当然フロム脳全開の部分がありますので、おかしいと思う部分もこの作品ではこういうことになっている、とフワッとした感じで流してください。
『ジャンカー=コヨーテス』の大規模襲撃から始まり、独立傭兵組織『ブランチ』までもが介入した『RaD』の存亡を賭けた戦いは『RaD』の勝利に終わった。
侵攻してきた全ての敵ACの撃破に成功。残った敵MT部隊も指揮官を失ったことで総崩れの状態。それに対して執拗な追撃戦と掃討戦が繰り広げられ、『ジャンカー=コヨーテス』の勢力圏にまで帰還できたものはごく僅かである。
もちろん『RaD』も無傷というわけではない。しかし重要区画である工場・食料プラント・居住ブロックのすべてがほぼ被害なしの状態で防衛することに成功したため、物資・人員ともに損害は軽微であった。幾重もの幸運が重なった結果とはいえ、もはや完全勝利といってもいい成果だろう。
『RaD』が急ピッチで復興に向かって行く中、『RaD』の会議室ではこの世界の未来を担うかもしれない話し合いがされようとしていた。
参加メンバーは俺とウォルター、ハウンズ全員に見えてはいないがエアがいる。
『RaD』からはお馴染みのカーラ、チャティはシステム上からこの会議の内容を録画している。『ルビコン解放戦線』からはサム=ドルマヤン。そして……。
「なぁ、ミスター出世払い。 いいのかい、あいつを参加させて?」
そう言ってカーラが指すのはケイト=マークソンである。
「『ブランチ』の連中に始末されそうになってこっちに鞍替えするとは聞いたけど、どこまで信じられるのやら」
「どうせ監視は付けるんだろ?
それに……今から俺はにわかには信じられんような色んな秘密を話すが、それでもまったく分からない謎はある。それがあいつ、ケイトの裏側にあるものだ。
……そのあたり、教えてくれるんだろ?」
「ええ。 あなたのいう眠たくなるような陳腐なハッピーエンド、そんな子供の夢物語の結末を見てみたくなりました。
私は『ヒナタのために』協力は惜しみませんよ」
……何故、そこで俺の名前を強調したおい! ハウンズたち、とくにアオイからの視線から、もう真っ黒な波動を感じるんだが!!
そんな様子を見てカーラはカラカラと笑う。
「色々器用なのは知ってたけど、逆ハニトラの技術があるとは驚いたよ。あんたは本当に退屈させないねぇ。
さて……それじゃこのメンバーを前にあっと驚く『秘密』を語ってくれるんだろう?」
「ああ、とっておきだ。 ドルマヤンのじいさんには同じ話になるが聞いていてくれ」
そう前置きしてから、俺はドルマヤンに以前話したのと同じ、複数の記憶を持ち、この星の戦いの未来に待つ3つの結末について話した……。
「……確かに今までのあんたの言葉を聞いてると未来を知ってたって言っても不思議じゃないし、あんたがそんなバカな嘘をつくような奴とは思わない。
でも、そんなSF小説みたいな話が本当にあり得るのかい?」
「ドルマヤンのじいさんにも言ったが、コーラルは究極の情報導体だ。
それが無限大に制御不能な状態で増殖を繰り返して発生する『コーラルリリース』状態になれば……最終的には時空間を超えての情報交信が可能になるんじゃないかと思う。まぁ、完全に俺の憶測なんだが。
それで偶然、ほかの次元で起きた情報が俺に流れ込んできたと考えれば、一応の辻褄は合うんだが……そこのところ、エアとしてはどう思う?」
≪……いえ、全くわかりません。そんなこと考えたことすらなかったですし……≫
≪正直、ヒナタからもたらされた情報によって私は今、ひどく混乱しています≫
「コーラルでも混乱するんだねぇ、あたしもそうさ。
すごい話が出るんだろうと身構えていたけど……予想をはるか斜め上をかっ飛んでいったよ」
カーラがカラカラと笑う。その横でジッと話を聞いていたウォルターが口を開いた。
「『C1-53』……いや、ヒナタ。
お前はハウンズたち全員を救っていてくれていたんだな」
「成り行きと偶然の産物だよ」
「そうか……今後もハウンズたちを頼むぞ」
……未来のどの結末でも自分の生き残る道がなかったと知ってなお、ハウンズたちの心配をするのか……ほとほとこの修羅の世界には向いていないな、このマダオ(まるでダメなところのないオッサン)は。
「さて……ではわしの方からいくつか言わせてもらおう」
ひとしきり『RaD』サイドが落ち着いたところで、サム=ドルマヤンが口を開く。
