祝福の花を君に   作:キューマル式

33 / 65
体調不良のため、来週更新はちょっと未定です。
子供が園に通い始めると病気を持ち込んで家族全員全滅するとか……マジでした


第33話 『背中を見せた方が悪い』

 

「どういうことなんだい、これは……?」

 

 

 『RaD』の居住ブロックへと侵攻していた『ジャンカー=コヨーテス』の部隊を指揮する女傑、元ドーザー組織『アラクニッド』の女頭目だった『ペギー=リー』はつぶやいた。

 

 彼女の父『ジャン=リー』は木星戦争において一部隊を任せられるような優秀な指揮官でありAC乗りだった。しかし戦場での部下の暴走を止められず、部下の略奪行為の責をとり独立傭兵となって故郷であるルビコン3へと帰還した。密航によって帰還したルビコン3の秩序はほぼ崩壊しており、力が支配するような修羅の世界だ。

 とはいえ、彼はしっかりと士官としての教育を受けた人間である。ドーザーごとき従えるのは造作も無いことだった。かくして『RaD』と同規模レベルの中規模ドーザー組織『アラクニッド』を立ち上げ、その頭目として君臨する。しかし、彼も寄る年波には勝てず、ACとともに頭目の座を娘のペギーに譲り渡した。

 当初は女ということで反発するものもあったが士官としての教育をうけた父の教育をしっかりと受け、AC乗りとしてだけで無く指揮官としての能力も持つ彼女はその実力をもってそういった反発するものを黙らせた。そうしてドーザー組織『アラクニッド』とAC『アラクニッド』を継いだ彼女は変わらず活動を続けていた。

 

 しかし、より巨大勢力である『ジャンカー=コヨーテス』の脅威は如何ともしがたいものがあった。そんな折に来た『ジャンカー=コヨーテス』からの傘下への誘い、これを彼女は受ける。『ジャンカー=コヨーテス』と争うことはどう考えてもデメリットが大きいし、何より……毛嫌いしているカーラの率いる『RaD』への攻撃というのが気に入った。

 彼女は以前、『RaD』へ兵器を注文したはいいものの値段で折り合いがつかず、喧嘩別れならぬ銃撃戦別れになっていた。以降カーラと『RaD』を毛嫌いしている。しかもペギーのACエンブレムは『黄色と黒の蜘蛛』であり、カーラのACエンブレムが『ピンク色の蜘蛛』であることも気に入らない。これは単純に偶然なのだが、『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』とはいったもので、とかくカーラ関係のものを彼女は総じて毛嫌いしていた。

 

 そんな毛嫌いしているカーラと『RaD』を潰せるチャンス、しかも与えられた戦力はどこから調達したのか、すさまじく多い。これだけ数の上で有利なら下手な戦術は必要ない、そのまま力押しで押し潰した方が確実だと攻めていたわけだが……いつの間にか『RaD』側に増援でACが現れ、戦況が押し返され始めている。

 

 

「工場ブロックと食料プラントの制圧に向かった連中はどうしたんだい!!」

 

「連絡はありやせん」

 

 

 部下からの報告、この状況で連絡がつかないことを通信機の故障など好意的に考えられるほど彼女の頭はお花畑ではない。敵に殲滅されたのだ。

 

 

「逆方向から『RaD』の中枢コントロールセンターに向かった『レッドガン』の2人は!!」

 

「そっちも『RaD』のAC2機と交戦状態に入ったって連絡以降、音沙汰なしで……」

 

 

 手間取っているのか撃墜されたか……どちらにせよ、これで自分たち正面と同時に多方面から攻めることで電撃的に『RaD』の重要施設を破壊するという作戦は見事に失敗している。

 

 

「『RaD』にこれだけの数の腕の立つAC乗りどもがいるなんて……今までの情報とはまるで違うじゃないかい!?」

 

 

 頭を抱えたくなるペギー。

 その時。

 

 

