『ブリーフィングを開始する。 今回はアーキバスからの依頼だ』
『独立傭兵に依頼します。
依頼内容は中央氷原でのベイラムの前哨基地の一つ、『ヒッカム前哨基地』への襲撃です。
この中央氷原のどこかに莫大なコーラルが眠っているのは、今までのデータから間違いはないでしょう。我々アーキバスはそのための拠点をこの中央氷原に築いていますが、同じようにベイラムも拠点を築いて、本格的な調査に入ろうとしています。
無論、ベイラムが拠点を築くのを我々も黙ってみていたわけではなく建設中に襲撃を試みましたが……撃退され、完成を許してしまいました。ですが、このままにしておくわけにはいきません。
基地施設をなるべく破壊し、ベイラムのコーラル調査のリソースを削ることが狙いです。
報酬は破壊した施設による出来高となります。なるべく多くの施設を破壊し、存分に稼いでください』
「……なぁ、ウォルター」
『なんだ?』
「このベイラムの拠点って……確かこの間センカとランが護衛してアーキバス撃退しながら完成した施設じゃなかったっけ?」
『そうだ。 何か問題か?』
「この間は守って、今度は襲撃で破壊して……実に独立傭兵らしい動きだと思っただけさ」
『星外企業はルビコン3に残せばコーラルを宇宙に持ち出し、コーラルリリースを起こす危険がある。
最終的には打倒すべき敵になるだろう。 だから双方を利用し、どちらにも損耗してもらう必要がある』
「ヲイヲイ、戦力調整して双方損耗とか言ってることがオールマインド……レイヴンズネストじみてるぞ。
まぁ、ドルマヤンのじいさんが味方なんだし『ルビコン解放戦線』が最終的な味方って形になるだろうからそうなんだろうが……コーラルの星外への持ち出しに関しては『ルビコン解放戦線』も相当怪しいぞ」
原作AC6で『ルビコン解放戦線』は『解放者ルート』で最終的にアーキバスグループ企業の『シュナイダー社』を寝返らせることに成功しているが……シュナイダー社に強力なコネをもつ『ミドル=フラットウェル』が『コーラルの優先採掘権』とかそういうものを交渉材料にしたんじゃないかと俺は睨んでいる。
『ルビコン解放戦線』の軍事的指導者である『ミドル=フラットウェル』は完全な
コーラルの真実を知らないのなら、フラットウェルの考え方は正しい。そしてそれはほぼ全てのルビコニアンが同じ考えだろう。しかし、コーラルの真実を知ってしまった以上、ルビコン3の人間であろうがなんだろうが、宇宙へのコーラルの大量持ち出しはNGなのだ。
その辺りをウォルターに話してみると……。
『……その辺りはドルマヤンとも話している。 少なくともこの戦いの間は、そんなことをやっている暇はないだろう。
最終的には技研の資料で『宇宙にコーラルを大量に持ち出せば無限増殖して宇宙を汚染し尽くす。それを防ぐために星系丸ごと燃やし尽くしたのがアイビスの火の真実』というデータをミドル=フラットウェルに渡して思い留まらせるしかない』
「でも俺の予想の通りなら、ルビコン解放戦線はコーラル絡みの空手形を切りまくってると思うぞ。そうじゃなきゃ、アーキバスを裏切ってまで辺境惑星の一独立運動に加担する価値はない。
そうなら約束を反故にされた連中との戦争は不可避だ」
『……難しい話だな』
「……そうだな。
ただの独立傭兵とその仲介人のする会話じゃないな」
いつまでも終わらなそうな話に俺とウォルターは苦笑すると、元の独立傭兵とその仲介人に戻って今回のミッションの話を続けた。
『今回のミッションの目的はあくまでも施設の破壊だ。
お前以外には本人たちの希望でアオイとケイトが出撃する』
「あの2人の会話と雰囲気、何故か胃に痛いんだが……どうにかならない?」
『知らん。 自業自得だ、自分でなんとかしろ。
おそらく『レッドガン』の番号付きが護衛で出てくるだろうが……無理に相手をすることはない。
むしろこれから惑星封鎖機構が襲いかかってくるだろうことを考えると、『レッドガン』の番号付きという強力な人材を損耗するのは正解ではない』
「そうだな。
だからこの間のミッションではセンカとランは『ヴェスパーⅧ ペイター』相手に撃墜しないように手加減して戦ったんだしな」
『そういうことだ。
施設を壊せるだけ壊して、『レッドガン』の番号付きは無視をして素早く離脱しろ』
「一方的に相手を殴って殴り返される前に逃げ帰れって、何気に難しい注文をしてくるな」
『……お前なら出来ると信じている』
「……ああ、その信頼にはしっかり応えるさ、ウォルター」
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さて、ご友人は『神様』を信じているだろうか?
