祝福の花を君に   作:キューマル式

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前回に引き続き、今回もメッセージに送られてきた読者アセンとゲストキャラが登場します。



第49話 『ロボットもので異名って燃えるよね』

 『惑星封鎖機構』による圧力は日に日にその強さを増していた。『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3勢力は惑星封鎖機構の技術力、そしてそこから生み出された強力な兵器群により劣勢に立たされていたのだ。

 そんな中、『アライアンス』から驚くべき提案が3勢力に対してなされる。『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』からなる対惑星封鎖機構限定の臨時軍事同盟軍、『抵抗同盟軍』の結成である。

 このまま個々に戦っていても各個撃破されるのは火を見るよりも明らか。ならば対惑星封鎖機構限定でも1つにまとまり、惑星封鎖機構の戦力に対してあたるべき……『アライアンス』はそう訴えたのだ。

 『アライアンス』はルビコン3の地元企業だ。そしてルビコンがこの半世紀の間に惑星封鎖機構の惑星封鎖によってどれだけの辛酸を嘗めることになったかは筆舌に尽くしがたい。もしこのまま惑星封鎖機構が勝利したなら何が起こるのか……武装勢力に加担したとして『アライアンス』の各企業は解体、企業という食料や日用品の生産能力を失ったルビコニアンは1人残らず絶滅する……このくらいは『管理しやすいから』という程度の理由で惑星封鎖機構ならやるだろうという、嫌な信頼があった。

 もっとも、惑星封鎖機構はルビコンの裏でうごめく『レイヴンズネスト』と繋がっている。そんな惑星封鎖機構が勝利した場合に起こるのは、ルビコンだけでなく『全宇宙からの進化という名の人類絶滅』なのだが、不幸なのか幸いなのか、これに気付いているのは今のところごく少数だけだ。

 

 とにかくかなりの量の補給を頼り、発言力の高い『アライアンス』からのこの提案は、各勢力にとって福音だった。『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3勢力の上位陣はしっかりと現実が見えており、このまま個々に戦っていたら惑星封鎖機構にすり潰されるだけだという現実は認識出来ていたのだ。しかし今まで敵としてドンパチやり続けていた相手と手を組むとは言い出すことが出来ずにいた。そこに中立である『アライアンス』からの同盟締結の提案は渡りに船である。少なくとも『政治的』にも『現実的』にも妥当な話だ。あとは『感情』をどう処理するかの問題である。

 『政治的・現実的な妥当性を前に感情など何をバカなことを……』と思うかもしれないが今まで敵同士として戦ってきた相手だ、そこでなんとかして『感情として納得』出来なければ大事な場面で現場で同士討ちと始めて大変なことになる可能性がある。

 

 そこで同盟前に『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3勢力合同でミッションを行い、その成功をもって各勢力への一時的な信用とする……そういう風に『感情』に決着を付けることにしたのである。

 しかし同盟前に大きな部隊を動かすわけにもいかず、かといって各勢力のエース級は忙しい……そういう時に便利な存在が『独立傭兵』というものだ。つまり『各勢力の選んだ独立傭兵が勢力を代表してミッションに参加する』という形である。これなら後々協力した事実が不都合になっても『自分たちではなく関係の無い独立傭兵がやりました』という逃げにも使えるという判断である。

 

 かくして、対惑星封鎖機構のための『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3大勢力同盟の鍵を握るミッションが、選ばれた傭兵たちによって行われようとしていた……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 『G9(ガンズ・ナイン)に伝達! これはベイラムからの依頼となる!

  秘匿性が非常に高いため、ミシガン総長自ら作戦説明を行う。

  一語一句聞き漏らさぬように!』

 

 

G9(ガンズ・ナイン)、現在の惑星封鎖機構との戦況は知っているな? 連中の優れた技術で作られた高性能なおもちゃどもによって、俺たちの旗色は良くない。

 しかも数はこちらの倍はやつらの方が上だ。2対1ではどっちが強いか……それをひっくり返せるのは貴様のようなごく一部だけで普通には算数よろしく数字の多い方が強い。だからこそ、惑星封鎖機構に打ち勝つには戦力が必要だ。

 

 ……貴様ならウォルターから聞いているかもしれないが、現在水面下で『ベイラム』『アーキバス』『ルビコン解放戦線』の3勢力は、対惑星封鎖機構限定の同盟締結に向けて動いている。そのために『『ベイラム』『アーキバス』『ルビコン解放戦線』が協力した』という事実が欲しい。

