祝福の花を君に   作:キューマル式

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惑星封鎖機構との本格的な戦闘が始まります。

今回もメッセージに送られてきた読者アセンとゲストキャラが登場します。


第48話 『ジャイアントキリングはバトルものの最燃え要素』

 

 ついに惑星封鎖機構の介入が開始された。

 突如として現れた惑星封鎖機構の大艦隊の奇襲により、『アーキバス』と『ベイラム』両社は中央氷原における拠点を同時多発的に襲撃され、かなりの数の拠点と物資、そして戦力を焼き払われる結果となる。惑星封鎖機構はそのまま両社の拠点施設を接収、今後の活動拠点とするための整備に取り掛かっている。これは惑星封鎖機構が長期的に活動することを前提として動いていることを意味しており、惑星封鎖機構がどれだけ本気でルビコン3への介入を図っているのか窺い知ることができる。その介入範囲が惑星全土であることは容易に想像できた。

 

 一方、『BAWS』『エルカノ』『RaD』からなるルビコン企業同盟『アライアンス』に関しては今のところ攻撃はない。このコーラル争奪戦には中立を宣言しているし、何よりルビコン3の地元企業である。経済活動を停止したら民間人が飢えて地獄になることは分かりきっていた。そして、それが惑星封鎖機構に対する反抗勢力になってもらっても困る。結局、『アライアンス』に対しては『アーキバス』や『ベイラム』といった星外企業への取引停止の要求程度に留まっている。

 『アライアンス』側は経済活動の公平性を欠くとしてこれに拒否の姿勢を見せ、今まで通り金さえ払えば誰にでも製品を売るスタンスを継続。惑星封鎖機構は監視対象にとどめ、いまだ交渉を行っている。

 

 そしてルビコン3において忘れてはいけないもう一つの勢力……ルビコン3の独立を望む『ルビコン解放戦線』だが、当初は『星外企業を叩き潰してくれることで漁夫の利を狙えるのでは?』という甘い考えを持っていた者もいた。しかし惑星封鎖機構は、つい最近コーラルが再発見されたせいでやってきたばかりの『アーキバス』や『ベイラム』などと違い、もう何十年も独立を求めてドンパチやっていた相手である。当然のように惑星封鎖機構にとっては『ルビコン解放戦線』も排除対象であり、中央氷原での拠点に大きなダメージを受けていた。

 

 こうして『アライアンス』以外は惑星封鎖機構の襲撃によって等しく大きなダメージを受けていた。

 しかし、だからといって折れた勢力は一つもない。『アーキバス』と『ベイラム』両社は「自社の経済活動に対する不当な妨害である」として惑星封鎖機構への対決姿勢を決めた。同じく『ルビコン解放戦線』も「ルビコン3の解放のために倒すべき敵の1つ」と声明を発表。

 ただでさえ混沌の極みだったコーラルを巡る情勢は、さらにその混沌さを深めていく……。

 

 港町『ロアード』……中央氷原への玄関口であり中立宣言をしている『アライアンス』の町として、この町は今も多くの人間が忙しく動き回っていた。大幅に減少した戦力の立て直しのため、『アーキバス』と『ベイラム』は『アライアンス』の企業に兵器や武器・弾薬を発注、それがひっきりなしに運び込まれ港の稼働率は常時100%に近い状態だ。

 一見すると変わらぬ賑わいのようにも見える『ロアード』の町だが、少し回りが見える人間なら雰囲気が以前の賑わいとは違うのが分かるだろう。忙しさの中にあるピリピリとひりつくような空気の漂い……この『ロアード』の町も完全に戦時体制に移行していた。

 そして俺たちハウンズの戦いも、新たな局面へと向かって行く。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 俺の知る原作知識どおり、惑星封鎖機構との戦いは開始された。しかし、俺の知る原作AC6よりも明らかに惑星封鎖機構の戦力が多い。

 分析の結果、惑星封鎖機構の戦力は『アーキバス』や『ベイラム』の頭二つは飛び抜けて多いことが分かった。原作AC6ではその差は頭一つ程度だったので『アーキバス』と『ベイラム』が手を組めば撃退できたが、この世界では仮に両社が手を組んだとしても惑星封鎖機構の戦力を上回ることはできないだろう。

