祝福の花を君に   作:キューマル式

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今回からチャプター3に入ります。

今回は新しい試みとして、メッセージの方に送られてきた読者さんのアセンとキャラをゲストキャラとして登場させています。


チャプター3
第44話 『一般傭兵から見たウォルターのイメージは、ハウンズには禁句です』


 

 惑星『ルビコン3』……この惑星は地球とほぼ同じような水と空気があるという奇跡のような偶然がありながら、生物というものを育むことがほとんど無かった。

 既存の生態系は少なく、荒れ地や砂漠の割合が非常に多いため、ルビコン3を発見した人類の入植時は生活拠点であるグリッドの建設になかなか難儀したようだ。

 そんなルビコン3の中でも特に自然が厳しく、開発がほとんどされなかった場所がある。それが氷で覆われた中央氷原だ。まぁ、物資などのリソースは限られていることを考えれば、そんな場所よりももっと開発しやすい場所の開発を急ぐというのは妥当な判断だ。

 結局、中央氷原は入植当時、最低限の調査拠点やエネルギー施設、星外からの物資輸送用の宇宙港が整備されたに留まる……少なくとも『表向き』にはそうなっている。

 しかし、そんな人類が今まで近づこうとしなかった中央氷原は、現在ルビコン3でもっともホットな建設ラッシュに沸いていた。

 

 コーラルの局所爆発によって大気中に放出されたコーラルの流れはすべて西……中央氷原を目指していた。コーラルの性質の一つ、『より大きく集まろうとする性質』を考えるのなら、コーラルの向かう中央氷原のどこかに莫大な量のコーラルが存在する……そう確信したコーラルを求めてルビコン3に侵略していた星外企業『アーキバス』と『ベイラム』、そうはさせじとする現地抵抗勢力『ルビコン解放戦線』はすべて中央氷原を目指した。

 

 当初は中央氷原への移動および現地での活動インフラをどうするのかすべての勢力は頭を悩ませていたが、そんな中ルビコンの現地企業である『RaD』が驚くべき方法でアーレア海を渡り中央氷原へと一番乗りすると、中央氷原への玄関口となる港町『ロアード』を完成させたのである。

 『RaD』は他のルビコンの現地企業である『BAWS』『エルカノ』との三企業同盟『アライアンス』を締結、完成させた港町『ロアード』と周辺数十キロ圏内を完全な中立地帯とした。通行料と滞在費さえ払えば誰であろうと使用し、金さえ払えば武器弾薬から日用消耗品まで誰にでも売るというスタンスである。

 

 『アーキバス』と『ベイラム』はこの状況に苦虫を噛み潰したような顔をするものの、遠く離れた中央氷原で補給を断たれる危険を考えれば頷くほかない。

 かくして『アーキバス』と『ベイラム』は通行料に滞在費、武器弾薬の購入に中立地帯の先にそれぞれ拠点を築くための建設資材費など莫大な額を『アライアンス』の各企業に落としていく。

 そんな中で早速、建設中の拠点の護衛や完成した拠点への襲撃に始まり、コーラルの調査に補給物資の輸送阻止など『アーキバス』と『ベイラム』の足の引っ張り合いが始まった。

 そして荒事が増えれば仕事を求めて傭兵たちが集まり、金の匂いに引き寄せられた無法者どもがやってくる。

 

 かくして企業戦士が、傭兵が、無法者が、お互いにドンパチ始める『ルビコン3』のいつも通りの光景がここ中央氷原でも繰り広げられることになる……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ここは現在『ベイラム』が中央氷原で建設中の拠点、『ヒッカム前哨基地』。『ベイラム』はこの建設中の基地の防衛を独立傭兵団に依頼していた。

 その独立傭兵団所属の、赤い髑髏のエンブレムの描かれた薄緑のAC『バザーグ』、それを駆る『C3-666』こと『チョッパー』は依頼を受けてからもう何度目か分からない敵襲の警報にウンザリと肩を竦める。

 

 

「アーキバスはよっぽど金をドブに捨てたいらしいな」

 

