祝福の花を君に   作:キューマル式

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第13話 『フロム世界の『芸術家』ってきっとこんな感じだよね(偏見)』

『まずはこれでーす!』

 

 重逆関節AC『ファイアボンバー』がその特性である跳躍力で空中高くに跳び上がると、右手にしたナパームボムランチャーを撃ってきた。

 いっぺんに3つ降ってくるナパームを『日向葵』と『曼珠沙華』はブーストを使用して回避、目標を外したナパーム弾が地面に着弾し、広範囲の床に灼熱の炎が燃え上がる。

 

『うぎゃぁぁぁぁぁ!!?』

 

『熱い、熱いぃぃぃ!!?』

 

 破壊されたMTや車両から脱出した『ジャンカー=コヨーテス』の構成員がその炎に巻き込まれて、もだえ苦しみながら焼け死んでいく。

 

「おいおい、襲撃した俺のいうことじゃないが……お仲間が消し炭になってるの見えてるか?」

 

『ええ、私の炎の芸術に楽しそうに踊っていますね!』

 

「……」

 

 あまりの様子のおかしな人っぷりに、さっさと黙らせることを俺は決める。

 『ファイアボンバー』は空中でナパームボムランチャーをハンガーに格納、代わりに火炎放射器を装備して降りてきて炎をまき散らす。

 

「ちぃッ!?」

 

 床の炎と火炎放射器の炎であぶられ、APが削られていく。反撃のショットガンを撃つが、炎でカメラアイの視界が歪み、しっかりと当てられない。

 そして、左手はハンドグレネードからいつの間にか、近接用炸裂弾投射機(マインスローアー)が装備されていた。

 

『芸術は爆発でーす!』

 

「しまった……!?」

 

 まき散らされた小型爆弾が広範囲で爆発する。次々と爆発する小型爆弾の衝撃を完全には避けることができなかった『日向葵』はACS負荷限界を超え、スタッガー状態になってしまった。

 

『無駄を切り落とすことこそ芸術だ!』

 

 そんな俺に、レーザーダガーを抜きながら『ブリリアント』が突っ込んでくる。

 

『させない……!』

 

 俺の危機に即座に反応したアオイは、『曼珠沙華』で『ブリリアント』へと横から突っ込み、そのままキックを叩き込んだ。軽量の『ブリリアント』はその一撃で大きく吹き飛ぶ。

 『曼珠沙華』は追い打ちのバズーカを構えるが、その時『ブリリアント』がレーザーダガーをハンガーに格納、持ち替えたランチャーが発射される。しかし爆発はなく、代わりにキラキラとした金属片が辺りに舞う。

 

『これは……ジャミング弾? ロックが……出来ない』

 

 『曼珠沙華』のFCSに異常が発生、射撃兵器のロックが切れてしまい、追撃のタイミングを逃してしまう。

 

「アオイ、散るぞ!」

 

『……ッ!?』

 

 俺の言葉に、機能回復した『日向葵』と『曼珠沙華』がクイックブーストを連続で噴射して高速離脱。瞬間、俺たちの居た場所に『ファイアボンバー』からのハンドグレネードが突き刺さって爆発した。

 

『ああ、惜しい。 なぜ芸術から逃げるのですか!?』

 

「グレネード弾の何が芸術だ!」

 

 俺は吐き捨てながら、判明した敵の戦法を冷静に整理していく。

 

(重逆関節の『ファイアボンバー』は、『飛び回ってナパームと火炎放射器の炎でダメージ、隙を見て近接用炸裂弾投射機(マインスローアー)で敵をスタッガー状態にしたら高火力のハンドグレネードを叩き込む』って戦法か。

 対する軽逆関節の『ブリリアント』は『高速で動き回ってニードルガンとハンドガンでスタッガー状態を狙って、相手の攻撃はジャミングでかく乱、その間にレーザーダガーを連続で相手を素早く何度も切り刻む』って戦法だな。

 2人ともナパームやジャミングなんて難しい武装を、上手いこと使ってるな……)

 

 俺はそう素直に感心する。正直、独立傭兵としてやっていたら普通にランカークラスだろう。

 しかし、俺とアオイには今までの幾多の戦場で戦い続けた経験と自身の腕への自負がある。

 こんな狂人連中相手に終わるつもりは……ない!

 

「アオイ、相手の交代だ!」

 

『分かった……』

 

 ブーストで飛び上がった『曼珠沙華』がホバー機能で高度を保つ。自身の跳躍よりも上をとられた『ファイアボンバー』に、『曼珠沙華』から容赦のないバズーカの爆撃が始まった。

 

『ああ、これがあなたの芸術なのですね!』

 

『……不快』

 

 連続の跳躍でバズーカを避けようとするが、アオイの正確な射撃によって放たれるバズーカの爆風は着実に『ファイアボンバー』のAPを削っていた。

 

「こっちも持ってけ!」

 

 『日向葵』もプラズマミサイルを発射、プラズマ爆発に巻き込まれた『ファイアボンバー』の動きが止まった。スタッガー状態だ。

 

『こちらの芸術を忘れないでほしい!』

 

 『ファイアボンバー』の援護にか、『ブリリアント』から放たれたジャミング弾が炸裂、大きな一撃でグレネードキャノンを放とうとしていた『曼珠沙華』のロックが外れた。

 

「それを待っていた!!」

 

 ジャミング弾がリロードになった隙に、『日向葵』を『ブリリアント』に向かってアサルトブーストを全開で起動する。加速を始めた『日向葵』の迎撃にニードルガンとハンドガンが飛んでくるが、この距離なら俺のショットガン2丁の方が火力は上だ。被弾を無視して突っ込み、至近距離で散弾を放つ。

