ハウンズのみんなが『壁越え』を達成したらしい。しかし、その過程は俺の知るAC6の流れから大きく変わっていた。
原作で『壁』攻略戦を試み失敗したベイラムは戦力不足のため『壁』攻略戦そのものを中止した。結果、原作ではベイラムの攻撃で戦力が低下していたところを漁夫の利として『壁』を攻略したアーキバスは、まったく戦力の減っていない万全の状態の『壁』を相手にすることになり、第一次攻略作戦は多大な損害を受けて失敗に終わる。
しかし政治的理由からもはや攻略しなければ沽券に関わるアーキバスの『ヴェスパー
アーキバスによって『先行突撃』という名の特攻を強いられたはずのハウンズたちだが、逆に『壁』の戦力を次々撃破。一応最後には『ヴェスパー
そして俺とアオイの傭兵としての名声もかなり上がっていた。特にあのストライダーの護衛任務を成功させたことが大きかったのか、ルビコン解放戦線からの信用が上がったらしい。俺とアオイに名指しで依頼が来ていた。その依頼内容とは……『捕虜救出作戦支援』。
俺はその依頼を見た瞬間、即座に受諾を決めていた。例えアオイやカーラが反対したとしても、俺はこの依頼を受ける。
なんと言ってもこの依頼、コーラルの真実に深く関わりながらも諦めに沈んだ老人、ルビコン解放戦線創始者である『サム=ドルマヤン』と接触できるものだからだ。彼との接触は。間違いなく俺の目指す『眠たくなるほど陳腐なハッピーエンド』には必要になるはずだ。
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『ミスター出世払い、アオイ、ブリーフィングを開始するよ』
『こちらはルビコン解放戦線だ。君たちに仕事を依頼したい。
依頼内容はベイラムの捕虜収容所に捕まった同志たちの救出、その護衛だ。いままで所在の特定ができなかったが、これでやっと同志たちを救い出せる。
我々が捕虜救出用の装甲ヘリを救出ポイントまで飛ばすので、その護衛をお願いしたい。
同志が捕らえられているのは収容所の3つのポイント、そこに強行着陸し同志の救出を行う。
捕虜の中には我らが『帥父』がいる。我々解放戦線には無くてはならないお方だ。
あのストライダーをアーキバスとベイラム、そして正体不明の敵たちから守った君たちの実力に期待している。どうしても任務を完遂してほしい。
頼む、どうか我々に力を貸してくれ』
『ルビコン解放戦線で『帥父』といえば『サム=ドルマヤン』のことさ。
半世紀前の『アイビスの火』を生き残った『灰被り』の1人。元ドーザーの凄腕AC乗りでね、『アイビスの火』での混乱と惑星封鎖という抑圧に反発して闘争を続けていた。
何もかもを焼かれた上に惑星封鎖機構という重圧に押しつぶされそうになっていたルビコニアンにとって、その姿は希望だったのさ。そんなドルマヤンの元に人が集まりだして出来たのが『ルビコン解放戦線』ってわけだ。
でもドルマヤンは変わった。前線に立つことはなくなり、今ではルビコン解放戦線の活動にも消極的だ。それでも創始者としてルビコン解放戦線の連中にとっては精神的な象徴なんだが……そんな重要人物の救出作戦に投入するのが装甲ヘリ1機に、護衛は金で雇った独立傭兵2人とはね。
しかも今のルビコン解放戦線の軍事的指導者である『帥叔 ミドル=フラットウェル』にとっては活動に消極的なくせにルビコン解放戦線内で精神的支柱であり求心力のあるドルマヤンのことを快く思っていない、2人は不仲だってのは有名な話さ。
これはもしかすると、『成功させる気のない依頼』なのかもしれないね……』
「裏の事情が面倒そうなことは理解しているよ。
だが、個人的にどうしてもこの依頼は受けたい。例え俺1人でもだ」
『……アオイはどうする?』
『受ける。 特にヒナタがどうしても必要と判断するなら……』
『……わかった、依頼を受諾するよ。
まず間違いなく面倒くさい話だろうけど、無事で帰ってきな、あんたたち!』
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『作戦領域に到達した。 護衛は頼む、独立傭兵!』
ベイラムの捕虜収容所、それを見下ろす小高い丘に俺とアオイは到着していた。
「アオイ、俺が先行して強襲する! アオイはヘリの直衛を!」
『了解』
俺の『日向葵』は中軽量級に分類され、かなり速いスピードとそれを支え続けることのできるタフなジェネレータを積んでいる。
即座にアサルトブーストを起動、捕虜収容所へと突っ込んでいく。
『なっ……!?』
『て、敵しゅ……』
敵が言い終わる前に両手のショットガン、そしてプラズマミサイルを発射して敵MTを沈黙させる。
『解放戦線の連中だ! 増援を……』
「させんよ」
その現場指揮をしていた盾持ちのMTに、換装を終えていたパイルバンカーをぶち込み盾ごと串刺しにする。
そのまま動きを止めずに、動き出した重四脚MTにアサルトブーストで突っ込みキック、両手のショットガンを全弾叩き込んでから、こちらもきっちりパイルバンカーでとどめを刺した。
「第一ポイントまでの敵の制圧は完了した」
『こちらはもうすぐ第一ポイントに到着するが……速いな、独立傭兵ヒナタ』
「ここはまだ序の口だろう。 ここでコケていたら話にならない」
『違いない』
俺は装甲ヘリとの通信を終え、今度はアオイに通信する。
「俺はこのまま先行して、進行ルート上の敵戦力の排除を続ける。
アオイはこのままヘリの直衛を頼む」
