祝福の花を君に   作:キューマル式

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第57話 『とりあえず人生を買い戻す金を稼げ。話はそれからだ』

 『アマゾネス隊』の隊長のモアがシェリーとイチゴを率いてドーザー崩れの略奪者たちを蹴散らすその隣の区画、そこでも戦いは続いていた。

 

 

「ほらほら、俺っちの『土砂降り』の雨を喰らいな!」

 

 

 攻め込んできたドーザーの駆る重装四脚MTが、包囲型ハンドミサイルと実弾オービットによる全方位(オールレンジ)攻撃を受け爆散していく。しかしそれに意を介さず、ほかのMTたちがマシンガンやミサイルを撃ち込んでくる。

 たまらず『土砂降り(ダウンプア)』のショーンはクイックブーストを連射させ、見事な機動でAC『ハニーカム』を地面に埋め込まれせり上がった装甲板の物陰へと隠れさせた。

 

 

「やれやれ。 俺っちは集団戦はあんま得意じゃないんだけどな」

 

 

 機体構成上『ハニーカム』は単一目標、それも装甲と耐久力のお化けのような大型兵器ではなく、惑星封鎖機構のLCやHC、エクドロモイといった上位機体にAC、そして先ほどのような重装四脚MTを狩るのを得意としている。今回のように大挙して押し寄せてくる敵を相手に防衛戦を行うのは得意では無いのだ。

 それでも『RaD』からこの『ロアード防衛戦』の依頼をショーンが受けたのは、自分に良くしてくれているルビコン解放戦線の重鎮、ミドル=フラットウェルからの依頼でもあるからだ。

 

 『抵抗軍』として惑星封鎖機構と戦う『アーキバス』『ベイラム』『ルビコン解放戦線』は現在、惑星封鎖機構の攻勢を受けていた。

 ロアードへの侵攻と同時に『抵抗軍』に対して攻勢を仕掛け、『抵抗軍』を動けない状態にしたうえでロアードを攻略する惑星封鎖機構の作戦だ。そのため『抵抗軍』は『ロアード』の重要性は理解していたものの、援軍を出せないでいた。

 それでも『ロアード』の重要性を理解し、あわよくばロアード防衛戦勝利後に『ルビコン解放戦線はロアードに援軍を出しました』という事実をつくり『ルビコン解放戦線』にとって有利な状況を作ろうというミドル=フラットウェルの思惑である。そこで信頼の厚いショーンに『ルビコン解放戦線の代表としてロアード防衛戦への参加』を依頼したのだ。

 ショーンとしては苦手な戦場ではあるが、1つのミッションで『RaD』と『ルビコン解放戦線』からの依頼を同時にこなせて、実質的に報酬が倍になるというおいしい話に乗ったのである。しかし、予想以上の敵の数に少し後悔をし始めていた。

 

 

「退くタイミングを間違えると死ぬな、これ」

 

 

 今回は長期戦が予想されるため『RaD』が後方に簡易修理・補給所をいくつか設置している。余力があるうちに退く判断が出来なければ、特に軽量型で防御・耐久ともに低い『ハニーカム』はMTのマシンガンであろうと撃墜されてしまうだろう。優秀な独立傭兵として冷静な目で戦況を分析するショーンだが、その時通信が入った。

 

 

『お待たせしました。 援護を開始します』

 

 

 同時に大量のミサイルがマルチロックによって、多数の目標に突き刺さる。その状況の中、『ハニーカム』の隣にACが降り立った。

 

 

『ミスターショーン、『アマゾネス隊』副官のフィーメル=トンプソンです。 援護に来ました』

 

「そりゃありがたい。 俺っちは大量の敵ってのはどうにも苦手でね。

 でも……腕は悪くないのは知ってるけど援護は1人かい?」

 

 

 この『ロアードの町』にいれば『RaD』の精鋭AC部隊である『アマゾネス隊』のことは誰でも知っているし、その腕がいいことも知っている。しかし、この敵MTの数を前に1機だけの援軍というのはいくらなんでも心細い。

 だが、フィーメルもそれは分かっていたようだ。コックピットでその眼鏡をクイッと直しながら言う。

 

 

『心配ご無用です。 援軍は私だけではありませんよ。

 まぁ、援軍というよりはウチ(アマゾネス隊)で飼ってる『ペット』ですが』

 

『誰が『ペット』だ!!』

 

 

 その言葉とともにもう1機、ACが降り立った。全体的に安価なフレームパーツで組まれたACだ。そのACに、フィーメルは冷ややかに言い放つ。

 