『おりゃぁぁぁ!!』

 

 

 追加装甲と盾を構えた重装甲MTが、レーザーランスの突進(チャージ)を受けてまるでボールのように吹き飛んだ。

 

 

『アオイ、道が出来た! 敵の親玉のACを頼む!』

 

『……ありがとう、ダチ公』

 

『いいってことよ、ダチ公!』

 

 

 そしてアサルトブーストを起動させて飛び込んでくる重四脚AC……アオイの駆る『曼珠沙華』だ。

 

 

『……あなたが指揮官だね。

 カーラさんの指示であなたを……殺す!』

 

「あははは、こりゃ傑作だね!

 こんな小便臭い小娘にあたしが殺せると思ってんのかい、あの女(カーラ)は!」

 

 

 通信機からの声で、相手がまだ年若い小娘であることを知ったペギーはひとしきり笑った後、顔を憤怒に染める。

 

 

「あたしを舐めてるみたいだね、あんたも、あの女(カーラ)も!

 あんたみたいな小娘ごときがあたしを殺そうなんて大口叩いたんだ。じっくり後悔して死にな!!」

 

『……死ぬのはあなた』

 

 

 『曼珠沙華』と『アラクニッド』、2機の四脚ACが同時にブーストを全開にしお互いに迫る。そして殺意とともにトリガーを引いた……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 グリッド086外郭通路ではセンカの『鳳仙花』にレイの『桜花』、そして侵攻してきた『レッドガン』の2人、イグアスの『ヘッドブリンガー改』とヴォルタの『キャノンヘッド改』が一時的な共闘関係を結んでいた。

 敵は4人を取り囲む姿の見えない光学迷彩のステルス機、『ゴースト』の集団である。

 

 

『ちぃッ! ウザッてぇ!!』

 

『イグアス、気をつけろ。

 こいつら姿が見えないだけのカカシ野郎じゃない、火力もかなりのもんだ!』

 

 

 ゴーストのレーザーウィップと高出力レーザー砲はかなりの威力だ。それをスキャンをしなければどこにいるかもわからない状態で振り回してくるのだ。戦う相手からしたら常に奇襲を受けているようなものである。それに対し初見のイグアス、ヴォルタのコンビはかなりのストレスを募らせていた。

 

 

「スキャンデータ、リンク……レイ、次はあいつを」

 

「了解、センカお姉様……」

 

 

 一方のセンカとレイのハウンズコンビは『ゴースト』はすでに戦ったことのある相手である。スキャンで敵の位置を割り出したら再度ステルス状態になる前に示し合わせた集中砲火で一気に破壊するという効率的な攻略法を見いだしていた。

 擬態を見破られた『ゴースト』が、速度が遅いだろうセンカの『鳳仙花』にレーザーウィップを繰り出してくるが、その瞬間横合いから突っ込んできた『桜花』のショットガンが全弾直撃、ひるんだところをキックで蹴り飛ばす。そして目の前に転がってきた哀れな敵に、『鳳仙花』の両手のガトリングガンがトドメをさした。

 

 

『イグアス、こっちもコンビネーションで行くぞ!』

 

『ああ、わかった!』

 

 

 センカとレイの戦いを見ていたヴォルタの言葉に、イグアスがうなずく。

 

 

『そこだ!』

 

 

 スキャンで判明した敵機に『キャノンヘッド改』の連装グレネードキャノンが突き刺さる。ひるんだところをイグアスの『ヘッドブリンガー改』がアサルトライフルとミサイル、そして新たに装備したガトリングキャノンを撃ちながら接近していく。そして格闘戦の間合いに入った瞬間、左手のパルスブレードを抜き放ち、それで『ゴースト』を切り捨てた。

 イグアスはいままで左肩にはパルスシールドを装備し、その防御に頼った引き撃ちを戦法としていた。しかしその戦法を易々と食い破るレイやヒナタとの戦いによって積極的に前に出る……ブレードによる格闘戦を考えた装備へと変更していた。元々格闘戦の方が適性があったのか、装備変更をしてからの調子は上々である。

