この世界においてACは最強の兵器というわけではない。パーツ交換によってあらゆる状況に対応できる汎用性を評価されているだけの兵器だ。
兵器の質だけでいうのならLCやHCを含め、ACの上などごまんといる。だからこそAC1対MT30というのは、普通にはMT30に軍配が上がるはずだ。
しかし、現実として幾多の傭兵たちが戦場でACを駆り、赫奕たる戦果を挙げていた。それは何故か?
それは先にあげた汎用性のおかげで、どのようなパイロットであっても最適なACが存在するからだ。つまりACはすべて、『専用機』なのである。パイロット個人に完全に最適化されたACは時にカタログスペックなど簡単に覆す働きをする。
良くも悪くもパイロット次第……兵器としては不安定極まりないが、だからこそ己の力一つで生き抜く傭兵たちの最高の武器と成りえたのだ。
つまり何が言いたいのかと言うと……パイロットの技量次第でどこまでも強くなるACに乗りさえすれば、俺はこの程度の状況でみじんも不安を感じてはいない。
「いくぞ……!」
『ダストボックス』が空中へと飛び上がる。
30機ものMTとはいえ、そのすべてが戦闘用MTというわけではない。というより、奴らの本業はジャンク拾い……つまり作業用のMTを持っているのが普通であり、戦闘用MTを持っていること自体がそもそもおかしい。
そこはここは修羅の世界なのでいいのだが、要は30機のMTの大半は作業用MTにマシンガンや単発のミサイルを外付けした程度の代物だということだ。
「盾持ちの戦闘用MTが4、重四脚MTが1、残り25機は逆関節のワーカーMTか……」
空中で敵の陣容を確認する。ただのジャンク拾いの無法者集団が重四脚MTを持っていることが正直意外だが、この程度はAC6本編のレッドガン戦に比べればなんてことはない。
まずは数を減らすべく、ワーカーMTに向けて空中からライフルを連射する。対AC用徹甲弾は作業用MTの薄い装甲を瞬く間に食い破り、機体内部から炎が吹き上がる。
『野郎よくも!』
『相手は1機だ! 囲め囲め!』
数の利を生かそうと俺を囲むように指示を出すが、そんな高度な連携がただの無法者集団ごときにできるはずがない。
ライフルの1マガジンを撃ち切り、空中から着地した『ダストボックス』。同時にブースターで横に滑りながら、マガジン交換の始まったライフルをハンガーに仕舞い、代わりに装備したハンドガンと左手のマシンガンを周囲に向かって乱射して近くのMTを蜂の巣にしていく。
そのままライフルのマガジン交換が完了、代わりにマガジン交換の始まったハンドガンと交換して装備し、ライフルを撃ちながら盾持ちMTに迫る。
『バカめ、そんな豆鉄砲効くかよ!』
盾を構えてライフルを防ぐMT。その分厚い盾にライフル弾は弾かれるが、動きが止まったことが運の尽きだ。
俺はアサルトブーストを起動し急加速、そのまま『ダストボックス』は重量の乗ったキックを叩き込む。
『うぉぉ!?』
ご自慢の盾が粉砕し吹き飛ぶMT。そこにマシンガンと持ち替えたパルスブレードを振るった。光刃に肩口から切り裂かれ、戦闘用MTが爆散する。
『そんな、若頭が!?』
どうやらこのMTに乗っていたのは地位の高い人間だったらしい。それを容易く葬られ敵に動揺が広がっていく。
「好都合だ……」
その隙を見逃す手はない。俺は次の獲物に向けてトリガーを引いた。
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そのまま戦闘は順調に進み、敵MTの数はすでに10機を割っていた。
「ん?」
その時、レーダーからアラートが聞こえた。高速接近する反応がある。この速度は……!
『派手にやってるじゃねぇか!』
現れたのは1機のACだ。大豊製の重装甲フレーム『TIAN-QIANG』シリーズ一式に、両手両肩に大豊製の
《敵ACを確認。AC名『ウォー・アンサー』、パイロット名『クレバー・コナー』。強力な火器を装備した重装甲機体です》
機体搭載のCOMが敵ACの情報を報告する。
『やっときてくれたか!』
『おう、報酬は弾んでもらうぜ!』
どうやらヴァルチャーズの雇った独立傭兵のようだ。それが俺の『ダストボックス』に向けて突っ込んでくる。
『出来る腕だって聞いたが……そんな旧式で勝てるわけねぇだろ!