『ちげぇねぇ、俺たちがあれだけスクラップを量産してるってのに学習しねぇバカどもだな』

 

『まったく、その金を俺たちにも分けて欲しいもんだぜ』

 

 

 仲間たちの駆るMTから、ゲラゲラと笑う声が聞こえる。

 今まで散々に受けた任務中何度も横槍を入れられ戦果を奪われてきた彼らとしてはアーキバスの不幸は大歓迎だ。もっとも、同じくらい嫌いなベイラムの依頼を受けている真っ最中という矛盾はプロなので任務中は飲み込む。そういうのは任務終わりの酒の席で、だ。

 

 

「来たぞ!」

 

『おう!』

 

『地獄へようこそ! 鉛玉で歓迎会だ!』

 

 

 輸送ヘリから投下されたMT部隊が建設中の基地を破壊しようと接近してくる。

 

 

『ちぃっ! あの『ダンゴムシ』が先鋒だぜ!』

 

 

 仲間の1人、ジェイコフからの報告通りクルクルと回転しながら接近してくるMT群に銃弾が殺到するが、その硬い外部装甲が銃弾を弾く。

 最近よく見られるようになった『RaD』製MT、『トイボックス』だ。その特徴的な動きから『ダンゴムシ』と俗称で呼ばれている。

 『アライアンス』を結成した『RaD』はその販路が拡大、こうしてアーキバスやベイラムの使用するMTとして見かけるようになっていた。

 『トイボックス』を盾代わりにしながら他のMTが接近してくるというのが最近では見られるようになっていた。

 

 

「任せろ」

 

『頼むぜ、チョッパー!』

 

 

 言って『バザーク』が跳躍した。迫るMT群に単身で突っ込みながら右手のレーザーライフルを射撃。しかし『トイボックス』の厚い外郭装甲はそのレーザーすら弾く。

 

 

『バカめ、一機突出してきたぞ!』

 

 

 敵の火線が『バザーク』にのびるがそれを空中でクイックブーストで回避。

 

 

「悪いな、俺はまとめて潰すのが得意なんだよ」

 

 

 右肩の連装グレネードキャノンが火を吹き、その爆発は装甲を関係なく接近中のMTに襲いかかった。その爆発に紛れて敵の中心に『バザーク』が降り立つ。

 

 

『ハチの巣になれ!!』

 

 

 当然のように火線が集中する。しかし、それを気にせずチョッパーは冷静にコア機能を起動させた。半透明の膜……パルスアーマーが展開され、殺到する銃弾を弾く。

 その間に、『バザーク』は左手のレーザーブレードのチャージを終えていた。

 

 

「切り裂け!」

 

 

 振るわれたレーザーブレードの強力な回転斬りが、敵の集団をまとめて撫で斬りにする。

 

 

『チョッパーがやってくれたぞ!』

 

『続け続け!』

 

 

 ジェイコフを筆頭に仲間のMTも突っ込んできた。数的有利を簡単に崩され動揺するアーキバス部隊に、それを防ぎきるだけの力は残されていない。

 チョッパーも『バザーク』の左肩のパルスキャノンを乱射しながら敵を減らし、そうかからずに戦闘は終わりを告げた。

 

 

「これで今日の仕事も終わりだな」

 

『……いや待て。 まだ反応がある!

 基地の逆方向だ!』

 

 

 仲間の言葉にレーダーを見ると、確かに逆方向から接近してくる敵反応がある。

 

 

『やれやれ、まだ仕事かよ』

 

『とっとと酒でも呑みたいぜ』

 

 

 愚痴をこぼしながらも移動を開始しようとするがその時、レーダーから次々に敵影が消えていく。

 次々に飛来するミサイルと、ガトリングガン特有の連続した重低音。そして最後に一際大きなプラズマ爆発が起こるとレーダーから敵影は消えていた。

 

 

「どうやらあっちのお嬢さん方がやってくれたらしいな」

 

 

 チョッパーの言葉に、重量級と軽量級の2機のタンクACがこちらに来た。

 

