イグアスとヴォルタのコンビが『シースパイダー』を撃破したらしい。おそらく今ごろ、原作AC6同様に特に加工されていない輸送用カーゴで中央氷原へ向けて空の旅の真っ最中だろう。
思わず暗い嗤いが漏れそうになるが俺は俺で今は仕事中だ。そういう雑念は頭の隅に一時追いやる。
俺とアオイ、そしてケイトとドルマヤンという4人は崩れかけのグリッドへと来ていた。
『ここからがグリッド012……『ジャンカー=コヨーテス』の本拠地となる。
同時にここは『レイヴンズネスト』の拠点でもあるらしい。 ヒナタ、アオイ……細心の注意で進め』
ウォルターの言うようにここは『グリッド012』……あの『ジャンカー=コヨーテス』の本拠地であり、ケイトから聞き出した『レイヴンズネスト』の拠点の一つだという。
そしてここは俺とアオイの始めて降り立った場所だ。もしあのとき『レイヴンズネスト』連中まで敵として出てきたら、おそらく俺もアオイも生きてはいなかっただろう。そう思うと、自分はずいぶんと綱渡りをしてきたのだと感慨深いものがある。
水先案内人としてケイト、そして本人が『レイヴンズネスト』について見てみたいと着いてきたドルマヤン。そして目標の撃破のための俺とアオイという布陣である。他のハウンズは『RaD』の防衛、さらにイグアスたちの後詰めとして、『RaD』建設部隊『カーペンターズ』の護衛に入るよう待機中だ。
ちなみにウォルターは今まで俺たちハウンズのことを頑なに『強化人間ナンバー』で呼んでいた。これはウォルターにとっては俺たちハウンズはあくまで目的達成のための道具で、いざとなれば失ってもいい存在だと自分に言い聞かせるためのケジメだった。しかし俺から未来に起こりえるだろう話を聞き、ハウンズを誰一人として失わせたくないと思ってくれたらしい。
その変化が良いことか悪いことかは分からない。何といってもここは修羅の世界、俺だって明日の命だってあるかどうか分からない世界だ。割り切っていた方がいい場合もある。
だが元から誰一人失わせないと思っていた俺にとっては、それを肯定してくれる味方が出来たようで嬉しいのは事実だ。
『おやおや、こんな僻地にようこそご友人がた!』
広域通信、目的の1つから早速の接触である。
「やぁ、久しぶりだな。 『オーネスト=ブルートゥ』」
『おや、あなたはいつかの空からやってきたご友人ではないですか!』
「あのときは手土産の一つも無かったんで帰らせてもらったが……今日はしっかりと手土産を持ってきたぞ。
いわゆる『冥土の土産』ってやつのお届けだ。 カーラの分もあるから存分に楽しんでくれ」
『カーラのご友人だったのですね!
私に贈り物を届けに来てくれるなんて……素敵だ!
ああ、私も全力でもてなさなければ!』
感極まって震えているだろう姿が容易に想像がつくブルートゥ。そして、その通信に割り込むように別の声が響く。もう一つの目的の方のご登場だ。
『創造主に逆らいまだ生きながらえているだけでなくイレギュラーに組するとは……あきれ果てました、ケイト=マークソン』
『イレギュラーヒナタの語る夢物語の結末に興味を引かれただけです。
それに彼に教えてもらいましたが『一度生まれたものは簡単には死なない』そうですよ、キャロル。
……私はまだまだ生きます』
『……いいえ、イレギュラーともどもここで果ててもらいます』
キャロルの言葉と同時にレーダーに敵影が現れる。
『通常のMTに混じってウィーヴィルとヘリアンサスが確認できた。 注意しろ』
『ウィーヴィルにヘリアンサスか……確かにアレらがいるのなら、ここはただのドーザー組織の本拠地というわけではなさそうじゃな』
ウォルターの言葉にドルマヤンが戦闘態勢に移りながら頷く。
『では先導は私に任せてください、ヒナタ』
『……少しでも怪しい動きをしたら後ろから撃つから』
『ご自由に。 ですが私がヒナタを裏切ることはありませんから』
『……どうしてか、あなたのどんな言葉を聞いてもイライラする』
ケイトの新しいAC『アルストロメリア』が両手のカラサヴァを構え、アオイの『曼珠沙華』も両手のバズーカを構えて戦闘態勢に入った。
「なんだかこの2人、ギクシャクしててお腹痛くなってくるんだが……」
≪私の学んだ人間の思考から推測すると、『女の戦い』というものだと思います。
中心と原因は当然ヒナタです。 お腹痛くなる前に、ヒナタがしっかりとした行動をすべきだと思いますが?
