祝福の花を君に   作:キューマル式

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第05話 『あ、スタッガー状態だぁ(ニチャァ』

 『アイビスの火』以降、その危険性から惑星封鎖を続ける惑星封鎖機構。

 それを完全に無視し、コーラルを独占するために封鎖惑星ルビコン3への進駐を大企業『アーキバス』は決定した。それほどに、コーラルによって得られるだろう利権は莫大だったのだ。

 しかし軍事行動というのは大量の物資を必要とする。ACやMTの整備用のパーツや武器弾薬はもちろん、兵士の食糧や日用品だって必要だ。特に今回は侵略作戦に近く、それら必要な物資を現地で安定的に調達できるようになるまでは持って行った物資でやり繰りする必要がある。

 そのため進駐第一陣としてこのバートン物資集積基地に集められた物資の数々は膨大な規模に上り、そのための費用も莫大だった。

 そんな莫大な費用をかけて集められた物資は今……炎によって灰塵へと変えられていた。

 襲撃の警報とともにアサルトブースト全開で基地に突っ込んできたAC、その数5機。

 

 即座にその不埒者たちに向かって自動砲台が照準を合わせようとするが、軽量タンクACから左右肩に装備された12連ヴァーティカルミサイルが放たれる。一度天に上ったミサイルはマルチロックによって定められた目標へと空から撃ち下ろされ、瞬時に自動砲台群が沈黙した。砲台を守っていたMTが動揺しながら反撃しようとするが、同時にマルチロックが完了していたハンドミサイルが再び複数の目標に突き刺さって爆発。それでも死にきれなかったMTに、最後のトドメとバズーカから放たれた成形炸薬弾が突き刺さった。強力な炸薬によって、まるで花火のようにMTが吹き飛ぶ。

 

 入口周辺の防衛部隊がいなくなったあたりで、見るからに足の遅い重タンクACが到着、両肩のプラズマキャノンを発射した。発生した凄まじいプラズマ爆風が燃料タンク群を丸ごと吹き飛ばす。その爆風にもてあそばれ転がった哀れなMTは、タンクACの両手に構えた2門のガトリングガンによって今度は弾の嵐にもてあそばれ爆発した。

 

 緊急出動したヘリ部隊。しかしそこに光線が連続して突き刺さる。アーキバスのお家芸といえるエネルギー兵器、その中でも軽量で良好な性能と評判のレーザーハンドガンを両手に構えたACがレーザーを乱射する。同時に肩に装備されたパルスキャノンからまるで泡のように見えるパルス光弾がヘリの装甲を満遍なく焼き、火だるまに変えた。破壊エネルギーの弾幕、しかしエネルギー兵器にオーバーヒートはつきものだ。弱まった弾幕に「行ける!」と考えたヘリのパイロットは次の瞬間、パルスブレードの光刃に焼かれて蒸発した。

 

 輸送ヘリの発着場所では、上空に浮いた四脚ACから空爆が続いていた。両手から乱射されるバズーカが物資を満載させた輸送ヘリを吹き飛ばし、放たれる連装グレネードキャノンはヘリを数機まとめて薙ぎ倒す。そしてリロードに入ったのか、今度はガトリングガンの弾丸が降り注ぎ、破壊の雨は止む気配がない。

 

 その凄まじい惨状に、なんとか起動をはたしたMT部隊が出撃するが、そこにプラズマ爆発が巻き起こる。動揺するMT部隊、そこにアサルトブーストで突っ込んできたACのキックが炸裂、MTがまるでサッカーボールのようにバウンドしながら吹き飛んだ。何事かと叫ぶ間もなく、至近距離からショットガンが乱射され散弾が炸裂、MTが次々に千切れ飛んでいく。その惨状を止めようと前に出た重四脚MTだが、プラズマミサイルの爆風で相手を一瞬見失った瞬間、背後に廻りこんでいたACの両手2本のショットガンの散弾が全弾直撃し、スタッガー状態に陥った。流れるような動きで左手の装備をパイルバンカーに換装したACは、そのまま抉り込むような動作でパイルバンカーを重四脚MTに叩き込む。フルチャージされ炸薬による超高速で射出された特殊合金製の杭は、装甲もジェネレータもパイロットも、等しく貫き通した。

 

 解き放たれた5匹の猟犬によって、バートン物資集積基地の破滅は加速度的に進んでいく……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 まるでお手本のような基地強襲に、高い金をかけて建設されたであろう立派な基地が、すごいスピードで更地へと変わっていく。

 