いくぞオラぁぁ!』
そのまま腕のバズーカを発砲。対AC用形成炸薬弾が迫る。しかし弾速も遅く、見え見えの攻撃などそうそう当たるものではない。クイックブーストで回避と同時に反撃のライフルを発砲する。
しかし相手の分厚い装甲を前に跳弾を起こし、ダメージには至らない。その無傷の状態に気を良くしたのかクレバー・コナーが叫ぶ。
『ヘヘッ、怖いかクソッタレ! 当然だぜ、木星戦争帰りの俺に勝てるもんか!』
「試してみるか? こっちは半世紀寝太郎だ」
『ならそのまま寝心地のいい棺桶に送ってやるよ!!』
左右のバズーカ、そしてハンドグレネードを次々に発射してくる。しかし、これらの武器は二脚で使用する場合反動制御のために一瞬動きを止める必要がある。その性質上、対処は容易い部類だ。
『な、なにぃ!? 一発も当たらないだと!?』
「どんな強力な攻撃でも、当たらなければ意味が無い」
バズーカとハンドグレネードの攻撃力は一級品だから決して油断は出来ないが弾速の遅いそれらは、クイックブーストを使えば回避しやすい。そして次弾のリロードが長いという隙にアサルトブーストを起動、『ダストボックス』は『ウォー・アンサー』に急接近する。そして性能保証射程まで距離を詰めたところでライフルとマシンガンを連射した。今度は跳弾が発生することはなく、ダメージを与え始める。
『な、なんであんな旧式相手に当たらねぇんだ!?』
分厚い装甲によってダメージはそれほどでもないが、確実にAPを削っていっている。対する俺には自慢の大砲が当たることはなくクレバー・コナーが困惑する。
そしてハンドガンの徹甲衝撃弾が装甲を抉り、ついにスタッガー状態に陥った。
「これを待っていた!」
動きの止まった相手にパルスブレードをチャージ、フルパワーの光刃を叩きつける。
『ぐおぉぉぉ!?』
APを大きく削るものの、重装甲が売りの機体だけあって今だ健在だ。しかし追撃のライフルとマシンガンはゆっくりと、しかし確実にそのAPを削って行っていた。
『バカな! あんな旧式相手に、この俺が押されてるってのか!?』
「ACの性能差は戦力の絶対的な差ってわけじゃない。
いつだってACの力は、パイロットの技量次第だ」
『くそぉぉぉぉぉ!!』
自棄になったかのようにバズーカとハンドグレネードが乱射されるが、ただでさえ当たりにくいのに冷静さを欠いた状態の射撃など当たりはしない。
「終わりだ」
丁寧にライフルとハンドガンで攻撃を続け、ついに2度目のスタッガー状態に陥った『ウォー・アンサー』。そこにトドメとなるパルスブレードを振るう。
『お、俺の最高にクレバーな機体がぁぁぁぁぁ!?』
パルスブレードの光刃はジェネレーターブロックを引き裂きジェネレータが誘爆、各所を連鎖爆発させながら『ウォー・アンサー』は倒れ込んだ。
「さて……」
『う、嘘だろ!? あんな旧式ACが……!?』
『ば、化け物……』
増援のACを撃破したことで敵がパニックを起こしている。そんな相手を潰すのは容易いことだ。
ほどなくして、その場で動くものは俺の『ダストボックス』だけになっていたのだった……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……終わったな」
ヴァルチャーズとの戦いを終え、俺はホッと息をついた。しかしこれからが大変だ。どうしたものか……。
そう俺が物思いに更けていると、再びレーダーからアラート。高速接近する反応がある。数は3。
「新手……しかもこの速度はAC3機だと!?」
さすがにこれ以上の連戦は無理だ。俺は逃走を決意し、アサルトブーストを起動させようとしたその時だ。
『待て、こちらに交戦の意図はない』
通信が入る。この渋いオッサンの声は……。
『知っているかもしれないが自己紹介をしよう。 俺は『ハンドラー=ウォルター』、今日君の助けた猟犬の飼い主だ』
そうしている間に、高速接近してきていたAC3機が俺の前に降り立つ。RaD系フレーム、そして全機が『いくつもの手綱を握る手』のエンブレムを付けている。
間違いない、『C4-617』『C4-619』『C4-620』からなる『ハウンズ』部隊だ。
『礼をしようと思いそちらのことを調べたところ、ヴァルチャーズの襲撃計画を知って救援に向かわせたが……どうやら必要はなかったようだな』
