祝福の花を君に   作:キューマル式

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というわけでチャプター2もいよいよ大詰め。
『海越え』と『ジャンカー=コヨーテスへの報復』が同時進行で行われます。
まずは『海越え』サイドです。



そうそう、イグオマ派のみんな、すまんのぅ。オマちゃんは主人公とイチャコラさせるんで。
……じゃあ残ったイグは?


第39話 『全力でお兄ちゃんを遂行する!!』

 

G4(ガンズ・フォー)G5(ガンズ・ファイブ)、貴様らは『RaD』への無期限の出向になった。

 貴様らのACは貴様らの自由に遊ぶおもちゃではない。大事な『レッドガン』の備品だ。

 それを勝手に持ち出してドーザー同士の抗争に雇われて壊した挙げ句、賠償まで請求されたぞ。

 貴様らを『レッドガン』に入れたのは青少年の更生のためだが、もう貴様らは少年なんぞという歳じゃない。自分のケツは自分で拭け。

 

 ……ウォルターのヤツが信用するだけあって、『RaD』は比較的マシなところだ。

 雑用でもなんでもやって殊勝な態度を心がければ、どこぞのクソのような上層部のように無茶なことは言ってこない。

 『RaD』で揉まれて少しはマシになって戻ってこい』

 

 

 

「……ちっ、あのクソ親父が!」

 

 

 独房の中で、通信でのミシガンとのやり取りを思い出し、イグアスは悪態をついた。

 独断で『ジャンカー=コヨーテス』の依頼を受け『RaD』襲撃に加担したヴォルタとイグアスの悪友コンビ。2人は途中で運悪く『キサラギ=アミダ』の息のかかった『ブランチ』の襲撃もあり、『RaD』の防衛戦力だったセンカとレイによって無力化され降伏、『RaD』の独房へと入れられることになった。

 ウォルター経由でミシガンにこのことが伝わりカーラから迷惑料という名の損害賠償を請求されるも、ミシガンは『好きにこき使って自分たちで支払わせろ』と拒否、ヴォルタとイグアスは借金を返済するまで『RaD』に出向という形で所属することになったのである。

 

 独房とはいえミシガンの言ったように無体なことはされていないし、地獄のような訓練もない。しかしまたしてもメス犬……レイのチェーンソーの一撃で抵抗する間もなく愛機を両断されたことに苛立ちが募る。そして、そういう時には決まって『持病』が発症するのだ。

 

 

「ちぃ……また『耳鳴り』がしやがる! 頭が割れそうだ!!」

 

 

 イグアスはハウンズたちと同じくコーラルを使用する旧式の第四世代型強化人間だ。そんなイグアスには旧式の強化人間によくあると言われる幻聴が、頭を割るような頭痛とともによく出るのである。

 イグアスはあるきっかけで荒れに荒れて喧嘩に明け暮れ、そのまま大きな賭けに負けた代償に強化人間へと改造された。

 イグアスを強化人間にしたのはとある医者とその甥の医大生だ。甥に強化人間手術の練習をさせてやるという、ただの技術向上のための実験台(モルモット)として、今では何の価値もないとされる旧式の強化人間にされたのである。

 幸運なことに手術はうまく完了した。『感情が希薄になりがち』という第四世代型強化人間の特徴には当てはまらない、感情が残ったままの強化人間となった。だが、それは『成功した』と同義語ではない。

 幻聴と頭痛という不調を常に抱えながら、しかしもはや何の価値もないと称される旧式の第四世代型強化人間……そのあり方はただでさえ反骨精神旺盛だったイグアスの精神を不安定化させ、攻撃性を増す結果となった。

 

 コーラルは人の『魂』を記録する。そして第四世代型までの強化人間は脳内にコーラル管理デバイスを植え込み、コーラルを脳に作用させている。そのため、使用したコーラルに溶けた人の『魂』の声が幻聴や耳鳴りという形で現れるのだ。イグアスはこのコーラルに溶けた『魂』と波長が中途半端に合ってしまったために、耳鳴りと頭痛を頻繁に起こしていた。

 

 

「ぐっ! クソが!」

 

 

 耳鳴りと頭痛に、文字通り頭を抱えるイグアス。そんなうずくまるイグアスに影がかかった。見上げてみると、そこにいたのはレイだった。

 

 

「ちっ……何しに来やがった、メス犬。

 俺を笑いにでも来やがったか?」

 

