よくコジマとコーラルで脳を洗った後にお読みください。
アオイとリトル=ツィイーが奇妙な友情を育んでいるそのころ、俺はルビコン解放戦線の重要人物と面会を果たしていた。
『サム=ドルマヤン』……ルビコン解放戦線の創始者にして精神的な支えとなる人物だ。
『サム=ドルマヤン』は面白い経歴の人物だ。彼は元々『ドーザー』……コーラルドラッグを頭にキメてラリったヤク中の若者だった。そんな無法者の彼がいつの頃からかコーラルドラッグから身を引き、ルビコン3への抑圧と戦う戦士となり、彼の元に人が集まって一大反抗勢力『ルビコン解放戦線』が形成された。
半世紀前、ルビコン3のほとんどを焼き払った大災害『アイビスの火』を生き残ったことから齢はどう若くても70歳近くのはずだ。しかし目の前にいる本人からは肉体的な衰えを感じることは出来ない。いまだにルビコン解放戦線の最強の戦士だということに納得だ。もしかしたら、強化人間手術を施して肉体的な若さを維持しているという可能性すらある。
しかしその肉体とは裏腹に、その目は深く濁っていた。それは長年に渡り惑星封鎖機構からの抑圧を脱却することが出来ず、しかもコーラルの再発見によってアーキバスとベイラムという二大企業による新たな侵略という現状への心労ゆえ……普通の人の目にはそう映るだろう。
それがまさか半世紀前の『アイビスの火』で別離を経験した女性……しかも人間では無く『意思をもつコーラルである実体のない女性』が焼け死んだことによって鬱になって自棄になっているとは誰も思うまい。
『意思持つコーラル』……『Cパルス変異波形』とも呼ばれる彼女らと『交信』するためには『脳にコーラルが強く作用している』ことが絶対条件だ。俺をはじめとする第四世代型までの旧型強化人間は脳にコーラル管理デバイスが埋め込まれている。脳にコーラルを作用させることによって脳の知覚拡張や思考高速化などを実現することが、俺たちのような旧型強化人間の特徴だ。そこに致死量に近いコーラルの奔流を浴びたことで、ウォッチポイントに存在した『Cパルス変異波形』……『意思持つコーラル』である女性『エア』と交信が可能になったのが原作AC6の主人公である『C4-621』である。
同じように『死ぬかもしれないレベルのコーラルが脳に作用した場合、『Cパルス変異波形』との交信が可能になる』可能性は高い。
恐らく若き日のドルマヤンは相当な無茶をやったのだろう。致死量寸前のコーラルドラッグを摂取して生き残り、『意思持つコーラル』である女性『セリア』と出会ったのだ。
しかし……『コーラルに意思がある』というこの世界において最大級の秘密に気付く可能性があるのが俺たちのようなコーラル使用型の旧型強化人間か、コーラルドラッグでラリったヤク中だけというのが何というかこの修羅の世界を物語っているようで面白い話だ。
とにかく、俺の目の前には『サム=ドルマヤン』がいる。話が話だけにドルマヤンは人払いをして、ここには俺とドルマヤンの2人きりだ。
「さて……独立傭兵の『ヒナタ』だったな……」
「はい」
「……何を知っている?」
さて、どこまで話すか?
……恐らくだが俺の望む『眠たくなるような陳腐なハッピーエンド』には、ドルマヤンの協力は必要不可欠だ。それにルビコン解放戦線との強力なコネにもなる。ここは話せるだけ、俺の推測も交えて話しておこう。
「俺の中にはいくつもの人生の記憶がある。
ここではない時代で、平和に暮らしている人生……。
コーラルが宇宙へ蔓延し、宇宙が汚染し尽くされるのを防ぐために、ルビコン3ごと再びコーラルを全て焼き払う大災害を起こす人生……。
企業どもを追い出し、ルビコン3を解放する人生……。
そして賽を投げた……『コーラルリリース』を成し遂げた人生……。
少なくとも俺の中にはその4つの人生の記憶があるんだ。
その中であんたが昔、『セリア』と交信していたことも知っているし、あの警句の全文と本当の意味も教えてもらった。
『コーラルリリースをさせるな』……それがあの警句の真の意味だっていうのもな」
「ふぅむ……」
ドルマヤンは考え込むように白いあごひげを撫でる。
「誰にも話したことのない『セリア』の名を知っていて、しかも『コーラルリリース』のことも知っている……頭から否定する気はないが……あり得るのか、そんな話が?」
「コーラルは究極の情報導体だ。 コーラル影響下で死亡した場合、その人物の記憶……『魂』とも呼べるものを保存することができるほどのな」
これは賽投げルート最後、コーラルリリース直前にラスボスであるオールマインドと一体化したイグアスが、『自分の中には主人公にやられたやつの残り滓がたくさんいる』という発言をしていることと、イグアスの発言の間ラスティなど別のキャラクターの声がすることからも間違いないだろう。
『コーラルには人の『魂』を保存するほどの情報記録能力がある』のだ。
「そんなコーラルが宇宙の環境下で指数関数的に無限に増殖してブラックホールが形成されるほどの密度になり全宇宙を席捲し、人類がコーラルと一体化した情報存在へと進化するのが『コーラルリリース』。
それが達成されたとき彼女はこう言ったんだ。
『私たちはもういつでもどこにでもいる』」
それは彼女……エアの語った言葉だ。
そしてその言葉の意味することは……。
「俺はこの言葉の意味は……
『コーラルには究極的には時空間すら越えて情報を交信する能力がある』
という意味じゃないかと思っている」
原作AC6の3周目、『コーラルリリース』が成し遂げられ、人の身体を捨てACの身体に宿った主人公にエアは『戦闘モード、起動します』という言葉とともにAC6の物語は幕を下ろす。
これは完全に俺の妄想だが、あれは『時空間を越えた別の世界の『C4-621』との戦い』が始まるという意味なのではないか?