 各勢力が選んだ独立傭兵が組んで共同ミッションを遂行、それをもって同盟締結の足掛かりにする。そして『ベイラム』、俺が選んだのはG9(ガンズ・ナイン)、貴様だ。

 

 『アーキバス』『ルビコン解放戦線』の選んだ独立傭兵とともに惑星封鎖機構の補給拠点の一つ、『バーレア物資集積所』を襲撃しろ。

 目標はやつらの物資……特に前線に送られる予定の新型HC(ヘビィキャバルリー)3機だ。新型を任されるだけあって敵のパイロットも腕利きだろう。さらに護衛としてLC(ライトキャバルリー)も複数配備されているはずだ。貴様なら大丈夫とは思うが油断はするな。

 

 説明は以上だ。 準備を入念に終わらせて、愉快な遠足に出発しろG9(ガンズ・ナイン)!』

 

 

 

 

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 『戦友アオイ、あなたの活躍は聞いているわ。

  そんなあなたの戦友、フェンネルが今日はアーキバスからの仕事の依頼を持ってきたの』

 

 

『今の惑星封鎖機構との戦況は知っているわね? 連中はこちらよりも高い技術を持ち、なおかつ『ベイラム』のように数で攻めてきているわ。

 私たちのようなヴェスパー部隊は何とかなっているけれど、一般のMT部隊の損耗率は目を覆いたくなるような有様ね。この状況を覆すには、思い切った決断が必要ということよ。

 

 あなたのハンドラーは事情通だから聞いているかもしれないけれど、現在水面下で『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3勢力が、対惑星封鎖機構限定の同盟締結に向けて動いているわ。そのために『『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』が協力した』という事実が欲しいの。

 各勢力が選んだ独立傭兵が組んで共同ミッションを遂行、それをもって同盟締結の足掛かりにするというわけね。そして『アーキバス』はアオイ、あなたを選ぶわ。

 

 『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の選んだ独立傭兵とともに惑星封鎖機構の補給拠点の一つ、『バーレア物資集積所』を攻撃して。

 最重要目標は前線に送られる予定の新型HC(ヘビィキャバルリー)3機よ。これが前線に届けば、また被害が増える。確実に撃破して。

 

 説明は以上よ。 情報では『ベイラム』が選んだ傭兵はあなたの彼らしいわ。あなたなら大丈夫だろうけど、デート気分で浮かれてヘマはしないでね』

 

 

 

 

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 『久しぶりじゃな、ヒナタ。 お前の活躍は『ルビコン解放戦線』にも響いておる。

 

  さて要件だが……カーラやウォルターから聞いていると思うが、『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3勢力は、対惑星封鎖機構限定の同盟締結に向けて動いておる。

  わしは事前にお前から惑星封鎖機構の介入があるとは聞いておったが、あの数にはさすがに驚いたわ。これはもはや……早期に3勢力が同盟を組んで纏まらなければ敗北は必至じゃろう。

  そのために『3勢力が協力した』という事実が欲しい。『アーキバス』や『ベイラム』と組むのは業腹だが背に腹はかえられぬ。その事実をもって、惑星封鎖機構という現実の脅威を乗り越えるために感情は呑み込もうというわけじゃ。

  わしは『ルビコン解放戦線』の代表にはお前を推していたのじゃが……結局、『ルビコン解放戦線』の代表はフラットウェルの推薦した男に決まったよ。

 

  伝え聞いている通り、わしとフラットウェルは馬が合わない。前線で暴れるのが合っているわしと、現実主義で策略を巡らせることの合っているフラットウェル……方向が真逆すぎて馬が合うはずもない。世間で不仲といわれておるのは知っているが、否定は一切出来んよ。

  もっとも、だからといって相手を排除しようと思ったことは一度も無い。むしろわしの足りない部分をやってくれているフラットウェルには感謝しとるよ。お前に会うまでの腑抜けていたときに『ルビコン解放戦線』を支えていてくれたのもフラットウェルじゃからな。

 