 

 レイはふるふると首を振ると、独房のドアを開けて入ってくる。

 

 レイとしてはあの会議でヒナタの語ったどこかの宇宙であり得た未来の話……自分が最後のハウンズとなりエアを殺して『アイビスの火』ならぬ『レイヴンの火』を起こしたり、エアとともに生きるためにウォルターやカーラを殺したりする話は刺激が強かった。

 そんな中で自分がコーラルリリースの引き金を引き、全人類をコーラル人類にする話を聞いた。その最後に立ち塞がってきたのがこのイグアスだという。

 同じ旧式の第四世代型強化人間でありながらあり得ないような戦果をあげ続けるレイヴンと、あまりに違う自分を比較してコーラルリリース計画の協力者となったイグアス。その最後にこぼしたという『レイヴンに憧れていた』というイグアスの本音。

 それらを聞いたレイは単純にイグアスに興味を持ち、様子を見に来たのだ。するとそこにいたのは頭を抱え、痛みでもだえるイグアスの姿だ。

 それを見たレイは自然と、兄と慕うヒナタや姉たちが自分にしてくれる行動をイグアスにもとっていた。すなわち、イグアスの頭を抱きしめ、その頭を優しく撫でていた。

 

 

「ッ!? メス犬、テメェ何を……」

 

「兄様や姉様たちがこうしてくれると……何故が胸の奥がポカポカする……。

 それはきっと……『安心』という感情だと思う……。

 だから……私もそれをしてあげる……」

 

「……ちっ。 そんなことじゃこの耳鳴りも頭痛も……」

 

 

 純粋な親切心に一瞬毒気を抜かれかけるイグアスは、それでも毒づこうとしたその時、あれほど自分を悩ませていた耳鳴りも頭痛も綺麗さっぱり消えていることに気付いた。耳鳴りも頭痛も消え、どこまでも透明で気分がいい……こんなことは強化人間に改造されてから始めてだった。

 先にも述べたがイグアスの耳鳴りと頭痛の正体は、イグアスの脳内に埋め込まれたコーラル管理デバイスに使用されているコーラルに溶け込んだ死んだ誰かの『魂』の声だ。それに波長が中途半端に合ってしまったイグアスは声として捉えることが出来ず、不快な耳鳴りと認識していたのだ。

 対するレイは他のハウンズ全員との間に、エアを中心とする強固な脳内コーラルネットワークが形成されており、コーラルであるエアとはっきりとした会話が可能である。そんな強力な脳内コーラルネットワークを持つレイに近づいたため、イグアスと中途半端に繋がっただけのコーラルとの波長が乱れ、結果として耳鳴りが聞こえなくなっていたのだ。

 

 

「大丈夫……?」

 

「……ちっ」

 

 

 不快な耳鳴りと頭痛が消えたことでイグアスに湧き上がってきたのは多幸感だ。もう記憶の片隅にしか存在しない、女手一つで自分を育て、死んでしまった優しい母。その母が死んだことで、イグアスは世界のすべてに牙をむかねば気がすまない『狂犬』となったのだ。そんな遠い記憶の母のぬくもりをレイに連想していた。

 毒気を完全に抜かれ、自分を心配そうにのぞき込んでくるレイからイグアスは気恥ずかしそうに視線を逸らすが、レイは抱擁と頭を撫でることをやめない。

 すると気付くのはレイの少女としてのいい匂いと、ハウンズ随一のスタイルからくる圧倒的な柔らかさだ。どんな商売女を相手にしてもこんな安らぎを覚えたことはない。

 気がつくとイグアスはレイをベッドへと押し倒していた。今まで自分を完膚なきまでに叩き潰していた相手が自分の前にこんなにも簡単に無防備な姿をさらしていることに、イグアスは内心驚く。

 

 

「? ……なに?」

 

 

 感情のない透明で無垢な瞳がイグアスを見た。

 

 

「テメェ……今、自分が何をされそうになってるのか分かってねぇのか?」

 

「わからない。

 でも……イグアスに殺気はないし、イグアスはそれで胸がポカポカして『安心』するの?」

 

「……多分、これ以上ないくらいにな」

 

「なら……いいよ」

 

「……」

 

 