「全宇宙へのコーラル汚染を防ぐ……『コーラルリリース』を防ぐというお前たち『オーバーシアー』の使命に関しては理解しよう。
ヒナタの話にあったように、わしも若いころに『意思持つコーラル』であるセリアと『交信』をしていた身だ。セリアがルビコン技研にハッキングしてその内情もある程度は把握している。
のう、第二助手どの?」
「……『意思持つコーラル』の電子戦能力には本当に脱帽だね」
ドルマヤンに視線を送られ、カーラは肩をすくめた。
「そしてセリアから『人とコーラルの共存の可能性』として『コーラルリリース』を提案されたが……当時のわしには人の世へ未曾有の災禍を出すだろうそれに賛同出来なかった。
そうしている間に『アイビスの火』でセリアは焼けてしまったが……あの判断が間違いとは思ってはいない。むしろヒナタからこの話を聞き、『コーラルリリース』だけは絶対に実現させてはならんと思っておる」
「それはこちらも同じだ。コーラルの無限増殖によって人の世を終わらせる『コーラルリリース』は『オーバーシアー』としても絶対に看過できない」
「……エアは『意思持つコーラル』として『コーラルリリース』をどう思う?」
ドルマヤンの言葉にウォルターが頷く。そして俺はエアへと話を向けてみた。
≪人とコーラルが混ざり合って一つとなり、新たな存在となる……『コーラルリリース』が人とコーラルの共存の一つの形であることは認めます。≫
≪しかし……≫
そこで一旦、エアは言葉を切った。そして俺たちハウンズに意識を一度向けた後に続ける。
≪私は1人ではなく、ハウンズの全員と『交信』しています。≫
≪誰一人、同じではない。 そして同じでないことは新鮮で、私は『尊い』ものだと思いました。≫
≪その『同じでない』ことを否定し、すべてを一つに纏めてしまう『コーラルリリース』は私の望む人とコーラルの共存ではないと断言出来ます。≫
≪なので『コーラルリリース』はどうあっても防ぐべきです≫
ここで原作AC6のようにエアが『C4-621』とだけ『交信』しているのではなく、俺の介入によってハウンズ全員と『交信』していることが、エアの価値観を変えていたようだ。
正直、原作AC6ではウォルターのことも好ましくは思ってくれていたようだが、助けてもらった直後にカーラを殺そうと依頼してきたり、『交信』してくれた『C4-621』と他者との間には重要度に大きな隔たりがあったからな。
ぶっちゃけ完全に『C4-621』に依存しており、界隈ではヤンデレ化したエアを見ることも少なくなかった。
その辺り、多人数との『交信』を成功させたことでいい方向に向いているらしい。
『意思持つコーラル』であるエアからも『コーラルリリース』の否定が出て満足したらしい、ドルマヤンは何度も頷いている。
「彼女からも『コーラルリリース』の否定が出たのはいいことだ。これで『コーラルリリース阻止』の方向で意思の統一が出来たが……1人のルビコニアンとして、『アイビスの火』をもう一度起こしてそれを防ごうという『オーバーシアー』の提案にはとても賛同出来ん。
そもそも、その『アイビスの火』とて周辺星系まで燃やし尽くして、それでもたった半世紀程度しか保たんのでは犠牲に対して割に合わんわい」
「……痛いところを突くね。 でもこっちだって好きでやりたいわけじゃないさ。
でも現状、無限増殖状態に陥った場合には止める確実な方法はすべてを連鎖的に燃やし尽くす『アイビスの火』しか、わたしらも知らないんだよ」
「となれば……もう根本的な原因を防ぐしかないんじゃないか?」
ドルマヤンとカーラの会話に割って入った俺に、全員の視線が集中する。
「みんなコーラルがあんまりにも不思議物質すぎて忘れてるかもしれないが……コーラルは人類によって『発見』されたのが半世紀ちょい前くらいってだけの、『ルビコン3特有の天然資源』なんだぞ。
どこの誰かの創った人工物じゃない、石油や石炭と同じだ。そんな『コーラルの誕生』なんて、数万から下手すれば億年は昔のことだぞ。
コーラルには数万から億年という途方もない時間的余裕があったんだ。でも、それだけの時間をコーラルに与えながらも今現在宇宙がコーラルで満たされていないってことは……『コーラルは自力ではルビコン3を脱出して無限増殖を可能にする宇宙空間に出ることが出来ない』って証拠だろ?」
