祝福の花を君に   作:キューマル式

15 / 65
なんとかストックも残っているので2月も土日の週二回更新でがんばります。


第15話 『メキャン!(いたいけな少年の性癖が壊れる音)』

 ガリア多重ダム……ここはこの周辺への電力インフラを支える重要施設であり、ルビコン解放戦線の防衛拠点の一つとなっている。

 この周辺地域を支配し、コーラル調査のための足場を固めたい大企業『ベイラム』は、その電力インフラを破壊することで支配力を高めることを目的に侵攻を開始した。『電力が欲しくばベイラムに従え』という、実に分かりやすいベイラム上層部の征服者的思考であった。

 その実行部隊に選ばれたのは『レッドガン』を率いる『G1(ガンズ・ワン) ミシガン』総長は、頭の悪いベイラム上層部どもに悪態をつきながらも、任務を果たすために行動を開始。『レッドガン』のコールサインを持つ『G4(ガンズ・フォー) ヴォルタ』と『G5(ガンズ・ファイブ) イグアス』を出撃させ、さらに昔なじみであるウォルターの猟犬たちの実績作りのためと、ウォルターの猟犬たちに依頼を出した。

 都合AC6機による侵攻……ただのACならばどうということはないだろうが、乗っているのが全員、とてつもなく強力なパイロットたちだ。ガリア多重ダムがルビコン解放戦線の防衛拠点とはいえ、それを防ぎきるのは不可能に思われた。

 しかし、ここで予想外の出来事が起きる。

 『G10(ガンズ・テン)』から『G13(ガンズ・サーティン)』までのコールサインを受け取ったハウンズたちがルビコン解放戦線からの寝返り依頼に承諾、『G4(ガンズ・フォー) ヴォルタ』と『G5(ガンズ・ファイブ) イグアス』に襲い掛かったのだ。

 

 

『て、テメェら! 金で裏切りやがったなぁぁ!!』

 

 

 『G5(ガンズ・ファイブ) イグアス』は後ろからフルチャージされたプラズマキャノン2発を叩き込まれて即座にスタッガー状態にされた次の瞬間、チェーンソーによって機体をバラバラにされた。コアを狙わず、パイロットが無事なのはハウンズたちなりの最低限の仁義だった。

 

 

『イグアス!? この野良犬どもがぁぁぁぁ!!?』

 

 

 一瞬で相棒を解体され『G4(ガンズ・フォー) ヴォルタ』は憤るが、そんな彼にも悲劇は襲い掛かっていた。

 大量のミサイルと苦手とするエネルギー兵器の連射が、重装甲が売りである愛機を揺らす。

 

 

『ちくしょうが!!』

 

 

 そう言って応戦しようとするが……。

 

 

『ガッ! クソが……味方が出来たとたんに強気になりやがって!!』

 

 

 ルビコン解放戦線のMTと大差ないようなACが肩のミサイルを一斉発射。それがトドメとなり、最高クラスの安定性を誇る重量タンクがスタッガー状態に陥る。

 

 

『畜生! 畜生が!!』

 

 

 ヴォルタが悪態をつく間にイグアス(相棒)を解体した2機も接近してきていた。

 

 

『ご、5対1で勝てるわけねぇだろぉぉぉがぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

 ガリア多重ダムにヴォルタの叫びが木霊し、脱出装置のレバーを引くのと同時に、ヴォルタの愛機はスクラップへと強制的に変えさせられたのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 彼……ギーシュ=エリックは格納庫に来ていた。

 彼はあの惑星封鎖機構の大型攻撃ヘリに所属していた部隊が全滅させられたあと救助され、このガリア多重ダムの警備に配属されていた。

 AC6機による侵攻……ガリア多重ダムに絶望感が漂う中、そのうちの4機が独立傭兵だったことから寝返りを打診、受諾されたことによって潮目は一気に変わった。

 

 しかし独立傭兵を金で寝返らせたとはいえ、これはルビコン解放戦線の戦いだ。それなのに、彼らに任せて見ているだけというのは彼の中ではあり得ない話だ。

 独立傭兵に任せればいいという、同じくガリア多重ダムの警備をしていたインデックス=ダナムの静止を振り切って出撃した彼は、敵タンク型ACに肩のミサイルを全弾撃ち込んだ。それが最後の後押しになりスタッガー状態に陥ったベイラムのタンクACはそのまま、独立傭兵たちのACによって完膚なきまでに破壊される。

