子供が園から持ってくる病気は強力だと聞いていたんですが……マジですね。まだ体調は戻っていませんが、休み休みやっていくことにします。
ケイトの話でついに、前世の知識を持つ俺でも知り得ないこのルビコンの裏でうごめく黒幕の話が始まった。
無論、俺がここまで引っかき回した歴史だ、とても原作AC6と同じとは思えないが、それでも大いに興味がある。
「先にわかりやすく結論からいきましょう。
『レイヴンズネスト』は『コーラルリリース』を達成することを目的とした組織……というか『コーラルリリースを願った彼』と、その『彼』の構築した多くのAIシステムの集団です。
人間は基本的に『彼』だけです。それこそ普通の人間は『コーラルリリース』のことを全く知らない、『自由の象徴』という『レイヴン』の支援のためという名目で立ち上げられ利用している『ブランチ』くらいですかね。
そしてそれを立ち上げた『彼』というのが『アイビスの火』を生き残ったルビコン技研職員、『キサラギ=アミダ』です」
……なんだ、その昔からACをやってたら一発でマッド系変態科学者だってわかる黒幕の名前の奴は。
「なんだそいつは?」
「おや、あれだけ未来の知識を知っているヒナタが知らないというのは意外ですね。
『ルビコン技研第一助手』……こう言えばわかるでしょうか?」
「ああ、そう言われると分かる。
俺たち強化人間技術の生みの親。 ルビコン技研の、人の倫理観のネジが吹き飛んでいるようなマッドな部分は大体コイツ絡み、みたいな扱いのヤツだったな。
そして確か……」
そう言ってウォルターの方を見ると、ウォルターは重々しく口を開いた。
「そうだ。 俺の……父親だ。
お前たち強化人間の悲劇を生み出し、その人生を奪ったのは、俺の父親だ。
すまない、本当にすまない……」
前世でもあった『ウォルター=第一助手の息子説』はこの世界では正解であるらしい。
俺やハウンズ全員に頭を下げるウォルターに、俺は肩をすくめる。
「それはウォルターの父親がやったことであって、ウォルター自身のことじゃない。それをウォルターが謝るのは違うだろう。
それに……俺は今の人生を悪くないと思っているぞ。
強化人間って言ってみれば普通より凄い人間になるってことだからな。
だからこそ、こうしてウォルターを今助けることが出来る。
そう考えれば悪くはないさ」
「……ヒナタ」
「ハウンズのみんなもそうだろう?」
そう言うと、ハウンズのみんなもうんうんと頷く。実際、ウォルターが何かやったわけでもなくこの件で罪悪感など感じる必要はないのだ。それなのにそれを割り切れていない辺り、やはりこの修羅の世界には向かない、優しい人間なのだろう。
まだ何か言いたげなウォルターだったが、話を続けるためにケイトに先を促した。
「ケイト、続きを頼む」
「はい。
『アイビスの火』を生き残ったキサラギ助手は、それでも『コーラルリリース』を諦めませんでした。
しかし、一定量以上の大量のコーラルが一気に宇宙空間に出なければ、『コーラルリリース』に必要な無限増殖状態には陥りません。彼の試算では再び『コーラルリリース』が可能なまでにコーラルが溜まるまで半世紀ほどかかる計算です。そしてその時を目指して様々な暗躍を開始しました。
まず手始めに惑星封鎖機構のAIをその電子戦能力で掌握、惑星封鎖機構を使ってルビコン3を封鎖します」
「初手がそれなのか……」
「半世紀後の『コーラルリリース計画』のために不確定要素をルビコンに極力入れないことが重要だと判断した結果です。
そして、傭兵支援システムである『オールマインド』を構築しました」