このミッション、原作のAC6の中でも難しい部類に入るミッションだった。ブリーフィングを見て普通に装甲ヘリの護衛に努めた結果、簡単にヘリが爆散したAC初心者は多いはず。
このミッションのヘリはとにかく目標地点に向けてバカ正直に飛んでいく。途中に待ち構えるMT部隊にもガトリング砲台にも一切お構いなしで真っ正面から一直線に、だ。
原作でのこのミッションの正解は、第一ポイント周辺の敵を素早く制圧したら、『しばらくヘリの護衛を放棄して、先にルート上の敵をできる限り潰して回ってからヘリに合流する』というものなのだ。とくにやっかいな増援のMT部隊を載せた輸送ヘリとガトリング砲台は確殺しなければならない。
また、これらを潰して回っている間もヘリは攻撃を受けるため、どれだけ手早く敵を潰してヘリに戻るかというスピードも求められる。何しろここには最後のボスとしてあのレッドガンの副総長『
とにかくこの作戦、スピードが命だ。
『わかった、気をつけて……』
「ああ、行ってくる」
アオイに答えて『日向葵』のアサルトブーストを起動、高速で捕虜収容所をすっ飛んでいく。
さて、説明したとおり原作AC6ではこれは非常に難しい部類のミッションだった。しかし、それはあくまで原作AC6が常に単機でのミッションだったからだ。今回はアオイという信頼できる僚機がいてヘリの護衛を完全に任せられるので、このミッションの難易度はグッと下がり楽になるはず、なのだが……どうにもさっきから、チリチリとした嫌な予感が拭えないのだ。
(この修羅の世界、嫌な予感だけはよく当たるからなぁ……)
アサルトブーストで高速で飛行、MTを満載し今まさに飛び立とうとしていた輸送ヘリ2機を至近距離からショットガンを撃ち込んで叩き落とす。『敵を乗せたヘリは敵が出てくる前にヘリごと潰す』……AC世界の常識である。
そのまま動きを止めずにガトリング砲台群へと突っ込むと、プラズマミサイルとパイルバンカーを駆使して砲台を次々に破壊していった。
通信を聞いていると第一ポイントでルビコン解放戦線の紅一点『リトル=ツィイー』の救出に成功し、ヘリは第二ポイントへと向かうようだ。現れる敵はアオイの『曼珠沙華』が危なげなく排除してくれている。
ガトリング砲台は全滅、目についたMTも片付いた。そろそろヘリに合流しようかと思った、その時だ。
『てめぇ……土着どもと雇われの犬が、好き勝手やってくれやがったな!』
「!? このタイミングでACの反応だと!?」
慌ててセンサーアイを向ければ、爆破炎上する輸送ヘリを押しのけるようにして現れる重量級タンク型ACの姿があった。
そしてさっきの声には聞き覚えがある。
「まさか、『
何故こんなところにいる!? しかも何故いつもと全然違うタンク型ACに乗ってるんだ!?
だが、こいつをそのままにしたら装甲ヘリが危険だ!
「アオイ、そっちを頼む! 俺は現れたACを叩く!!」
そう即座に判断した俺は、イグアスのACに向けてブーストを吹かせた。
『レッドガンにケンカを売ったことを後悔しやがれ、野良犬野郎!』
「行かせるか、狂犬が!」
『日向葵』とイグアスのAC、双方のショットガンが同時に火を噴いた……。
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今日のアセン
AC名:『
パイロット名:『
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:HD-011 MELANDER
CORE:BD-012 MELANDER C3
ARMS:AR-011 MELANDER
LEGS:LG-022T BORNEMISSZA
BOOSTER:なし
FCS:FC-008 TALBOT
GENERATOR:DF-GN-06 MING-TANG
EXPANSION:なし
解説
ガリア多重ダムの一件で手酷くやられた『キャノンヘッド』と『ヘッドブリンガー』。ストライダー破壊に赴き、アーキバスとルビコン解放戦線、そして謎の敵勢力との戦いでボロボロになった『オーバーライン』。
この3機は敵の襲撃の確率は低いだろうという判断から、この捕虜収容所で警備の名目で修理中だった。
しかしそこで捕虜奪還の襲撃が起こる。修理中で機体のない3人だったが、血の気の多いイグアスが出撃を主張、お互いの損傷の少ないパーツをつなぎ合わせればまともなAC1機になるのではないかと考え、急遽組まれた機体。3機を使った『3個1』。
頑丈なタンク脚部と重ショットガンと連装グレネードキャノンを『キャノンヘッド』から、レイヴンによってコア以外をボロボロにされた『ヘッドブリンガー』からはコアとパルスシールドとFCSとジェネレータを、そして『オーバーライン』からは頭部と腕部と重リニアライフルを1つに纏めた。
完全に今突発的に組まれた機体であり調整も何もない状態。それをいきなり稼働させ戦闘が出来るというのはイグアスの強化人間としての能力の高さの表れである。
実はそこまで悪い機体ではなく、むしろ普通に強力な機体。
盾持ちのタンクというだけで相手からすると面倒この上ない。さらに武装もすべて強力、普通に高水準な機体となっている。
パルスシールドの特性と使いこなす技量が一番の問題か……。
とにかく、イグアスは真剣に乗り換えを考えてもいいかもしれない。
??「そこでわた……オールマインド製の機体ですよ、イグアスさん!」
こんなのが沸く前に。
今回登場したACが、多分戦場でACが消えない理由のひとつ。
戦時中のシャーマン戦車じみた2個1、3個1が簡単にできる兵器とか純粋にすごい。