撃ちだされるマシンガンの弾丸が『日向葵』の肩口をかすめて火花が散った。
「ちィ!? 雑魚も閉所で集まると厄介だな!」
砲台型MTに右のショットガンを撃ち込み沈黙させ、反転して左のショットガンを射撃。隣では『曼珠沙華』がガトリングガンを乱射してMTを沈黙させている。
MTのマシンガンは一発一発は大したことはないダメージだが、ここからいつまで戦闘が続くか分からない。
「いつまでも閉所での戦闘はマズい。 何とか広い場所にでるぞ!」
『了解……』
『曼珠沙華』が天井スレスレに跳び上がりホバー機能で高度を維持、警戒してくれている下を『日向葵』が移動する。
『前方、敵重四脚MT……!』
「邪魔だ!」
高所で敵を索敵してくれていた『618』の声に、俺は『日向葵』のアサルトブーストを起動させた。こちらに気付いた敵重四脚MTがガトリングガンを撃ってくるが、途中で壁を蹴り機体を制御して回避する。その時、『曼珠沙華』の放ったバズーカが突き刺さり敵重四脚MTがのけ反る。
「おまけだ!」
『日向葵』がキックを叩き込み、吹き飛んでスタッガー状態に陥る重四脚MT。そのまま換装を終えたパイルバンカーを叩き込み重四脚MTを沈黙させた。それにわき目もふらず、俺たちは先を急ぐ。
とはいえ全く地形情報がないため、何をどう進んでいるのかすら分からない。『ジャンカー=コヨーテス』の勢力圏から脱出することが当面の目的だが……どこまで行けば安全圏にでるのやら。
「長期戦になる可能性が高い。 APと弾薬は少しでも温存していこう」
『分かった……』
そうして進んでいくと、大きなゲートが見えてきた。
『おや、ご友人たち。 そちらは違いますよ?
私のところには来てくれないのですか?』
その時、再びあのねっとりとした声が響いた。どうやらこのグリッドから出て行くにはこの方向でいいらしい。オーネスト=ブルートゥはこういうところで嘘をつくようなタイプではない。そこは信じられる。
「こちらも手違いで来たせいで手土産の一つも持っていなくてね。
手土産も無しなんて不作法だろう。 だから今日のところは日を改めさせてもらうよ」
『なんと、私はそんなもの気にしないというのに!』
「俺たちの方が気にするんだよ。 というわけでお暇させてもらう」
『スロースロー。 せっかくなのですから、もっとゆっくりしていって下さい。
手土産など気にしません。 私からのおもてなしをどうぞ』
ゲートが開くと、待ち構えていたMTたちの砲口が俺たちを迎えていた。
「……おもてなしの押し付けは逆に失礼らしいぞ」
『おもてなしをしたいという、部下たちたってのお願いでして。
どうぞ受け取ってもらえると素敵です』
「……ああ、わかったよ。 お暇ついでに食い荒らさせてもらうよ!」
同時に、MTの銃口からおもてなしと呼ぶにはいささか過激な鉛玉が放たれた……。
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《リペアキット、残数1》
敵MTたちを倒し、APと残弾を確認する。APは8割とリペアキットが1つ。残弾についてはすべて残り30%ほどだ。
「……『618』、そっちはどうだ?」
『……リペアキット残数1。 左右バズーカおよびガトリングガン残弾約40%。連装グレネードキャノンは残弾8発』
『曼珠沙華』のグレネードキャノンの残弾が少ないのは、これは俺を援護して敵の多い場所に積極的に撃ち込んでくれたおかげだ。
『本当にお帰りになってしまうんですね。 残念です……』
俺と『618』は巨大なゲートの前にたどり着いた。どうやらここが『グリッド012』の出口らしい。
……おい、この扉何となく前世で見覚えがあるんだが!
『……どうしたの?』
「補給シェルパが無いか確認してた」
『そんなものあるわけない……』
「ですよねー……」
辺りを見渡す不審な俺の言葉を、『618』が一刀両断する。
俺はふぅ、と息をすると天を仰いで神に祈りたい気分になった。しかし、生憎とこの世界の宗教のことを全く知らないことに気付く。
(仕方ない……)
「『世に平穏のあらんことを』」
『『53』、それは何……?』
「嫌な予感がしてな……お祈りの言葉だ」
ACで宗教といえばアレだろうと平穏無事を願い祈りの言葉を頭の中で呟いていると、ゲートがゆっくりと開いていく。
そして……その先には予想通りの鋼鉄の塊が鎮座していた。
(……ああ、知ってたよクソッタレ!)