  まぁ、何が言いたいのかというと今度お前やアオイと仕事をする、フラットウェルの選んだ独立傭兵は十分に信頼に値するということじゃ。

  今回のミッションは今後のルビコンの先行き……『レイヴンズネスト』と『惑星封鎖機構』の繋がりを考えれば、全宇宙の人類の行く末を決めるかもしれんミッションになる。

  頼むぞ、ヒナタ。 協力して最良の形でミッションを成功させてくれ』

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 人の縁とは何がどう転ぶのか分からないものだ。そう、しみじみと思う。

 なんとなく報酬と内容がいいからという理由でシュナイダー社系の依頼ばかり受けていたら、俺はそいつと出会うことになった。

 

 『エラン=マーシュ』……シュナイダー社の天才アーキテクトでありながらその設計は独特の一言。はっきり言ってACを造っているのでは無く『人型の航空機』でも造ろうとしているんじゃないかという変わり者で、特に『空力』を信条とする。

 最初は……いや、今でもおかしなヤツだとは思っている。しかし、その情熱はどこに出してもおかしくはない『本物』だ。そして俺はそういう本気で生きている『本物』というやつが大好きだった。

 だから他からは見向きもされなかった試作パーツのテストパイロットの依頼を受けた。エラン=マーシュと友好を深め、そしてその試作パーツの1つであるAC用頭部(……と呼んでいいのか、これ? カメラとセンサーに板を付けただけの代物だぞ?)を友情の証として貰い、それを使用して独立傭兵活動をしていた。

 するとその頭部が『ルビコン解放戦線』の軍事的指導者であるミドル=フラットウェルの目にとまり、信頼を得て、様々な依頼を回して貰えることになった。人の縁から運気が回ってきたというのか……とにかく独立傭兵としては順調な生活だったのだ。

 

 だが……『過ぎたるは及ばざるがごとし』とはよく言ったもので、信頼をされ過ぎるのもなかなか困りものである。こんな『対惑星封鎖機構限定の同盟を結ぶためのミッションに『ルビコン解放戦線代表』として参加して欲しい』と言われてもその、なんだ……困る。

 

 

「まったく……俺っちは一般独立傭兵なんだけどな」

 

 

 愛機『ハニーカム』の中で肩をすくめ、愚痴めいたものが漏れる。

 

 

『ああ、あんたもか。

 困るよなぁ、こんな重要なミッションをポンっと任せてくるとかな』

 

 

 そんな風にアハハと笑いながら僚機が返してくる。

 

 

(噂の『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』が何言ってんだよ!)

 

 

 慌てて俺は喉から出かかった声を呑み込む。

 旧式強化人間を使い捨てにしながら戦場を闊歩する、極悪非道の独立傭兵団頭目『ハンドラー=ウォルター』。その子飼いの猟犬『ハウンズ部隊』。その中でも特出した存在と噂されているのが、今回の僚機であり目の前の独立傭兵ヒナタだ。どんな相手だろうがハンドラー=ウォルターの命令で噛み殺すその姿は、陰では『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』と噂されたりしている。

 だが、噂のような狂犬かと思ったがなかなか話のできる相手で、その辺りはホッとしていた。

 

 

『しかし……あんたなかなか面白い構成をしてるな!』

 

「俺っちのACが分かるんで?」

 

『超がつくほどの軽量型。腕なんてバショウの装甲を無理矢理外してまで軽量化してる。

 そのくせブースターは第一世代型の旧式だ。新型のブースターが買えないってわけでもないだろうに。

 そして極めつけはその武装構成……両手に包囲型ハンドミサイルに、両肩は実弾オービットだ。

 となれば恐らく使用してるジェネレータは大豊製の大容量を誇る三台だろう。

 通常のブースト機動を考えた機体じゃ無い。絶え間なくクイックブーストを連射して、クイックブーストで戦う構成だ。

 いいね、とくにバショウの装甲をひっぺ返して軽量化ってのが男心をくすぐるよ。ライトスコープドッグみたいで』

 

「……いい目をお持ちで」

 

 

 ACは独立傭兵の商売道具であり、生命線だ。特性を知られれば対処法を編み出され、戦場で屍をさらすことになるだろう。だから一部まったく意味の分からない言葉は入っているものの、一目で機体特性を完全に看破されたことに内心で動揺しながら、それを必死に隠してヒナタへと言葉を返す。

 だが『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』の噂がハッタリでは無いと分かり、味方としてはこれ以上なく頼もしい。

 

 

『……ヒナタ、もうすぐ作戦領域』

 

 

