祝福の花を君に   作:キューマル式

14 / 65
第14話 『謎のお姉さんキャラは強キャラの法則』

『お、俺のマッドスタンプがぁぁぁぁ!!』

 

 そう言って吹き飛ぶ、ラミーの『マッドスタンプ』。

 

「これで12回目か……どんなもんだい、『ミスター出世払い』?」

 

「言わなくてもわかるだろ? これだと話にならん」

 

 俺は今、カーラに頼まれてシミュレータでラミーと戦っていた。何故こんなことになっているのかというと、前回の戦闘で痛感したことがあったからだ。

 

「『ジャンカー=コヨーテス』の幹部と実際戦って分かったけど……『RaD』の戦力、低すぎないか?」

 

 『ジャンカー=コヨーテス』の幹部たちは強かった。話に聞くと、まだACを使う幹部がいるらしい。それに合わせて頭目である『オーネスト=ブルートゥ』とこれだけの凄腕のAC乗りたちがいた。

 対する『RaD』は頭目のカーラにナンバー2であるチャティ、そしてこのラミーの3人である。カーラとチャティに関してはいいが、ラミーの腕は何をどう考えても『ジャンカー=コヨーテス』の幹部にまるで届いていない。頭数も少なく、腕まで下となれば原作で苦戦していたのも頷ける。

 ノーザーク? あれはただの不法滞在者だ。

 

「無人MTに関してはなかなかいいものが揃ってるし、それを戦力の中心に据えてたんだけどね……」

 

「それを大量に盗まれて戦力低下。 で、相手は大幅な戦力増強とかそれこそ『笑えない』よ」

 

「……全部あのオーネスト=ブルートゥ(クソ野郎)が悪い」

 

 とにかく、頼れるAC戦力が少なすぎる。『RaD』だってACフレームからパーツまで製造してるんだし、専属の部隊があってもいいくらいだ。

 

「でもね、あたしが纏めてるとはいえ『RaD』は変態技術者とドーザーの寄り合い所帯だ」

 

「むしろ俺はなんでそんな水と油みたいなのを一緒に纏められるのか意味が分からないんだが……」

 

「変態技術者は頭のネジが一つ飛んでる。 ドーザーはドラッグで頭のネジが一つ飛んでる。 そこに何の違いもありゃしないだろう?」

 

「違うのだ!

 いや、本当に全然違うぞ。 あと自分がその筆頭だってわかってる?」

 

 俺のツッコミを無視してカーラは続けた。

 

「とにかく、操縦が単純なMTならまだしも、AC適性のあるようなまともな戦闘が可能な人員ってのが少ないんだよ。そのラミーですら貴重なんだ。

 だから大企業の部隊、『ヴェスパー』やら『レッドガン』やらみたいなのをつくるのは無理があるだろ」

 

「そりゃ、そこまでは高望みだろうけど……」

 

「一応、AC戦力にあてがないってわけじゃないんだけどね……とりあえずは貴重な戦力のラミーを育ててくれるかい?」

 

「……手に入りそうなパーツで大幅にアセン変えると思うけどいいか?」

 

「そこは構わないよ。あたしは頭目であり技術者だけど、戦いに関しちゃあんたの方がプロさ。プロの意見は聞くよ」

 

 そう言いながらシミュレーションルームを出ると……。

 

「……お帰りなさい、にゃん」

 

 ……待機室でアオイがスケスケの服を着て、猫耳装備で俺を待っていた。

 俺はため息をつきながらこれを成した神……じゃなく下手人の方を見る。

 

「モアさん……」

 

「あらあら、何かしら?」

 

 年齢は20代後半といったところか。髪で顔の一部が隠れているが、その美貌は十分わかるほどに美人だ。露出が激しい服を着こなしている。

 この人は『モア=ドードー』、明らかな偽名だがカーラからの信頼が厚く、アオイの世話をかねて紹介してきた人物だ。居住区の女たち……主に娼婦たちを取りまとめる人物でこのグリッドの重要人物の1人であり、さっきカーラが言っていた戦力のあてだったりする。