 

 

「それに関してはすでにカーラとドルマヤンが動いている」

 

「このまま個々に戦ってたんじゃルビコン解放戦線も、アーキバスやベイラムと同じように惑星封鎖機構に叩き潰されて終わりさ。

 だから本当に一時的、惑星封鎖機構を倒すまでの間限定でルビコン解放戦線は、アーキバスとベイラムと同盟を結ぼうってつもりだよ」

 

「……それ、本当に実現できるのか?」

 

 

 実際には対惑星封鎖機構で一杯一杯だったくせに、『惑星封鎖機構の機体が鹵獲されてアーキバスやベイラムの技術力が上がると困るから惑星封鎖機構の新型を潰してこい』とか『とられた『壁』を取り戻したいからスウィンバーンを暗殺してこい』とか、ルビコン解放戦線は原作AC6でこの時期に空気を読まない依頼を連発していた。

 しかもベイラムに捕まれば死ぬくらいの拷問を受けたり、アーキバスに捕まれば再教育センター送りになって洗脳されたり、ファクトリーで生体CPUに加工されて部品として出荷されたりしている。そんなルビコン解放戦線が一時的とはいえアーキバスやベイラムと同盟が組めるとはとても思えないんだが……。

 

 

「そのあたりはわたしら『アライアンス』が仲介する。

 『アライアンス』の企業としては、ずっと惑星封鎖をされたせいで恨みがすごいし、それでいて惑星封鎖機構はアーキバスやベイラムと違って金を落としていくこともない。惑星封鎖をして支援もせずこの星の人間を飢えさせるだけの相手さ。

 そんな惑星封鎖機構が勝つのがいいか、侵略者であるアーキバスやベイラムが勝つのがいいか……『アライアンス』としては後者の方がまだマシって結論になるね。

 ルビコン解放戦線もアーキバスやベイラムの2社がこのまま負ければ、次は自分たちがなすすべ無く潰されるって気付いてるよ。だから、対惑星封鎖機構って1点のためだけなら、ギリギリ手を組めるって公算さね。

 それに……惑星封鎖機構の連中は本気だ。本気でこのルビコン3の武装勢力を今回の件で全て潰すつもりだ。それが可能なだけの戦力を持ってきている。

 早い段階で1つに纏まらないと取り返しのつかないことになるよ、これは……」

 

「……政治やらの難しい話はウォルターとカーラに任せる。 どう考えても俺には向かないからな。俺は俺向きの仕事をするよ。

 で、俺向きのドンパチの仕事はあるかい?」

 

「レイとアオイに、それぞれ『ヴェスパーⅣ』と『ヴェスパーⅩ』を通じて、アーキバスから惑星封鎖機構の補給拠点になっているヨルゲン燃料基地のエネルギープラント破壊の依頼が来ている。

 アーキバスはレイとアオイを広告塔にして独立傭兵たちに『惑星封鎖機構を叩けば金になる』と喧伝して対惑星封鎖機構の依頼を乱発、惑星封鎖機構の足を少しでも遅らせる狙いのようだ。

 2人はマスコットではないのだが……惑星封鎖機構は強大だ、乗るしかないだろう」

 

「惑星封鎖機構の機体はMTであろうとそこらのやつとは格が違う。

 どれだけの金に目のくらんだ連中が生き残るのやら……」

 

「そしてベイラムからヒナタ、お前に不特定へのばら撒き依頼への参加依頼が来ている。

 内容は……惑星封鎖機構の特殊機体『バルテウス』の駐機場への襲撃だ」

 

「……それ、どう考えてもばら撒き依頼になるような難易度の依頼じゃねぇだろうが!」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 『G9(ガンズ・ナイン)に伝達!

