祝福の花を君に   作:キューマル式

20 / 65
第20話 『次も敵とは限らないからここは退いていいのよ(チラッ』

 アサルトブーストを起動し、そのACへと向かって飛びながら『日向葵』が両手のショットガンを放つ。

 だが張られたパルスシールドによりダメージを軽減させた敵ACは、反撃にとこちらと同じショットガンを撃ってきた。それをとっさのクイックブーストで回避するが、回避しきれなかった散弾数発が『日向葵』の装甲を叩いた。

 

『喰らえ、おらぁ!』

 

「くっ!?」

 

 発射される連装グレネードキャノンをジャンプで回避する『日向葵』。同時に『日向葵』のプラズマミサイルを発射するも、安定性抜群のタンク脚部はびくともしない。

 だがこのタイプのタンクは地上戦には強いが空中戦は苦手な部類だ。空中戦を中心に戦っていけば優位に戦えるだろう。

 

(とはいえ、あまり時間をかけてはいられないか……)

 

 今は護衛作戦の真っ最中だ。アオイがいてくれるとはいえ、護衛対象から長時間離れるのはダメだろう。

 なら、速攻で決めるしかない。都合のいいことに俺はそういうのは得意な方だ。

 

(幸い、あのACの構成だと明確に『隙』になりそうな瞬間はあるからな)

 

 どう考えても本来のイグアスの機体ではないAC。どういう経緯の機体かは知らないが、だからこそ明らかな『隙』がある。

 

 

『ちぃ!? ちょこまかしやがって!

 これでも喰らいやがれ!!』

 

 

 そう言って左手の重リニアライフルのチャージに入った。重リニアライフルのチャージショットは弾速も速く、威力も衝撃力も高い強力な攻撃だ。

 しかし……。

 

(ここだ!)

 

 俺は迷わずアサルトブーストを全開にして急接近、そして両手のショットガンのトリガーを引いた。

 

 

『ぐわぁっ!?』

 

 

 衝撃散弾が全弾叩き込まれ、タンク脚でも無視できないほどのACS負荷が襲いかかる。シールドの展開はない。いや、『出来ない』。

 シールドの使用中は左手武器を使うことは出来ない。唯一の例外は全方位型のコーラルシールドだが、相手の装備はただのパルスシールドだ。だから左手の重リニアライフルを使う時には遠慮無くシールドなしの状態で攻撃を叩き込める。

 

 

『このぉ! 死ねよや!!』

 

 

 発射されようとするチャージリニアライフル。だが、このクロスレンジは俺の世界だ。それこそ強化人間としての能力をフル活用したコンマ以下の精度のクイックブースト、それで紙一重でリニアライフルを回避した俺は換装し、炸薬装填の完了した必殺のパイルバンカーをえぐり込んで解き放った。

 

 

「ぶち抜く!!」

 

 

 ズドムッ!!!

 

 

 超加速した特殊合金製の杭は敵ACのコアの右脇腹から斜めに脚部まで貫いた。脚部の右駆動系と履帯が纏めて吹き飛ぶ。

 

 

『てめぇ! クソがッ!!』

 

 

 それでも戦意の衰えないイグアスはこちらに右手のショットガンと連装グレネードキャノンを向けようとするが、脚部の右半分が完全に死んでいて旋回がまともに出来ていない。

 

「遅い」

 

 俺は冷静にジャンプして頭上をとると、リロードの終わった両手のショットガンを発射。全弾命中し、敵ACは沈黙した。

 

 

『畜生……あのメス犬に続いてこんな野良犬にまで! まさか新型の強化人間なのかよ!』

 

 

 ……どうやらイグアスはよほど運がいいらしい。ACはジェネレータの誘爆も起こさないし、コアの機能も死んでおらず、少なくともしゃべれるくらいには元気らしい。イグアスの恨み言が通信機越しに聞こえる。

 

「……おい、おまえ『G5(ガンズ・ファイブ) イグアス』だったな」

 

『……なんだよ?』

 

 俺からの返しがあるとは思っていなかったのだろう。イグアスは少し困惑した様子だ。

 

「言いたいことはいくつかある。

 まず俺は最新どころか最古、第一世代型強化人間だ。 第四世代強化人間のおまえのほうが性能は上のはずだよ」

 

『なっ!? 第一世代型の骨董品(アンティーク)があの動きだってのかよ!?』

 

「『骨董品(アンティーク)』か……まぁ、俺のことをどう言おうが構わんがな」

 

 そこまで言うと、声に全力の殺気を込めて言い放つ。

 

「ただ……テメェの言う『メス犬』ってのは『レイヴン』のことを指してるのか?