 

 金で裏切ったとはいえ、独立傭兵にも最低限の仁義はある。ガリア多重ダムに攻め込んできたベイラムのACのパイロットは両名とも怪我もなく無事だった。今は無事なパイロットとスクラップ同然になったACをベイラムの基地に送り届けるために2機がベイラムの基地に向かっている。

 その間、このガリア多重ダムの格納庫で件の傭兵の残り二人が休んでいる。あの惑星封鎖機構の大型攻撃ヘリの一件を間近で見ていたエリックは、そのパイロットをどうしても見てみたくなった。

 そして……彼は言葉を失う。

 格納庫に収まったAC2機、そのすぐ近くで手ごろな空の弾薬ケースを椅子と机の代わりにして休む、銀髪の美少女たちの姿がそこにはあった。

 1人はフィーカをすすり、1人はメガネをかけて何かを読んでいる。年は自分よりも少し上だろう、あの自分をことあるごとに年下扱いしてくるリトル=ツィイーと同じくらいだ。しかしツィイーのような乱暴さがない。

 そもそもルビコン解放戦線に参加しようという女性はすべて荒々しい戦士気質だ。そんな女性しかみたことのないエリックにとって、柔らかさと物静かな様子は初めて見る『女の子』という生物であり、その様子はエリックの心を鷲掴みにする。

 

「……ん? 何か……用?」

 

 フィーカをすすっている少女がエリックに気付く。もう1人はチラリとエリックに視線を送った後に、すぐに興味を無くしたのか手元の端末に視線を落とした。

 

「いや、あの……さっきの戦いで一緒に戦ったから……」

 

「ああ……さっきミサイルで援護してくれた解放戦線のACのパイロットなのね……。

 それで……?」

 

「特に用はないけど……」

 

 そう口ごもるエリックを、メガネの少女がチラリと見ると、空いていた弾薬ケースを近くに置いた。『座れ』、ということなのだろう。気を使ってくれているようだ。

 

「あ、ありがとう……」

 

 勧められるままに座ったが会話など特になく、静かな時間が過ぎていく。

 

「す、すごいですね、みなさん強くて……」

 

「……」

 

 『619』と『620』は興味もなさそうに無言だ。

 

「あ、あの……僕、射撃が下手で、ミサイルしかまともな射撃ができなくて……ライフルやマシンガンが使えないなんておかしいってよく言われるんです。

 ライフルやマシンガンをうまく使うコツとかあったら教えて欲しいなー、って……」

 

 無言に耐えかねたエリックは、まったく期待せず世間話のように自分のことを語った。

 しかし、意外にもそれに反応が返る。

 

「……おかしなことじゃない」

 

 『619』はフィーカの入ったコップを置きながら言った。

 

「私もミサイルを中心の戦いをしている。私たちは独立傭兵、どんな状況も想定しないといけない。

 だからバズーカも持っているけど、それでも私のメインウェポンはミサイル」

 

 そう言って見上げた先には彼女の相棒である軽タンク型AC『鈴蘭』の姿があった。

 両肩に12連ヴァーティカルミサイルを装備し、ハンドミサイルも装備している。確かに右手にバズーカも装備しているが、中心はミサイル兵器だ。

 

「……あなたのAC、両肩のミサイルしか武装が無いけれどFCSはしっかりミサイル用にものになっているのはわかっている。あのフレーム構成なら、射撃はライフルよりもミサイルのほうが適切。何故最適を選んでいるあなたが、最適でないアサルトライフルやマシンガンを使えないことでおかしいと言われているのか、私には理解できない……」

 

 言うなればミサイル使い同士のシンパシーだろうか、『619』はエリックにACについて、『53』から習ったアセンの理屈を語る。

 

「『最強のAC』など存在しないが、『最適のAC』は存在する……ACという兵器が優れているのは、すべてが『パイロットに最適の専用機』である点。それだけがACを他の強力な兵器群と互角以上に戦えるようにする最大の長所。

 ……あなたは今間違いなく、『最適の専用機』に近い選択をしている」

 

 色素の薄い、焦点の合っていないようなその瞳……だがエリックはその瞳に吸い込まれるように目が離せない。

 

「あなたの動きは見た。機体の制御が素早く上手い。フレームの腕も格闘戦に強いタイプ……。

 あなたのACはハンドミサイルと格闘兵装、そしてジェネレータに手を加えたのなら強力なあなただけの『専用機』になってくれるわ……」

 

 そう言って、『619』は自分の飲んでいるコップにフィーカを注ぎ足し、エリックの前にコトンと置いた。『飲め』ということだろう。

 『619』にとっては、ただ単純にフィーカを飲ませてやろうという気まぐれを起こしたところに、ほかのコップが無かったので自分のコップを使ったにすぎない。しかし思春期、しかも解放戦線にいるような荒っぽい、女性の前に戦士である面々とは違い、物静かで柔らかそうな銀髪美人お姉さんからこれをやられたらどうなるのか?