「なんでそこで『傭兵支援システム』なんだよ?」
「閉鎖されたルビコンでは食料をはじめとしたすべての物資が足りません。そのため物資を奪い合う争いが絶えないだろうと予想、それを制御することを目的としていました。
そして……これは『コーラルリリース計画』の重要な布石でもあります。
ヒナタの、どこかの『コーラルリリースの成された未来の話』でもありましたが、コーラルには人間の知識や技能……『魂』とも呼べるものを保存する性質があります。
そして『コーラルリリース』ではそれらをすべて吸収・統合し、巨大な『個』となり無限増殖によって全銀河を席捲、同じように全銀河すべての人類を吸収・統合して老いも死もない新たなる存在となる……それが『コーラルリリース計画』の概要でした。
そのため一定以上のコーラル濃度環境下……つまりルビコンで人が死ねばその『魂』はコーラルによって保存され、『コーラルリリース』後の状態に影響します」
「……つまりルビコンで人が死ねば死んだだけ『コーラルリリース』後の巨大な『個』はそれらの『魂』を吸収し、より知識も技能もある存在になる。 だからその初期値を上げるためにルビコン3で効率よく『蠱毒』やってたってわけか」
『オールマインド』の製造目的が『コーラルリリース』時のときのステータス上げのために、人の死に続ける環境作りとは恐れ入った。
「『ブランチ』はよく動く駒でした。抑圧された反動で、何者にも屈しなかった傭兵『レイヴン』の伝説はかなりのカリスマ性がありました。
それに目を付け『レイヴン』の名とそれに見合う腕のAC乗りを見繕い、それに心酔した集団である『ブランチ』を使って『自由』の名のもとに破壊工作を行って戦いの火種をまき続ける。
それによる社会不安の回復を目的として惑星封鎖機構の部隊を駐留させて定期的に殺し、外部からの『魂』をコーラルに記録し続ける」
「そして同時に振り撒かれた社会不安による争いに、『オールマインド』が傭兵支援システムとして傭兵を各地に派遣、戦力の均等化を図りルビコンから争いが無くなるのを防ぎ死人を出し続け、コーラルに『魂』を記録させ続ける……なんとも吐き気のする話じゃの」
ドルマヤンが苦虫をかみつぶしたような顔をする。ルビコニアンの今まで味わってきた苦難がたった1人の思惑で意図的に創られていた地獄だったと聞けばこうもなる。ただ、さすがはここまで地獄を生き抜いたじいさんだ。ドルマヤンの中で今にもはじけ飛びそうな、燃え盛る怒りの炎を感じるが、それを話の腰を折らぬようにと表に出さないように抑えている。さすがに人としての厚みが違う。
「そして半世紀が過ぎコーラルの量が回復したことを見て、計画は次の段階に進みました。
あとはヒナタの話と同じですね。 『ブランチ』を使ってコーラルの再発見の情報を各企業にリークし、アーキバスとベイラムをルビコン3に集わせて争わせることでコーラルに『魂』を記録。同時に戦力を裏から操りアーキバスを勝利させ『バスキュラープラント』を修復させた後に『バスキュラープラント』を奪取。
それまでにトリガー……というかコーラルへの意思伝達用の中継器の役割……である『意思持つコーラル』、『Cパルス変異波形』を『交信』のできるコーラル型旧式強化人間とともに確保して取り込み、『コーラルリリース』を起こす。
これが『レイヴンズネスト』……『キサラギ=アミダ』の『コーラルリリース計画』の全貌です」
「「「「……」」」」
ルビコン3の裏でうごめく壮大な計画に誰も声が出せない。
だが、俺のやるべきことだけはよくわかった。
「……ケイト、『キサラギ=アミダ』はどこにいる?