 あれは俺にとっては『妹』みたいなもんだ。

 俺の妹をメス犬呼ばわりとか……犬のように容赦なくブチ殺すぞ、ドチンピラ」

 

『……ッ!?』

 

 通信機越しでもイグアスの震えを感じる。俺はそれがわかりほくそ笑んだ。

 

「今日は急ぎのミッションだからな、このまま見逃してやる。

 運がよかったな、ドチンピラ」

 

 それだけ言うと俺はアオイたちと合流するためにアサルトブーストを起動させる。

 

『てめぇ……忘れねぇ、忘れねぇぞ、『骨董品(アンティーク)野郎』!!』

 

 通信機から聞こえた恨み言は、俺は無視した。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 俺がアオイに合流したときには、すでに最後の救出対象……つまり『サム=ドルマヤン』の救出が始まっていた。

 

「アオイ、状況は?」

 

『……ん、問題ない。

 ヒナタが頑張ってくれたから……』

 

 アオイの言うとおり、装甲ヘリの損傷はほとんどなかった。これなら『G2(ガンズ・ツー) ナイル』が襲ってきてもなんとかなるだろう。

 

『コーラルよ、ルビコンと共にあれ』

 

『……その警句の、一体何を知っているというのか。

 すべては消えゆく余燼にすぎないのだ』

 

 どうやら『サム=ドルマヤン』の救出は成功したらしい。通信の先ではそれを喜んでいるものの、とうの『サム=ドルマヤン』が冷めた様子で周りが戸惑っていることがわかる。

 ……今後のために、少しだけ目立っておこう。

 

「コーラルよ、ルビコンと共にあれ。

 コーラルよ、ルビコンの内にあれ。

 その賽は、投げるべからず」

 

『? 独立傭兵?』

 

 いきなり俺が全員に聞こえるように通信したのでルビコン解放戦線側が戸惑っている。しかしただ1人、『サム=ドルマヤン』だけが俺に興味を示す。

 

『今のは……独立傭兵か?』

 

「独立傭兵のヒナタだ。

 すべては消えゆく余燼かもしれないが、今を必死で生きるのは悪いことじゃないと思うぞ。

 もっとも……『賽を投げようとするやつ』は叩かないといけないだろうがな」

 

『なん……だと?』

 

『帥父、お急ぎください! 侵略者どもの増援が来る前に脱出を!』

 

『……そうだな、話は後にしよう。

 独立傭兵のヒナタ、儂はお前に興味が沸いた。 ここから出て話す時を楽しみにしている』

 

 『サム=ドルマヤン』を救出した装甲ヘリが離陸していく。

 すでに周辺の敵は排除済みだ。あとはこの捕虜収容所を出るだけである。

 

『独立傭兵、協力に感謝する』

 

「その言葉はミッションが終わってからだぞ」

 

『だが施設の出口ももうすぐだ。 作戦は成功したも同然……』

 

 だからなんでこの修羅の世界の住人どもは死亡フラグをポンポン立てるんだよ!

 そんなこと言ってるから……。

 

 

『通らんよ、それは』

 

 

 通信とともに現れる敵性反応。それはこれから装甲ヘリが向かっていく先である渓谷に現れていた。

 しかも今の通信相手は……!

 

 

『アオイ、ミスター出世払い! レッドガンだ!

 しかも副総長『G2(ガンズ・ツー) ナイル』の率いる部隊だよ!』

 

 

 カーラからの通信、やはり覚悟していた通りの展開だ。

 

『あれだけ派手に施設を襲撃してくれたんだ。

 こうして待ち伏せの部隊を配置するくらいはする』

 

 「ですよねー」としか言えないド正論である。それを聞きながら、一応ルビコン解放戦線側にも確認をとってみることにした。

 

「俺とアオイの契約範囲は捕虜収容所までなんだが……どうする、追加依頼するか?」

 

『金は用意する! 追加依頼でヘリの敵部隊突破を援護してくれ!』

 

 そう言うと装甲ヘリは渓谷へ向けて発進していく。

 

「俺とアオイに任せて、安全確保されるまでここで待っててくれた方が嬉しいんだがなぁ!

 アオイ!!」

 

『分かってる……!』

 

 役割分担は同じだ。俺が先行して蹴散らし、アオイがヘリの直衛として俺の撃ち漏らしを片っ端から吹き飛ばす。

 アサルトブースト全開で悠々ヘリを追い抜くと、俺はそのまま待ち構える敵MTたちに突っ込んだ。

 こちらに飛んでくる火線を横すべりで回避しながら肉薄、そのままキックを叩き込む。

 

『うわぁ!?』

 

 蹴られたMTがボールのように転がり、ほかのMTを巻き込んで倒れる。その集団に向かってプラズマミサイルを発射、プラズマ爆発がMTたちを包み込む。

 

『こいつ!?』

 

『この独立傭兵、相当やるぞ!?』

 

『当たり前だ。 これまでに『G5(ガンズ・ファイブ)』や『G8(ガンズ・エイト)』に煮え湯を飲ませた逸材だぞ。

 その傭兵は俺が対処する』

 

 

 そして現れたのは重量二脚型AC『ディープダウン』、『G2(ガンズ・ツー) ナイル』の機体である。

 

 

『派手に暴れてくれたな。『G8(ガンズ・エイト) テンリュー』の件といい、ミシガンの目に留まるわけだ。

 もう一つのウォルターの猟犬たち』

 

「そりゃどうも!」

 

 言葉を交わしながらも、互いの間にショットガンとリニアライフルの弾丸が飛び交う。

 