ちなみにカーラからは「もう面倒だから2人ともまとめて抱き潰しちまえ。それで丸く収まるんだから」という解決のための助言が来ています≫
「あの人はエアにまで一体何を教えてるんだ!?」
俺は盛大にため息をつきながらも両手のショットガンを構え戦闘態勢に入ると、こちらに迫ってくる敵軍に視線を向けるのだった……。
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『RaD』製の戦闘型MTトイボックスや量産型C兵器であるウィーヴィルとヘリアンサスの攻撃をなぎ倒しながら俺たちは進む
『こちらです』
ケイトの先導で『レイヴンズネスト』の拠点と思われる区画に進む。そのため、俺の知っているブルートゥ排除の作戦の侵攻ルートとは全く違う。
今までは崩れかけた外観と同じく内装もボロボロだったが進むにつれて補修されたのだろう、綺麗になってきている。『レイヴンズネスト』が拠点として使用するにあたり、修復したようだ。
その時、敵のMTの攻撃に混じって高速接近反応が。
これは……ACだ!
『僕のアトリエに入り込んで来たネズミは誰かなぁ?
そんな汚いネズミは、綺麗な電気で、綺麗に浄化して、綺麗な芸術品に変えてあげよう!!』
……『ジャンカー=コヨーテス』所属でこの1ミリも話が通じそうにない雰囲気、なんか覚えがあるぞ。
『カーラからのデータベースを確認した。
敵AC『エクト』、パイロットは『エレクトロ=デットーリ』。
『ジャンカー=コヨーテス』の幹部の1人で、治療や浄化と称して電撃を流し込み、それでもだえる様を『芸術』と称する変態芸術家……だそうだ。
そいつと戦った『RaD』のものは電撃攻撃で感電死している。機体の強制放電が起こるまで攻撃を受け続けないように気をつけろ』
「爆死、焼死、斬死ときて今度は感電死か……変態の見本市はこれで最後にしてくれよ」
『安心しろ。 それが『ジャンカー=コヨーテス』の最後の幹部らしい』
敵MTや量産型C兵器がうるさいというのに『ジャンカー=コヨーテス』……というか、『オーネスト=ブルートゥ』の楽しい変態部下の登場に俺はげんなりする。
すると、ケイトの『アルストロメリア』が前に出た。
『ここは私がやりましょう。
ヒナタの信頼を得るためにも、まずは私の実力をしかと見せてあげましょう!』
『……信用できない。 ここはヒナタがもっとも信頼する私がやる』
『アルストロメリア』の前にアオイの『曼珠沙華』が割り込む。
「私が私が」と言い合い、お互いに譲らない様子だ。
『……ヒナタよ。年長者として忠告するが、女との関係ははっきりくっきりした方がよいぞ。
でないと暗殺者のごとく背後からナイフをえぐり込んできたり、自分の血肉を混ぜた料理を出したりしてくるからの』
「じいさんはじいさんで過去に何があったんだよ!!」
『なぁに、ドーザー時代の若気の至りというやつよ』
なんとも言えない弛緩した空気、それに耐えかねたのかデットーリとかいう狂人は考えうる限り最悪の選択を選んでしまった。
『誰でもいい! 僕の綺麗な綺麗な電気で浄化してあげるよ!
