのである。

 

ちなみにmy friend(マイフレンド)竜樹は一時間でダウンしたようであった。

 

 

 

 

 

my friend(マイフレンド)竜樹。今日はどうであったか?」

 

舞波家道場からの帰り道に吾輩はそう尋ねる。

直ぐに体力切れを起こしたmy friend(マイフレンド)竜樹であるが、その後の表情は満更でもなさそうだった。

案の定肯定的な答えが帰って来たので、もう一つ聞いてみる事にするのである。

むしろこちらが本命である。

 

「ふむ。では、吾輩の雄姿は見てくれていたであるか?」

 

もし認識干渉が有効であれば、当たり障りのない答えが返ってくると思うのであるが。

 

「冬至って思った以上に運動できるんだな。見直したわ」

 

これは、普通に効いているようであるな。

明らかに普通ではないトレーニングをしていたであるし。

 

「……そうであろうな。体力はあって困ることはないから鍛えているのである」

 

さて、そろそろmy friend(マイフレンド)竜樹を「ざしきわらし」に誘うであるか。

 

マイフレンド竜樹が一人暮らしを始めたと言う情報は既に入手済み。

カレー以外の料理が作れないと言うのもである。

なので誘導は比較的楽だと思うのであるが。

失敗したら知広に来てもらう事になるので気合を入れねばな。

 

 

 

ところで、道場を出たあたりからmy friend(マイフレンド)雫がこっそり付いてきているであるが……

my friend(マイフレンド)竜樹が気になるのであればさっさと合流すれば良いと思うのであるがなぁ。

 

 

 

 

 

 

『ざしきわらし』に到着して知広と合流。

ついでに料理の注文も済ませたのであるが──

 

my friend(マイフレンド)雫が入ってこないであるな。

さっきから入口付近をうろうろしているのである。

偶然を装う為にタイミングを計っているのであろうか。

my friend(マイフレンド)竜樹は気づいていないであるし。

 

「あ、海月さん。こんにちわなのです」

 

ようやく入ってきたであるか。

一緒にどうであるかと手招きすると、素直にこちらに来たのである。

 

my friend(マイフレンド)雫も夕食であるか?」

 

実際にはmy friend(マイフレンド)竜樹の様子を見に来たのであろうが、相手の前で言うわけにはいかぬと思うので当たり障りの無い事を聞いておくのである。

my friend(マイフレンド)雫は軽く頷くと流れるようにmy friend(マイフレンド)竜樹の横に座り、料理を注文し始める。

相変わらずよく食べるであるな。

まぁ、()()()では仕方ないであるか。

 

「……冬至……竜樹は……どうだった?」

 

my friend(マイフレンド)竜樹は──

 

「一時間でへっばってたのである」

 

「……そっちじゃ無い」

 

ちょっとした冗談なのである。

指者だったかどうかであるな。

my friend(マイフレンド)が聞いても問題ないように認識干渉を発動する。

 

「はて? では『今の所問題はない』の方であるか?」

 

「……違う」

 

違うであるか?

 

「……なっちゃんの方……あ……冬至……知らなかったっけ」

 

「何なのであるか……」

 

もしや質問の意味から違ったであるか?

なっちゃん……あの場にいて『な』のつく……な……な……夏芽嬢?

 

「和風ハンバーグ定食と配管工戦隊セットお待たせいたしました」

 

その時、丁度知広が料理を持ってきたのである。

相変わらず速いであるな。

流石、料理を速く美味しく作る固有原理(パーソナルテキスト)調理道楽(食い気より割烹)』を持つ雄蔵氏である。

 

丁度良いので知広にmy friend(マイフレンド)竜樹の最終確認をお願いするのである。

 

「あ、知広。例の件、今からでも良いであるか?」

 

「はい、大丈夫なのです」

 

了承の意を返して知広が理装器(テキストツール)を発動する。

 

「『違偕結界(いかいけっかい)』」

 

その瞬間、世界の色が変わる。

窓から見える空が灰色に変わり、太陽はまるで日食のように黒く染まる。

周囲の物体は(ことごと)くモノクロと化し、静寂が音に取って代わる。

その中で吾輩たちだけが色を纏い、音源となる。

うーむ、相変わらずな世界であるな。

 