(……残弾が心許ないな)

 

 COMからの警告音、すでに両手のショットガンの残弾は30%ほど。護衛任務もさることながら、予想外だったイグアスとの戦闘が響いている。

 とはいえ、目の前にいるのはレッドガンの参謀役、AC乗りとしても凄腕のナイルだ。弾をケチって勝てるほど甘くはない。

 俺は得意のクロスレンジ戦に持ち込もうとするが……。

 

『その手には乗らんよ』

 

 速度では圧倒的に『日向葵』に劣る『ディープダウン』だが、巧みに弾幕を張り、俺の接近を邪魔してくる。

 

『相手の土俵で戦う気は無い』

 

「さすがレッドガンの副総長、重量機なのによく動く」

 

 原作AC6では、この優秀すぎる参謀を、こんな序盤のどうでもいいような戦いで失ったことでレッドガンは取り返しがつかないレベルでボロボロになっていくが、納得の能力だ。

 俺は油断せず、残弾と相手の動きから頭の中で戦術を組み直す。

 その時だ。

 

『独立傭兵ヒナタ、こちらは無事安全圏まで離脱した!』

 

 ルビコン解放戦線からの通信が入る。

 そうだ、原作AC6と違い、俺にはアオイという強い味方がいる。アオイの『曼珠沙華』は俺の予想を遥かに超えて暴れまわり、ルビコン解放戦線の装甲ヘリが安全圏に到達するまでレッドガン部隊を撃破し続けたようだ。AC6でプレイヤー同士の協力ミッションがあればこんな感じなんだろう。

 

『……どうやらここまでらしいな。

 待ち伏せを食い破られ、これ以上追撃したところで被害が増すばかりだ』

 

「決着がお望みなら付き合うが?」

 

『上に立つものは負けが確定したなら、何があろうとそれ以上の損害を食い止めるのが仕事だ。その損害には俺自身も入る。その手の挑発には乗らんよ。

 それに……次も敵とは限らんだろう。

 ミシガンだけではない。俺も独立傭兵『ヒナタ』と『アオイ』の名、覚えておく。

 次はベイラムからの依頼を受けてほしいものだ』

 

 そう言ってアサルトブーストを起動させ、ナイルの『ディープダウン』は離脱していった。

 

「さすがはレッドガンのナンバーツー、引き際もいいな」

 

 それが何故、原作AC6ではこんなところで戦死していたのか、コレガワカラナイ。

 ゲーム的にはまだチャプター1だぞ。レッドガンの主要人物早く死にすぎだろう。

 とにかく、これでミッションはクリアだ。

 『サム=ドルマヤン』(とおまけでリトル=ツィイー)の救出に成功し、しかも『G2(ガンズ・ツー) ナイル』の生存。そしてある意味ではラスボスであるイグアスとの予想外の邂逅……。

 

(いまさらながらイグアスにはとどめを刺しておくべきだったかもしれないな……)

 

 とはいえ、ここまで俺の知る原作AC6を引っ搔き回してしまっては、何がどうなるか分かったものではない。

 

(まずはサム=ドルマヤンと話をしよう……)

 

 そんなことを思いながら、俺はアサルトブーストを起動し、アオイたちに合流するのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『日向葵』(原案)

パイロット名:『C1ー53』

 

R-ARM UNIT:LR-037 HARRIS(重リニアライフル)

L-ARM UNIT:LR-037 HARRIS(重リニアライフル)

R-BACK UNIT:Vvc-70VPM(ヴァーティカルプラズマミサイル)

L-BACK UNIT:HI-32:BU-TT/A(パルスブレード)

 

HEAD:NACHTREIHER/44E

CORE:VP-40S

ARMS:AR-011 MELANDER

LEGS:LG-011 MELANDER

 

BOOSTER:BST-G2/P06SPD

FCS:FCS-G2/P05

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 

解説

主人公機の原案の一つ。『中量二脚でバランスのよい万能型』をコンセプトに造られている。

コンセプト通り、弾速の早い重リニアライフル、けん制にヴァーティカルプラズマミサイル、接近戦用のブレードとバランスよくはなっている。

しかも重リニアライフルのチャージショットが強力で隙をついて叩き込めればかなり強い。

実際、作者もミッションやアリーナで使用しており、十分使える水準の機体にはなっている。

 

今回は作品で紹介する機体が無くなってしまったため、未登場の原案機を紹介。

バランスよく纏まっているため十分強いがバランス型だけに戦闘に華がない。そのためパイルバンカーという一撃必殺兵器を搭載した現在のタイプを主人公機として採用、本機はお蔵入りになった。

本作の登場人物たちのACは幾度もの試行錯誤の上、小説の構成上使いやすそうな構成にしている。

そのためこういった原案機が複数存在するので、今回のようにどうしても紹介する機体が無くなったときに紹介予定。

 

 

 




今回、本気で紹介するアセンが無くなってしまったので登場予定すらない機体の紹介になってしまった。
先に出す予定の機体を紹介してネタバレになるのもあれだしなぁ……。

MSVみたいなヴァリエーション機として楽しんでもらえれば幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。