  これはベイラムからの依頼となる!』

 

 

 

『襲来した惑星封鎖機構に対し、ベイラムは徹底抗戦の姿勢を表明した。

 しかし惑星封鎖機構の方が全体的な技術力も高く、しかもこちらよりも大戦力をこのルビコンに投入してきている。

 このまま正面からぶつかっても、質・量ともに相手が上、すりつぶされるだけだ。少しずつでも惑星封鎖機構の戦力を削る必要がある。

 

 惑星封鎖機構の兵器群の中で、特に厄介なのが特務機体『バルテウス』だ。どこにでも高速で飛来し、その圧倒的な火力でこちらの部隊に大損害を与える厄介な敵だ。それを惑星封鎖機構はこのルビコンに10ほど持ち込んでいる。

 

 悔しいが起動中の『バルテウス』とまともに戦えるのはごく一部の上澄みだけ、それ以外は為すすべも無く奴の前に屍を晒すだろう。しかし起動前の破壊なら話は別だ。

 そこで判明した『バルテウス』の整備・駐機場への強襲を行い、起動前の『バルテウス』を破壊してもらう!

 情報では3機の『バルテウス』が駐機しているようだ。この作戦は『バルテウス』が動き出す前に奴を破壊するのが目的だ。もし起動を許せば、『バルテウス』との戦闘が待っている。素早く・確実に破壊を遂行しろ。

 なお、この依頼は不特定へのばら撒き依頼となっていて、他にも何人もの傭兵が参加予定だ。周りの連中も利用し、目的を遂げろ。

 ……最後にG9(ガンズ・ナイン)、お前にはミシガン総長より特別の言葉がある』

 

 

 

G9(ガンズ・ナイン)、今回のこの愉快な遠足は現場を知らんベイラム上層部の発案だ。現場の意見などみじんも入ってはいない。上層部の連中はばら撒き依頼にして数で攻めれば『バルテウス』も容易に倒せると思っているようだが……ヤツはそう言った一対多を想定した特務機体、そう簡単に数の差で押し潰せるものではない。

 このミッションを失敗したとしても、貴様の価値は変わることはない。戦場では生き残ったヤツが正しい。貴様なら、そのあたりを見誤ることなくそれができるだろう。

 G9(ガンズ・ナイン)、貴様は必ず生き残れ』

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 人間には、大きく分けて2つの種類がいる。壁に当たったときに『壁を乗り越えようと躍起になる』か『壁を越えるのを諦める』の2つだ。

 『壁を越えよう』と奮起することで自分を高めることは人間として非常にいいことだ。

 また『壁を越えるのを諦める』ことも悪いことではない。その壁だけが先に進む道ではないのだ、回り道を探すというのも人間として賢い判断だろう。

 ほとんどの人間は大体この2種類のどちらかに分けられる。しかし……そんな分類に入らない考え方をする者も世の中には存在した。

 例えば『この男』だ。

 

 『C4-332 デスペラード』……『派手に稼ぎたい』『強さが欲しい』と自ら第四世代型強化人間の被検体に志願した男である。

 幸いにして第四世代にありがちな『感情が希薄になる』といった副作用もなく、強化人間手術は成功した。

 望んだ通りの力を手に入れた男はそれまでに得た金でACを購入、堅実なアセンを使いながら順調に独立傭兵としての経験と実績を積んでいく。そんな順調そうな彼が『壁』にぶち当たったのはそんな時である。

 

 ある依頼を受けた際、惑星封鎖機構の『バルテウス』と遭遇、まるで歯が立たず蹂躙され、命からがら逃げ延びることになった。彼にとっての『壁』の登場である。

 あいつを倒すと『壁を乗り越えようとする』のか、もう関わりたくないと『壁を越えるのを諦める』か……。

 しかしこの瞬間、彼の脳深部に埋め込まれたコーラル管理デバイスが暴走して脳がコーラルにキマッた状態になっていたのか、彼の出した答えは斜め上にかっ飛んでいた。

 

 

「あんだけのデカ物をぶっ倒せば派手に稼げて俺様は最強だ!!」

 

 

 かくして対大型特殊兵器を専門に相手をするという、端からみると自殺志願の特攻野郎のような独立傭兵が誕生したのである。

 そして、そんな彼がこのミッションを受けたのは、ある意味では当然のことだった。

 

 

「おぉうっ!?」

 

 