そしてAC6プレイヤー同士がお互いのACで闘争し続ける『NEST』の正体なんじゃないかと考察する。
俺はこの世界で目覚めてからずっと、自分に起きた現象について考え続けてきた。その答えがこれだ。
つまるところ
『コーラルには究極的には時空間すら越えて情報を交信する能力がある』ので、
『どこかの時空で起こったコーラルリリースによって全ての時空にコーラルが干渉可能』になり、
『令和日本のAC6プレイヤーの『俺』とこの世界の『C1-53』がコーラルによって繋がってしまった』
、というのが俺の結論である。
そしてもっとメタ的なことをいえば原作AC6の主人公の、『周回』という行為そのものが実はこれじゃないかと思っている。
「だからどこかの時空で達成された『コーラルリリース』の影響で、いくつもの、今からすると『未来』に当たるような情報まで、コーラルによって偶然にも俺の中に流れ込んで来たんじゃ無いかと思ってる。
まぁ、俺の介入でもう俺の知ってる『物語』とはかなり乖離してるけどな」
「……やはり賽を投げた向こうにあるのは、人にとっての災禍だったか」
「人がコーラルと一体化した全く新しい『ナニカ』になるっていうんだから、『共存』とも『進化』とも言えなくはないよ。
死も老いも超越しただろうしな」
ただそうなったら『永遠に闘争しましょう』となる原作主人公とエアちゃんは少し考えてほしいが。
「でも、俺はこの肉の身体で人の形のままでいたい。
人の形は人を愛するのに適した形をしてるんだよ」
「なんともロマンチックな言葉よ。
……それで、独立傭兵ヒナタよ。 お前はそれらを知って何を目指す?」
鋭い、歴戦の戦士としての眼光で俺を見るが、俺は手をひらひらと振り、何てことはないように答える。
「もちろん、目指すのは『眠たくなるような陳腐なハッピーエンド』だ。
救いたい人を救う、コーラルとの共存を果たす、そして……『コーラルリリース計画』を阻止する。
その全部を目指す」
「……出来ると思うのか?」
「さぁな、若い頃のあんたが無理だったことだ。情報のアドバンテージがあっても出来るかどうかと言われたら、やり方すら分かりませんっていうのが本音だよ。俺の持ってる記憶にもそんな都合のいい世界はなかったしな。
でも……こうやって協力者を集めていけば、成功率は少しずつでも上がるはずだ。俺はそう思って行動している」
「……儂に協力を求めたいなら、まずはすべての要となる『意思持つコーラル』との『交信』を実現させろ。
話はそれからだ」
「分かってる。どう考えてもそこがスタートラインだからな。
ただ、こっちからも2つほど。
まず1つ目。このルビコンで侵略者であるアーキバスとベイラムを野放しにしてもどうしようもないぜ。少しやる気を見せてもいいんじゃないか?