予想通りの展開に、そんなどうでもいいことを考えている俺。現実逃避とも言う。
『私からのお土産です。 どうぞお楽しみください』
オーネスト=ブルートゥのその言葉と同時に鉄塊……『スマートクリーナー』に火が灯る。そしてブースターとクローラーを全開にして、巨大チェーンソーとなった両手を振り上げながら迫って来た。
「『618』!」
『……!』
俺の声に分かっているとでも言うように自然と『曼珠沙華』は『日向葵』とは逆方向にクイックブースト、左右に散開してその叩きつけられる巨大な両手を回避する。
そして攻撃を避けられたスマートクリーナーは、俺の方へと向き直る。どうやら俺を標的に定めたらしい。好都合だ。
「『618』、俺が正面でおとりになる。
その間に、そいつの煙突の中にたらふく弾を投げ入れてやれ!」
『分かった……!』
『曼珠沙華』が飛び上がると、スマートクリーナーの頭上をとってホバー形態に移行、空中に停滞しながら弱点である頭頂部溶鉱炉内にバズーカを叩き込む。それに対し鬱陶しそうに腕を振り上げるスマートクリーナー。
「おい、お前の相手はここだ!」
そこにプラズマミサイルとショットガンを叩き込む。ダメージはほとんど無いがヘイトを俺に向けることは出来たようだ。俺に正面を向くと、ブースターに火が灯る。突撃の体勢だ。
「遅い!」
だが来ると分かれば回避は容易い。空中に跳び上がり、クイックブーストの連続で突進を回避する。
『大きいのを……あげる……!』
大ぶりの攻撃を外し隙だらけのスマートクリーナーに、『曼珠沙華』の連装グレネードキャノンが放たれた。頭頂部溶鉱炉内に飛び込んだ砲弾が内部で大爆発、その衝撃に一瞬、スマートクリーナーの巨体が浮き上がる。そしてそのまま一部システムがダウンして正面弱点部が露わになった。スタッガー状態だ。
「決めるぞ、『618』!」
『……うん!』
『曼珠沙華』はそのままバズーカを頭頂部溶鉱炉内に撃ち込み、間髪入れずにガトリングガンに持ち替えて乱射する。
『日向葵』もアサルトブーストを起動、正面弱点部に両手のショットガンを叩き込む。至近距離からのショットガンの散弾は、外れることなく全弾直撃した。
「終わりだ! これで撃ち貫く!!」
そして持ち替えたパイルバンカーの炸薬装填が完了し、それを叩き込んだ。特殊合金製の杭が正面弱点部から機体制御部を丸ごと貫いた。機体制御部を失ったスマートクリーナーは内部で誘爆を繰り返し、ひときわ大きな爆発とともに頭部が吹き飛ぶ。
頭部に蓄えられた溶けた鋼鉄が漏れ出してスマートクリーナーを覆い隠し、スマートクリーナーは完全に鉄塊へと姿を変えた。
『素晴らしいご友人たち。 またの来訪を心待ちにしていますよ』
オーネスト=ブルートゥの言葉に答える気力もなく、俺たちは『グリッド012』を後にした……
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俺たちは『ジャンカー=コヨーテス』の勢力圏である『グリッド012』の脱出に成功した。
しかし、それは安全と同義ではない。何故ならこの辺りのグリッドはみんな、コーラルドラッグに頭をやられたドーザーの巣窟になっているからだ。
つまりどういう事かというと……。
『見ていて下さいよ、ボス!
この無敵のラミーと『マッド・スタンプ』が侵入者を叩き潰してやりますぜ!』
今度は『RaD』の勢力圏に入ってしまったらしく、あの『インビンシブル・ラミー』に追われていた。
「待て! 別に俺たちはあんたら『RaD』にケンカを売りに来たわけじゃない!
あんたらのボスと話をさせてくれ!」
『あぁん! 機体もデータベースにねぇ!身分もねぇ!どこの誰かも何にもわからねぇ!
そんな怪しい奴らをボスと話させるわけねぇだろうが!』
こうなったら俺の持つ原作知識を元にカーラに保護してもらおうと考えるが、おっしゃる通り俺たちは密航者、2人揃って未登録のACを操る正体不明の怪しい奴らだ。一組織のボスをそんな怪しい奴らと話をさせられるわけないという、コーラルドラッグで頭キマッたやつに正論で殴られ少しショックである。
そんなことを考えながら、ラミーの攻撃を仕掛けてくる攻撃を俺と『618』は回避し続ける。
『『53』、反撃を……』
「ダメだ! 俺たちに『RaD』と敵対する意思はない!
