ルビコプターを初期装備以外で蹂躙させてくれ。
想定していた目標地点を大きく外れてルビコン3の大気圏に突入していく2つのカプセル。それが通信圏外へと入った。
本来ならばもう『618』のことを諦めなければならない状況だった。しかし彼がいるならば……。
「任せたぞ、『53』……。
俺たちは俺たちの仕事をする。 いいな『617』『619』『620』『621』」
そう言うと、意外にも『617』から返答があった。
『はい……兄様がいるなら、大丈夫でしょう……』
「……待て『617』。 その呼び方はなんだ?」
『私たちより前の世代の強化人間……そしてアセンや戦闘技術を授けて下さいました……。
だから……『兄様』という呼び方が適切と、私たち『姉妹』は判断しました……』
「むぅ……」
自ら判断できるほどに自我や情緒が戻ってきているというのはいいことかもしれないが……『兄様』やら『姉妹』やら、どうも気になる部分である。
しかし、今は重要な密航の真っ最中、些細なことは後回しだ。
「まぁいい。 それよりも全員降下後に合流、汚染廃棄都市へ向かう。
あそこは最近に大規模な戦闘があったばかりで、幾多の傭兵も参加していた。
俺たち密航者には身分が必要だ。昔のツテをたよりその用意をしたが……1人分足りない。
そこで、1人分の身分を廃棄されたACから回収する。
全員逆噴射開始、減速しろ!」
こうしてルビコン3の大地に、猟犬の軍団が解き放たれた……。
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ついこの間14歳になったばかりの少年……『ギーシュ=エリック』がACのコックピットに乗った理由は簡単なもの……『飯が喰いたかったから』、それだけに尽きた。
両親を亡くし行く当てもなく、飯が喰えるからと『ルビコン解放戦線』に入った彼の経歴は、今では珍しくもないものだろう。ただ少し珍しかったのはACへの適性が高かったことであった。
戦力不足が顕著な『ルビコン解放戦線』でACへの適性は貴重だ。簡単な訓練を経て、エリックはACに乗って戦場へと出ることになる。年齢を理由に渋る常識的な意見もあったが……少し年上程度の『リトル=ツィイー』という前例があったため、そして戦力不足という現実を前にそんな常識的な意見は消えていった。
しかしそれでも……現実的な戦力不足のため子供をACに乗せて戦場へ出さねばならないということは受け入れられても、その若い命を無駄に散らそうという大人は1人もいなかった。与えられたACはBAWSの傑作、最初期型格安ACの『バショウシリーズ』。古い設計ながら今でも十分通用する性能をもち、歴戦の戦士である帥父ドルマヤンも愛用する機体だ。その機体の武器に関しては、最大限本人の希望にそえるようにしようということになった。
先のルビコン解放戦線の若き少女戦士『リトル=ツィイー』は高い攻撃力を望み、両手に小型ハンドグレネードランチャーを装備。そして生き残って欲しいという大人たちの願いをこめてパルスバックラーによる防御力の強化を図りAC『ユエユー』は完成した。
そしてエリックだが、彼は自分の弱点をしっかりと認識していた。それは『射撃が壊滅的に下手』という点である。狙ってトリガーを引いて相手に当てる……これがFCSの補正があってもまるで上手くいかない。
そこでエリックは……完全に開き直ることにした。つまり『射撃は狙わなくても勝手に相手を追って当たってくれるミサイルだけ使おう』というのである。大人たちは彼の要望に応え、その機体は両肩にミサイルとヴァーティカルミサイルを装備し、ミサイル戦に対応した高度なFCSに換装した。あとは腕にハンドミサイルを……そんなことを思っていたが、悲しいことに両肩のミサイルとFCSで予算が尽きた。
結果、『両肩にミサイルを装備した、両手が素手』であるAC『ハングリー・ワーム』は完成する。明らかな未完成品に誰もが不安を感じていたが、彼は上手くやっていた。距離を保ち、2種類のミサイルを使い分けて攻撃に援護、果てはなんと素手での格闘戦で敵を撃破していったのだ。
機体制御と近接格闘に彼は才を持っていたのだろう、若き戦士の予想外の活躍に大人たちは大いに鼓舞され、そして本人も調子に乗った。自信をつけ、自分は出きる人間だと思い……その若く伸びきった鼻をぽっきりと折られる。
場所は汚染廃棄都市。企業たちが来ることに備え防御を固めていたところ、突如飛来した惑星封鎖機構の大型攻撃ヘリの攻撃を受けた。その途方もない火力の前に部隊は壊滅、彼の『ハングリー・ワーム』も両足を吹き飛ばされて廃ビルへと突っ込む。『バショウ』タイプの堅牢なコアが、彼の命を救ってくれた。
ボロボロになったコックピットから這い出て見ると、自分たちを一瞬で壊滅させた大型攻撃ヘリは悠然と飛んでいる。
力を持ったと思った。しかしそれを歯牙にもかけない力を持つ惑星封鎖機構……自分の無力さにギリリと歯を食いしばる。
その時、そのヘリが爆炎に包まれた。見ればAC数機が大型攻撃ヘリに攻撃を仕掛けている。当然、大型攻撃ヘリも黙ってはいない。バルカン、ミサイル、大火力ロケット弾……自分たちを一瞬で壊滅させた火力をそのACたちに向ける。