知広の持つ理装器(テキストツール)の一つ、『違偕結界(いかいけっかい)』。

相違空間に現実の複製を作り出す理装器(テキストツール)である。

同時に特定の相手を結界内に取り込む事機能も持っており、戦闘などの際に物的被害を気にしなくて良くなるなどのメリットが得られるのである。

漫画やアニメーションの現実バトル物で良く出てくるアレであるな。

 

しかしそう都合の良い物ではない。

 

なぜなら理装器(テキストツール)は所有者の命焔(フォール)を消費して効果を発揮するのであるが、違偕結界(いかいけっかい)はその消費量が莫大であり、かつ原理(テキスト)が複雑すぎて相性が良い人物が限られるのである。

限定的ではあるがある意味()()()()()()()のであるからそれも当然であるな。

知広もこれを使用中は完全に戦力外になるほどには。

 

吾輩であればこれを使用しつつ並の禍津鬼(まがつき)と戦える程度には命焔(フォール)があるであるが、相性が良くないのでまともに発動するかどうかすらわからないであるからな。

下手をすれば発動したはいいものの敵を誰も取り込めずに命焔(フォール)を無駄に消費しただけになりかねない。

強力な理装器(テキストツール)ほど適性がある人が少なくなっていくのである。

なので便利ではあるが実際にはあまり使われていないのが現状なのである。

 

そして結界内に取り込む相手の条件は大まかに言って指者と禍津鬼(まがつき)、そして()()である。

この指者には覚醒が浅い者も含まれる。

つまり、my friend(マイフレンド)竜樹が『違偕結界』に取り込まれるようなら指者として覚醒しつつあり、弾かれるようならそれっぽく見えただけと言う事である。

 

わざわざ確認するだけでここまで大がかりな理装器(テキストツール)を使うのはやり過ぎに感じるかもしれないが、覚醒の浅い指者を確実に判別できる方法はそう多く無いのである。

さて、肝心のmy friend(マイフレンド)竜樹は────

 

「居ないであるな」

 

「……居ない」

 

「と言う事は、違ったようなのです」

 

そこにマイフレンド竜樹の姿は無い。

やれやれ、これで一安心であるな。

単にそれっぽく見えただけであったか。

 

では、ホッとしたところで食事に戻るのである。

知広、『違偕結界』の解除を頼むである。

 

「あ、でも、禍爲鬼を一匹取り込んだのです」

 

「なぬぅっ!?」

 

なお、その禍津鬼(まがつき)my friend(マイフレンド)雫の滄海千器(そうかいせんき)最大出力で秒殺されたのである。

周囲の被害を一切無視できるなら、my friend(マイフレンド)雫の飽和火力は凄まじいのである。

 

 

 

 

 

 

食事も終わり、my friend(マイフレンド)達と別れた吾輩は禍津鬼(まがつき)出現の報を受けて現場に急行した。

 

my friend(マイフレンド)竜樹は適当にぶらついてから帰宅するらしく、my friend(マイフレンド)雫はその後をこっそりついて行った。

こっそりしなくても一緒に帰ればよいと思うのは吾輩だけであろうか。

 

現場に到着し、発見した禍津鬼(まがつき)に奇襲を仕掛ける。

するとあっさりと禍津鬼(まがつき)は格を砕かれ消滅した。

手ごたえが無さすぎる相手であったが、産まれてそう経っていない禍津鬼(まがつき)なのであろうか。

 

ある程度命焔(フォール)を蓄えた禍津鬼(まがつき)は、その格を細胞分裂のように増やして新たな禍津鬼(まがつき)を生み出すのである。

となると、どこかに命焔(フォール)を蓄えた親禍津鬼(まがつき)がいる可能性が高い訳であるが。

 

戦闘終了の報告をすると、今度は別の場所で禍津鬼(まがつき)が発見されたとの報が入る。

ふたたび急行して退治すれば、今度は更に別の場所で発見される。

それを何度か繰り返していると、随分と遠くまで来てしまっていた事に気付く。

 

まさか。

 

吾輩の脳裏に一つの不安が浮かぶと同時に、更なる禍津鬼(まがつき)出現の報があった。

しかも、既にmy friend(マイフレンド)雫が応戦中であり、救援要請が入っているという。

場所は────了解である。

 

吾輩はすぐさま()()()()()()()()()()()と、空中へと躍り出る。

そして二十秒ほど飛行すると、相手の周囲に高い建物がなかった事もあって望遠レンズに禍津鬼(まがつき)の姿を確認した。

 

到着まであと数秒。

 

my friend(マイフレンド)雫は、何があったのか地に伏せている。

生きているであるか!?

