祝福の花を君に   作:キューマル式

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第36話 『SFもののお約束だけど……コスト高くね?』

 

 『日向葵』の両手のショットガンと『ナイトフォール』のアサルトライフルが激しく飛び交う。

 『日向葵』から放たれた3連プラズマミサイルを飛び上がって避けた『ナイトフォール』が、3連デュアルミサイルを放つ。左右から挟み込むように迫るそれをクイックブーストでステップを踏みながら物陰に隠れて『日向葵』はやり過ごした。

 両機ともブーストを緩急つけて使用し、致命的な攻撃は的確に避けながら様子見の射撃戦を行っている。

 そんな中で、俺は違和感に気付いた。

 

 

「フレームの外見は『RaD』製だが……コイツ、見た目通りの性能じゃないな」

 

≪相手は想定される機体能力数値を1.3倍ほど上回っています≫

 

「あの機体……『ナイトフォール』は我々が徹底したカスタムによって従来機のそれとは別物になっています」

 

 

 エアの声は聞こえていないだろうが、ケイトはエアの言葉を補足するように言った。

 

 

『我々の崇高な行動には、それ相応のものが必要なのは当然のこと。従来機と一緒には思わないでもらいたいものです。

 もしや卑怯と思いましたか?』

 

「いいや、俺たちのやってる『闘争』にはひきょうもらっきょうもない。 手があるのならいくらでもやるのは当たり前だ。

 でもな……どんな代物を持ち出そうとも、それを乗り越えてくるのが『イレギュラー』って言われる連中だって知ってるか?」

 

 

 射撃戦から一転、アサルトブーストを起動し物陰からでると、『日向葵』は高速で『ナイトフォール』に接近する。

 

 

『愚かですね。『レイヴン』のもっとも得意とするのは近接戦闘。

 装備を見ても分からないのですか?』

 

「もちろん知ってるさ」

 

 

 『日向葵』を迎撃するように『ナイトフォール』もパイルバンカーを構えている。しかし、俺は『日向葵』を途中でアサルトブーストを停止、接近戦の構えを見せていた『ナイトフォール』からクイックブーストで高速後退すると、ショットガンとプラズマミサイルの射撃を行う。

 

 

「……お互いの得意な近接距離での格闘戦闘を仕掛けるように見せかけて相手を誘い、あくまで引き撃ちですか。

 こすからい戦い方ですね」

 

 

 『ナイトフォール』の構成と戦術は原作AC6の段階で嫌というほど知っている。

 積極的なキックにアサルトアーマー、そして連装グレネードキャノンを使用してくることで近距離で相手をスタッガー状態にすることに長けており、そこへ一撃必殺のパイルバンカーを叩き込んでくるという、ほぼ俺と同じ考えの戦い方をしてくる。

 原作AC6全体が相手をスタッガー状態にすることに重きをおいてゲームがデザインされており、いつも通りにそれを狙って不用意に接近すると、逆に同じようなスタッガー狙いの猛攻を受け逆襲を受けるというのがこの『ナイトフォール』なのである。だからこいつが一番嫌がるのが接近戦と見せかけて一定距離を保ち、引き撃ちで削っていくことなのだ。

 

 

「戦いの基本、『常に相手の嫌がることをしろ』、だ」

 

「……あなたらしい言葉ですね、ヒナタ」

 

 

 しかし敵もバカではない。こちらの狙いに易々とは乗ってくれない。

 『ナイトフォール』がアサルトブーストを起動、『日向葵』との距離を詰めてくる。そして連装グレネードキャノンを放ってきた。

 完全には避けきれず、爆風によるACS負荷が『日向葵』を襲う。同時に『ナイトフォール』のコアの機構が動き出す。

 

 

『勝機ですね』

 

「これは……!」

 

 

 なりふり構わず両手のショットガンとプラズマミサイルの射撃と同時にクイックブーストでの全速後退。しかし『ナイトフォール』のアサルトアーマーが起動し、そのパルス爆発に『日向葵』は巻き込まれスタッガー状態に陥った。

 

 

『終わりです』

 

 

 勝利を確信した『ナイトフォール』がパイルバンカーを構えながら接近してくる。

 

 

「来ますよ! どうするんですか!」

 

「騒ぐなよ。 エア!」

 

≪……システム再起動完了!≫

 

「アサルトアーマー、起動!!」

 

 

 システム再起動と同時に、『日向葵』がアサルトアーマーを起動しパイルバンカーを構えていた『ナイトフォール』がパルス爆発に巻き込まれ、その動きを弱めた。その瞬間、必殺のパイルバンカーはクイックブーストでステップした『日向葵』を外して空を切る。

 あとコンマ数秒でもシステム再起動が遅れていれば死んでいたところだが、これは俺の計算通りだ。さっきのなりふり構わぬクイックブーストでの全速後退は、このコンマ数秒を稼ぐためのものだったのである。

 

 

「踏み込みの間合いが甘いんだよ、偽物!」

 

『くっ! レイヴン、反撃を!!』

 

 

 オペレーターの言葉に反応したのか大火力の連装グレネードキャノンを撃ってくる。ACSはいまだ負荷状態で『日向葵』は直撃の大ダメージを受けるが……肉を切らせて骨を断てばいいだけだ。

 至近距離で両手のショットガンが火を吹き、衝撃散弾が『ナイトフォール』へ叩き込まれた。パルス爆発でACS負荷のたまっていたところにこれは致命的だ。『ナイトフォール』は『日向葵』の眼前という最悪の、そしてヒナタの計算したとおりの場所でシステムダウンを起こしたのである。

 

 

「終わりだ! 貫けぇぇ!!」

 

『レイヴン!!?』

 

 

 ズドンッ!!