 感情の戻っていないレイは、イグアスと自分が何をしようとしているのか分かっていない。ただ、それでイグアスが『安心』するのなら別にいいと思っている。

 イグアスは無知につけ込むことに僅かに罪悪感を覚えるが、同時に初めて経験する安心感に、それを独占したいというほの暗い独占欲が身体を突き動かす。

 そしてイグアスはレイの服に手をかけ……。

 

 

「おーい、レイ。 ここにいるのか?」

 

 

 独房をのぞき込んできたヒナタとばっちり目が合った。

 

 

「あ……兄様」

 

「「……」」

 

 

 反応したのはレイだけで、ヒナタとイグアスは無言だった。

 やがて無言で回れ右して独房を出たヒナタ。

 

 

「や、やべぇ!?」

 

「……どこ行くの? カーラさんの許可が無いと、イグアスをここから出せないよ」

 

「馬鹿か、このままここにいたらあのアンティーク野郎に俺が殺されるんだよ!!」

 

 

 無言で醸し出された圧倒的な殺意に何としても逃げ出そうとするイグアスだが、その辺りを分からないレイは脱走防止にとイグアスに抱きついてその動きを止める。

 

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

 

 レイの身体の柔らかさから感じる多幸感と、同時に減っていく自身の命のタイムリミットにイグアスは訳の分からない叫び声を上げた。

 

 

 

 一方そのころ。

 

 

 

「何を血迷った、ヒナタ!?

 ハウンズも全員手伝え!!」

 

「ハ ナ セ!!

 俺はお兄ちゃんだ! 妹に悪い虫がたかったら潰すのがお兄ちゃんの役目だ!!

 俺は全力でお兄ちゃんを遂行する!!

 だからHA☆NA☆SE! HA☆NA☆SEェェェェェェェ!!!!」

 

 

 『RaD』の武器庫でオートマチックショットガンを両手に、背中に対人ミサイル(ペンシル)と対MT用の生身用パイルバンカーを背負って意味不明な言葉を喚き散らしどこかに出撃しようとするヒナタを羽交い締めにして止めるウォルターと、ウォルターの命でヒナタを押さえつけるハウンズの面々の姿があった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『ブリーフィングを始めるよ、借金野郎ども』

 

 

『今回の依頼はあたしら、『RaD』からの依頼だ。あんたらも知っての通り、コーラルは西の、アーレア海の向こうの中央氷原を目指している。

 コーラルは中央氷原のどこかに眠っている……そう確信したアーキバスもベイラムも中央氷原へ渡る方法を模索中だ。

 そして……あたしら『RaD』もこのコーラルの一件に噛もうと思ってね、いち早く中央氷原へ橋頭堡を作っておきたいってわけだ。そしてそれを可能にするものがこのグリッドの最上部にある。

 『アイビスの火』以前に使われていた大陸間輸送用カーゴランチャー……こいつを使って中央氷原へひとっ飛びといこうって寸法さ。

 

 ただ……この作戦には一つ、大きな問題がある。

 グリッド最上部は惑星封鎖機構が管理している衛星砲の射程圏内だ。つまり空から降ってくる衛星砲の砲撃をかわしながら惑星封鎖機構の迎撃システムを排除、制圧する必要があるってことだ。

 

 迎撃システムの排除さえしてもらえれば難しいことは全部こっちがやる。

 『レッドガン』で鳴らした腕を期待してるよ、借金野郎ども』

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ドゴォォン!!

 

 

「うぉっ!」

 

『イグアス、大丈夫か! って、うぉっ!?』

 

「ヴォルタ、俺よりテメェの心配してろ!」

 

 

 空から降り注ぐ衛星砲の砲撃を間一髪でかわしながら、イグアスの『ヘッドブリンガー改』とヴォルタの『キャノンヘッド改』が、グリッド最上部を駆ける。

 機体ギリギリのところを衛星砲の高出力レーザーが通り過ぎ、2人の精神をガリガリと削っていく。そんな2人を尻目にカーラの気の抜けた声が響く。

 

 

『あんたら思ったよりもしぶといねぇ。 ガッツがあっていいことだよ、うんうん』

 

『てめぇ、なんだこの作戦は!?