ヤツは一秒でも早く、パイルバンカーを叩き込んでやるべき相手だ」
「良いことを言うな、ヒナタ。 無論、わしも同行する」
「……俺も同行させてくれ。 半世紀前から続くこの因果に、この手で決着を付けたい」
俺とドルマヤン、そしてウォルターはすぐにでも『キサラギ=アミダ』を討つべくその居場所をケイトに問いただすが、ケイトは残念そうに首を横に振った。
「残念ですが、私もしょせんは駒の1つに過ぎません。
『キサラギ=アミダ』と会ったこともなければ、潜んでいる拠点も分かりません」
「……そうか。 問題の一挙解決は無理か……」
「ですが『レイヴンズネスト』の拠点の1つは分かります」
「それは後で確実に潰しに行こう」
「それじゃここいらで、ヒナタの話とケイトの話をまとめて、あたしらのやるべきことを確認しとこうか?」
そう言ってカーラがいくつかを箇条書きにした。
①今後の戦いの中心になるだろう中央氷原にいち早くアーレア海を渡って拠点を確保する
②介入してくるだろう惑星封鎖機構をアーキバスとベイラムの戦力を削りながら攻撃。惑星封鎖機構の最終兵器である『アイスワーム』の暴走を待ってウォッチポイントアルファの位置を確定させる
③アーキバスとベイラムを出し抜き、先に技研都市を確保。 『バスキュラープラント』を完全破壊する。
④惑星封鎖機構とアーキバスとベイラムをすべてルビコン3から叩き出し、完全に撤退させ独立を勝ち取り、コーラルの星外への持ち出しを防ぐ
⑤すべての部分で干渉してくるだろう『レイヴンズネスト』を完全に叩き、二度と『コーラルリリース』をさせないために首魁である『キサラギ=アミダ』を討つ
「やることが、やることが多い……!?」
「やることが分かっているだけマシよ。 わしの時など、味方もいなければ何をすればいいのかすらも分からなかったからの」
まぁ、ドルマヤンのじいさんの言う通りだ。やるべきことが分かっている以上、あとはそこまでぶち抜くのみだ。
「それじゃ差し当たってやることは……『海越え』と『レイヴンズネストの拠点潰し』だね。
この人数だ、同時進行でいけるだろう。
で、あんたの知ってる『レイヴンズネスト』の拠点ってのはどこなんだい?」
「ああ、それは……」
カーラからの問いにケイトが答える。その内容は……。
「……マジかい?」
「大マジです。
『Cパルス変異波形』と『交信』のできるコーラル型旧式強化人間は半世紀でほとんどがいなくなることが予想されていました。
そのため『彼』は『Cパルス変異波形と交信できる強化人間を自前で造る』という目的で製造された最初期の『コーラル型遺伝子調整強化人種』……私の遠い『兄』にあたります。
しかし、コーラルによる遺伝子調整に失敗し、コーラルに溶けた『魂』の声が常に無秩序に聞こえるオープンチャンネルの状態になっていて、狂ったとして計画には使えない『失敗作』として放逐されました。
それがどういうわけか一大組織を形成していて我々も驚いたのですが……本人からの了承もあり『レイヴンズネスト』の拠点として使っていましたよ。
ただ……私も会ったことがありますが、一周回って正常に見えるだけでその中身は理解不能なレベルで狂っているのは変わらずです」
「……どおりで優秀で面白いヤツだったわけだ。
身体検査をやっておくべきだったかねぇ……」
そう言ってカーラは頭をポリポリとかく。
「……どっちにしろ、あたしや『RaD』をコケにしたツケは支払わせるつもりだったんだ。
あれだけ連中の戦力を削ったことだし、ちょうど良い機会だね……」
そして、カーラは静かに宣言する。
「『海越え』と同時に、『ジャンカー=コヨーテスへの報復』をする。
『
カーラは力強く、今後の目標を告げたのだった……。
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今日のアセン
AC名:『アルストロメリア』
パイロット名:『CNP-125 ケイト=マークソン』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:HC-3000 WRECKER
CORE:IA-C01C:EPHEMERA
ARMS:VE-46A
LEGS:DF-LG-08 TIAN-QIANG
BOOSTER:BST-G2/P06SPD
FCS:FCS-G2/P10SLT
GENERATOR:VE-20B
EXPANSION:PULSE ARMOR
解説
ヒナタ「アセンを手伝って欲しいって? いいぞ、まず何か希望はあるか?」
ケイト「まずはカラサヴァです!」
ヒナタ「……まぁ、お前はそうだろうな。 で、次の希望は?」
ケイト「次はカラサヴァです!」
ヒナタ「……次は?」
ケイト「カラサヴァです!」
ヒナタ「……なるほど。 1にカラサヴァ2にカラサヴァ3にカラサヴァ……これが希望なんだな?」
ケイト「はい!」
ヒナタ「このカラサヴァ脳がぁぁぁぁ!!」
ケイト「痛ッ! ホントに痛ぁい!