しかし、それが当たらない。遮蔽物を利用し、ブーストを巧みに操り、その破壊の嵐を避けていく。明らかに鈍重そうなタンク型ACすら、アサルトブーストとクイックブーストを駆使して回避していた。
「あれが……あれが僕と同じACの動き。 それじゃあ、今までの僕の動きは何だったんだ……」
エリックは食い入るようにその動きを見つめていた。そこに、自分の目指すべきものがあるような気がしたからだ。
やがて連続した攻撃に耐えられなくなった大型攻撃ヘリが制御を失う。スタッガー状態だ。
その時、それを待っていたかのように桃色の軽量型ACが飛び上がる。その左手では赤熱する凶悪なチェーンソーが起動していた。ただただ原始的で武骨なチェーンソーの刃が大型攻撃ヘリに突き刺さり、解体が開始された。そして間もなく、チェーンソーの魔の手がジェネレータへと届く。切り裂かれたジェネレータは制御を失い、大型攻撃ヘリは爆散した。
「……」
AC程度では勝ち目がないと思っていた惑星封鎖機構の大型攻撃ヘリは、いとも簡単にACによってスクラップにされた。どんな強大と思われる相手でも、技量次第でACは打ち勝つことが出来るのだ……それをエリックは学んだ。
やがて、なにかの目的を達成したのかその4機のACは去っていく。その光景を遠くに見つめていた。
これが、やがてルビコン解放戦線だけでなく、企業部隊にまでその名が知れ渡る凄腕の戦士、ギーシュ=エリックの始まりだった……。
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「『621』、お前のルビコンでの名義は……『レイヴン』だ」
『では『レイ』と呼びます……』
『はい……『617』姉様……』
「……どういうことだ、これは?」
これも『53』の影響なのか、情緒が育ちまくっているハウンズたちに困惑が隠せないウォルターだった……。
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今日のアセン
AC名:『ハングリー・ワーム』
パイロット名:『ギーシュ=エリック』
R-ARM UNIT:なし
L-ARM UNIT:なし
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:AH-J-124 BASHO
CORE:AC-J-120 BASHO
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:AL-J-121 BASHO
BOOSTER:AB-J-137 KIKAKU
FCS:FCS-G2/P12SML
GENERATOR:AG-J-098 JOSO
EXPANSION:なし
解説
ルビコン解放戦線の14歳、おそらく最年少の戦士。リトル=ツィイーの弟分。『緑色のデフォルメされたミールワーム』のエンブレムを付けている。
両親が死に『飢えをしのぐ』という目的でルビコン解放戦線の戦士の道を選んだ。そこでACの適性が高いことが発覚、AC乗りとなる。
しかし本人は射撃兵器が苦手で、マシンガンもアサルトライフルもまともに当てることができなかった。そこで彼は『勝手に相手を追尾するミサイルだけ使う』という開き直りを見せる。その要望を周りの大人はかなえようとするものの、両肩のミサイルとFCSをそろえた段階で予算が尽きてしまい、両手が素手という状態になってしまった。
しかしそれでもミサイルとパンチだけでかなりの戦果を出しており、機体制御と格闘戦の才能があったようだ。
だがそれでもルビコプターには敵わずボコボコにされていたところを、ハウンズたちの戦いを目撃し、本当のACの戦いに目覚める。
『そのアセンの何を知っているというのか……』な機体の長所を完全に潰すアセンのインデックス=ダナムとリトル=ツィイーに対して『武装パージしてルビコン神拳で戦ったほうがマシ』という話をよく聞くが、それを本当にやったアセン。
設定上は『本人が射撃が絶望的に下手でミサイルしか当てられない』『肩のミサイルとFCSで予算が尽きた未完成品』という形になっているが、射撃補正も反動制御も低い代わりに格闘適性がバカみたいに高いバショウ腕にミサイル装備は正解で、格闘用ブースターであるKIKAKUを使った高威力パンチも隙が少なく強い。キックとパンチで戦うのもいいが、最終的にはハンドミサイルとブレードをつけてジェネレータを強いものに変更すればこの機体はかなり強くなる。少なくともインデックス=ダナムとリトル=ツィイーよりは絶対に強くなるだろうから、ルビコン解放戦線はすぐにでもこの子を幹部にすべき。パーツ相性の大切さを痛感するアセンである。
名称の元ネタはルビコン解放戦線組はすべて『指の名前』なので『義手』ということでギーシュ。
機体名とパイロット名は、おそらく子供のできたパパなら100回は読まされるだろう絵本『はらぺこあおむし』とその作者『エリック=カール』から。
この機体もハンドミサイルとブレード、内装を変えることで芋虫から蝶になるように劇的な変化が起こることを示している。