 

『こちらの敵は殲滅しました。 そちらは?』

 

「こっちも殲滅済みだ。 おつかれさん」

 

『ええ、お疲れ様でした。

 行きましょう、ラン』

 

『はい、センカ姉様』

 

 

 そう言って格納庫へと戻っていく2機のタンクACの背中を見ながらチョッパーはつぶやく。

 

 

「極悪非道のハンドラー=ウォルターの犬……ねぇ……」

 

 

 

 

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 旧式の強化人間を格安で買い叩き、幾多の戦場へと送り出して金を荒稼ぎ。

 金のためなら強化人間たちを平気で使い潰していく極悪非道の独立傭兵団の頭目『ハンドラー=ウォルター』……裏の傭兵界隈ではなかなか有名な名前だ。

 チョッパーたちは最初、今回の護衛依頼がその有名な『ハンドラー=ウォルターの犬』との合同ミッションであると知ったときは少し警戒もした。それと同時に有名な『ハンドラー=ウォルターの犬』がどんな奴らなのかという興味もあった。

 

 

「きっと死んだ魚の目をした連中か、そもそも目も見えない連中なんじゃねぇか?」

 

 

 そんな風にああだこうだと笑いながら予想し、到着したAC2機からパイロットが降りてくるのを待つチョッパーたち。

 しかし……そんな予想はその姿を一目見た瞬間に吹き飛んだ。

 端正な顔と白い肌に銀の髪、そしてパイロットスーツからでも分かる丸みと柔らかさ。噂の『ハンドラー=ウォルターの犬』は、美しい少女の姿をしていたのだった……。

 

 

「……あれは雪の妖精か……」

 

「おいおい、お前その厳つい顔で合わないこというなよ」

 

「うっせぇ!」

 

 ジェイコフが思わず口走った言葉に突っ込む仲間たち。だが誰もがジェイコフと同じようなことを思っていた。

 チョッパーはその姿を見ながら、『ハンドラー=ウォルターの噂もあてにならないかもな』と心の中でつぶやく。

 彼女たちは第四世代型強化人間……チョッパーよりは一つ世代が先だが、旧式に分類される強化人間だ。そして旧式強化人間の苦労というのは、今の独立傭兵団に所属するまではそれなりに苦労してきたチョッパーにはよく分かっていた。

 だからこそ、その綺麗な外見で相当に気を遣われていることが分かる。噂のような『使い捨ての犬』なんてあり得ない。

 

 それがセンカとランと、チョッパーたち独立傭兵団との出会いであった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 今日の敵を叩いてやることと言えば、酒盛りである。どれだけ時代が経とうとも、酒と人の関係は続いていた。チョッパーたち独立傭兵団は食堂で酒を酌み交わし、笑い合いながら明日への英気を養っていく。

 そんな食堂の片隅で、件のハンドラー=ウォルターの子飼いである2人の少女は静かに各々の思うように過ごしていた。姉のセンカは何かの音楽を聴き、妹のランはフィーカを静かにすすっている。

 と、そんな2人の方へと酒の入ったグラスを片手にジェイコフが近づいていった。

 

 

「お、おい。 こっちに来て一緒に呑まないか?

 よければ奢るぜ?」

 

 

 しかしそんなジェイコフを一瞥するも、2人はにべもなく答える。

 

 

「いいえ、酒は呑みません。

 私たちのことは気にせずどうぞ……」

 

「……酒より静かにフィーカを飲んでいたい」

 

「そ、そうか……」

 

 

 そう取り付く島もなく断られ、すごすごとジェイコフが戻ってくる。

 

 

「振られたな、ジェイコフ」

 

「うるせぇ! おら、呑むぞ!」

 

「あっ、お前のおごりか?」

 

「誰がおめぇらに奢るかよ!」

 

 

 そんな様子を自身も酒を片手に静かに眺めるチョッパー。

 

 

(第四世代型強化人間は感情が希薄になりがちなはずだが……表情は硬いが、感情はしっかりと出ているな)

 

 