「引退したら解体業者でもやろうかね」

 

『……』

 

 俺の軽口に、自然に近くについて来ていて僚機のようになっている『618』に話しかけるが、彼女からの返答は無く4脚AC特有のホバーで上空から淡々と爆撃を続けていた。彼女の感情は希薄だ、俺のようなタイプの強化人間の方が珍しい。

 

「さっさと作戦目標の中央管制センターを叩く。追加報酬の施設破壊はそれからでもいいだろう。

 一緒に来るか?」

 

『……行く……』

 

 小さいながら同意の声に、少しうれしくなってしまう。

 俺と『618』はそのまま現れるMTを叩きながら、メインターゲットである中央管制センターへと到着した。

 

『……撃つ』

 

 射程に入ったと同時に、『618』が連装グレネードキャノンを発射した。元々防御装甲もない施設に、対AC用特殊砲弾を受けて無事な道理はない。文字通りの木っ端みじんに吹き飛んだ。

 同時に、ウォルターから通信が入る。

 

『メインターゲットの破壊を確認した。 あとは基地内の追加報酬目標を……待て。

 高速接近する機体を確認、これはACだ。 数は2機。

 『53』、『618』、お前たちのところに向かっている!』

 

 ウォルターからの警告からすぐに機体のレーダーも反応、光学カメラでもその姿を捉えた。

 標準的なタイプの中量二脚AC、それに四脚ACだ。武装はアーキバスと、その関連企業であるシュナイダー社のもので統一された、実に『アーキバスらしい』機体である。企業縛りはキツイなぁ、と元プレイヤーとして思った。

 

 

『くっ、どこの差し金か知らんがこんな大事な時期に!』

 

『おそらくベイラムの差し金だろう。

 熱くなるな、オーサム。 こんな時のために俺たちヴェスパー部隊がいる』

 

『……ああ、そうだな友よ。 俺たちで無法者どもを叩く。これで上層部への覚えも良くなりそうだ』

 

『……友よ、本当に気を付けろよ』

 

『分かっている、ダン!』

 

 

 ヴェスパーを意味する『V』に『番号』、そして人体の一部の入った気持ち悪いエンブレム……間違いない、ヴェスパー部隊の『番号持ち』だ。

 

『確認した。二脚の方が『ヴェスパー(イレブン) オーサム』のAC『メロス』。

 四脚の方が『ヴェスパー(トゥエルブ) ダン・ワンオー』のAC『セリヌンティウス』だ。

 どちらもエネルギー兵器を多数搭載した機体だ。敵の弾速には注意しろ』

 

「了解した。 『618』、協力し合っていこう」

 

『協力……仲間……』

 

「まぁ『戦友』ってことだな」

 

『……うん!』

 

 少し強めで『618』が答えたのを確認すると、俺はアサルトブーストを全開にして敵に向かって突っ込む。

 

『真正面からくるだと!?』

 

『バカが!』

 

 同時にAC『メロス』の両手のVP-66LR(レーザーライフル)とAC『セリヌンティウス』の右肩のFASAN/60E(プラズマキャノン)が飛んでくるが、クイックブーストで回避と同時にロックしていたプラズマミサイルを発射、そのままAC『セリヌンティウス』へと接近してショットガンを射撃する。

 

『そんな豆鉄砲、効くか!』

 

 しかし瞬時にVP-61PB(パルスシールド)を展開、ショットガンの散弾はほとんどダメージを与えられずに終わる。

 

『ダン、すぐに援護を……!?』

 

『あなたはこっち……』

 

 俺に対してレーザーライフルを撃ってこようとするAC『メロス』、しかし『618』がそうはさせじとバズーカを放ち、2機の分断に成功した。あちらはしばらく『618』に任せ、俺はこのヴェスパー(トゥエルブ)を倒すことにしよう。

 

『傭兵め、焼き尽くしてやる!』

 

 パルスシールドを構えながらVE-66LRB(レーザーライフル)とプラズマキャノンを撃ってくる。こちらも回避しながらプラズマミサイルを撃つが、決定打には程遠い。

 

「……なるほど」

 

 戦いながら、俺は敵の装備を注意深く観察した。『VP-61PB』はパルスシールドの中でもイニシャルガードに重きを置いた装備だ。しかし見たところ、それを使いこなせるだけの技量は見受けられない。

 

「……ごり押し気味だが、行くか!」

 

 俺はジェネレータの回復を待つと、アサルトブースト全開で突っ込む。

 