 衛星砲の砲撃を避けながら惑星封鎖機構の迎撃システムを正面突破で排除とか作戦でもなんでもねぇだろうが!』

 

 

 借金返済まで『RaD』へ出向なんてのは嘘で、こいつらは俺たちを殺そうとしているとヴォルタはカーラに食って掛かるが、カーラとしてはヴォルタの言葉に全面的に納得だった。

 

 

『ああ、あたしもそう思う。 こんなもん作戦でも何でもなく、何ていうか……『特攻』かね、名付けるとしたら』

 

『アホか! じゃあなんでそんなバカなミッションやるんだよ!!』

 

『ミスター出世払いからの推薦さ。

 『あの2人なら余裕余裕。 作戦なんぞ必要ナイナイ。 のりこめー^^』ってさ。

 信頼が厚いねぇ』

 

『そんな信頼いらねぇよ!』

 

『そのミスター出世払いから伝言を預かってるよ。

 

 『可愛いうちの妹に手ぇ出そうとしやがって。 レイが必死で止めるから即座に殺処分するのは勘弁してやる。

  せいぜいその程度生き残って実力を示してみせろ、このクサレ狂犬野郎』

 

 ……だってさ』

 

『完っ全に私怨による誅殺じゃねぇか!?

 っておい、イグアス! お前いつの間に手ぇ出したんだよ!!』

 

「うるせぇ! あとあのアンティーク野郎に言っとけ!

 俺の実力を見て吠え面かくんじゃねぇぞ、このシスコンクソアンティーク!!」

 

 

 そんなドタバタを繰り返しながらも2人の『レッドガン』で培った実力は本物だった。惑星封鎖機構の迎撃システムを排除しながら、衛星砲の射程圏外までやってくることに成功したのだった。

 

 

『2人ともご苦労さん。

 おかげでその周辺の惑星封鎖機構の監視システムの掌握に成功したよ。

 たった今からこの最上部は惑星封鎖機構の監視区域から外れた。衛星砲の砲撃も止まっただろ。

 ほら、目の前のカーゴにアクセスしな。 中央氷原へ一番乗りの称号をあんたたちにくれてやるよ』

 

「ちっ、言われなくても今アクセスする!」

 

 

 そしてイグアスの『ヘッドブリンガー改』がカーゴへとアクセスを始めたその時だった。

 

 

『!? イグアス、上だ!!』

 

「っ!?」

 

 

 ヴォルタの言葉にイグアスはとっさにクイックブーストで高速後退。それとほぼ同時に空から降ってきた巨体……蜘蛛のような形の多脚機動兵器が先ほどまで『ヘッドブリンガー改』がアクセスしていたカーゴを押し潰した。

 

 

「何だコイツ!?」

 

『あんたら嫌なやつに絡まれたね。

 そいつは半世紀前にこのルビコンでコーラルを研究していたルビコン技研、そこでコーラルの軍事転用として造られた『(コーラル)兵器』の一つ、『シースパイダー』だ。惑星封鎖機構が接収して防衛システムとして使ってたみたいだね。

 性能はそこらのMTが束になっても勝てない化け物級の代物だよ。死に物狂いで戦うことだね』

 

「C兵器だか何だか知らねぇが、鉛玉ぶち込まれてぶっ壊れねぇ道理はねぇ!!」

 

『おう! たらふく喰らいやがれ!!』

 

 

 イグアスとヴォルタはカーラの説明に臆することなく、シースパイダーへの攻撃を開始した。

 その巨体が災いした『シースパイダー』に、ヴォルタの『キャノンヘッド改』から放たれたハンドグレネードランチャーと大型グレネードキャノンが次々と突き刺さる。

 同時にイグアスの『ヘッドブリンガー改』がミサイルとアサルトライフル、そしてガトリングキャノンを乱射しながら接近、スタッガー状態に陥った『シースパイダー』にパルスブレードの光刃を叩き込んだ。

 しかし……。

 

 

「コイツ……硬い!?」

 

 

 『シースパイダー』の分厚い装甲を前にスタッガー状態だというのにそこまで大きなダメージが与えられない。

 そうしている間にシステム再起動を済ませスタッガー状態から復帰した『シースパイダー』が2人に反撃を開始する。

 まるでマシンガンのように連射されるコーラルガンのコーラルレーザー、一度真上に上昇し降下してくるコーラルミサイル、そして上部砲塔からコーラルキャノンの高出力コーラルレーザーが周囲をなぎ払う。

 

 

『うぉっ! なんて火力だ!?』

 

「ヴォルタ、下がれ!」

 

 