 時間にして数秒、気を失っていたデスペラードは地獄の真っ只中で目を覚ます。

 折り重なるようにして何機ものACが炎にあぶられながらその鋼の屍を晒していた。そして、それを成した破壊者2機は空を悠然と舞っている。

 

 ベイラムからの依頼である『惑星封鎖機構の特務機体の駐機場への強襲』……惑星封鎖機構という強力な敵が相手ながら不特定へのばら撒き依頼であり、デスペラードが確認した段階で依頼を受けた独立傭兵は5人にも上っていた。最終的に依頼を受けた傭兵は9人、AC9機の大部隊だ。

 

 実際、作戦は上手くいった。9機のACが一気に強襲、追加報酬も出る惑星封鎖機構の施設を破壊しながらメインターゲットである駐機中の特務機体『バルテウス』3機に迫る。

 明らかにレベルが違う独立傭兵が2人ほど混じっていたのも僥倖だった。その2人は脇目も振らず『バルテウス』に向かい、必殺のパイルバンカーを叩き込んで動き出す前に素早く『バルテウス』を破壊していき、駐機中だった3機の『バルテウス』は飛び立つ前にすべてスクラップと化した。

 

 メインターゲットを破壊しあとは存分に暴れて追加報酬を稼ぐだけ……そんな弛緩した空気の中、そいつらは現れた。救援要請を聞いてやってきたもの、それは完全に起動状態にある『バルテウス』2機だった。

 突如として現れたそれは即座に戦闘態勢に移行しミサイルユニットを展開、数えるのも馬鹿らしくなるミサイルの雨が予想外の出来事に動揺する独立傭兵たちに降り注ぐ。

 そして破壊力満点のグレネードキャノンが近距離で炸裂し、デスペラードは数秒気を失っていたのだ。

 彼は運が良かった。他の傭兵たちのACが上手く盾になる形になったことで彼のAC『ギガントバスター』は致命傷を免れたのである。しかしそれを成した破壊者は未だ健在で空を舞っており、『ギガントバスター』もAPは半分まで削られる損傷を受けていた。

 明らかに不利……自分の命が風前の灯火であるこの状況。

 

 

「いいじゃねぇか! デカいの全部ぶっ潰して、俺様が最強だ!!」

 

 

 しかし『デスペラード』は狂気混じりの顔で笑う。その表情に、自分が敗北するという思考は欠片も見当たらない。

 その時だ。

 

 

『ちくしょう、やっぱりこうなりやがったか! 穏便無事にはいかねぇな!

 ナコは大丈夫か!?』

 

『兄に、落ち着いて……この程度全然大丈夫だから……』

 

 

 横合いからプラズマミサイルが飛来、しかし2機の『バルテウス』のパルスアーマーに阻まれダメージは与えられない。

 現れたのは2機のAC、独立傭兵の中でも明らかに動きのレベルの違っていた2人だ。2機のACはほとんど損傷もなく、2機の『バルテウス』に向かって行く。

 

 

『こっちの一機は任せろ。

 ナコはそっちの一機を頼む!』

 

『わかった、兄に。

 ブースターを変えて機動力は少し下がったけど、対バルテウス用の装備に換装してあるから任せて……』

 

 

 両手のショットガンとプラズマミサイルを発射しながら、黄色のAC『日向葵』は1機の『バルテウス』に襲い掛かった。その姿に驚異を感じたのか、『バルテウス』は敵集団を一気に壊滅させるような火力をその1機のACへと集中させる。

 すると、もう1機のAC『撫子』がデスペラードの『ギガントバスター』の隣に降り立った。

 

 

『生き残りがいたんだ……いい腕ね』

 

「おう、俺様は最強だからな!」

 

『そう……』

 

 

 さして気にも止めた様子もない少女の声。

 

 

『それで? 逃げるなら……』

 

「おう、逃げるならさっさと逃げた方がいいぞ!」

 

 

 逃げたければ逃げていい……そう言おうとしていた少女は、予想外の言葉を受けて面食らう。

 

 

『正気? その状態で『バルテウス』を相手にするなんて、普通なら自殺行為よ』

 

「他の連中なら自殺だろうが俺は違う! なんたって俺は最強だからな!