『馬鹿の一つ覚えか! 今度こそ灼けろ!!』

 

 レーザーライフルとプラズマキャノンを回避、さらに接近。

 

『こうなれば!』

 

 そして……ヴェスパー(トゥエルブ)はパルスシールドを解除し、左手のWUERGER/66E(レーザーショットガン)を構えた。

 

「これを待っていた!」

 

 レーザーショットガンが『日向葵』の装甲を焼くがこれを無視、両手のショットガンを発射する。衝撃散弾の直撃にAC『セリヌンティウス』が大きく揺らぐ。

 俺はその加速そのままにキックを叩き込んだ。

 

『ぐぉ!?』

 

 瓦礫の壁に叩きつけられるAC『セリヌンティウス』。だが安定性の高い四脚であるAC『セリヌンティウス』は、まだスタッガー状態にならない。

 しかし、俺はすでにここで決着をつけるつもりだった。

 

「アサルトアーマー、起動!」

 

 コアの機構が展開、そして『日向葵』を中心にしたパルス爆発が巻き起こる。これがACのコアの攻撃機構、『アサルトアーマー』だ。

 今までのダメージと、そしてトドメの『アサルトアーマー』によってついにAC『セリヌンティウス』のACSは負荷限界を超えた。機体制御がストップした、スタッガー状態に陥る。

 

「終わりだ……」

 

 俺は無慈悲に言い放つ。

 『日向葵』の左手では、すでに換装を終え炸薬の装填も終えたパイルバンカーが、俺の合図を待っている。そして俺はそれを抉り込んだ。

 

 

『馬鹿な……。

 ヴェスパーの俺が……こんな傭兵ごときに……!?』

 

『ダン!』

 

 

 パイルバンカーが装甲を貫き、ジェネレータに致命傷を負わせる。信じられないような呟きと、そんな僚機への叫び。

 しかしそんなものでジェネレータの爆発は止まるはずはなく、そのままAC『セリヌンティウス』は爆散した。

 

『くそぉ……これでは撤退するしかない。

 しかし、それだと俺の査定が……!』

 

 僚機がやられ不利を悟ったのか即座に撤退に移ろうとするAC『メロス』。いい判断だが……俺の僚機から注意をそらし過ぎだ。

 

『ぐぉぉぉぉ!?』

 

 『618』の連装グレネードキャノンの爆風がAC『メロス』を揺らす。

 

『この! 離れろ!!』

 

 AC『メロス』はEULE/60D(パルスシールドランチャー)を発射、空中にいくつものパルスシールドが浮かび上がる。

 同時に肩のVP-60LT(レーザーターレット)を射出、パルスシールドに隠れながらレーザーライフルを交えた光線を放ち、『618』から距離を離して逃げようとする。

 

『……』

 

 しかし『618』は臆することなくアサルトブーストを起動、そのままパルスシールドへと体当たりをした。

 ACS負荷を受けるが高い安定性をもつ四脚である『618』の機体は耐え切り、そのまま強引にAC『メロス』に肉薄、キックを放つ。

 キックの衝撃を受けたところにすかさず両手のバズーカを発射、AC『メロス』がスタッガー状態に陥った。リロード中のバズーカから持ちかえたガトリングガンをAC『メロス』へと浴びせかける。

 

『おのれぇ……だがそんな豆玉程度ではメロスは潰れは……!』

 

「いや、終わりだ」

 

 これは戦いだ。『618』にばかり目が行って俺を忘れてもらっては困る。

 クイックブーストで接近していた俺は、そのままチャージの完了していたパイルバンカーを背中からAC『メロス』へ叩き込んだ。背後から杭がコアを突き破り串刺しにする。

 コックピットは外したが、ジェネレータとブースターの制御系をまとめてぶち抜いたから、完全に致命傷だ。

 

『そんな……俺はペイター先輩みたいに、もっとビッグに……!?』

 

 パイルバンカーの杭を引き抜くと、支えを失ったAC『メロス』はそのまま前のめりに倒れ、そのまま爆発した。

 

「敵AC、2機とも撃破」

 

『こちらでもモニターしていた。 あのヴェスパー部隊を相手に恐ろしいほどの手際だな。

 あとの敵戦力はMT数機……いや、たった今『617』たちが全滅させた』

 

「あちらも手際がいいな」

 

『残りの追加報酬目標を破壊後、速やかに戻れ。

 こちらも回収の準備をする』

 

「了解……それじゃこちらも施設の破壊を継続しよう」

 

『わかった……』

 

