鉄塊……スマートクリーナーがその剛腕を振り回す。
しかしアオイは『曼珠沙華』を四脚ACの特徴であるホバー形態に変形、空中に浮遊しながらバズーカと連装グレネードキャノンを的確に頭頂部から内部の溶鉱炉へと叩き込んでいく。
内側で巻き起こった爆発にスマートクリーナーはボンッと飛び上がるようにしてスタッガー状態に陥った。そこへガトリングガンとバズーカの追撃により、スマートクリーナーのAPはガリガリと削られていく。
スマートクリーナーのような大型兵器は装甲も耐久力も高く厄介な相手だ。しかも通常より耐久力が強化されているらしく、以前戦ったスマートクリーナーよりなお硬い。
だがその基本は変わっていなかった。無人機ゆえにその攻略法を知ってさえいれば相手取るのは比較的容易だ。アオイは冷静かつ的確に攻撃を続ける。
しかし、スマートクリーナーの挙動と攻撃パターンが変化した。ダメージの蓄積によっていわゆる『発狂モード』に突入したらしい。
頭頂部溶鉱炉からまるで火山弾のようにランダムに火の玉が発射され、その剛腕を空中に向けてもやたらに振り回してくる。その攻撃の直撃はクイックブーストで避けるものの、地面に落ちた火の玉が燃え上がり、周囲の温度が急上昇していく。ジェネレータのエネルギーにそこが見え、回復のために空中浮遊をやめて地面に降り立った『曼珠沙華』の装甲を炎があぶり、機体温度の急上昇によって『曼珠沙華』のラジエータがうなりを上げて緊急稼働を始めた。地面全体が先ほどの火の玉攻撃で燃え上がり、そのラジエータで処理しきれない炎のダメージを『曼珠沙華』に与えている。
「……地味に厄介」
ポツリとつぶやくアオイ。だが、スマートクリーナーと四脚ACの相性、そしてアオイの技量の差はこの程度では縮まらない。ジェネレータを回復させると、『曼珠沙華』は再びホバー形態に変形、弱点である頭頂部溶鉱炉へバズーカと連装グレネードキャノンの玉入れを再開する。
そう遠くない未来、アオイによってスマートクリーナーは撃破されるだろう。しかし、その高い耐久力から今しばらくの時間がかかるのは事実だ。
それまでヒナタの援護に行けないことに少し顔をしかめながらも、アオイは目の前の敵を一秒でも早く屠るために集中、『曼珠沙華』の操縦桿をギュッと握り直した。
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一方、こちらはサム=ドルマヤンと新しい『レイヴン』候補の駆る『ナイトフォールⅡ』の戦い。
『ナイトフォールⅡ』からハンドミサイルと右肩の10連ミサイルがうなりを上げながら発射され、ドルマヤンの『アストヒク・S』へと迫る。ドルマヤンはブーストとクイックブーストを巧みに使い、柱の陰に潜り込んでそれを回避した。
しかしその隙をついて『ナイトフォールⅡ』が急接近。左手のマインスロアーから小型爆弾がばらまかれた。完全にはかわしきれず衝撃に揺れる『アストヒク・S』。そしてその爆炎を突き破るように、左手に持ち替えたパルスブレードの光刃で斬りかかってくる。
「ぬぅっ!?」
浅くだがパルスブレードの光刃が『アストヒク・S』の装甲を削った。
『アストヒク・S』も反撃でバーストライフルとプラズマミサイルを発射するが、クイックブーストを巧みに使い、大したダメージもなく『ナイトフォールⅡ』は後退に成功する。
「……なるほど、ミサイルのけん制によって生じた隙に接近し、2種類の左手武装を使い分けて格闘戦を仕掛けてくるか……。
奇しくもわしと同じような戦闘スタイルというわけじゃな」
それを理解し、ドルマヤンはニィッと嗤った。
「面白い、貴様には格闘戦の神髄というものを教えてやろう」
瞬間、『アストヒク・S』はアサルトブーストを全開、バーストライフルとプラズマミサイルを撃ちながら突撃を開始した。
即座にそれに反応し、『ナイトフォールⅡ』はハンドミサイルと10連ミサイルを『アストヒク・S』に向かって発射する。しかし。
「遅いわ!」
空中で巧みにブーストを使用、ミサイルを避けながら『ナイトフォールⅡ』へ向けて突っ込んでいく。
「ミサイルが真価を発揮するのは中距離、懐に飛び込んでしまえばそう驚異ではないわ!」