 あんなデカブツ、派手にぶっ潰してやるぜ!」

 

『話が通じてない……。コーラルドラッグキメたラミーみたい』

 

 

 少女はため息を一つついた。

 

 

『私はナコ』

 

「俺はデスペラードだ!」

 

『私のAC『撫子』は今回、対バルテウスを想定してパルスガンを両手に装備してパルスキャノンを装備してる。

 その分少しブースターを変更して速度が低下しているけど十分立ち回れるだけのスピードがある。この武装でバルテウスのパルスアーマーを引き剥がすから……』

 

「よし、一緒にパルスアーマー引き剥がして集中攻撃だな!!」

 

『……話を聞いて』

 

 

 本日二度目のため息をつくナコ。その瞬間、『バルテウス』がミサイルユニットを展開、ACの集団を一気に屠ったミサイルのシャワーが放たれた。

 それは『撫子』だけでなく『ギガントバスター』にも迫る。

 

 

『やるしかない、か……』

 

「やるぞ、嬢ちゃん!」

 

 

 同時に、『ギガントバスター』と『撫子』のアサルトブーストが起動した。

 どうやら口だけではないようで、デスペラードもナコと同じように空中で華麗に機動すると、ミサイルをよけきって『バルテウス』へと肉薄する。

 

 

『……墜ちろ』 

 

「おら、その薄皮ひん剥いてやる!!」

 

 

 至近距離で『撫子』から両手のパルスガンと肩のパルスキャノンが放たれる。同時に『ギガントバスター』も右手のパルスガンを連射した。

 計4つにもなる対PA(パルスアーマー)干渉力の高いこの猛攻に、『バルテウス』のパルスアーマーが一瞬で音を上げた。

 『バルテウス』を守っていた強固なパルスアーマーは溶けて消え、過負荷によってシステムが一時的にダウンする。

 

 

『今っ!』

 

 

 瞬時に『撫子』が左手のパルスガンをパルスブレードに持ち替えて叩きつけた。『バルテウス』の装甲が悲鳴を上げる。

 

 

「おらおら、死ねぇぇデカブツ!!」

 

 

 そして『ギガントバスター』のチャージパイルバンカーが『バルテウス』に突き刺さった。

 特殊合金製の杭に貫かれる『バルテウス』だが、まだ撃墜には至らない。

 その瞬間、『バルテウス』を中心に光が集まる。アサルトアーマーの前兆現象だ。

 

 

『退いて!』

 

 

 クイックブーストで距離をとりながら警告するナコ。しかしデスペラードの行動はその斜め上を行っていた。

 

 

「こいつもおまけでぶっ飛びやがれ!!」

 

 

 なんとアサルトアーマーの前兆現象を前に、『ギガントバスター』は前進した。そして両肩のプラズマキャノンの砲身を、先ほどパイルバンカーで開いた穴に突き刺す。

 

 

「ぶっ飛べデカブツ!!」

 

 

 『ギガントバスター』のプラズマキャノンのゼロ距離射撃と、『バルテウス』のアサルトアーマーが発動するのは同時だった。

 パルス爆発によって吹き飛ばされる『ギガントバスター』。同時に内部から超高温のプラズマによって灼かれる『バルテウス』。

 そしてついに『バルテウス』のジェネレータをプラズマの炎が食い破った。『バルテウス』は内部から誘爆を繰り返し、自分が屠ってきたACたちと同様、今度は自らが大地へと鋼鉄の骸を晒すことになったのだった……。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『……生きてますか?」

 

「おう、当然よ!」

 

 

 ナコの言葉に、当然のようにデスペラードは答えた。

 

 

『……これを使ってください』

 

「おう、ありがとよ」

 

 

 デスペラードの『ギガントバスター』はスクラップ寸前の状態になっていた。『バルテウス』に突き刺してぶっ放した両肩のプラズマキャノンは砲身が折れるだけに留まらず、そのエネルギーの逆流で『ギガントバスター』の右腕も吹き飛ばしていた。しかしそれでもしっかりと生き残っている。