なぁ!? 何故かmy friend(マイフレンド)竜樹が特攻しているのである!!

しかも吹っ飛ばされたぁ!!

不味いである!

あの高さではmy friend(マイフレンド)竜樹は助からぬ。

 

お、知広が駆けていくのが見えるである。

あの速度なら何とか間に合う。

先に連絡が来て向かっていたのであろう。

知広、グッジョブである。

 

となれば、my friend(マイフレンド)達は知広に任せて吾輩は禍津鬼(まがつき)を狙うである。

む、禍津鬼(まがつき)の奴、気付いたであるな。

しかしもう遅いのである!

 

「ブレイブ・バースト・ナッコォォォ!!」

 

吾輩の拳が禍津鬼(まがつき)を貫き、爆発する。

体を捻って避けようとした禍津鬼(まがつき)であるが、右半身をごっそり砕かれ残りの体も衝撃で吹き飛んでいく。

しかしこの感触は核を外してしまたようであるな。

そのまま吹き飛んだ半身が修復される前に追撃を加えようとして──

 

「っ!!」

 

禍津鬼(まがつき)が吹き飛んだ方向とは()()()()()()何かが飛来した。

それを瞬時に攻撃と認識。

理装器(テキストツール)による防御障壁を展開する。

幸いにして大した攻撃では無く、防御障壁によって霧散したのである。

 

今のはエネルギー弾の(たぐい)であったな。

攻撃が放たれた方向を見ると、蝙蝠の翼手のような翼を持つ人型の何かがいた。

距離にして約一Km弱。

奇襲に失敗したと思ったのか、それは攻撃が防がれたのを見ると悠然と何処かへ飛んでいこうとする。

 

すぐさま追いかけたい気持ちはあるであるが、今ここを離れたらマイフレンド達があの禍津鬼(まがつき)に狙われかねん。

そう思って意識を戻したのであるが、あの禍津鬼(まがつき)の姿が無い。

 

慎重に気配を探ってみるが、見つからぬのである。

これは逃げた可能性が高いであるな。

残念である。

先ほどの奇襲が無ければ確実に──

 

 

 

ちょっと待つである。

先ほどの攻撃、奇襲にしてはお粗末ではなかったか?

もし、あれが奇襲では無く単に注意を向けさせる為だけの物であったとしたらどうであるか?

 

それを防がせることで禍津鬼(まがつき)から注意を逸らし、追撃を止める。

つまり、あの攻撃は()()()()()()()()()()()()()()()と言う事。

禍津鬼(まがつき)を助けて得をするような奴など、数えるほどしかいない。

 

同族である禍津鬼(まがつき)と、禍津鬼(まがつき)を生み出した者。

その内、通常の禍津鬼(まがつき)は連携を取る事はあっても仲間を助けたりはしない。

そして禍津鬼(まがつき)を生み出した者は既にこの世にいないと聞く。

ならば可能性として最も高いのは通常ではない禍津鬼(まがつき)──()()()()()()()()()、三十一体の『始祖の禍津鬼(まがつき)』。

 

「ああっ……ああぁっ……あああああっ!!! 見つけた!! 見つけたぞ!!! 始祖の禍津鬼(まがつき)ぃ!!!」

 

()はすぐさまソレを追う為に飛び────

 

 

 

ま、待て!!