私の新世代型強化人間の繊細な脳が、蛮族旧式強化人間のアイアンクローで変形しますぅぅぅ!!」
晴れて味方になり、色々な意味でヒナタに興味のあるケイトが、ヒナタのアセン知識を知って作成を手伝ってもらい完成した、ケイトの新たな愛機となるAC。ヒナタが存分に頭を抱えながらも、何とか完成に至った。
ウォッチポイントで撃破された機体から回収したパーツも使用しており、AM系・技研系パーツを使用している。
とにかく左右2丁のカラサヴァを最大出力でぶっ放すことを考えており、そのため腕はアーキバスの重装型で固定、ジェネレータはアーキバスのもっともエネルギー兵器適性の高いものを使用し、足りない出力はエフェメラコアの出力上昇によって何とか収めているがそれでもエネルギーはカツカツであり、ハンドミサイルとレーザーダガーが装備でき、汎用性も多少なりと確保出来たのは本当に奇跡的。
ネタ機体に片足突っ込んでいるものの、やはりここまで尖らせるとカラサヴァの通常連射力とフルチャージされた火力は驚異的で、そこに包囲型ハンドミサイルとレーザーダガーが入るとなかなか極悪。
ただ問題は山積みで、重量二脚アセンで機動力は高くないのにもかかわらず防御力やAPといった防御性能に関しても下手をすると中量級以下というバランスの悪さは言い訳のしようも無い。
しかしそこは腐っても最新のコーラル型遺伝子調整強化人種、アサルトブーストとオーバーヒート管理を駆使して激しい射撃戦に持ち込む。
機体名の『アルストロメリア』は花の名前であり、ハウンズたちの『ヒナタに協力してもらったACには花の名前を付ける』という習慣を踏襲している。その裏にある想いはアオイと同じものである。
アルストロメリアの花言葉は『未来への憧れ』。この戦いの結末に待つ未来を見たいという新たなケイトの決意にぴったりの名前である。
ちなみにケイトの強化人間ナンバーの『NP』は『ネクストプロトタイプ』の意味であり、コーラル型遺伝子調整強化人種のプロトタイプを意味する。
ナンバーの合計は『8』。イレギュラーには決してなり得ないナンバーである……。
作者的に作成に一番頭を抱え、作成が一番面白かった機体。
味方になったAMちゃんの機体が既存の『トランスクライバー』では味気ないので、『カラサヴァにすべてを振り切りつつも、一定以上の汎用性を確保した機体』というコンセプトで組んだバカ機体。最大火力のWカラサヴァで実戦に耐えられる機体というのは本当に試行錯誤しながらアセンした。この試行錯誤を繰り返しながらアセンするというのがやはりAC最大の楽しみだろう。
テストプレイでは火力は申し分ないのでミッション・アリーナともに十分戦えた。というかラスボスも倒せた。
やはりACは『殺られる前に火力でねじ伏せろ』なところがあると痛感する。
というわけで次回からチャプター2の最終ミッション、『海越え』と『ジャンカー=コヨーテス壊滅』に入っていきます。
次回は『海越え』サイド。一体誰が飛ぶのやら……。
次回も体調次第になりますが、よろしくお願いします。