そして2つ目。傭兵支援システムの『オールマインド』には気をつけてくれ。 今、『コーラルリリース計画』を進めてるのは連中だからな」
言いたいことを言って、俺は部屋を出る。次に会うとしたら、それはエアとの交信を果たした後だ。
こうして、俺とドルマヤンの初めての邂逅は終わったのだった……。
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部屋に残ったドルマヤンは、先ほどの未来を知るという不思議な青年、独立傭兵『ヒナタ』のことを思う。
……若い。
『意思持つコーラル』である『セリア』と出会い、彼女たちコーラルとの共存を夢見たあのころの自分よりも、なお若い。
しかし、その瞳は本物だった。あのころの自分と同じく、必ずや目的を成し遂げるという、狂気じみた本気を宿した瞳だった。
「……面白い!」
思わず呟く。胸に熱いものがこみ上げてくるのを止められない。
『アイビスの火』で『セリア』が焼け死に、ともに死ねずに残ってしまった燃え殻だと思っていた自分にも、まだ燃えるものが内に残っていたのかと少し驚いた。
「あの青年は儂のように無知で一人なわけではない。知識もあり、協力者の重要性を理解している。
そして……明らかに当時の儂より強い」
自分との差に『もしかしたら』という想いが芽生える。
それに何より……『コーラルリリース』が実現した場合の自分の予想以上の災禍を聞き、それを為そうとしているものが暗躍しているという。
「『コーラルリリース』……なんとしてもそれはさせんぞ!」
この日、燃え残った燃え殻に火がつき、大火へとその姿を変えた……!
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『あの『アイビスの火』により焼け出された我らルビコニアン、しかしそこに救いの手が差し伸べられることは無かった!
惑星封鎖機構はルビコン3を危険地帯と封鎖し、この惑星を丸ごと我らに対する牢獄にしたのだ!
そこに今回のコーラルの再発見の報を受けた大企業たちが侵略を開始、我らへの搾取を始めた。
その搾取で子らは飢え、もはやルビコニアンに『豊かさ』というものは残されてはいなかった。
……ああ、確かに我らは『アイビスの火』に焼かれ、豊かさとはほど遠い『灰被り』であろう。
だがいかに灰にまみれようとも、我らはこのルビコン3を故郷とするルビコニアン!
故郷の『豊かさ』を奪われるいわれなどどこにもない!!
灰をかぶり苦汁をなめ、それでも生きることを選んだ我らは、我らを害するもの全てに抵抗する!
灰被りて我らあり! ルビコンに住まう同志よ、ともに奮起しよう!
そして取り戻すのだ、奪われた『豊かさ』を!
ルビコンよ、コーラルとともにあれ!
コーラルよ、ルビコンとともにあれ!』
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……なんかあの捕虜救出作戦からしばらくしたら、やる気になりまくったドルマヤンのじいさんが演説をぶち上げてルビコン解放戦線の士気が爆上がりだ。
そして本人も戦線にたっているんだが……
(つーかあの赤い光、『ムーンライト・レッドシフト』じゃねぇか! おまけにあのブースターであれだけ動けてブースター炎がコーラルレッドってことは、ジェネレータは高出力コーラルジェネレータを積んでやがる!
封印してたのを引っ張り出してきたのかよ!?
本気になりすぎだろ、あのジジイ!!?)
映像記録に映る赤い光波とアーキバスの高出力ブースターでの高速戦闘の消費エネルギーを計算して、俺はその結論にたどり着く。正直に言って、俺でも戦いたくないと思える強さのドルマヤンが映像の中で企業の部隊を相手に暴れ回っていた。
こうして俺とアオイの関わったルビコン解放戦線の『捕虜救出作戦』は、企業にとっては散々な結果になったのだった……。
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今日のアセン
AC名:『アストヒク・S』
パイロット名:『サム=ドルマヤン』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:AH-J-124 BASHO
CORE:AC-J-120 BASHO
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:AL-J-121 BASHO
BOOSTER:ALULA/21E
FCS:FC-008 TALBOT
GENERATOR:IB-C03G:NGI 000
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
解説
ヒナタたちの活躍によりベイラムの捕虜収容所から救出された後、ヒナタの『眠たくなるような陳腐なハッピーエンド』を目指すという思いに火を付けられたドルマヤン。
その本気の現れとして、封印していたコーラル光波ブレード『ムーンライト=レッドシフト』と『高出力コーラルジェネレータ』を引っ張り出してきた。さらにブースターをアーキバスから鹵獲された高出力なものに変更、歴戦の戦士の名に恥じぬ、ルビコン解放戦線最強の戦士へと舞い戻った。
この状態になったドルマヤンは、ヒナタも戦いたくないと思えるほどに強い。
機体名の『S』はセリアの『S』。結局はセリアの件は引きずり続けているらしい。
キャラクターの強化機体、今回は『フロム世界のじいさん=強者』なドルマヤンの強化案。
設定的に技研パーツを持っていておかしくないキャラなので、本作で始めて技研パーツを積極的に使用した。
バショウ腕を使った二刀流であり、殺意がとてつもなく高い。特にバショウ腕+ムーンライトレッドシフトが極悪で、弾数制限なしの小型バズーカじみたナニカになっているのがたちが悪すぎる。
全ての武装で積極的にスタッガー状態での格闘武装を直撃させることを考えたアセンである。
2月の投稿はここまで。
流石にストックが心許ないので3月は毎週日曜12時の週一回の更新にします。