女の子の浄化の時の声が、僕は大好きなんだ!』
やはりこの変態もご多分に漏れず女の悲鳴が大好物らしい。チャージしたスタンボムランチャーを『曼珠沙華』と『アルストロメリア』にむけて発射した。広域にばらまかれた特殊金属片が電撃を伴い、2機を襲う。
だが、それ一発で過負荷による強制放電には遠く、すぐに両手に持ち替えたスタンガンで2機に追撃を仕掛けてくるが、左右にクイックブーストでステップ、『曼珠沙華』と『アルストロメリア』はその攻撃を避けていた。
『……邪魔!』
『どうやら頭のおかしい自殺志願者みたいですね。 さっさとカラサヴァの錆と消えなさい!』
『アルストロメリア』の両手のカラサヴァがうなりを上げて連射される。カラサヴァといえばフルチャージした際の圧倒的な破壊力に目が行きがちだが、エネルギー兵器版のバズーカのように跳弾の発生しない、おまけに弾速が速く避けにくい攻撃を硬直することなくかなりの速度で連射可能というのも強力な強みの1つだ。
その直撃で『エクト』にプラズマ爆発がいくつも起こる。だがエネルギー兵器は総じて衝撃力に乏しく、相手をスタッガー状態にすることに向かない。そのため、デットーリとかいう狂人はそのままケイトの『アルストロメリア』に向けて反撃を開始しようとするが……。
『消えて……!』
空中にホバー形態で飛び上がっていたアオイの『曼珠沙華』から、バズーカと連装グレネードキャノンが撃ち下ろされる。威力と衝撃力に優れたその一撃に『エクト』が大きく揺らいだ。
『こちらもどうぞ!』
その隙に接近したケイトの『アルストロメリア』が左手のカラサヴァをレーザーダガーに持ち替えて、フルチャージしたレーザーダガーを一閃した。それが致命打となり、『エクト』がスタッガー状態に陥る。
後に待つものは『死』のみだ。
『決める……!』
アオイの『曼珠沙華』からのガトリングガンとバズーカが容赦なく『エクト』のAPを削る。
『さぁ、フィナーレですよ!!』
そしてカラサヴァ最大の特徴、2段階フルチャージの完了したカラサヴァが火を吹き、その超威力が『エクト』へと直撃した。
『電気……電気……電気……。
ああ、パチパチ綺麗だなぁ……』
そしてそのまま『ジャンカー=コヨーテス』最後の幹部、デットーリは愛機と運命をともにし、爆発四散して果てる。
『……見事なコンビネーションじゃな。 コンビとして優秀なのではないか?』
「やめてくれ、じいさん。 いつ殺し合いが始まるか分からなくて俺の胃が死ぬ」
俺たちは敵を排除し、そのまま進んでいく。
そして……。
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『お待ちしていましたよ、ご友人!』
「ッ!? 全員避けろ!!」
あからさまな巨大な扉を開けると、こちらに猛スピードで突っ込んでくる巨大な塊……スマートクリーナーだ。
その豪腕を俺たち4機が避けると、上から3機のACが攻撃を仕掛けてくる。
『『CNP-125 ケイト=マークソン』……あなたは私たち姉妹の恥です。
ここで……私と『スプリガン』で討たせてもらいます!』
『その声は……キャロル!』
ケイトの『アルストロメリア』には、マインドガンマを素体にしただろう、中量逆関節型ACが、手にしたプラズマライフルの銃口を向けていた。
瞬く間に交戦状態に入るケイトとキャロル。
『……あのデカブツは任せて』
アオイは『曼珠沙華』をジャンプさせ、四脚をホバー形態へ変形させながらスマートクリーナーに攻撃を開始する。
『これは……なるほど、性懲りもなくまた新たな『レイヴン』をでっち上げたというわけじゃな。
またぞろ『ブランチ』などという連中を調子づかせるわけにもいかん。
この新しい『レイヴン』はわしが相手をしよう』
武装構成も機体構成もまるで違うが、まとう雰囲気が『レイヴン』と同じACが1機……おそらく新しい『レイヴン』候補らしいその機体に、ドルマヤンのじいさんが機体を向ける。
そして……。
『お待ちしていましたよ、ご友人!』
「やぁ、会えてうれしいよ。 オーネスト=ブルートゥ」
原作AC6からの最大級の狂人と向き合う。
この世界では『レイヴンズネスト』で生み出された『意思持つコーラルと交信するための遺伝子改造強化人種のプロトタイプ』であるらしく、コーラルに溶けた魂の声が無秩序に常に聞こえてくることで狂った失敗作であるらしい。
「で、そのACはどうしたんだい?」
俺は注意深く相手の動きを見ながら会話する。
ブルートゥの機体は俺が原作AC6で知る機体、『ミルクトゥース』とはまるで別物になっていた。
両手の武装が火炎放射器とチェーンソーであることは変わらないが、スプリットミサイルと大型グレネードキャノンを装備。フレームも完全な重装甲二脚で、元の面影は頭部くらいのものだ。
『ええ、ご友人に喜んで貰おうと、仕立て直した『ブレードトゥース』です。
どうです、これであなたと楽しく踊れるでしょうか?』
「……いいね。
明らかに原作AC6よりも強力になっているオーネスト=ブルートゥに対し、俺は油断なく両手の重ショットガンを構える。
『ではご友人、踊りましょうか!