 彼女は元独立傭兵という肩書らしく自身のACを持っていた。さらにこんな修羅の世界だ。女たちは自分の身は自分で守るしかなく、モアはそんな女たちを守るための自警AC戦力『アマゾネス隊』を傘下に持っている。データで見せてもらったことがあるが、彼女のAC『ガルトルニス』はかなり戦いを分かっている人間の組んだ良アセンだ。

 しかも何となくだが……彼女の纏う気配は明らかに強者のそれであり、普通にランカー上位に名を連ねるだろう雰囲気がある。一度、過去の傭兵としての名前を聞いたことがあるがはぐらかされて終わってしまった。

 そんな彼女はアオイを気に入ったのか、何かと世話を焼いてくれる。それはいいのだが……たまにこういう悪戯を仕掛けてくるので困ったものだ。

 

「おいおい、モア。 こういう面白いことはあたしも呼びなよ!」

 

「あら、カーラ。 そう言うと思って他にも衣装は持ってきているわ」

 

「流石だね、モア!」

 

 意気投合する2人を尻目に、俺はため息をつく。

 

「アオイのことを何かと気にかけてくれてるのはいいんだが、こういうのはちょっと……」

 

 この間は『俺の前でスカートをたくし上げると喜ぶと習った』と言って、俺の部屋に来てそれをやった。俺の精神をスタッガー状態にするつもりか、こいつらは。もう少しで俺の心のAPが全部吹き飛ぶところだったわ。

 

「嬉しくないの? こんなきれいな女の子が、こうやってあからさまな好意を示してるのに?

 それとも強いのはAC戦だけで、夜の方はチキンのルーキーなのかしら?」

 

「……アオイの感情はまだしっかり戻ってない。

 そんな不完全な状態で好意なんて……」

 

 さらに言えばその好意の始まりも命を助けたという、吊り橋効果的な何かだろう。それは『卑怯』とは言わないか?

 だがそんな俺をモアは鼻で笑った。

 

「あんたは女を舐めすぎだよ。

 強化人間? 感情を失った? だから?

 そんなもので本能は消せはしないわ。 そして女の本能はいつだって『恋と愛』のためにある。

 この子のあんたへの想いは、本能から出た『本物』だよ。その『本物』に、あんたごときがケチをつけるな」

 

「……」

 

「……まぁ、あんたやこの子の抱えてる物が重いってのは分かる。

 すべきことがあるのも分かるし、明日だって生きているか分からないのもわかる。

 でもね……だからこそ『生きているうちは精一杯の恋と愛を』、ってね」

 

「おっ、あたしの『生きてるうちは笑う』ってモットーに似てるね。

 感銘を受けて真似たかい?」

 

「まさか? こっちの方がオリジナルでしょ」

 

 そう言ってカーラとモアはカラカラと笑った。

 

「で、モア。 今日はアオイを着せ替え人形にしに来ただけかい?」

 

「それだけだと楽しかったでしょうけどね。

 前にカーラから来てた話……私のところの戦力が欲しいって話の回答に来たのよ」

 

 空気が一瞬で変わる。

 

「で、答えは?」

 

「……いいよ。 あたしとうちの自衛戦力であるAC部隊『アマゾネス』、『RaD』に合流しようじゃないか」

 

「どういう心境の変化だい。 お互い不干渉ってことでやってきたのに」

 

「それで良い結果が出てりゃいいんだけどね……」

 

 そう言ってモアは懐から取りだした煙草に火を付けた。

 

「アオイとビジターが倒してくれた『ジャンカー=コヨーテス』のクソ、『カッター=ファセット』のアジトが分かったんで行ってみたんだよ。

 そしたら……ウチから攫われた子が何人も『作品に『加工』されてた』わ」

 

 『カッター=ファセット』……『余分なものを切り落として加工すると物はより美しくなる』とかいうモットーを持っていた自称芸術家の狂人。そしてその狂人の『作品に加工』された女性……何をどう考えても、ロクな末路ではなかったのだろう。

 

「……『自由』ってのはいいことさ。あのクソはさぞ楽しく『自由』に、あの子たちを切り刻んだんだろうね。

 でもね……その『自由』で人に理不尽を押し付けてはいそのまま、ってのが気に喰わない。

 そういう『無責任な自由』ってのがあたしは大っ嫌いなのさ」

 