 

 

『ヴォルタ、そっち行ったぞ!』

 

『おう、任せろ!』

 

 

 今度は『ゴースト』がヴォルタの『キャノンヘッド改』に接近、レーザーウィップを振るう。しかし強化した装甲を前に、損傷は軽微だ。お返しにと、近接防御攻撃用として装備した左手の重ショットガンと左肩の拡散バズーカが直撃、ひるんだところを右手のハンドグレネードランチャーで仕留めた。

 イグアスとヴォルタのコンビは着実に、今までの経験を糧に成長をとげていた。しかし、それでも見えない敵というのは厄介だ。

 

 

『ぐぁっ!?』

 

『イグアス!』

 

 

 左右からの高出力レーザー砲の直撃を受けたことでスタッガー状態に陥る『ヘッドブリンガー改』。そこにトドメとレーザーウィップを振り上げた『ゴースト』が迫る。イグアスに回避の手段はない。

 

 

「……援護するね」

 

 

 しかし、その一撃がイグアスに叩き込まれることはなかった。レイの『桜花』がショットガンと両肩の実弾オービットを撃ちながら接近、そして『ゴースト』をチェーンソーの刃で斬り伏せる。

 同時に、イグアスに高出力レーザー砲を叩き込んだ『ゴースト』にはセンカの『鳳仙花』からフルチャージされたプラズマキャノンが叩き込まれ、耐えきれずに爆散する。

 『ゴースト』は残り一機。そこにシステムの再起動を果たしたイグアスの『ヘッドブリンガー改』が突っ込む。

 

 

『どぉりゃぁぁぁ!!!』

 

 

 パルスブレードの直撃でスタッガー状態に陥る『ゴースト』。そこに至近距離からのアサルトライフルとガトリングキャノンが叩き込まれ、ハチの巣になった『ゴースト』は倒れ込むと爆散した。

 

 

『見たか、メス犬。 俺はお前の援護なしでもやれるんだよ!』

 

「……そうだね」

 

『……でもまぁ、さっきのは礼を言っておく。 ……ありがとよ』

 

「そんなの……いい。 共闘だし、味方の援護は当然……」

 

『へっ!』

 

 

 あのガリア多重ダムで不意打ち気味にレイに一撃で撃破されたことへの不満、それが己の実力を間近で見せつけることで晴らされ、気分がいい。

 しかし、そんなイグアスのいい気分も次の瞬間までだった。

 

 

「それじゃあ共闘も終わったし……攻撃、するね」

 

『……へっ?』

 

 

 イグアスが間の抜けた声を出した次の瞬間『桜花』のフルチャージされたチェーンソーの刃が、『ゴースト』を撃破し『桜花』に背中を晒していた『ヘッドブリンガー改』に容赦なく叩き込まれた。

 その凶悪な刃はコアと脚部の接続部に叩き込まれ、『ヘッドブリンガー改』は上半身と下半身が泣き別れとなって地面に転がり、機能停止する。

 

 

い、イグアース!!? おいテメェら!!』

 

 

 そのヴォルタの声を遮るように、『鳳仙花』からフルチャージされたプラズマキャノンが『キャノンヘッド改』の背中に叩き込まれる。

 

 

「共闘はあの敵を倒すまでの約束。

 あの敵を全滅させた以上、交戦再開でしょう……?」

 

『そりゃそうだがもっとこう……あるだろ!!