 

 

 レイヴンのオペレーターの声が響く中。俺はチャージの完了したパイルバンカーを『ナイトフォール』へと叩き込んだ。『ナイトフォール』の右脇腹から上へ、特殊合金製の杭が頭部を貫通していた。

 特殊合金製の杭で串刺しにされ制御システムである頭部を完全に破壊された『ナイトフォール』は、『日向葵』に身体を預けるようにして機能を停止する。

 

 

「ッ!!!?」

 

 

 その時、『ナイトフォール』の壊れたコックピットハッチが開き、俺はその中身を見てしまう。そして絶句した。

 コックピットの中には人は居なかった。ただ不気味な赤い、おそらくコーラルと思われる液体の詰まったシリンダーと、こそに浮かぶ『肉塊』とも呼べる『何か』があった。

 

 

「……おい、アレは何だ?」

 

「……」

 

「答えろ、ケイト!!」

 

「……私の姉たち……コーラル型遺伝子調整強化人種、その『失敗作』です……。

 人の形になれなかった『失敗作』でも強化人間としての潜在的な戦闘能力はありますから、その利用法です……」

 

 

 ……なるほど、アーキバスの『ファクトリー』と同じだと考えればいい。あれも捕まえた人間の両手足を切断してダルマにした挙げ句、MTなどの戦闘メカの生体CPUに加工して組み込む施設だった。それと同じでケイトたちのような成功例の前の失敗作は人の形にすらならず、ACの制御用生体CPUとして加工し、再利用というわけだ。

 どおりでまったくしゃべらず、オペレーターだけがべらべらしゃべるわけだ。

 

 

「これが俺たち強化人間の果ての果ての回答かい?

 よくもまぁ、こんなもんで翼がどうこう言えたもんだな、おい……」

 

『……『失敗作』となった命であろうと力があった。

 だから高く飛べるかもしれない、そう思い鋼鉄の身体(アーマード・コア)を与え、『レイヴン』の伝説に利用した。

 『レイヴン伝説』は『ブランチ』のような閉塞感を持つ者を呼び寄せ、手駒として使えるように出来ますので。

 『失敗作』と呼ばれた姉妹たちに役割を与えた、私たちなりのせめてもの手向けです』

 

 

 ……こいつらなりに『失敗作』となった姉妹たちへ、その命を無駄で終わらせたくないという思いはあったようだ。しかしその結果がこれというのは……。

 

 

「とりあえずお前らの組織は完膚なきまでに叩き潰さなきゃならないってことは、これ以上ないくらいよく分かったよ」

 

『それはこちらも同じことです、独立傭兵ヒナタ。

 旧式の第一世代型強化人間ごときが、最新最高である我々コーラル型遺伝子調整強化人種に勝てるわけがない。 しかしあなたはそれを覆した』

 

「言っただろう。 俺は『レイヴン』にして『イレギュラー』、『ナインブレイカー』で『ドミナント』で『リンクス』で『首輪付き』で『最後のORCA』で『人類種の天敵』で『ミグラント』の『黒い鳥』だ。

 企みを食い破り、すべてを焼き尽くすのは得意なんでね」

 

『……相変わらず言葉の意味はさっぱり分かりませんが、あなたは我々にとって確実に殺さなければならない『イレギュラー』であるという認識はしっかりと理解しました』

 

「だったら名前くらい名乗れ。

 叩き潰す相手が名無しの権兵衛じゃ味気なさ過ぎる」

 

『そうですね。 では……『キャロル=マークソン』とでも名乗りましょう。『ケイト=マークソン』の後発にあたる妹のようなものなので。

 それではまた次回、このコーラルをめぐる大いなる戦いの中でお会いしましょう』

 

「ああ、いくら出てこようが何度だってお前らの企みは潰してやるよ」

 

 

 それを最後にレイヴンのオペレーター、『キャロル=マークソン』からの通信は切れ、すべての終わった戦場に静寂が戻った。

 

 

「さて……気分はどうだ? ケイト=マークソン?」

 

「……私を不要と切り捨てたことの鼻を明かせたという意味では気分がいいはずなのですが、姉妹の最後を見るとやはり悲しみの方が勝ります」

 

≪……私も、同胞(コーラル)によって生み出した命を、このような形で浪費をする存在に怒りを覚えました≫

 