 俺と『618』は連れ立って、周辺目標に移動を開始する。

 そして数分後には、バートン物資集積基地はその機能を完全に喪失したのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『メロス』

パイロット名:『ヴェスパー(イレブン) オーサム』

 

R-ARM UNIT:VP-66LR(レーザーライフル)

L-ARM UNIT:VP-66LR(レーザーライフル)

R-BACK UNIT:EULE/60D(パルスシールドランチャー)

L-BACK UNIT:VP-60LT(レーザーターレット)

 

HEAD:VP-44S

CORE:VP-40S

ARMS:VP-46S

LEGS:VP-422

 

BOOSTER:BST-G2/P06SPD

FCS:FCS-G2/P05

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:PULSE ARMOR

 

 

解説

ヴェスパーに名を連ねる、最新型の第10世代型強化人間。『羊の頭を中心に、何本もの人間の足が放射状についたもの』がエンブレム。

ヴェスパー上位に名を連ねることを目標に日々を送る。ヴェスパーⅫとは以前からの親友同士であり、機体名もお互いに読んで感動した古典小説からとった。

フレームは傑作と言われたアーキバス製中量二脚の純正であり面白みはないが堅実。一方の武装の方はアーキバスのレーザーライフル2丁は珍しくないが、シュナイダー社のパルスシールドランチャーとレーザーターレットという中々面白い装備を使う。

パルスシールドランチャーでパルスシールドをばら撒き、それに隠れながら攻撃。パルスシールドに接触しスタッガー状態に陥った敵にはレーザーライフルとレーザーターレットの集中砲火を行うという、パルスシールドランチャーを防御と罠に使うという中々侮れない戦法を使う。

しかしこの戦法はハマれば強いが、ハマらない場合それなり程度でしかなく、その安定性の低さから上層部からはそれほど評価されていない。そのため逆に堅実な戦いで安定して成果を叩き出すヴェスパーⅫには内心嫉妬しており、もしヴェスパーⅫが真に危機に陥ったら助けの手を伸ばすことはないだろう。

 

最近作者がパルスシールドランチャーが中々面白く、それを中心に考えたヴェスパー部隊設定の機体。企業縛りは中々難しい。

もし自分で使うなら両肩パルスシールドランチャーにハンドガン、ブレードのトラップでのスタッガー狙い、近接でトドメの機体にすると中々いいかもしれない。少なくともメーテルリンクやペイターあたりよりバランスがいいはず。

元ネタは当然、『太宰治』と『走れメロス』から。

 

 

 

 

AC名:『セリヌンティウス』

パイロット名:『ヴェスパー(トゥエルブ) ダン・ワンオー』

 

R-ARM UNIT:VE-66LRB(レーザーライフル)

L-ARM UNIT:WUERGER/66E(レーザーショットガン)

R-BACK UNIT:FASAN/60E(プラズマキャノン)

L-BACK UNIT:VP-61PB(パルスシールド)

 

HEAD:VP-44S

CORE:VP-40S

ARMS:VP-46D

LEGS:vp-424

 

BOOSTER:FLUEGEL/21Z

FCS:VE-21B

GENERATOR:VP-20D

 

EXPANSION:PULSE PROTECTION

 

 

解説

ヴェスパーに名を連ねる、最新型の第10世代型強化人間。『石を割る、ハンマーのように振り下ろされた人間の足』がエンブレム。

ヴェスパー上位に名を連ねることを目標に日々を送る。ヴェスパーⅪとは以前からの親友同士であり、機体名もお互いに読んで感動した古典小説からとった。

フレームはアーキバス製四脚を使用、強力なレーザーライフルとプラズマキャノンをパルスシールドに隠れながら射撃し、接近戦を挑んできた敵にはシュナイダー社製のレーザーショットガンで迎撃するというコンセプトの機体。

盾持ちの高火力機という堅実に強いACだが、パルスシールドがイニシャルガード特化のものであり、それを使いこなす技量には達していない。しかし堅実で安定性のある戦果を叩き出すことから上層部からの覚えも良く、ヴェスパー上位への昇進が期待されている。

 

エネルギー兵器の高火力で盾持ちというコンセプト、ヴェスパー隊員の機体として作成したところ、中々面白い機体に組み上がった。特にプラズマキャノンは弾速も速く高火力なので最近のイチオシ。しかしシールドを使いこなすのが難しい。使うならシールドは変更するのが吉。

元ネタは『檀一雄』と『走れメロス』から。メロスと違って太宰治に見捨てられた可哀想な人。

 

 

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