 機動性の低い『キャノンヘッド改』がなぎ払うような高出力コーラルレーザーに直撃。いくら重装甲タンクとはいえ正面からの撃ち合いは不可能と判断し、ヴォルタは乱舞するコーラルレーザーとコーラルミサイルをかわしながらジグザグに後退、資材の物陰に隠れさせる。

 しかしそれを見た『シースパイダー』は2本の足を振り上げた。そこにコーラルが収束しコーラルブレードを形成、『シースパイダー』は跳躍する。

 

 

「ヴォルタ!!」

 

『うおぉっ!?』

 

 

 隠れていた資材をその巨体でなぎ倒し、コーラルブレードを形成させた2本の足を『キャノンヘッド改』に振り下ろそうとする。

 

 

『間に合うか!?』

 

 

 回避は不能、と即座に悟ったヴォルタは賭けに出た。近接距離防御の重ショットガンと拡散バズーカを叩き込む。その全弾命中の衝撃にのけぞる『シースパイダー』、しかしスタッガー状態には一歩足りない。

 

 

「俺を無視するんじゃねぇ!!」

 

 

 そこに横合いからアサルトブースト全開で急行したイグアスの『ヘッドブリンガー改』がキックを叩き込み、そのままパルスブレードの光刃を叩きつける。

 

 

『すまねぇ、助かった!』

 

「チャンスだ! ヴォルタ!!」

 

『おう!』

 

 

 2度目のスタッガー状態をとり、持てる火力を集中させる2人。しかし、それを振り払うようにシステム再起動を果たした『シースパイダー』は空中へと飛び始めた。

 

 

『おいおい、飛んだよ借金野郎ども。

 しばらく研究室に籠って研究してみたいもんだね』

 

「たかだか空飛んだぐらいで今更ビビるかよ!!」

 

『ッ!? イグアス、デカいのが来るぞ!!』

 

 

 『シースパイダー』底部、大口径コーラルレーザーキャノンにコーラルの赤い光が集中していく。そしてエネルギーチャージ完了と同時に放たれる極太の高出力コーラルレーザーは、ブーストで空中の『シースパイダー』に接近するイグアスの『ヘッドブリンガー改』を狙っていた。

 

 

「こんなので、死ぬかよぉ!!」

 

 

 ギリギリのところでクイックブーストを起動、高出力コーラルレーザーを回避するとそのままパルスブレードの光刃を叩き込む。

 

 

『おら! 鉛玉をたらふくくらいな、クソッタレ!!』

 

 

 『シースパイダー』がイグアスを狙っていると分かった瞬間、ヴォルタの『キャノンヘッド改』もアサルトブースト全開、『シースパイダー』へ接近し有効射程に入ると同時に、持てる火力のすべてを発射する。

 

 

「これで死ねよや!!」

 

 

 そして空中でスタッガー状態に陥った『シースパイダー』にイグアスもすべての火力を集中、とどめのパルスブレードの光刃が『シースパイダー』の装甲を貫きコーラルジェネレータに引火、『シースパイダー』はコーラル特有の赤い爆発を繰り返しながら墜落するのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『よくやったじゃないか。 褒めてやるよ』

 

『雑なねぎらいだな、おい!』

 

「で、このクソ蜘蛛はぶっ潰したぞ。 あとは何をやればいい」

 

『ちょっと待ってな……』

 

 

 待つことしばし……。

 

 

『よし、その先の区画に無事なカーゴを確認したよ。

 先に進みな』

 

 

 カーラの言葉に従い進んでみると、その先には無傷のコンテナが大量にあった。

 

 

『それにアクセスして内部に乗り込んだらACを固定、あとは優雅な空の旅さ。

 着陸予想地点は中央氷原の海沿い……港にはもってこいの場所だよ。

 あんたらが旅立ったら同じように資材と人員を次々送って、そこに港町を建設する。

 そうすれば企業どもは港の使用料や町での滞在費をじゃぶじゃぶ落としていくって寸法さ。

 あんたたちは到着したらそのままRaDの建設部隊『カーペンターズ』の護衛に入ってもらう』

 

「御託はいい。 分かったから、とっととやりやがれ」

 

『せっかちだねぇ。 そんなにガッついてるんじゃ、レイにも嫌われるよ』

 

「いい加減にしやがれ、このババア!」

 

『ハイハイ、すぐにやるさ』

 

 

 ヴォルタとイグアスを乗せたコンテナがゆっくりと大陸間輸送用カーゴランチャーへと装填されていく。そんな中、カーラは軽い口調で言った。

 