 そうなるためにはかなりの時間と刺激を要するはず。

 

 

(ハンドラー=ウォルター……思ったよりいい人物かもしれないな。

 今後も十分共同ミッションを頼める相手かもしれん)

 

 

 傭兵の世界は実力主義だが、同時にコネも重要な財産になる世界だ。2人の様子からこれを機にハンドラー=ウォルターとよしみを結ぶというのも悪くない……チョッパーはそんな風に考えていた。

 そして……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 建設中の基地防衛の依頼満了まであと1日、というところでそれは起こった。

 

 

『敵だ! アーキバスだ!』

 

『しかも今回、先頭にいるのはヴェスパー部隊長だぞ!』

 

「……アーキバスも完成を間近に本腰を入れたらしいな」

 

 

 アーキバスの誇る強化人間で構成されたヴェスパー部隊、その部隊長はすべからく一流のAC乗りだ。

 それをよく知っているチョッパーたちに緊張が走る。そしてアーキバス侵攻部隊と接敵した。

 

 

『くっ……何故私がこのような些事を!』

 

 

 飛び込んできたのは軽量逆関節脚AC、ヴェスパー第8部隊長である『ヴェスパー(エイト) ペイター』だ。

 

 実はペイター、ホーキンスがケガで不在時に、副隊長から繰り上がりで兵站関係の責任者となったのだがその管理のことごとくにミスを連発し、アーキバスの兵站線がズタボロになるという大失態をしている。結局、途中から兵站関係はスネイルとスウィンバーンが業務を取り上げることになったが2人は元からある仕事に加え兵站管理もすることになり完全にキャパオーバー、結果としてアーキバス内部はスネイルの目も届ききらないスパイ天国となってしまった。

 本来なら再教育センター送りになるような失態だったが、単純にそんなものに構ってる暇が無いほどスネイルが忙しいというものあったがホーキンスがかばったこととそれにオキーフも加わったことでペイターについては『今後の戦果で様子を見る』、というスネイルとしてはすさまじく温厚な形で話がまとまったのである。

 そんな理由もありペイターはその禊ぎとして、様々な戦場に投入されていた。今回もそんな禊ぎの一環だが、戦うチョッパーたちが知ることはない。分かっているのは強力な敵が護衛対象へと迫ってきているという戦場の事実だけである。

 

 

「俺が脚を止める!」

 

『そんな攻撃、私に当たるか!』

 

 

 『バザーク』がレーザーライフルを発射してその動きを抑えようとするが、ペイターのAC『デュアルネイチャー』はその高機動を遺憾なく発揮し、レーザーを回避するとパルスガンを連射する。

 そしてそのまま大きく跳躍すると、チョッパーたちの頭上を通り過ぎる。

 

 

『あの腰抜け野郎、俺たちを無視しやがった!』

 

 

 ジェイコフが言うが、ペイターの目的はあくまで建設中の基地の破壊だ。防衛戦力など二の次なのである。

 このままでは任務失敗かというその時、無数のミサイルが『デュアルネイチャー』に向かって行く。

 

 

『うおっ!?』

 

 

 さすがに回避に専念するペイター。そこでチョッパーたちに通信が入った。

 相手はもちろんセンカとランである。

 

 

『ヴェスパー部隊長は私たちで引き受けます……』

 

『そちらは後続の部隊を……』

 

 

 その言葉の通り、後続のMT部隊、そして軽量型タンクACが乗り込んできていた。

 

 

『アーキバスの奴らも独立傭兵を雇ったらしいぜ!』

 

『確認した! 独立傭兵『ヤム=サンドマン』のAC『アンブッシュ』だ!!』

 

 

 途端に、『アンブッシュ』からプラズマライフルとヴァーティカルプラズマミサイルの射撃が開始される。

 

 

「……そっちは任せていいんだな?」

 

『はい。私たちなら、ヴェスパー部隊長であろうと負けません』

 

「……いいだろう、少なくとも俺たちの手が空くまでは持たせてくれよ!」

 

 