俺が知ってる神様ってのは『財団』って言って毎回『黒い鳥』にボコられる奴らなんだが……っと話が逸れたな。
俺は神様は実はいるんじゃないかと思っている。
ただし、理不尽を前に七転八倒する人間を見て腹を抱えて嗤っている、邪神に分類されるような何かだろうがな。
なんでこんな話をするのかって?
それはもちろん……。
『視察に来てみればこの有様とは……救護班急げ!
撃墜された連中は復帰後に腕立て100回だ、役立たずどもめ!!』
『また敵として会ったな、独立傭兵ヒナタ!』
今、現在進行形で『レッドガン』のトップとナンバー2に絡まれるとかいう、最高の理不尽を絶賛味わっている真っ最中だからだ!
通りがかりの死神部隊と遭遇とかと同レベルの理不尽さだぞ!
(ちょうど視察に来てましたとかどんな偶然だよ、バカヤロー!!)
心の中で悪態をつきながら、俺は目の前の2機のACを見る。
以前捕虜収容所にて戦った『
『ナイルからも、そしてウォルターからも貴様のことは聞いている!
ずいぶんと暴れ回っているようだな、役立たず!
俺がじきじきに試してやる!!』
『こうして好きにやられてそう簡単には逃がしはせん。
相手をしてもらおうか、独立傭兵ヒナタ!』
ホバー機能で空に飛び上がり、ガトリングガンとマインスロアー、そして連装グレネードキャノンでこちらを狙ってくる『ライガーテイル』と、重リニアライフルとともに各種ミサイルを撃ってくる『ディープダウン』。
さすがレッドガンとトップとナンバー2、避けるだけで精一杯の猛攻だ。
(というか、『ライガーテイル』は調整中じゃないのかよ!
こんなところで野生のボスが気楽にポップするんじゃねぇ!!)
俺はあまりの原作AC6との差に、心の中で悪態をつきながらも注意深く隙をうかがう。
両機と俺の『日向葵』の大きな差は速度だ。双方ともに重装型のため足はさほど早くはない。
そして今回のミッションは施設の破壊が目的で、レッドガンを撃破する必要もなければ、今後の惑星封鎖機構との戦いを考えるなら撃破してはいけない。
ならばやることはただ一つ、逃げの一手だ。
その時、図ったかのようにひと際大きな爆発が背後で起こった。
『……ヒナタ、作戦終了』
『基地のメインジェネレータの破壊完了です。
これで基地機能はしばらくは大幅にダウンするでしょう』
俺がミシガンとナイルの相手をしているうちにせっせと破壊活動に勤しんでいたアオイとケイトから、大物の破壊報告だ。
「よし、作戦終了だ! とっととおさらばするぞ!!」
『そう簡単に逃がすと思うな、役立たず!』
俺へ変わらずの猛攻を加えてくる『ライガーテイル』。
『ヒナタ……!』
『すぐに援護に……』
「いい! お前らは先に離脱しろ!