 その時、今まで沈黙していたもう1機の僚機から通信が入る。どうやら彼女も『ハウンズ』の一員らしく、俺だけアウェー感がする。

 

 

『そうか。

 じゃあ今日はよろしくな、『土砂降りの(ダウンプア)ショーン』!』

 

 

 そう言って『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』からの通信が切れる。

 

 

「さて……やってやりましょうかね!」

 

 

 気合いを入れ直し、俺は愛機の操縦桿を握った……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『なっ、バカな!?』

 

『寄せ集めのACなんぞにこのHCが……!?』

 

 

 通信機から聞こえる敵の断末魔。どうやら味方は何の苦も無く目標を撃破したらしい。

 

 

「それじゃこっちも仕事を始めようかね」

 

 

 『ハニーカム』のカメラが目標のHCを捉える。

 

 

『バカめ。 そんなボロボロの機体でこのHCに挑むとは!』

 

 

 どうやら両腕の装甲を無理矢理剥ぎ取っているのが、まともに修理をしていないように見えたらしい。ご丁寧に通信でこちらに聞こえるように煽ってくる。

 だがこの手の手合いの処置はいつも決まっていた。

 

 

「土砂降りの雨に消えちまいな!」

 

 

 言って『ハニーカム』のクイックブーストが機動、瞬間的な加速でHCとの距離を詰めにかかる。

 

 

『何っ!?』

 

 

 HCはその機動に驚きながらもパルスシールドを構え、両肩のパルスキャノンを連射してくる。

 

 

「遅い遅い!!」

 

 

ボッボッボッ!!

 

 

 本来は瞬間的に使用されるクイックブーストが連射された。

 軽量フレームの軽さとエネルギー容量に優れた大豊製ジェネレータ、そしてエネルギー消費の少ない旧式ブースター……これらの組み合わせにより本来は瞬間的な加速を得るためのクイックブーストが、持続的な加速に変化する。

 そして敵のパルスキャノンをかわすと同時に、置き土産のように両手の包囲型ハンドミサイルを発射した。

 時間差を置きながらHCへ殺到するハンドミサイル、しかしその時にはすでにHCの背後に回り込んだ『ハニーカム』が両肩の実弾オービットを起動、クイックブースト中にも絶えることなくHCへ弾丸を叩き込み続ける。

 

 

『くっ、この!?』

 

「遅い遅い!」

 

 

 HCは『ハニーカム』を正面の射線上に捉えようと旋回するが、連続クイックブーストで移動する『ハニーカム』を捉えられない。

 包囲型ハンドミサイルとクイックブースト中でも攻撃を続ける実弾オービット、そして連続クイックブーストによるサテライト移動により単機での全方位(オールレンジ)攻撃……まさに『土砂降り』の弾の雨がHCへ殺到する。

 そしていかに高性能だろうが、鉛玉を受け続けて無事な道理はない。

 

 

『HCがACに負けるだと!? こんな……バカな!?』

 

 

 そんな断末魔を残して新型HCは爆発四散した。

 

 

「さぁて、これにてミッションコンプリート。

 さっさと帰りましょうや」

 

 

 そう軽口を叩くと、狙ったかのようにアラートが鳴り響いた。

 

 

『……何か行った』

 

『ショーン、そっちに何か行ったぞ!

 これから俺たちもそっちに向かう!』

 

 

 僚機からの通信、即座に上から拡散レーザーが雨のように降り注いだ。

 

 

「おおぅ!?」

 

 

 得意のクイックブーストの連発で大きく距離をとってかわすと、拡散レーザーの雨で耕された大地に何かが降り立ち、ガションガションというメカニカルな擬音が聞こえてきそうな勢いで形状を変化させていく。そして人型に変形したそれは、ACの倍はあろうかという巨躯をゆっくりと立ち上がらせた。

 

 

「特務機体『エンフォーサー』……こんなもんが配備されてるなんて俺っちきいてないんだけど!」

 

 

 それは惑星封鎖機構の切り札の一つである特務機体、『エンフォーサー』だった。

 右手に持った凶悪な遠近複合レーザーキャノンの砲口が『ハニーカム』を向く。

 

 

「ついてないなぁ……こりゃ俺っちも年貢の納め時かね?」

 

 