 お互いの共闘に賛辞を送って『さぁ始めるか』って感じで始めるとかよぉぉぉ!!!』

 

「? よく分かりません。

 敵の敵はしょせん敵なので、最後の敵を倒しきる直前に、こうして背後をとれる位置に移動してましたし……」

 

『ああそうかい! さすが傭兵らしくしたたかだな、ちくしょうめ!!』

 

 

 ヴォルタは悪態をつきながらも冷静に状況を確認する。

 背後をとるように『鳳仙花』が攻撃を仕掛け、『ヘッドブリンガー改』を仕留めた『桜花』も戻ってきている。2対1な上、イグアスのこともある。『ヘッドブリンガー改』は上半身と下半身が両断され機能停止しているもののコアには損傷は無い。ジェネレータの暴走の様子もなく、イグアスは無事だろう。だが、戦闘に巻き込まれたら無事の保証はできない。

 

 

『わかった! もう俺たちの負けだ! 降伏する!!』

 

 

 その言葉に、センカとレイの攻撃が止んだ。

 

 

「……私たちは攻めてきたドーザー組織『ジャンカー=コヨーテス』は一片の容赦もなくぶち殺せとカーラさんから言われてますが?」

 

『今の俺たちは連中に金で雇われただけの、ただの傭兵だ!

 『ジャンカー=コヨーテス』からの依頼は放棄する。もう連中とは関係ねぇ!

 それより俺やイグアスの命の方が大事だ!』

 

「……今、カーラさんから許可が出た。 降伏は受け入れていいって。

 ただ状況が落ち着くまでは身柄は拘束しておけって」

 

『ああ、それでいい。 イグアスのほうも頼むぞ』

 

「わかった……」

 

 

 こうして簡単な小遣い稼ぎのつもりだったイグアスとヴォルタは、その身柄を『RaD』に拘束されることになるのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『ヘッドブリンガー改』

パイロット名:『G5(ガンズファイブ) イグアス』

 

R-ARM UNIT:RF-025 SCUDDER(重アサルトライフル)

L-ARM UNIT:HI-32:BU-TT/A(パルスブレード)

R-BACK UNIT:SML-G2/P03MLT-06(6連ミサイル)

L-BACK UNIT:DF-GA-09 SHAO-WEI(ガトリングキャノン)

 

HEAD:HD-012 MELANDER C3

CORE:BD-012 MELANDER C3

ARMS:AR-012 MELANDER C3

LEGS:LG-012 MELANDER C3

 

BOOSTER:BST-G2/P04

FCS:FC-008 TALBOT

GENERATOR:DF-GN-06 MING-TANG

 

EXPANSION:PULSE ARMOR

 

 

解説

ガリア多重ダムでの一件で破壊された『ヘッドブリンガー』、その修理が完了するもレイやヒナタに完敗したことはイグアスにとって許しがたいことだった。

そんな折、同じく機体修理が完了した『G8 テンリュー』のAC『オーバーライン』と調整を兼ねた模擬戦を行う。

経験の差から楽勝と思っていたイグアスだったが、テンリューの果敢に前に出て行く戦い方にあわや敗北というところまで追い詰められた。

それを見ていた『G1 ミシガン』から、「貴様が臆病なへっぴり腰だから無様を晒すんだ。 テンリューのようにブレードを担いで突撃ぐらいやって見ろ!」と煽られ、いつもの反骨心そのままに「やってやらあ!」とパルスブレードを使ってみたところ、これがイグアスにしっくりと来た。元からミシガンはイグアスに高い格闘戦の適性があるのを見抜いていたのだろう。

かくして本人の知らぬ間にレッドガン上層部の思惑の通りの成長を遂げたイグアスは武装の構成を変更するに至ったのである。

 

フレームは全て元の『ヘッドブリンガー』と変わらないが武装を大幅に変更。

元はパルスシールドを使ってのアサルトライフル・ミサイル・マシンガンの引き撃ち戦法だったが、パルスブレードでの近接格闘戦を重視し、アサルトライフルとミサイルというバランスのいい装備はそのままに、今までマシンガンで行っていた近距離での弾幕兼ダメージソースとして肩にガトリングキャノンを装備した、より攻撃的な構成になっている。

全く同じフレームながら、武装が違うと戦法もガラリと変わるというACの好例である。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。