「……」

 

 ……なんだろう? このモアの『自由』って言葉に対するスタンスに何か引っかかる。

 

「でもね、そういう『無責任な自由』を押し付けられたら、力で抵抗するしかない。

 今まではわたしらだけで十分だって思ってやってきたつもりだったけど、その取りこぼした結果を見て、自分たちだけでやってく限界が見えたってわけさ」

 

「なるほどね……そういうことなら歓迎するよ

 『RaD』は来る者は拒まず、だ。 それに男どもも喜ぶしね」

 

「ふふっ……しっかり払うもんは払わせなさい。

 じゃないと、潰すわよ」

 

 そう言ってカーラとモアが握手を交わす。

 こうして『RaD』のネックだった戦力は増強された。モアが率い、鍛えた女たちのAC部隊『アマゾネス』は『RaD』の誇る戦力として、他勢力に知られるようになるのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『ガルトルニス』

パイロット名:『モア=ドードー』

 

R-ARM UNIT:MA-J-200 RANSETSU-RF(アサルトライフル)

L-ARM UNIT:LR-037 HARRIS(重リニアライフル)

R-BACK UNIT:Vvc-70VPM(ヴァーティカルプラズマミサイル)

L-BACK UNIT:Vvc-774LS(レーザースライサー)

 

HEAD:HD-033M VERRILL

CORE:BD-012 MELANDER C3

ARMS:AR-012 MELANDER C3

LEGS:RC-2000 SPRING CHICKEN

 

BOOSTER:BC-0200 GRIDWALKER

FCS:FCS-G2/P05

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:PULSE ARMOR

 

 

解説

カーラたち『RaD』が根城とする『グリッド036』、その居住区の娼館まわりの女性たちを取り仕切る女。

元独立傭兵で、様々な事情からここにしか行き場のない女たちを守るために自衛組織『アマゾネス』を作り、自衛していた。しかし『ジャンカー=コヨーテス』の凶暴性を前に、独力での防衛に限界を感じ、『RaD』と合流を果たすことで女たちの安寧を守ろうとする。

彼女が鍛えた自衛組織『アマゾネス』は女たちによるAC部隊で、その練度は『RaD』の防衛部隊を上回る。そのため今回の合流によって『RaD』の戦力は大幅に増強された。

男と女の恋や愛を尊く思っており『生きているうちには精一杯の恋と愛を』をモットーにしており、アオイのヒナタに対する恋心を見抜き、全力で応援する世話焼きお姉さん。

 

AC乗りとしての腕は凄まじく、明らかに上位ランカー級の腕を持っている。そんな彼女は過去の傭兵としての名前を決して語らない。

『自由』という言葉に対して何か思うところがあるようだが……。

 

実は元ブランチメンバーで、数代前の『シャルトルーズ』として活動していた人物。レイヴンという『自由の象徴』を手助けすることに喜びを持っていたが、その自由にふるまった結果振りまかれた無秩序と、悲劇を誰かに押し付ける様を見て、『無責任な自由は悲劇を他人に押し付ける企業の連中と何も変わらない』と理解し、ブランチを出奔した。

今は様々な事情を抱えていき場のない女たちを守るため、『不自由』を自ら選んだ。

 

戦法は逆関節の特徴である跳躍で相手の頭上を取り、プラズマミサイルのけん制、アサルトライフルとリニアライフルで攻撃、スタッガー状態に陥らせてレーザースライサーでズタズタに切り裂くという王道戦術。

強力なランセツとチャージショットが強力な重リニアが本当に強い。

 

名前の元ネタは絶滅種の鳥から。

 

ガルトルニス→絶滅した肉食性の巨大鳥

ジャイアントモア→モア

ドードー鳥→ドードー

 

すべて『飛べない鳥』。どこまでも『無責任な自由で飛ぶ鳥』レイヴンを皮肉って、『守る不自由で飛べない鳥』が自分だと表している。

 




とりあえずまだいけそうなので、2月も土日の週二回更新を目指します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。