ご友人が踊り疲れて眠ってしまうまで!』
「先に踊り疲れて眠るのはそっちだ、ブルートゥ!」
互いの機体のブーストが起動、ブルートゥとの決着をつける戦いが始まったのだった……。
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今日のアセン
AC名:『エクト』
パイロット名:『エレクトロ=デットーリ』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:AH-J-124 BASHO
CORE:AC-J-120 BASHO
ARMS:EL-TA-10 FIRMEZA
LEGS:EL-TL-10 FIRMEZA
BOOSTER:BC-0200 GRIDWALKER
FCS:FCS-G2/P05
GENERATOR:AG-E-013 YABA
EXPANSION:PULSE ARMOR
解説
無法者集団『ジャンカー=コヨーテス』の幹部、『芸術家』を名乗るうちの1人。
彼の父はある無法者集団の拷問官兼医者であり、彼は幼いころから父の施術を見て育った。そんな中で彼は『電気』へと惹かれる。
電気を流されたことでビクビクとはね、時として死からも生還(心臓への電気ショック)させ、さらには人を素直にする(拷問で使用し口を割る行為)バチバチと綺麗なもの……それが彼が魅了された『電気』だ。
以降、彼は『美しい電気で人々を治療、浄化することが芸術である』として活動、数え切れない人間を感電死へと追い込む。
当然のように好物は女の子の電気拷問での悲鳴であり、アオイとケイトに襲いかかるがそれが運の尽き。逆に2人の抜群のコンビネーションによって瞬く間に撃破されることになる。
コンセプトは『強制放電』。武装はすべて電撃系であり強制放電を狙った構成。それを高機動で叩き込み続ける。
『ジャンカー=コヨーテス』の幹部で他の2人が『焼死』『爆死』『斬死』のため、他の殺し方を模索したところ『感電死』という特性というキャラになり、機体も電撃系となる。ちなみに『○○死』の模索の際に使用した資料はR18同人サークル『青色発狂ダ○オード』さんの作品群。美少女のエロと脳みそと臓物と血が満載なので、よい子のみんなは決して検索しないように。
実は作者としては持て余していたキャラ。
最初の段階で『ジャンカー=コヨーテス』3幹部ということでキャラも機体も他の2人同様完成していたのだが、色々なイベントを優先させた結果、完全に登場のタイミングを逸してしまった。
そのため作者でもちょっと雑な扱いになったと反省しているキャラである。
機体性能としては悪くない。近距離射撃戦のスタンダードな軽量二脚AC。ソウルシリーズの『出血』の怖さがACでも出来る。
しかし相手の頭部によってその有効性に差……ぶっちゃけシステム復元性能が最大の頭部『VE-44B』を相手が装備していた場合、かなり厳しいことになる。
機体名は電気けいれん療法を意味する『ECT』から。
パイロット名の元は、急死した悲劇の名馬『エレクトロキューシュニスト』とその騎手『ランフランコ=デットーリ』から。