これは原作AC6をやってすぐに思ったことだ。
たまに考察でコーラルは無限増殖をする危険物質で共存どころか宇宙の汚染を止める方法すら公式から提示されていないという意見を見たが……公式は最初から解決策を示していたのだ。
「この『ルビコン3』にいる限り、コーラルは安定した状態なんだ。
俺の記憶にある『コーラルリリース』は、少量のコーラルじゃ無限増殖は発生しない」
そうでなければ、原作AC6のオールマインドはあんな回りくどい手まで使って大量のコーラルを集める意味がない。
『コーラルリリースには大量のコーラルが必要なのだ。』
「なら話は簡単、『コーラルの人為的な宇宙への大量持ち出しを完全に防げば、コーラルリリースは起きない』んだよ。
『コーラルよ、ルビコンの内にあれ』……だ」
とはいえ、公式はこうも言いたかったのだろう。『人の欲望がある限り、そんなことは上手くいくはずがない』、と。
しかし、今はそれが最良の手だと信じる。 幸い、これならとれる手段も思いつくからな。
「俺は……『バスキュラープラントの早期での完全破壊』を提案する」
コーラルを吸い上げ、宇宙へと大量輸送する手段である『バスキュラープラント』……『賽投げルート』ではオールマインドは陰ながらアーキバスをこのコーラル争奪戦で勝利するように暗躍していた。それはアーキバスによって『バスキュラープラント』を修理させ、それを奪取するためだ。そして、俺はこれ以上のコーラルの宇宙への大量輸送手段は知らない。
つまり『バスキュラープラント』さえ無くなれば、少なくとも原作AC6でのオールマインドの計画していた『コーラルリリース計画』は完全に破綻する。
そうすればその間に、『人とコーラルとの共存』の方法を考える時間も稼げるだろう。
「確かに……」
「そうと分かれば、さっそく行動に移すぞ。
ヒナタ、その『バスキュラープラント』はどこだ?」
ウォルターが頷き、ドルマヤンが俺に話を振ってくるのだが……。
「あー、マジで申し訳ないんだが……俺にも分からん」
その言葉にしらけた空気が漂い、俺に突き刺さる視線が痛い。
「あんたねぇ……ここまでなんでも知ってますみたいな予言者ムーヴかましておいて、そりゃないだろう」
「仕方ないだろう。俺の持ってる未来の記憶は何ていうか……『映画を見てる感じ』なんだよ。
『起こる出来事とその流れ』については詳しく分かっても、『時間』や『場所』については不明瞭なんだ」
カーラにあきれられるが、これが俺の知る知識の弱点だ。
原作AC6では『アーキバスによるバスキュラープラントの修復』など結構時間が経過しているだろう描写があったり、場所の名前なら分かる。しかしそれが正確にどれくらいの時間がかかったとか、正確な位置は分からないのだ。
「俺は『バスキュラープラントのあるルビコン技研都市へはウォッチポイントアルファから行ける』と知ってるが、その正確な位置は分からない。
『惑星封鎖機構がこの戦いに介入してきて、最終兵器であるC兵器『アイスワーム』を起動するも暴走。暴走したアイスワームが防衛している施設があってそれが『ウォッチポイントアルファ』だった』
『アーキバスとベイラム、RaDが手を組んでアイスワームと惑星封鎖機構を撃破した』
『撃破後、アーキバスとベイラムが競って調査に向かうもベイラムはボロボロにされ、結果的にこのコーラル争奪戦で敗北する』
……こういう『流れ』を知ってるだけなんだよ」
「そうなると、そのアイスワームとやらを排除したらよーいドンでアーキバス・ベイラムとの両方を出し抜いてやらないといけないってわけかい……事前に知っていても立てられる対策は多くはないね」
「それに俺がずいぶん引っかき回した歴史だから、この流れ通りにことが進むかも分からない」
「そうだね……。
それにしても、今までこれだけルビコンに対して行動を起こしてこなかった惑星封鎖機構が、本当にそんな本格的な介入をしてくるのかい?」
「来ますよ、惑星封鎖機構は」
カーラの疑問に答えたのはケイトだった。
「ちょうどいい。俺の知るどこかの未来の記憶でも、オールマインドやその裏については全く分からないんだ。
そろそろそのあたりの種明かしを頼む、ケイト=マークソン」
「……ただの『ケイト』と呼んでくれればすぐにでも」
「……頼む、ケイト」
「はい! ヒナタにお願いされたら仕方ないですねぇ」
ビキビキビキビキッ!!