 

『ところで……そのカーゴランチャーは物資輸送用だって知ってたかい?』

 

「なっ!?」

 

『どういうこった!?』

 

『そいつは物資輸送用で、それに乗って生身で空を飛ぶのはあんたたちが始めてだ。

 後続の人員にはそれ用にしっかり改造したやつを使うけど、ミスター出世払いから『あいつらなら問題ナイナイ。 思い切り飛ばしてやってくれ』ってお墨付きをもらってるし大丈夫だろ?』

 

「んなわけあるか!」

 

『っと、エネルギーチャージが終わったみたいだね。

 かっ飛ぶよ。 舌を噛みたくなけりゃ、そのピーチクパーチクさえずってる口を閉じな』

 

 

 ヴォルタとイグアスの抗議を無視して、大陸間輸送用カーゴランチャーはその発射の最終シークエンスに入っていた。

 

 

「あのシスコンクソアンティーク野郎がぁぁ!! 覚えてやがれよッッ!!」

 

 

 ヴォルタとイグアスを乗せたコンテナが、勢いよく射出される。

 向かう先は中央氷原。このコーラルを巡る戦いの、半世紀前から続く因果が収束する、決戦の大地である……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『キャノンヘッド改』

パイロット名:『G4(ガンズ・フォー) ヴォルタ』

 

R-ARM UNIT:DF-GR-07 GOU-CHEN(ハンドグレネードランチャー)

L-ARM UNIT:SG-027 ZIMMERMAN(ショットガン)

R-BACK UNIT:EARSHOT(大型グレネードキャノン)

L-BACK UNIT:SB-033M MORLEY(拡散バズーカ)

 

HEAD:HD-011 MELANDER

CORE:DF-BD-08 TIAN-QIANG

ARMS:DF-AR-09 TIAN-LAO

LEGS:LG-022T BORNEMISSZA

 

BOOSTER:なし

FCS:FC-088 TALBOT

GENERATOR:DF-GN-06 MING-TANG

 

EXPANSION:PULSE ARMOR

 

 

解説

ガリア多重ダムの一件で破壊され、修理の完了したキャノンヘッド。その構成を変更したもの。頭部・腕部・両肩武装が見直されている。

頭部は最低限の機能しか無かったものからベイラムの傑作量産シリーズ『メランダー』に変更、これにより装甲をはじめとした各種性能がアップしている。

腕部はさらに重装甲化し、APと防御力の強化を行った。

両肩武装は一撃必殺となる『大型グレネードキャノン』、さらにハウンズとの戦いで近接格闘兵装によって痛い目をみた経験から近接距離で高い能力をもつ『拡散バズーカ』を近接防御および攻撃力アップとして装備した。

結果として大幅な性能アップが成されており、特に相方であるイグアスとの連携攻撃は強力である。

機体の調整兼小遣い稼ぎのつもりでドーザーの依頼をイグアスと受けるも、予想外のハウンズの登場、そして『ブランチ』の介入によってイグアスを撃破され『RaD』に降伏した。

最初はどうなることかと思ったが『RaD』での待遇は悪いものではなく、ミシガンに一撃入れるまで『レッドガン』にいるつもりのイグアスと違い、それを諦め何か商売でも……と考えていた矢先の出来事であり、実は『RaD』に再就職も悪くないと思っていたのだが、今回無茶ぶりの上、空を飛ばされて少し考えるつもりでいるのだが……すでに自由時間にモアの店に何度か足を運び、アマゾネス隊の1人といい仲になっていた。行動が早い。

今は娼婦と客の関係だが両者ともに相手を悪くないと思っており、実質カーラとモアの仕掛けたハニートラップでそれに見事に引っかかっている状態。ヴォルタが『RaD』所属になるのもそう遠いことではないだろう。

 

 元の弱点であった頭部などが強化され、重装甲タンク型ACとして本当に強い機体になっている。

拡散バズーカはバージョンアップで強化されているし、近距離でのダメージ&衝撃として問題ない。しかしスタッガー状態にしても格闘武装のような大きな一撃がないため、大物撃破には時間がかかる。

テストとしてアーキバスバルテウスと戦ってみたが、火力のわりにそれなりに時間がかかった。やはり格闘の出来る僚機があってもっとも輝く機体であり、ヴォルタらしい機体となっている。

 

 

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