 至近距離で放たれた散弾はそのほとんどが命中、そのまま加速を落とさず接近するとキックを叩き込んだ。軽量故に大きく吹き飛んだ『ブリリアント』に、換装を終えた左手のパイルバンカーを構える。しかし今は時間が惜しい。チャージなしでそのままパイルバンカーで殴りかかる。

 その一撃でスタッガー状態になった『ブリリアント』、そこにリロードの完了した両手のショットガンを叩き込んだ。

 

『私の芸術の邪魔をするなぁ!!』

 

 それでも戦意を失わず、制御を取り戻した『ブリリアント』はクイックブーストを起動、軽量級でしかも跳躍力に優れた逆関節の特性で俺の死角に回り込むと、レーザーダガーを抜き放ち、斬りかかってくる。

 本当に良い動きだ。だがそれでも!

 

「これで終わりだ!」

 

 俺は相手の行動を読んでいた。コアの機構が稼働、周辺にパルス発光が始まる。そして巻き起こるパルス爆発。本日2回目のアサルトアーマーが、斬りかかってきた『ブリリアント』にカウンターで決まった。スピードのために装甲を削った軽量機に、このダメージを耐えきることはできない。

 ジェネレータに火が廻り、誘爆を始める『ブリリアント』。

 

『ああ、世界は……『私』という無駄が切り取られた世界は……なんて美しいんだ……!』

 

 狂人は最後まで理解できない断末魔を残して、愛機と運命を共にした。

 

『ああ、ファセット君! 芸術に包まれてしまったのだね!』

 

 残った狂人は仲間の死を悼む様子はなく、変わらず炎と爆発を垂れ流していた。

 

『あなたの言葉は……とても不快。

 だから……消えて!』

 

 アオイの『曼珠沙華』がアサルトブーストで加速、重量の乗った四脚のキックを叩き込む。動きが止まった『ファイアボンバー』に、『曼珠沙華』の最大火力、連装グレネードキャノンが直撃した。

 その猛烈な爆炎に耐えきれずスタッガー状態に陥った『ファイアボンバー』に、追撃のガトリングガンの弾丸が嵐となって襲い掛かる。至近距離からのガトリングガンの弾丸によって装甲が爆ぜ、内部機構が吹き飛ぶ。

 

『ああ、私は今『芸術』に包まれているぅぅぅぅ!!』

 

 こちらの狂人も、最後まで狂った断末魔を残して愛機とともに爆散した。

 

『……汚い花火』

 

「……どこでそんな言葉覚えたんだ、アオイ。

 それよりカーラ」

 

『ああ、こっちでも輸送車列の全破壊を確認した。

 その狂人どもも死んだみたいでよかったよ。今までさんざん舐めた真似をしてくれたからね』

 

 確かにこいつらは強かった。少なくともラミーじゃお話しにならないくらいに強い。

 AC6本編でも思ったが『RaD』は組織として層が薄くて戦闘員が不足しているイメージだから、こいつら相手にかなりの被害を被っていたのだろう。カーラの機嫌は良さそうだ。

 

『帰還しな。アオイ、ミスター出世払い。

 今日は特別に美味いもの食わせてやるよ』

 

「だからその呼び方……まぁいいか。

 アオイ、帰還しよう」

 

『うん……』

 

 俺たちは破壊の炎が未だ煙るその場を後にしたのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『ブリリアント』

パイロット名:『カッター=ファセット』

 

R-ARM UNIT:EL-PW-00 VIENTO(ニードルガン)

L-ARM UNIT:MA-T-223 KYORIKU(ジャミングボムランチャー)

R-BACK UNIT:HG-003 COQUILLETT(ハンドガン)

L-BACK UNIT:VP-67LD(レーザーダガー)

 

HEAD:HC-2000 FINDER EYE

CORE:EL-TC-10 FIRMEZA

ARMS:AA-J-123 BASHO

LEGS:KASUAR/42Z

 

BOOSTER:AB-J-137 KIKAKU

FCS:FCS-G1/P01

GENERATOR:AG-E-013 YABA

 

EXPANSION:なし

 

 

解説

無法者集団『ジャンカー=コヨーテス』の幹部、『芸術家』を名乗るうちの1人。

『アーテスト=オーカ』と同じく、別のグリッドでしっかりとした両親から教養を受けて育った。その彼は幼いころに映像資料で見た宝石のカッティング職人に魅かれ『無駄を切り落として加工することで美しくなる』と考えるようになった。そして両親の手足を切り落として『美しく加工』した後はドーザーとしてグリッド012に流れ着く。

以降、敵MTから生きた人間まで、彼は今も『美しく加工』し続けている。特に女性の『加工』がお気に入りのようだ。

 

機体は軽逆関節の跳躍力とスピードで動き回り、ジャミングで相手のロックを阻害し混乱させ、その間にニードルガンとハンドガンでスタッガー状態に追い込み、レーザーダガーで素早く切り裂くというコンセプト。これも作者が何とかジャミングが使えないか考えた結果のアセン。

結論、作者の腕では無理。単純にバショウ腕+格闘武器の強コンビで殴るだけの機体に成り下がった。

これもアリーナでテストしたところオーネスト=ブルートゥは十分倒せたので、ブルートゥさんはお願いですから頭目として相応しい機体に早く見直してください。

 

名前の元ネタは宝石のカッティング職人を表す『カッター』と、宝石のカットの種類である『ブリリアントカット』と『ファセットカット』から。

 

 

 

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