 そういってチョッパーはアーキバスに雇われたヤムの『アンブッシュ』へと意識を向けた。

 どうやらヤムもチョッパーのことを優先目標と定めたらしい、プラズマライフルの閃光が『バザーク』を狙う。

 プラズマライフルを回避し接近を試みようとするチョッパーだが、するとヤムの『アンブッシュ』はクローラーを全開で回し、高速で後退を始めた。

 通常のブースト速度は『バザーク』よりも『アンブッシュ』が上、距離を離され今度は『アンブッシュ』の右肩から凶悪な閃光が飛んでくる。フルチャージされたプラズマキャノンだ。

 

 

「ちぃ、正確な射撃だな!」

 

 

 愚痴りながらもクイックブーストですれすれで回避に成功したチョッパーは、相手の戦術を悟った。

 

 

「全力で後退して距離を離しながらの狙撃で、一方的にこっちをやるつもりか!」

 

 

 そう、ヤムには接近戦を行うつもりは毛頭なかった。弾速の早いプラズマライフルとプラズマキャノン、追尾するヴァーティカルプラズマミサイルで遠距離から接近せずに戦うというのがヤムの得意戦術なのだ。

 だがチョッパーは接近戦を得意とするAC乗り、『距離の殺し方』は心得ている。

 アサルトブーストに火が点り、その加速で一気に距離を潰しにかかる『バザーク』。そうはさせじとプラズマライフルが飛んでくるが……。

 

 

「当たるか!!」

 

 

 第3世代型強化人間として強化された知覚、そしてなによりこれまでの戦場を渡り歩いた経験で、空中で最小限の動きだけでこれを躱す。そしてついに格闘戦の間合いへと『バザーク』は飛び込んだ。しかしそこには必殺のプラズマキャノンを用意し、『アンブッシュ』が待ち構えている。

 フルチャージプラズマキャノンが発射されプラズマ爆発が巻き起こった。勝利を確信するヤム。しかしプラズマ爆発の中から半透明の膜……パルスアーマーを展開した『バザーク』が飛び出した。パルスアーマーは過負荷によって緊急冷却が開始されるものの、『バザーク』を守り切ったのである。

 

 

「喰らえ!!」

 

 

 そして満を持して振るわれるフルチャージレーザーブレードの回転斬り。

 だがヤムも腕の良い独立傭兵だ。クイックブーストで高速後退したこと、そして重装甲コアに守られていたことでその光刃を受けるものの致命傷だけは回避する。

 

 

「ちぃ!」

 

 

 『アンブッシュ』からの反撃のプラズマライフルを回避しながらレーザーライフルとパルスキャノンを乱射、たまらず距離を取る『バザーク』。

 

 

「……仕切り直しだな」

 

 

 一筋縄ではいかない相手に一つだけ息を吐いてさらに集中するチョッパー。だが、その戦いが続けられることはなかった。

 『バザーク』と『アンブッシュ』の頭上をアサルトブーストで影が通過していく。それは大きく損傷したペイターの『デュアルネイチャー』だ。

 

 

『機体が持たない……。

 ここまでやるとは……仕方ない、撤退する!』

 

 

 同時に『デュアルネイチャー』から撤退の信号弾が打ち上げられ、それを確認したアーキバスの部隊が撤退を始めた。

 

 

『依頼主からの作戦中止を確認……。

 任務を中止、撤退する……』

 

「そうか……」

 

 

 ヤム=サンドマンからのその通信とともに、警戒しながらも『アンブッシュ』も後退を始めた。それを黙って見つめるチョッパー。

 独立傭兵はビジネスだ。目的が達成できるのなら、お互いに金にならないような衝突はしないのである。

 

 

『……良い腕だ』

 

「そっちの狙撃もなかなかだったぞ」

 

 

 最後にそれだけ言葉を交わすと、『アンブッシュ』も作戦領域外へと撤退していった……。

 

 

『やったな、チョッパー!』

 

「……」

 

 

 アーキバスの部隊を退け、喜びに沸く仲間たち。しかし、チョッパーは気がかりな点があり秘匿モードで通信を繋げる。相手はペイターの相手をしていた2人のうち、姉であるセンカだ。