ドルマヤンの言っていることは正しい。しかしそれをするには自分に向かってくるミサイル群に、自ら飛び込んでいくことが必要である。自分への明確な殺意であるミサイルに自ら飛び込んで行きギリギリで回避しながら相手に接近する……そんな狂気と紙一重が平気でできるのは数多くいるAC乗りたちの中でも上澄みだけである。そして懐に飛び込んでしまえば、ライフルの方が有利なのは当たり前だ。
『アストヒク・S』のバーストライフルが的確に『ナイトフォールⅡ』の装甲を削っていく。それに耐えかねたのか距離を取ろうとしたのか、『ナイトフォールⅡ』はマインスロアーで小型爆弾をばら撒いた。
しかし……。
「……足が止まったな」
『アストヒク・S』はばら撒かれた小型爆弾を避けようとはせず、ダメージを承知の上でそのまま左手のムーンライト=レッドシフトを振るった。コーラルによって形成された赤い刃の波動は足の止まった『ナイトフォールⅡ』に2連続で直撃する。
コーラル系兵器の特徴として、衝撃値と衝撃残留値が全く同じというものがある。これはコーラル兵器で攻撃された場合、ACS負荷が抜けていくのが遅いということを意味していた。そのためACS負荷限界に達しやすくなる。
スタッガー状態に陥ることを恐れ焦ったのか、『ナイトフォールⅡ』はパルスブレードを抜き放ち斬りかかってきた。
「堪え性がないのう……」
だが、それこそがドルマヤンの狙いだ。
クイックブーストでそれを回避するのと同時に、チャージしたバーストライフルの三連射が至近距離から叩き込まれた。ACS負荷限界を迎え、スタッガー状態に陥る『ナイトフォールⅡ』。
「格闘戦は敵の必殺の刃に身を晒しながらも、一瞬の隙を狙い耐え忍ぶことも重要よ。
では……授業料を支払ってもらおうか!」
スタッガー状態に陥った『ナイトフォールⅡ』を『アストヒク・S』の抜き放ったパルスブレードの光刃が切り裂いた。その衝撃に吹き飛ぶ『ナイトフォールⅡ』。
そして左手を再びムーンライト=レッドシフトに持ち替えた『アストヒク・S』がそのチャージを終えると、巨大な赤い刃の波動が『ナイトフォールⅡ』に襲いかかり、両断した。
上半身と下半身が両断され、ずり落ちた上半身のジェネレータに引火、『ナイトフォールⅡ』が爆発する。
「このルビコンを脅かす芽は摘ませてもらう。 悪く思うな」
ドルマヤンは心の中で合掌すると、ほかの援護に向かうため『ナイトフォールⅡ』の残骸に背を向けるのだった……。
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『消えなさい、イレギュラーに組する姉妹の恥!』
「消えませんよ、そう簡単には!」
ケイトとキャロルのある種の姉妹対決は、まずは中距離からの射撃戦から始まった。
奇しくも両者のメインウェポンは同じプラズマライフル系統、しかしその性質はまるで違う。
キャロルのプラズマライフルは単発威力に重きを置いた、真にエネルギー兵器版のバズーカと呼べるものだ。チャージショットは威力もさることながら爆発力を高めることで、敵集団を一気に吹き飛ばすことが出来る。
対するケイトのカラサヴァは多少威力を抑えつつも連射の利くプラズマ弾を発射する通常ショット、弾速の早いレーザーを放つチャージショット、そしてカラサヴァ最大の特徴と言える威力抜群のフルチャージショットと、3つの特徴的なショットを巧みに使い分けるものだ。さすがはレーザーライフルとプラズマライフルの両方の特徴を取り込んだ高性能マルチエネルギーライフルである。
『やはり射撃戦ではそちらに分がありますか……』
その性質上、キャロルのプラズマライフルはリロード時間が長く、時間単位での攻撃力は連射力の高いカラサヴァには敵わない。しかもそれをケイトは2丁持ちをしているのだ。中距離射撃戦ではどう考えてもケイトに分がある。
だが……キャロルの真骨頂は中距離の射撃戦ではなかった。
『行きます!』
脚部のスプリングをたわませ、逆関節AC特有の跳躍力で飛び上がるキャロルの『スプリガン』。そしてクイックブーストで距離を詰めると左手を振るった。
飛来する赤い刃の波動はドルマヤンも使っていた『ムーンライト=レッドシフト』のものだ。
「危ない!?」
とっさにそれを回避するケイトの『アルストロメリア』。ホッと息をつくケイトだが、次の瞬間背中に氷柱を突き込まれたような悪寒が襲ってくる。
(絶対にマズい何かが来る!)