ここで撃ったら、完全に敵対することになる!」
そして、忘れているかもしれないが『RaD』も『ジャンカー=コヨーテス』とそう変わらない無法者集団だ。縄張りを通っただけの借金取りを溶鉱炉に生きたままぶち込むくらいにはヤバい集団である。敵対したらもう、今の俺たちではどうしようも無くなる。
そうして俺と『618』は逃げに徹していた。やがて性能差もあり『マッド・スタンプ』の追跡を振り切ったが……。
『『53』……前方の扉の先に機体反応。
数は1』
「ああ……」
俺たちの前には扉があり、その先にACの機体反応がある。意を決して開いたゲートの向こうにいたのは車椅子のような軽量タンクAC。
『RaD』の実質的なナンバー2、カーラの作り出したAI人格『チャティ・スティック』の操るAC『サーカス』だ。
『あんたたちかい、侵入者ってのは。 あたしはこの辺りを取り仕切ってる『RaD』の『シンダー=カーラ』だ』
響く女の声。この声の主こそ『RaD』頭目の『シンダー=カーラ』だ。
『ラミーに追われながら『話がしたい』とか言って一発も撃たないってことをしてたからね。話くらいは聞いてやろうと思ったってわけだ。
それでビジター、話ってのは何だい?』
カーラを交渉の場に引っ張ってこれた。これが上手くいくかどうかが、俺と『618』の運命を決める。
「俺たちを保護してほしい。
俺たちは星外からの密航者だ。身分もなければツテもない。仲間はいるが……はぐれていつ合流できるかも分からない。
その間、機体の整備や弾薬補給、それに俺たちが休める場所がほしい」
『おいおいビジター、先立つものはあるのかい?』
「ない。だが、手に職は持っている。
今、その証拠のログを送る」
『……チャティ』
『分かったボス。
ログをこちらに送れ。妙なことはするな』
「分かってるさ」
そう言って、俺は先ほどまでの戦闘ログを送った。
『こいつは!? あんたたち『グリッド012』に降りたのかい!?』
「ああ、そこにいた連中をなぎ倒しながら、ここまで逃げてきた。俺たちの腕の証明になるはずだ。
これで……『出世払い』ってことで頼む」
そこまで言うと、カーラが突然静かになる。何かマズったかと身構えていたが……。
『くっ……アハハハハハハハッ!
『出世払い』! 『出世払い』と来たかい!!』
通信機の先でカーラが爆笑していた。『出世払い』というのがツボに入ったらしい。
『実を言うとあんたたちが戦った連中『ジャンカー=コヨーテス』ってのは、あたしら『RaD』を裏切ったどうしようもないクズが仕切っててね。あんたたちが倒したMTやらあの大型重機やらはウチから盗まれたモンだったんだよ。
クズに奪われて壊されるってのは悲しいけど、連中の戦力をここまで削ったってんなら万々歳だ。
……いいだろう、そのお仲間ってのが見つかるまであんたらはあたしが世話してやる。そのかわり、色々仕事を頼むけど構わないね?』
「……俺や彼女を捨て石にするようなことじゃなければな。
もしそうなら、その喉笛に喰い付くぞ。 俺たち猟犬の牙は鋭いんだ」
『ああ、それでいい。 それじゃ期待してるよ、『ミスター出世払い』。
チャティ、案内してやりな』
『こっちだ。 ガレージと居住区に案内する』
『サーカス』に先導され、俺たちは移動を開始する。
こうして俺たちは何とか『RaD』に受け入れられ、密航から一息ついたのだった……。
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今日のアセン
AC名:『
パイロット名:『C4-621』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:VP-44D
CORE:NACHTREIHER/40E
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:EL-TL-10 FIRMEZA
BOOSTER:BC-0200 GRIDWALKER
FCS:FC-006 ABBOT
GENERATOR:DF-GN-08 SAN-TAI
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
解説
我らが原作主人公『C4-621』ちゃん、この作品では軽量二脚使い。
相手の周りを高速で動き回り、キックとショットガンと実弾オービットとアサルトアーマーでスタッガー状態にしてから、チャージチェーンソーで相手を解体するチェーンソーウーマン。
主人公『C1-53』をさらに近接に尖らせたようなピーキーなアセンになっている。
相手にクイックブーストで張り付くことを想定し、クイックブーストで弾が止まるマシンガンやハンドガンではなく単発のショットガン。クイックブーストで弾が止まらない実弾オービットを選択。すべてはスタッガー状態の敵を全力でチェーンソーで解体するためにある。
対強敵やネストで、敵をワンコンボで昇天させる気満々のピーキーアセン。当然ミッションには向かないが……天下の原作主人公には関係なし。
この物語ではルビコプターがチェーンソーの錆と消える。
53「宇宙には3つの力がある。企業の力、惑星封鎖機構の力、そして俺たち傭兵の自由な力だ」
『出世払い』が主人公の異名と言って元ネタのわかる人は作者と握手。
ほかは『熱き氷』とかかっこいい異名なのになぁ。