 

 

『……何でしょうか?』

 

「一つ聞きたいことがあるんだが……ペイター相手に何故手を抜いた?」

 

 

 撤退していったペイターの『デュアルネイチャー』、そこに刻まれた傷は実弾のものだけ。センカの最大の武器である両肩のプラズマキャノンで攻撃された、プラズマ爆発の形跡が見当たらなかったのだ。通り過ぎるその一瞬で、チョッパーは強化人間としての知覚でそれを確認していたのである。

 

 

『……ただ単純に回避されただけです』

 

「そうか……妙なことを聞いて悪かったな」

 

 

 明らかな嘘……しかしその理由は分からないし、それがこの任務の成否に関わっているとも思えない。

 

 

(ハンドラー=ウォルターの指示か? いずれにせよ、藪をつついて蛇を出す気は無い……)

 

 

 だからチョッパーは不気味には思ったが、それを飲み込むことにした。『好奇心は猫をも殺す』……この世界では余計なことに首を突っ込むのは命を縮めることになるのだから……。

 

 

 

 

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 翌日……依頼の期間が満了し、建設中の基地防衛任務は成功ということで完了した。

 チョッパーたちとセンカたちはそれぞれに報酬が振り込まれたことを確認し、それぞれの帰路へつく。

 その駐機場で帰りの輸送ヘリを待っていたセンカとラン。

 そこに……。

 

 

「ちょ、ちょっといいか?」

 

「……何でしょうか?」

 

 

 ジェイコフに声をかけられ振り返るセンカ。

 

 

「おい、ジェイコフの野郎行ったぞ」

 

「どっち賭ける?」

 

「失敗に今夜の酒一杯」

 

「俺も失敗に一杯」

 

「賭けにならねぇじゃねぇか」

 

 

 背後でゲラゲラ笑う声を無視しながら、ジェイコフはセンカに言う。

 

 

「なぁ、俺と一緒に来ねぇか?」

 

「? 何故です?」

 

「……この依頼の間、いつも思っていた。雪の妖精みたいだって。

 俺は……あんたが欲しい!」

 

「つまり……私に好意寄せていて、あなたのものになれ、とおっしゃるんですか?」

 

「ああ、そういうことだ!

 うなずいてくれりゃ、あの極悪非道のハンドラー=ウォルターから解放するようにしてやれる!!」

 

(あっ、バカッ!!)

 

 

 仲間とともにことの成り行きを見ていたチョッパーは、心の中でジェイコフに思いっきり叫ぶ。

 そして、その反応は劇的だった……。

 

 

「『極悪非道』……私たちを、旧式の強化人間の尊厳を守ってくれる、あのお父様を……『極悪非道』?

 あなたはそう、おっしゃいましたか?」

 

「う……あ……」

 

 

 思わず飛びかかろうとした(ラン)を手で制し、センカが殺気を放つ。氷の殺気とはまさにこのこと、それを直に受けたジェイコフはもちろんのこと、茶化してはやし立てていた周囲も凍り付いたように動けなくなる。チョッパーも思わずホルスターの銃へと手を伸ばしかけたぐらいだ。

 どれだけそうしていたのだろうか……実時間はごく短時間、だが当事者たちには永遠のように長く感じたその時間を陽気な声が砕いた。

 

 

「センカ、ラン。 迎えに来たぞ!」

 

「あ、兄様!」

 

「兄や……」

 

 いつの間にか男が一人、やってきていた。センカとランの仲間なのだろう。その姿を認めた瞬間、先ほどの氷の殺気はまるで幻のように消え去り、センカは『兄』と呼んだその男の胸に飛び込んでいく。ランも後に続くようにその男の腕に抱きついた。

 

 

「っと、どうしたんだ、2人とも?」

 

「……いえ、何も問題はありません。

 兄様が気に止める必要もない些事です」

 

「……」

 

 

 そう言ってセンカとランに氷のような視線で貫かれて、ジェイコフも何も言えない。

 