 そんな悲観的なことを口にしながらも『ハニーカム』の操縦桿を握り直す。それが戦闘の合図にでもなったかのように、『エンフォーサー』からの攻撃が開始された。

 『エンフォーサー』の可変式ミサイルランチャーからミサイルが発射された。半数がそのまま発射され、もう半数が砲口が上向きに可変することでヴァーティカルミサイルとして発射される。

 通常ミサイルの軌道とヴァーティカルミサイルの軌道で、正面と上から同時にミサイルが『ハニーカム』に襲い掛かった。

 

 

「ちぃっ!?」

 

 

 得意のクイックブーストの連射で回避しきるも、そこに遠近複合レーザーキャノンが火を吹いた。

 その高火力によって直撃ではなく近距離を通り過ぎただけだというのに、薄い『ハニーカム』の装甲が焼け爛れていく。

 お返しにと包囲型ハンドミサイルを放つ『ハニーカム』。包囲型ハンドミサイルはそのまま『エンフォーサー』に次々と炸裂するが、『エンフォーサー』の分厚い装甲を前には有効打にはならず、両肩の実弾オービットも同様である。

 ここに来て軽量機全般の弱点である『火力の低さ』が響いていた。『ハニーカム』は対ACや対MTといった、同等サイズの敵と戦うことは得意でも極端に高い耐久力を誇る大型機への対処は苦手なのだ。

 

 『エンフォーサー』の遠近複合レーザーキャノンの先端から光刃が発生する。遠近複合レーザーキャノンの先端に設置された格闘兵装、レーザーパイルの光芒だ。『エンフォーサー』はそのまま、飛行すら可能とする推進力を突進力に変換、『ハニーカム』に向かって突っ込んでくる。

 

 

「うぉっ!?」

 

 

 クイックブーストの連射でなんとかレーザーパイルの直撃は回避できた『ハニーカム』。しかし、さすがに酷使を続けたジェネレータが息切れを起こし、エネルギーチャージに入ってしまう。

 そして『エンフォーサー』はその膨大なエネルギーを込めたレーザーパイルを地面に突き刺した。『エンフォーサー』を中心に電気パルスの衝撃が円形に広がり、それが『ハニーカム』を直撃する。

 電気系統に異常を知らせるアラートが鳴り機体制御系のシステムが一部ダウン、よりにもよって『エンフォーサー』の目の前で片膝をつく『ハニーカム』。

 

 

(さすがにこれは終わったか……)

 

 

 そんな思いが一瞬去来するも、それは幾重もの爆発の前に瞬時に吹き飛んだ。

 

 

『……まだ無事?』

 

『お待たせ、騎兵隊の到着だ!』

 

 

 僚機であるヒナタの『日向葵』のプラズマミサイル。そしてアオイの『曼珠沙華』からの連装グレネードキャノンとバズーカ。それらを叩きつけられた『エンフォーサー』がバランスを崩し、注意が新たに現れた2機に向く。

 その隙に『ハニーカム』はシステムの再起動が完了、動けるようになっていた。

 

 

「おら、土砂降りの雨、おまけもあるぞ!!」

 

 

 包囲型ハンドミサイルと実弾オービットの集中砲火、そしてとどめに切り札であるアサルトアーマーを起動させた。

 幾重もの集中砲火にさらされ、強力なパルス爆発にも巻き込まれた『エンフォーサー』のACSが負荷限界を超え、スタッガー状態に陥り機能を停止させる。

 

 

『トドメは任せてくれ!

 特殊合金製の杭、たらふく喰らえよ!!』

 

 

 そして『日向葵』のフルチャージしたパイルバンカーが『エンフォーサー』の動力ブロックを貫く。

 クイックブーストによって距離を離した3機の目の前で『エンフォーサー』はジェネレータを暴走させ爆発、ひと際大きな爆発とともに倒れ込んだのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ふぅ……俺っち生き残ったぁ」

 

『いい腕してるな。 さすが『土砂降りの(ダウンプア)ショーン』だ』

 

「……そっちこそ『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』にふさわしい強さじゃないか」

 

 

 深く息をつき、生を実感する。だがここは敵地だ、安心するのはまだ早い。

 

 

『……行こう、ヒナタ』

 

『そうだな、やることやったらさっさと帰ろう。

 これ以上の面倒ごとはごめんだ』

 

「そりゃ同感だね」

 

 

 そしてアサルトブーストを起動させ、作戦領域を離脱していく。

 