どうやら『C4-618』を助けた礼として、救援に駆けつけてくれたようだ。
しかし、これはこちらとしても最高の展開だ。
「俺は『C1-53』、第一世代型強化人間だ」
『第一世代型強化人間! しかもこの声は……!?』
「? どうした?」
『……一つ尋ねるが、君は強化手術前の記憶は持っているか?』
「いや、手術前の記憶はすべて無くしている。 俺が分かっているのは強化手術後に冷凍保存され半世紀以上寝ていたことぐらいだが……」
『……そうか』
今の質問に何の意味があったのか、ウォルターの声色に何やら寂しさやら悲しみやらを感じる。かく言う俺も、何か胸の中をざわつかせるものが去来していた。
……まぁ、今は深く考えても仕方ない。話を続けよう。
「ハンドラー=ウォルター、俺に礼をしたいというなら頼みがある。
俺を……雇ってくれないか?」
『何?』
「俺の飼い主だったデイブ氏は、先のヴァルチャーズの襲撃で死亡した。
今の俺はフリーだ。だからこそ、俺を雇わないか?
そちらのハウンズを助けたときの戦闘と今の状態で、俺の腕は分かっているはず。条件はそこのハウンズたちと同じでいい」
『いいのか? せっかく首輪が外れ、自由になったというのに、この悪名高い俺に雇われるなど……』
何を言っているのやら、AC6プレイヤーとしては『ハンドラー=ウォルター』以上の雇い主は存在しないことはよく知っていた。
「……俺は助けた時、パイロットの姿を見た。噂のような使い捨てにするのなら、あそこまで身綺麗な状態にはしていない。
だから、俺たち旧式の強化人間の尊厳を認めている人物だと判断した」
『……』
「それに……何故だろう、俺はあんたと話をしていると胸がざわめく。
ただの直感だが……あんたを助けるべきだと、強く思う。
俺はこの直感を信じる」
『……そうか、わかった。
『C1-53』、お前を雇おう。 俺の目的のために『仕事』をしてもらう』
ウォルターからの返答までしばらく間があった。何かしらの想いがあったようだが……今の俺には窺い知れない。
「了解した。
これからよろしく頼む、ハンドラー=ウォルター」
そう言うと、ハウンズのAC3機が俺を先導するように動き出した。
俺もそれを追うように動き出す。同時に、運命までもが動き出すのを俺は感じていた……。
「あ、少し待ってくれ。
こいつらの使えそうなパーツを回収していく」
『抜け目ないな、『C1-53』』
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今日のアセン
AC名:『ウォー・アンサー』
パイロット名:『クレバー・コナー』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:DF-HD-08 TIAN-QIANG
CORE:DF-BD-08 TIAN-QIANG
ARMS:DF-AR-08 TIAN-QIANG
LEGS:DF-LG-08 TIAN-QIANG
BOOSTER:BST-G2/P04
FCS:FCS-G2/P05
GENERATOR:DF-GN-06 MING-TANG
EXPANSION:なし
解説
木星戦争帰りを自称する独立傭兵『クレバー・コナー』のAC。
木星戦争時、敵の分厚い装甲にライフルやマシンガンの弾が効かないことを多々経験した結果、『装甲分厚くして、装甲関係ねぇ爆発武器持ってりゃ最強だろ!』という
機体パーツのほとんどが大豊製になっているが、これはセールスをした大豊コンパニオン『大豊娘々』に鼻の下を伸ばしているうちにいつの間にか購入させられたため。これも賢い答えなのかどうかは不明である。
すべての武装が『硬直あり・リロード長い』となっており、重量二脚である本機では非常に使いにくい。一言でいうと『硬くしたリトル・ツィイーのユエユー』。武器をパージしてルビコン神拳で戦える分、ユエユーの方がマシという説すらある。
ミッションやアリーナで試したが、動きは劣悪ながら火力と装甲は本物なので案外ごり押しで何とかなることもあるが……素直に武装を見直した方がいい、ネタ機体の域を出ないACである。
色んな設定考えながらそれに合ったAC組むの楽しい!
こういう遊びができるからアセンは面白い。