 

「ふぅん……まぁいい。

 帰ろう、2人とも」

 

「はい……」

 

「うん……」

 

 

 そう言って3人は連れだって大型輸送ヘリへと消えていった……。

 

 

「あの言葉はまずいし、完全に脈無しだったな。

 今日は一杯奢ってやるよ」

 

「……ああ」

 

 

 3人がいなくなってから、そう言ってジェイコフの肩を叩いて慰めるチョッパー。

 ジェイコフの告白(楽しい見世物)も終わり、帰還の準備で散っていく仲間たちを尻目に、チョッパーは飛び去っていった大型輸送ヘリの方を振り返る。

 

 

(あの男……あいつはヤバい。 底が全くもって見えなかった……)

 

 

 傭兵にとって相手の力を見抜く目は、生き残るために何より重要なものだ。チョッパーもそれには自信がある。

 そんなチョッパーを持っても、2人を迎えに来た男の底は見えなかったのである。

 

 

(あの男といい、ヴェスパー部隊長相手に手加減する不可解な行動といい、ハンドラー=ウォルターは噂のようなただの独立傭兵団の頭目じゃない。

 よしみを結ぶのも悪くないと思ったが……やめておこう。 明らかに何か裏がある相手と組んで、厄介ごとに巻き込まれるのはゴメンだ)

 

 

 チョッパーの傭兵としての嗅覚がそう警告してくる。こうしてチョッパーはハンドラー=ウォルターとの関係はこれっきりにしようと心に誓う。

 

 

(……連中の出てくる戦場の依頼は絶対に受けないようにしよう)

 

 

 そしてハンドラー=ウォルターと敵対することも絶対にしないように仲間たちに徹底しようとチョッパーは心の中でつぶやくのだった……。

 

 

 

 

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今日のアセン

 

AC名:『バザーク』

パイロット名:『C3ー666 チョッパー』

 

R-ARM UNIT:VE-66LRA(レーザーライフル)

L-ARM UNIT:Vvc-770LB(レーザーブレード)

R-BACK UNIT:SONGBIRDS(連装グレネードキャノン)

L-BACK UNIT:KRANICH/60Z(パルスキャノン)

 

HEAD:VP-44D

CORE:VP-40S

ARMS:AR-012 MELANDER C3

LEGS:VP-422

 

BOOSTER:BST-G2/P04

FCS:FC-008 TALBOT

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:PULSE ARMOR

 

 

解説

独立傭兵集団に所属する第3世代型強化人間。

今の独立傭兵団に入るまではフリーで色々な任務を行なって稼いでいた所を今の代表にスカウトされた。

任務の選り好みは無く、達成率も高い。

 

元々はチョッパーではなく別の名前が有ったが、いつも敵をブレードで両断しているため『チョッパー』と言う通り名がついた。

それを聞いた仲間たちが、

 

「そりゃいい!これからは俺たちもお前をチョッパーって呼ぶ事にしようぜ!」

 

「だってお前の名前普通すぎるんだって。

 お前自分で考えた名前だろ? 無難過ぎで戦績と一致しないって代表がボヤいてたぞ?」

 

それを聴いてから少し考えて名前をチョッパーに変更して登録した。

 

連装グレネードキャノンで牽制し接近しながらパルスキャノンを乱射、最後にブレードで切り裂くという王道の戦闘スタイル。

包囲されても逆にパルスアーマーを展開しながらチャージレーザーブレードの回転斬りで活路を切り開くという、独立傭兵団の切り込み隊長的存在である。

機体カラーは薄緑をベースにして関節部はグレーと至ってシンプル。左腕だけ濃い緑色となっており、これは死んだ戦友のパーツを使用しているため左腕だけ色が違う。

エンブレムは『赤い髑髏に三枚の羽』。

傭兵としての嗅覚に優れ、今回はハウンズと共同のミッションで基地防衛を行っていたがハウンズのヤバさとハンドラー=ウォルターの明らかに裏のある様子を敏感に感じ取り、今後は彼らに近づかないようにしようと心に誓う。