 『撫子』から差し出されたリペアキットを素直に受け取り、『ギガントバスター』を応急修理させたデスペラードはその時、『バルテウス』はもう1機いたことを思い出した。

 

 

「おい! もう1機の『バルテウス』は……!?」

 

 

 だが、ナコは何でも無いことのように答える。

 

 

『大丈夫ですよ。 あっちは兄にがやっていますから。

 ほら』

 

 

 すると、もう1機の『バルテウス』と戦っていたはずのあの黄色いACがこちらへやってくるのが見えた。その背後では、機体の各所に大穴を穿たれた『バルテウス』がいまだに内部で爆発を繰り返しながら激しく炎上している。

 黄色のACは先ほど見たときとほぼ変わらず、被弾はほとんどないことが伺える。

 

 

「いいな、派手にやるじゃねぇか!」

 

 

 そんな姿にデスペラードは最大級の賞賛を送る。

 

 

『兄に、お疲れ様です……』

 

『お疲れ、ナコ。 無事か?』

 

『ええ、こっちには味方もいましたから……』

 

 

 そう言って黄色のAC……『日向葵』のセンサーアイが『ギガントバスター』を見た。

 

 

『うちの妹と共同とはいえ、『バルテウス』を墜とすなんていい腕してるな』

 

「おう、俺は最強だからな!」

 

『……ラミーと同類ですよ、兄に』

 

 

 ナコは呆れたように言うが、ヒナタは感心していた。

 

 

『独立傭兵稼業は結果がすべて。それを出すためにドラッグキメようが狂気に片足突っ込もうが何でもありだ。

 何かが足りなきゃ、泣こうが喚こうが理不尽に死ぬ……独立傭兵ってのはそういう仕事だ。

 そんな中でしっかり結果を出して生き残ったんだ。 必要なものがすべて揃っていたからこそ、戦場で生き残れた……誇っていい最高の成果だよ』

 

「おう、派手に大物潰して最高の成果だ!」

 

『ああ、違いない』

 

 

 そう話をしながらも、そのセンサーアイは周囲を常に警戒し隙がない。

 

 

『作戦終了だ。 次の厄介なやつが湧く前にさっさと離脱しよう』

 

『分かりました、兄に』

 

 

 そして『日向葵』と『撫子』のアサルトブーストに火が入る。

 

 

『このコーラル争奪戦の根は深く、まだまだ戦況は混乱するだろう。

 デカブツもいくらでもいる。 次のデカブツ殺しのときも頼むぜ』

 

「おう、デカブツ殺しなら任せとけ!」

 

『じゃぁ、いつか次の戦場で会おう』

 

 

 そう言葉を残して『日向葵』と『撫子』はアサルトブーストを起動して戦域を離脱していった。

 

 

「さて、俺も帰るか……」

 

 

 2人がいなくなってから、『ギガントバスター』をゆっくりと立ち上がらせる。

 各関節が悲鳴のような軋みを上げる。砕けた右手に、折れた両肩のプラズマキャノン……今から修理費の計算が恐ろしいが、デスペラードの心はこれ以上ないくらい晴れやかだ。

 デスペラードは懐を探ると、小さな小箱……紙巻のタバコを一つ取り出す。

 各種物資が慢性的に足りていないルビコンではタバコのような嗜好品は貴重だ。だが、今は吸いたい気分なのである。デスペラードはタバコに火を付け、今日の仕事を思いながら紫煙をくゆらせた。

 

 

「今夜の酒は美味そうだ」

 

 

 ボロボロの、それでも主人を守り、大物殺しの大役を果たした『ギガントバスター』はアサルトブーストを起動し、家路に向かう。

 その姿は、どこか誇らしげに見えた……。

 

 

 

 

 

 

 

 この戦いによって惑星封鎖機構は虎の子の1つとも言える『バルテウス』を惑星ルビコンに持ち込んだ半数、5機を失った。

 『バルテウス』は大多数の部隊を1機で蹂躙することもできる強力な機体である。なので『まだ5機も残っている』とも言えるかもしれないが、高速で飛行しどこにでも現れることの出来る、使い勝手のいい戦力である『バルテウス』の大損害……これはこの後の戦いに確実に影響するだろう。