あっ、アオイたちが握った机の端が砕けかかってる。
……おかしいなぁ、この机、銃撃戦のときに盾に使えるように結構な合金製のはずなんだけどなぁ。
そしてアオイ、どす黒いオーラと瞳で俺を見るのはやめてくれ。本気で怖い。
そんなハウンズたちの中で、まだ感情の戻りの遅いレイがきょとんとしているのだけが癒やしだった。
そんな様子を無視するように、ケイトは続ける。
「惑星封鎖機構が来るというその証拠ですが簡単です。
惑星封鎖機構はAIの指示によって支配された組織。そして、エアのようにコーラル由来技術の電子戦能力は通常のものとは比べものになりません。
つまり……惑星封鎖機構のAIはすでに支配下にあり、惑星封鎖機構は事実上、組織のいいなりというわけなんですよ」
「「「「……」」」」
俺もウォルターもカーラも、ドルマヤンすら押し黙った。
そんなバカな、と一笑に付してやりたいが、コーラル由来の電子戦能力の強力さを知るゆえに笑うことが出来ない。
「……それで、このルビコンの裏でうごめくその超絶ヤバい組織はなんて言うんだ?」
俺は前世でもそういう設定の考察もみたことがあり衝撃からいち早く脱せたので、わざと軽口のようにケイトに問う。
その言葉に、ケイトは答えた。
「その名も『レイヴンズネスト』。
伝説の傭兵『レイヴン』の名を利用し暗躍するために、『レイヴン』を意図的に排出し続けるカラスの巣、です」
(……ああ、ここは本当に修羅の世界だよ、クソッタレ!)
こんなところでその名前を聞くことになるとは思っていなかった俺が思わず悪態をつきそうになるのを堪える中、ケイトはついにこのルビコンの裏にうごめく闇について語り出したのだった……。
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今日のアセン
AC名:『天翔鷲翼≪アマカケルワシノツバサ≫』
パイロット名:ミドル=フラットウェル
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:VE-44B
CORE:NACHTREIHER/40E
ARMS:EL-TA-10 FIRMEZA
LEGS:LAMMERGEIER/42F
BOOSTER:FLUEGEL/21Z
FCS:FCS-G2/P05
GENERATOR:VP-20S
EXPANSION:TERMINAL ARMOR
解説
アーキバス輸送部隊に対する攻撃……アーキバスの弱体化とともに鹵獲により自軍戦力の強化を図れる一石二鳥の作戦。この望外の幸運に、フラットウェルは陣頭に立って作戦の指揮をしていた。
そんな中、鹵獲したパーツコンテナに見たことのないパーツがあると部下からの報告を受けたフラットウェルはそれを見聞する。
そして……その瞬間、フラットウェルの脳髄を空力が駆け巡った。
そのパーツは間違いなく、フラットウェルがシュナイダーにいたころともに語り合った友人、エラン=マーシュの作品だ。
しかし、友人の空力はアーキバスには受け入れられず、試作パーツが試験的に少数生産されたのみと聞く。その内の一つが目の前にある……。
「これも何かの運命か……」
あれだけともに熱く語った空力が受け入れられなかったこと、さぞ無念だっただろう。
ならば、友として私が空力を、この大空をこのパーツに駆けさせてやろう。
全ては友と語った空力のため……空力に染まった頭でフラットウェルは機体の大改修を行うのだった。
突如として現れたコジマやコーラルと同じくらいヤバそうな概念、『空力』に知らぬ間に脳を灼かれていたフラットウェルが、手に入れたアーキバス系パーツと友の作品である試作パーツを使用し、機体を大幅に改修した姿。今までのエルカノ社製『フィルメーザ』一式のフレームから一転、元のパーツは腕部くらいしか残っていない。
指揮官用に処理機能の高い頭部、シュナイダー製の高機動型コア、そしてシュナイダーの試作軽量四脚にアーキバス系ジェネレータとシュナイダーのブースターと内装からフレームまでほぼ変更されている。
さらに武装も、腕武器に硬直が発生しない四脚の特徴を生かし高火力なメリニット製のバズーカを装備。プラズマミサイルで中距離戦に対応し、レーザーダガーで近接格闘戦にも対応した。
ホバーでの空中機動力の高さを生かし、プラズマミサイルとバズーカとバーストマシンガンで相手の頭上から爆撃、スタッガー状態にしたら素早く接近しレーザーダガーで切り刻むという戦闘スタイルである。
実際に使ってみると機動力と火力はなかなかのもので何の問題もなかった。問題はやはり防御力であり、雑魚の攻撃でも連続で受けると結構簡単に事故死する。そのためミッションでの事故死対策としてターミナルアーマーを装備している。
どちらにせよピーキーな機体であることは間違いなく、これぞ軽量級といった戦い方が面白い機体である。
空力だ、空力を崇めるのだ。
コジマとコーラルの最大の差は、人工物であるか天然資源であるかってことだとおもうんですよね。
……考えれば考えるほど、あんなクソヤバ粒子が『人工的にいくらでも生成可能』というAC4系世界のヤバさに震えがくる……。
次回は真の黒幕組織『レイヴンズネスト』の話ですが……すみませんが体調がよくないので一週間お休みします。