 

(こ、これ……間接キス!?)

 

「……飲まないの?」

 

「の、飲みます! 飲みます!!」

 

 いつもなら泥のように感じるフィーカが、エリックには今日は甘く爽やかに感じた。もちろんただの勘違いである。

 

「お、お姉さん。 僕はギーシュ=エリックです。

 な、名前を教えてもらっても……いいですか?」

 

「私は……『ラン』。 独立傭兵『ラン』よ」

 

 『619』が傭兵ライセンスに登録された名前を告げる。

 『617』『619』『620』は結局、ライセンスの名前に機体名の一部をつけることにした。

 『617』が『センカ』、『619』が『ラン』、『620』が『ナコ』という具合である。丁度少女らしい名前になった偶然にウォルターがホッとしていたのは内緒だ。

 

 こうしてエリック少年は自身の目標とするアセンをしることになった。そして同時に『銀髪物静かお姉さん好き』と言う風に、性癖をぐちゃぐちゃに破壊されるに至ったのである。

 

 ちなみに、その隣では興味なさそうだった『620』こと『ナコ』が、見えないように薄く笑っていた。

 しかしそれはほほえましいものではなく、エリック少年の性癖が壊れたことを理解した、愉悦の笑みだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『ハングリー・ワーム』(最終完成型)

パイロット名:『ギーシュ=エリック』

 

R-ARM UNIT:HML-G2/P19MLT-04(ハンドミサイル)

L-ARM UNIT:Vvc-774LS(レーザースライサー)

R-BACK UNIT:BML-G2/P03MLT-06(6連ミサイル)

L-BACK UNIT:Vvc-70VPM(ヴァーティカルプラズマミサイル)

 

HEAD:AH-J-124 BASHO

CORE:VP-40S

ARMS:AA-J-123 BASHO

LEGS:EL-TL-10 FIRMEZA

 

BOOSTER:AB-J-137 KIKAKU

FCS:FCS-G2/P12SML

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 

解説

いたいけな少年だった彼はラン(C4-619)によって性癖を破壊され、『銀髪物静かお姉さん』属性に目覚めてしまった。

同時に、『ミサイルと格闘戦』での自分の戦闘方法に最適解を見出してしまう。『ある理由』によってルビコン解放戦線内にそれなりの数手に入ったアーキバス系のパーツを採用したそれは、彼にとって最終回答となった。まさに彼は青虫から蝶へと羽化を果たすように、戦士としても羽化したのである。

 

『ミサイルと格闘戦』のコンセプトは変わらず、機動性・命中性を強化、そしてレーザースライサーという必殺の一撃を叩き込む構成。

パイルバンカーやチェーンソーはかなりロマンよりだが、成功率の高い高火力の格闘コンボならレーザースライサーの方が上なので、これが使いこなせるならもうヴェスパー上位とかと互角の戦いができるだろう。

 




ガリアダムでは傭兵が裏切ったとしても自分たちのダムなんだからダナムは救援に味方として出てこいよとツッコミいれました。そのため増援として出てきてくれたエリック少年はハウンズ的に好感度大。

ここで少し名前関係の整理。

『C1-53=ミスター出世払い=ヒナタ』
主人公で転移者。重ショットガン+パイルバンカーで殺しに来る変態。

『C4-618=アオイ』
主人公に助けられたヒロイン。四脚バズーカ。

『C4-617=センカ』
ハウンズの長女のお姉様。ガチタン乙女。

『C4-619=ラン』
フィーカ大好き、軽量タンクミサイラー。

『C4-620=ナコ』
伊達眼鏡の腹黒愉悦乙女。エネルギー兵器バランス二脚。

『C4-621=レイヴン=レイ』
ハウンズの末っ子。低身長で身体は大豊娘娘。無知ムチっ子。
軽量二脚チェーンソーウーマン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。