 誰もが惑星封鎖機構の圧勝だと思われていたこの戦いの天秤は、今ゆっくりとだが、大きく揺れ始めたのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『ギガントバスター』

パイロット名:『C4-332 デスペラード』

 

R-ARM UNIT:HI-18:GU-A2(パルスガン)

L-ARM UNIT:PB-033M ASHMEAD(パイルバンカー)

R-BACK UNIT:FASAN/60E(プラズマキャノン)

L-BACK UNIT:FASAN/60E(プラズマキャノン)

 

HEAD:HC-2000/BC SHADE EYE

CORE:EL-TC-10 FIRMEZA

ARMS:EL-TA-10 FIRMEZA

LEGS:VP-422

 

BOOSTER:FLUEGEL/21Z

FCS:FC-008 TALBOT

GENERATOR:VP-20D

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 

解説

『派手に稼ぎたい』『強さが欲しい』という考えの元で第四世代型強化手術の被検体を志願し生き残る。

幸い第四世代強化人間によくある『感情が希薄』などの大きな副作用はなく被検体で得た金でACを購入に独立傭兵を開始、考えはともかく堅実なアセンで順調に任務を成功させ続けキャリアを積む。

しかしある時に引き受けた依頼で惑星封鎖機構の『バルテウス』相手に全く歯が立たぬほどに蹂躙され、命からがら逃げ延びた。

普通の人間の思考なら『次は負けん』と奮起するか、『もう関わらん』と手を引くかどちらかのところだ。

しかしヤツは……弾けた。

攻撃を受けたときに脳深部のコーラル管理デバイス誤作動でもしてコーラルがキマってしまったのか、「あんだけデカ物をぶっ倒せれば派手に稼げて最強だ!」と、他の独立傭兵なら避けて通るような『大物』との戦いに情熱を注ぎ込む、『大物殺し専門』の傭兵になってしまった。

今日も彼は、普通の傭兵なら避けて通る大型の出る自殺紛いの特攻作戦に、嬉々として挑んでいく。

 

ACのコンセプトは『対大物』、『対パルスシールド』。

どう装甲を上げたところで大物の火力はそれを容易く突破してくるということを理解しており、火力を最大限上げつつ機動力を確保するという方向性になっている。

そのため中量二脚を使用し、そこに積めるだけの大火力を積んだという構成。

大型はパルスシールドなどの特殊防御機構も搭載している可能性が高いため、メインウェポンにはパルスガンを装着。

両肩のキャノンで牽制しつつ接近しパルスガンで嫌がらせ。パイルを狙うと見せかけ両肩のプラズマキャノンをたたき込み、スタッガーした相手にパイルバンカーを叩き込む……これが基本的な戦術となる。

エンブレムは『日輪を掴む手』。深紅を基調としたカラーリングで所々塗装が剥げている。

 

弱点は脆い事と対ACをあまり想定していないこと。

機動性の確保のために中量二脚クラスの中に高火力を収めたので、コアと腕が軽量型であり、防御・耐久面は期待できない。

対ACにおいては足の止まる両肩のプラズマキャノンは回避しやすい。さらにミサイルのように追尾武装もなく攻撃はすべて直線的なので、高機動機は特に苦手とする。

ただコンセプトどおり、バルテウスなどの大物相手には秒殺可能な火力を詰め込んでいるので、上手く当てれるのなら対AC戦でも十分戦えるだろう。

ぶっちゃけ、高火力というのはそれだけで大きなアドバンテージなので使いようというところはある。

 

 

『ソージ』さんからメッセージに届いたアセンとキャラクターであり、ゲストキャラクター。

修正前のバルテウスに数十回ボコボコにされたことで組んだアセン、とのこと。

今でこそ新しい機体のテストプレイで使っているバルテウスだが、修正前の初見のころは本当にバルテウスは大きな壁だったなぁと思いだし、自分も同じような両肩キャノンの火力偏重アセンで突破したなぁと思い出す。

まだ一年経ってないはずだけど、何もかも懐かしい……。

 

 

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