 

実際に使用してみるとそれほど積極的にスタッガーを狙う構成ではなく、威力の高いレーザーライフル、跳弾のないパルスキャノンで削りながら接近し、連装グレネードキャノンからチャージレーザーブレードという流れになる。レーザーライフルとパルスキャノンで徐々に相手を削る戦い方となり、中・近距離での射撃戦が主な印象。グレネードキャノンやブレードは隙を見ての一撃になる。

 

いつも感想をくれる『絶無』さんからメッセージに届いたアセンとキャラクターであり、ゲストキャラクター。

前にも別作品でキャラ募集したことはあったので、なかなか懐かしい気分で書けたキャラクターである。

同時に敵味方ともに基本1人でアセンを考えているので、アセンの方向性が似たり寄ったりになり、そこでも他人の使っているアセンがどうなのかというのは参考になった。

 

 

 

AC名:『アンブッシュ』

パイロット名:『ヤム=サンドマン』

 

R-ARM UNIT:Vvc-760PR(プラズマライフル)

L-ARM UNIT:Vvc-760PR(プラズマライフル)

R-BACK UNIT:FASAN/60E(プラズマキャノン)

L-BACK UNIT:Vvc-70VPM(ヴァーティカルプラズマミサイル)

 

HEAD:VP-44S

CORE:VE-40A

ARMS:VP-46D

LEGS:EL-TL-11 FORTALEZA

 

BOOSTER:なし

FCS:VE-21B

GENERATOR:VE-20C

 

EXPANSION:TERMINAL ARMOR

 

 

解説

砂漠地帯に住む一族の者であり、一族の糧を稼ぐために独立傭兵として活動している男。

寡黙で実直、契約に対して忠実であるため信頼が高く、彼への指名依頼も多い。

今回はアーキバスに雇われ、『ヴェスパーⅧ ペイター』とともに建設中の『ヒッカム前哨基地』を襲撃するが、護衛として雇われていたチョッパーと交戦。決着がつく前にペイターが撤退し、依頼主であるアーキバスが作戦を中止したため、それ以上の戦闘を避けて撤退した。

エンブレムは『砂漠から覗く目玉』。

 

コンセプトは『狙撃』。

今回AC6で武器カテゴリー『スナイパーライフル』は無くなってしまいゲームそのものも近接距離が重視されたデザインになっているが、そんな状況でも『遠距離から一方的に相手を撃ち殺す』ことを念頭にしたアセン。

FCSはアーキバス製の遠距離対応型を使用。両手には『射程が比較的長く、弾速が速くて跳弾が発生しない』プラズマライフルを採用、同じ理由で大火力のプラズマキャノンを装備。ヴァーティカルプラズマミサイルの採用も『跳弾が発生しない』ことを念頭に採用した。

そしてプラズマキャノンやチャージショットに隙が生じず、なおかつ常に距離をとり続けられる機動性ということで軽量タンク脚を採用している。

 

実際に使ってみると……狙撃は机上の空論、少なくとも作者の腕では無理だった。

ただ火力は本物なので、普通に中距離での撃ち合いとなれば十分に戦える構成。

 

AC名はそのまま『不意打ち』。

キャラ名は『ヤム=芋』『サンドマン=砂男』であり続けて読むと『芋スナ男』である。

 

 

 

 

港町『ロアード』

『RaD』が中央氷原にいち早く築いた港町。

名称はブラックラグーンの『ロアナプラ』とボトムズの『ウド』を足したもの。

コーラル争奪戦が作ったパンドラの箱。質を問わなきゃ何でもある。

 

 




というわけで読者さんの考えたキャラとアセンをゲストキャラとして登場させるという、実験的な試みでした。
なのは小説書いてる時もやったなぁ……と遠い目。何もかも懐かしい……。

実際、アセンを考えているといつの間にか方向性が似たり寄ったりになってしまうので人の使っているアセンを知れる機会というのは貴重でした。今後も機会があればメッセージに送られてきたアセンとキャラを登場させたいところです。
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