 

残った理性を総動員して『想造人格(貴方に憧れて)』を発動。

現れかけた狂気を押さえつけ、人格を二重に再構築。

何とか()()()()()()を取り戻した。

 

今ここから離れるのは不味いのである。

my friend(マイフレンド)達の様子も分かっていないであるのに。

しかし、三つ目の人格(吾輩キャラ)だけでなく《二つ目の人格》まで押しのけて出てくるとは。

想造人格(貴方に憧れて)』のおかげで客観的に見れているとはいえ、吾輩の狂気は相当であるな。

まぁ、あんな事になれば分からないでも無いであるが……

 

 

 

……うむ、自分で言っていれば世話は無いであるな。

 

 

 

さて、人格も安定したようであるし、知広の所に戻るのである。

my friend(マイフレンド)達を勝手にまかせっきりにして来たであるからな。

命焔(フォゥル)を感じるので死んではない筈であるが、my friend(マイフレンド)達の様態次第では手伝う必要がありそうであるしな。

my friend(マイフレンド)竜樹に何があったのかも聞いておきたいである。

 

もちろん、先の鵺のような禍津鬼(まがつき)が戻ってくる恐れもあるので警戒は怠れぬ。

そう考えて、吾輩は残心をしたまま知広たちの所に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

あの夜から二日が経過した。

 

吾輩は現在、葬者としての務めを果たし『ざしきわらし地下基地』に帰還途中である。

知広とmy friend(マイフレンド)雫は地下基地に残ってもらっているである。

my friend(マイフレンド)竜樹の容態が心配である故にな。

おかげで動ける葬者が吾輩を含めても二人しかいないであるが……まぁ、仕方ないであるか。

 

結局あの後、鵺型の禍津鬼(まがつき)が現れる事は無かったのである。

横槍を入れてきた人型の何か──そもそも禍津鬼(まがつき)だったのかも分からない──については全くの不明。

あの時は安易な推測から始祖の禍津鬼(まがつき)と判断してしまったであるが、それを裏付ける証拠は無いのである。

吾輩としたことが、その程度で取り乱すとはまだまだ未熟であるな。

 

my friend(マイフレンド)達の怪我については、my friend(マイフレンド)雫は回復阻害と麻痺毒のようなものを受けていたであるが、吾輩が戻って来たころには知広が解毒済みであった。

その後、my friend(マイフレンド)雫は自力で傷を回復している。

 

問題はmy friend(マイフレンド)竜樹の方。

落下の衝撃は知広が受け止める事で事無きを得たであるが、吹っ飛ばされた衝撃で内臓をやられていたようなのである。

自分を回復するのと他人を回復させるのでは後者の方が圧倒的に難易度が高い。

すぐさま理装器(テキストツール)にて応急処置を行い、ざしきわらし地下基地に運び込んだ。

もちろん念のためすぐさま元指者の医者を呼んで見てもらったのである。

 

とりあえず外傷は完治させたであるが、意識は二日がたった今でも戻らぬ。

my friend(マイフレンド)雫は「竜樹が起きるまで傍にいる」と言ってずっと寝ずに付き添っているであるし。

そろそろ強制的に寝かしつけるであるかな。

傍に居たいのであればmy friend(マイフレンド)竜樹と同じベッドにでも放り込んでおくであるか。

 

それはそれとして指者の件に関しては完全に裏をかかれた形になったである。

何にと問われれば運命にと答えるであるかな。

 

夕食時には間違いなくmy friend(マイフレンド)竜樹は指者ではなかったのである。

昼間のあれはあくまで認識の齟齬が生み出したイレギュラーであったのだ。

しかし、吾輩たちと別れてから禍津鬼(まがつき)と遭遇するまでの間にいきなり覚醒してしまったのである。

しかも状況が状況であったし、もう五体満足な内に確保できただけで良しとせねばならぬであるか。

 

 

 

始まりから大変であるが、指者になってしまったからには更に大変であるぞ。

なに、ちゃんと指者を辞める方法もある故、安心するのである。

その為には、吾輩たちも惜しみなくサポートするのである。

 

 

 

故に──故に早く目を覚ますのであるぞ、my friend(マイフレンド)竜樹。

 

 

 

それからすぐ、知広からmy friend(マイフレンド)竜樹が目を覚ましたと言う情報がもたらされるのであった。




手直し分が終了しましたので予告通りここで一旦更新を停止させていただきます。

基本的にはメインの別作品を優先するつもりですが、折を見てこちらも更新できたらと思っていますので、その時はまた読んでいただければ幸いです。
新年三が日、お付き合いありがとうございました。
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