 

『じゃあな、『土砂降りの(ダウンプア)ショーン』。

 縁があるなら、いつかどこかの戦場で』

 

 

 そう言って、別々の回収地点へと向かう『日向葵』と『曼珠沙華』。独立傭兵らしい、さっぱりとした別れ方だ。

 

 

「次も味方で頼む。

 俺っちは『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』と殺し合いは勘弁だ」

 

 

 そうとだけ呟いて、『ハニーカム』も回収地点へと向かうのだった……。

 

 

 

 

 

 この作戦によって『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』の3勢力が協力し合ったという事実が作られ、『アライアンス』の提案する対惑星封鎖機構限定の臨時軍事同盟軍、『抵抗同盟軍』の結成へ向かって行く。

 ルビコンの戦いは、また新たな展開へと進んでいくのだった……。

 

 

 

 

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今日のアセン

 

AC名:『ハニーカム』

パイロット名:『土砂降りの(ダウンプア)ショーン』

 

R-ARM UNIT:WS-5000 APERTIF(包囲型ハンドミサイル)

L-ARM UNIT:WS-5000 APERTIF(包囲型ハンドミサイル)

R-BACK UNIT:BO-044 HUXLEY(実弾オービット)

L-BACK UNIT:BO-044 HUXLEY(実弾オービット)

 

HEAD:LAMMERGEIER/44F

CORE:NACHTREIHER/40E

ARMS:J-123/RC JAILBREAK

LEGS:NACHTREIHER/42E

 

BOOSTER:BST-G1/P10

FCS:FCS-G2/P10SLT

GENERATOR:DF-GN-08 SAN-TAI

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 

解説

土砂降り(ダウンプア)』の異名を持つ独立傭兵。

なんとなく報酬と内容が合っていたことからシュナイダー社系の依頼を受け続けていたところ、『ラマーガイアーシリーズ』を造った天才アーキテクト『エラン=マーシュ』と知り合い、その情熱にうたれ友好を結ぶ。

頭部のラマーガイアーパーツはその友情の証として貰ったものであり愛用していたところ、同じく『エラン=マーシュ』と友好のあったミドル=フラットウェルの目に留まり、以降『ルビコン解放戦線』からの依頼を貰えるようになる。フラットウェルとしては色々な意味で『同志』と思っていたようだ。

飄々とした如何にも軽薄な態度を取る事も多いが、実際は実直で生真面目な性格をしており、そこもフラットウェルに気に入られている理由の一つである。

 

機体色は白と橙色のツートンカラーに迷彩28番となかなかに派手め。

徹底した軽量型で、腕部に至ってはバショウアームの装甲を無理矢理外してまで軽量化したものを使用している。

そこまでの徹底した軽量化が図られているが、第一世代型の旧式ブースターを使用しているため実は通常ブースト速度はそれほどでもない。

この機体の真価はクイックブーストであり、軽量フレーム+大豊大容量ジェネレータ+低燃費旧式ブースターの組み合わせによって、なんと13回連続のクイックブーストの使用を可能にしている。

そのクイックブーストを使用し相手の死角に回り込み続けながら包囲型ハンドミサイルと実弾オービットを発射することで、単機での全方位(オールレンジ)飽和攻撃を可能にした様は、まさに『土砂降り(ダウンプア)』にふさわしいものである。

 

ただし軽量機全般の弱点である防御・耐久面はさらに弱点が尖ることになり、マシンガンですら痛く、雑魚相手でも気がつくと爆発しているということも。

またテストプレイでバルテウスと戦ってみたが大型の敵相手には決定力不足に悩むことになる。

作中にも出てきたが対AC戦機体としての運用が正解だろう。ミッション用には向かない。

 

いつも感想をくれる『四屍詩師』さんからメッセージに届いたアセンとキャラクターであり、ゲストキャラクター。

初期ブースター使用やジャンクパーツの使用と、自分のアセンには全くなかった方向性なので、かなり参考になった。

またジャンクパーツの使用を『装甲を無理矢理外してまで軽量化した非正規品』とした設定もライトスコープドッグみたいで個人的にお気に入り。

こういう自分にない発想や方向性を見せて貰えるのがありがたいです。

 

 




このアセンの発想、特にブースター回りとジャンクパーツの使用という発想は、作者には出なかった……こういうのは本当に参考になります。
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