俺もすぐに追いつく!!」
アオイとケイトが俺の援護に来ようとするが、それを押しとどめる。俺の機体は速度に優れているが、2人の機体は重装型に分類され、足は速くはない。追撃されたら振り切れない可能性がある。
俺の言葉に一瞬2人は迷うものの、2人ともプロの独立傭兵だ。次の瞬間には俺の言った通りアサルトブーストを起動させ、戦域からの離脱の態勢に入る。
『行かせると思うか!』
「行かせるんだよ、俺が!!」
『ッ!!?』
2人を追おうとする『ディープダウン』に向かって『日向葵』はアサルトブーストを起動、回り込むように接近するとキックを叩き込んだ。
『!? 貴様!』
『狙ったか!?』
「ああ、狙ったよ!!」
吹き飛んだ『ディープダウン』はそのまま『ライガーテイル』へとぶつかった。その隙に空中に飛び上がった『日向葵』の両手のショットガンを浴びせかける。強力な衝撃散弾の雨が『ディープダウン』と『ライガーテイル』に降り注いだ。
「おまけだ!!」
そして背後に回り込んだ『日向葵』がパイルバンカーで殴りつける。直前で避けようとするものの、パイルバンカーをそのまま『ライガーテイル』のメインブースターに叩きつけた。
『メインブースターがイカれただと!? 狙ったか、役立たず!!』
「ああ、これも狙い通りだよ。
あばよ、おっさんども!!」
そう言って『日向葵』はアサルトブーストを起動、高速で離脱していく。
双方重装型の上、メインブースターの損傷した『ライガーテイル』もいるのだ。離脱する『日向葵』に追いつけるはずもない。
そのまま作戦区域を離脱しようとする俺に通信が入った。
『噂通りだな、独立傭兵ヒナタ。 あのウォルターが自慢するだけのことはある』
相手はあの『
「そりゃどうも」
『その気があるなら、次はベイラムの仕事を受けろ。
貴様にもコールサインをくれてやる』
「あの『歩く地獄』からの直々のお誘いだ。
考えておくよ」
それだけ言って通信を終わらせると、俺は一足先に離脱していたアオイとケイトと合流した……。
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ベイラムの拠点を破壊し離脱していく3機のAC……『日向葵』と『曼珠沙華』と『アルストロメリア』の3機を、気付かれぬようにジッと観察する1機のACのすがたがあった。
紺色の四脚AC、その肩にはアーキバスのヴェスパー部隊長であることを示すエンブレムが貼り付けられている。
「独立傭兵ヒナタ……。
あのオールマインドの手先、ケイト=マークソンと行動を共にする男……。
試す必要があるな……」
鷹のように鋭い視線は、ヒナタの『日向葵』へと向けられていた……。
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今日のアセン
AC名:『スプリガン』
パイロット名:『CNPー143 キャロル=マークソン』
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:20-082 MIND BETA
CORE:VE-40A
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:06-042 MIND BETA
BOOSTER:BC-0200 GRIDWALKER
FCS:FCS-G2/P10SLT
GENERATOR:VE-20B
EXPANSION:PULSE ARMOR
解説
キャロル「姉妹たちの恥……ケイト=マークソン、覚悟!!」
ケイトと完全に袂を分かれた『ブランチ』の『レイヴンオペレーター』、キャロル=マークソンがその本性を現し、搭乗するAC。
AM系・技研系のパーツが使用されている。
ケイトがカラサヴァ狂いなら、妹のキャロルはムーンライト狂い。
マインドガンマを素体に調整した中量級逆関節ACで、跳躍で空中を飛び回りながらムーンライトの二刀流とエネルギー兵器の高威力を使いこなす。
特にフルチャージされたムーンライトは、エネルギー兵器適性最大のジェネレータ+バショウ腕の相乗効果で一撃必殺の火力を叩き出す。
防御力・機動力・火力が高いレベルでバランスがとれており、非常に強力なACとして仕上がっている。
キャロルは自分たちの製造目的である『コーラルリリース』の正しさをみじんも疑っておらず、自らはそれを成就するための番人の一人であると考えている。機体名の『スプリガン』も守護の妖精とかけて付けられた。
ちなみにキャロルの強化人間ナンバーの合計は、ケイトと同じく『⑧』。イレギュラーにはなれないキャラである。
ケイトと対を成す妹ということで『ケイトがカラサヴァ狂いなら、妹のキャロルはムーンライト狂いでいこう』とコンセプトが決定。それに合わせるようにムーンライトの威力が恐ろしいことになってしまった。さすがは導きの月光剣である。
何度も言うがエネルギー兵器適性最大のジェネレータ+バショウ腕の相乗効果から放たれるフルチャージムーンライトが本当にヤバい。赤月光やキックでスタッガー状態にさせられたら問答無用で殺される機体になった。
さらに『威力が高く、逆関節ACでも硬直せず、弾速も速く、跳弾もない』プラズマライフルを装備。これもジェネレータのおかげで威力アップに繋がっている。プラズマミサイルはけん制用だが油断出来るものではない。
総じてかなり高いレベルで纏まった、使いやすい良機体となった。
設定上、ケイトはこれと決着をつけてもらうことになるのだが……ケイトの勝てるヴィジョンが見当たりません。
これ、どうしよう……。