その予感に従い、ケイトはなりふり構わずクイックブーストで全速後退した。そしてそのケイトの判断は正しかった。
先ほどまでケイトのいた場所の床……これが大きく切り裂かれていた。ACの装甲材よりも強度に優れているはずのそれを叩き切ったもの……それは蒼い月の光のような色の波動だ。
レッドシフトとは違う、純粋にエネルギー格闘兵器として完成されたもう一本の月光『ムーンライト』のフルチャージスラッシュだ。
アーキバス製のエネルギー兵器適性最大のジェネレータに、格闘適性最大のバショウアーム。その二つの相乗効果を乗せた『ムーンライト』の一撃に、ケイトは冷や汗が止まらない。
『外しましたか……しかし、次は当てます』
静かに宣言する妹に、思わずケイトは叫んだ。
「この……ムーンライト狂いが!!」
『カラサヴァ狂いのあなたに言われたくありません!!』
互いに別の道を行くことを決めた姉妹の苛烈な戦いは、まだまだ続きそうだった……。
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『スロー スロー クイック クイック スロー スロー スロー スロー クイック クイック スロー スロー……。
いいですね、あなたとのダンスは胸躍ります!』
「ああ、そうかい!」
連装スプリットミサイルをかわしながら、こちらもお返しにプラズマミサイルを放つ。
しかしそのプラズマ爆発を無視して『ブレードトゥース』はアサルトブーストを起動、急接近してきた。
「ちぃっ!?」
そこに重ショットガンを叩き込むが、重装甲に阻まれ大したダメージにならない。
次の瞬間にはけたたましいアラートが鳴り響き、俺はクイックブーストで急機動、『日向葵』のすぐそばを大型グレネードキャノンが通り過ぎて冷や汗が流れる。
オーネスト=ブルートゥの新たな愛機『ブレードトゥース』、それは重装二脚ACとして頑強な装甲と強力な火力を装備しながらその代償である鈍重さをアサルトブースト重視のブースターを装備し、アサルトブーストを中心とした高速起動で補う形になっている。原作AC6での作業用ACを戦闘に転用しただけの『ミルクトゥース』とはあらゆる面で違っていた。
「ちょっとめかし込みすぎじゃないかい?」
『いいえ、あなたと踊るにはこのくらいはしないと逆に失礼というもの。
ジェネレータの甘美な調べ……『ブレードトゥース』もあなたとのダンスを喜んでいますよ』
≪聞いていた通り、様子のおかしな人です。
これもおかしな形で『交信』を果たし、コーラルの声が無秩序に聞こえたせいで狂ってしまったというのなら……なるべく早く楽にしてあげてください≫
「それは俺も賛成なんだが……こいつはちょっと一筋縄じゃいかないぞ」
エアの憐憫の声に答えていると、再びアサルトブーストを起動した『ブレードトゥース』が火炎放射器から炎を吐きかけながら急接近。炎であぶられながらも『日向葵』が両手のショットガンを叩き込むが、『ブレードトゥース』の動きは止まらない。
そのまま『ブレードトゥース』がチェーンソーを起動させ斬りかかってくるがギリギリのところで回避し、カウンターでパイルバンカーを叩き込む。
しかし……。
「ダメだ、浅い!」
さすがの重装甲、一撃必殺とはいかない。
『さぁ、まだまだですよ!
もっと情熱的に踊りましょう!!』
「そういうのはどこかの女とにしたいんだがな!!」
軽口を叩きながらも、俺はさらに集中し、敵の隙をうかがう……。
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今日のアセン
AC名:『ナイトフォールⅡ』
パイロット名:『コーラル型遺伝子調整強化人種(廃棄失敗作)』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:HC-2000/BC SHADE EYE
CORE:07-061 MIND ALPHA
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:06-041 MIND ALPHA
BOOSTER:FLUEGEL/21Z
FCS:FCS-G2/P10SLT
GENERATOR:DF-GN-06 MING-TANG
EXPANSION:PULSE PROTECTION
解説
『RaD防衛戦』にてヒナタによって、『ブランチ』を動かしていた『レイヴン』とAC『ナイトフォール』は撃破された。
しかし操りやすい駒である『ブランチ』を手放す気は『レイヴンズネスト』には無く、いつものように新しい『レイヴン』とその愛機『ナイトフォール』を仕立て上げた。
それが本機『ナイトフォールⅡ』である。便宜上『ナイトフォールⅡ』と呼んでいるが、『レイヴン』の愛機は『ナイトフォール』となるので、これも『ナイトフォール』というのが本当の名称。
新たな『レイヴン』として選定されたコーラル型遺伝子調整強化人種の廃棄失敗作の個性に従い機体を専用に調整、『ブランチ』への『出荷』を待っていたところに襲撃が起こり初陣へと出撃する。しかし、相手がサム=ドルマヤンというルビコン最強クラスのAC乗りであったのが運の尽き、初陣を生き残ることが出来ず散ることになった。
もはや所属の怪しさを隠そうともしないAM製のコアと脚部を使用。腕は格闘戦用のバショウ腕。
2種のミサイルを使いながら近距離に接近、マインスロアーで相手をスタッガー状態にし、トドメのパルスブレードで切り裂くという戦法で戦う。
2種の格闘武装を使い分けるという、本当にドルマヤンと考えていることは同じである。
実際に使うとかなり使いやすく、手軽に強い。
格闘戦用のバショウ腕にハンドミサイルはある意味最適であるし、格闘兵装2種で一つは距離があっても衝撃値を稼げるマインスロアーで、最大のダメージソースは導きのパルスブレードとアセンとしてしっかりとまとまっている。テストプレイでもミッション・アリーナともに十分戦える機体に仕上がっていた。
ただ……ハンドミサイルは見栄えがあまりなので、ライフルとか持った方が格好良くはなる。
少なくとも主役機や看板機体には見た目の格好良さが足りないな、というのが感想である。