 

 ケイトに続き、エアも気持ちを表明する。

 

 

「そうか……で、これでもあっちに戻りたいか?」

 

「ここまでいらないとされて戻れるわけもないし、戻る気もありません。

 それより……」

 

 

 そしてケイトは俺をしっかりと正面から見据える。

 

 

「あなたはまるで子供の書いた落書きみたいな、眠たくなるような陳腐なハッピーエンドを目指してこの戦いの果てまで進み続けるのでしょう、イレギュラーヒナタ?」

 

「もちろんだ」

 

「だったら、私もその結末が見てみたくなりました。あなたの言う、子供みたいな夢物語の結末を。

 なので、そのための協力を約束しますよ」

 

「あー……それはこっちの味方になってくれるってことでいいんだよな?」

 

「ええ。 ……これからも末永くお願いしますね、ヒナタ」

 

 

 小さく微笑みながら手を出すケイトに、俺は握手を返す。

 俺の知るコーラルをめぐる戦いとの乖離はひどい。もう裏でなにがどうなっているのかも分からない。

 

 

(まぁ、それでも一歩前進かな……)

 

 

 本来なら敵対以外の道はなかっただろうケイトとこうして握手を交わしているのだ。未来は変わっていくだろう。

 俺はいい加減疲れた身体を、シートに深く預けて大きく息を吐いた。

 同時にウォルターから、『RaD』に攻め入って来ていた全ての勢力の排除が完了したという通信が入る。

 

 こうして『ジャンカー=コヨーテス』の大規模襲撃に端を発した『RaD』の存亡を賭けた大決戦は、『RaD』の勝利という形で幕を下ろしたのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『シノビ改善』

パイロット名:六文銭

 

R-ARM UNIT:MA-J-200 RANSETSU-RF(バーストライフル)

L-ARM UNIT:MA-J-200 RANSETSU-RF(バーストライフル)

R-BACK UNIT:45-091 JVLN BETA(デトネーティングミサイル)

L-BACK UNIT:44-143 HMMR(プラズマスロアー)

 

HEAD:VP-44D

CORE:07-061 MIND ALPHA

ARMS:VP-46D

LEGS:EL-TL-10 FIRMEZA

 

BOOSTER:BST-G2/P06SPD

FCS:FCS-G2/P05

GENERATOR:VP-20S

 

EXPANSION:PULSE ARMOR

 

 

解説

ルビコン解放戦線所属の独立傭兵のエントリーだ!

「ドーモ、暗黒メガコーポの皆さん。 六文銭、です」

「アイェェェェ! シノビ! シノビ強化ナンデ!!」

ルビコン解放戦線のニンジャ、六文銭。 そのAC『シノビ』はあからさまに強化されていたのだ!

 

独立傭兵の括りながら、『リトル=ツィイー』によって救われた六文銭は実質的にルビコン解放戦線の一員となっていた。

ツィイーを優先するものの独立傭兵として腕が立ち忠実な六文銭は、ルビコン解放戦線の実質的な指導者『ミドル=フラットウェル』にとっても使い勝手のいい駒であり、ことのほか気に入られていた。

そこで今回のアーキバス系パーツの大量鹵獲に伴い、その機体強化を許されることになる。元々高かった機動性はさらに上がり、軽量級としての仕上がりはさらに上がることになった。

最近は帥父『サム=ドルマヤン』がツィイーの将来性に期待し色々連れ回しており、なかなか構ってもらえないのが不満のようだ。

 

アーキバスの輸送部隊の乱獲によって強化されたルビコン解放戦線の機体その5。

最初からAM系パーツを持っていたので、それはそのまま残している。

頭部と腕部、ジェネレータに手を加えられており全体的な射撃能力と格闘能力の向上、さらに防御力や安定性を保ちつつ高速化されている。

武装は傑作バーストライフルであるランセツのWトリガーであり、これとデトネーティングミサイルでスタッガー状態を狙う。

さらに格闘武装であるプラズマスロアーは距離が離れていても当てられる良武装であり、一定距離を保ちながらも安定した性能を見せる。

 

実際に使用してみるとL2・R2ボタンに連射機能が欲しくなるが、スタッガー取りにもスタッガー状態時のダメージにもなるWランセツが強力。

格闘戦にも対応しており、順当に強い機体になった。格闘武装であるプラズマスロアーが特殊なこともあり、射撃・格闘ともに一定距離を保ちながら戦えるのが大きなポイント。

ただ高威力火器は無いのでダメージをコツコツ積み重ねる戦い方が必要。軽量級機の練習としてなかなかの仕上がりになったと思われるので、練習機にどうぞ。

 




生体CPUってSFもののお約束だけど、脳とか有機物を生かすには必要な生体維持装置が多いから、やっぱり電子頭脳でいいんじゃねと思うんだが……ロマンが足りないか。
AC6は生体CPUも首だけにするとAIと変わらなくなったってあって、AI制御機より有人機の方が強いのはロマンがあっていいと思う。
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