 

『あなたですよ、ノーザーク』

 

 

 そのACのパイロットはあの『借りた金は返さない借金王』として有名な独立傭兵ノーザークだった。

 様々な人間に恨まれ逃亡を続けていたノーザークだが、ついにフィーメルによって捕縛された。そして逃亡防止用の爆弾付き首輪をはめられ、『アマゾネス隊』の鉄砲玉……もとい『ペット』として使役されているのである。

 

 

『借りた金を返さないようなやつには『ペット』でも上等です。

 文句があるなら耳を揃えて借金を返して、早く人生を買い戻して人間になることですね』

 

『くそぅ……借りた金を返さなかっただけで何故私がこんな仕打ちを受けるんだ……』

 

「いやいや、普通に借りた金を返さないのは駄目だろう。

 命があるだけ有情だと俺っちは思うぞ」

 

 

 そんな掛け合いの中でも、敵MT集団からの攻撃は続いていた。

 

 

『ほら行きなさい、ノーザーク』

 

『無茶を言うな! あんな弾幕の中に飛び込んだら即座にハチの巣にされるだろうが!』

 

『『ペット』が文句を言える立場だとでも?

 おや、なんだか急にスイッチが押したくなってきました。 そしてここには首輪の爆弾の起爆スイッチがありますね……』

 

『わかった! 行く!

 行くからタイミングくらい図らせろ!』

 

『五月蠅い、さっさと行け!』

 

 

 最終的にフィーメルのAC『ネゴシエーション』のキックによって強制的に物陰から放り出されたノーザークのAC『フォールンライフ』。

 

 

『クソォ! 絶対にこんな状況抜け出してやるからな!!』

 

 

 恨み言を言いながらも、なかなか悪くない動きで両手のバーストマシンガンと4連ミサイル、そしてパルスブレードで囮とMT集団の数を減らす役割をきっちりとこなしていた。

 

 

『さて、この通りペットが道を作っています。

 あとはこの道を広げ、MT部隊とともに攻めてきているACを撃破すれば……』

 

「まぁ、統率も何も無い、略奪目的のドーザーどもだ。

 一番強いやつの扇動が無くなれば後はちりぢりに崩壊するだろうな」

 

『ええ、その通りです。

 もちろん援護のほうは任せて下さい』

 

「……俺っちに一番面倒なとこ押し付けようとしてない?」

 

『いえ、ただ私は『RaD』のリーダーであるカーラの信頼も厚い『アマゾネス隊』の副官にして、外部交渉担当官です。

 私の前での戦いぶりはカーラにもよく伝えておきますよ。大変な状況でも、あなたという強力な援軍を『どこか』は送ってくれたということをね。

 これは、そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?』

 

「……」

 

 

 フィーメルには完全にミドル=フラットウェルからの依頼の方もどうやってかバレている……ショーンは薄ら寒いものを感じながらも、確かにフィーメルのいうことはもっともなので頷く。そんなショーンに乗せられたという意識はない。

 この情報力と巧みな意識の誘導こそ、『RaD』の誇る外交担当、フィーメル=トンプソンの実力である。

 

 

『では行きましょうか。

 今宵のヘヴィマシンガンはどうやら愚か者の血に飢えているようですので!』

 

 

 そう言って次の瞬間にはフィーメルのAC『ネゴシエーション』は盾にしていた装甲板から空中へと飛び出し、10連ミサイルを発射する。マルチロックにより複数目標に突き刺さるミサイル。そこに降下しながら重低音をかき鳴らし、2丁のヘヴィマシンガンが発射され、生き残ったMT部隊がハチの巣になっていく。

 

 

「……さて、俺っちも行きましょうかね!」

 

 

 同じく盾にしていた装甲板から飛び出すと『ハニーカム』はアサルトブーストを起動した。

 行く先は『フォールンライフ』と『ネゴシエーション』の2機が開けた敵MT部隊の向こう側……このMT部隊を扇動しているACだ。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 世界を支配する絶対的な法則……それは『数』だ。かの古代の偉人『ピタゴラス』もそう言っていることを、元木星戦争帰りだと自称するドーザー、『サモス=スィッチ』は知っている。

 『木星戦争』のときの圧倒的な数の脅威と、偶然知った古代の偉人『ピタゴラス』の『万物は数なり』という言葉……その言葉により『数が多けりゃ強い、最強!』という真理へ彼はたどり着いた。

 ……まぁ、『万物は数なり』という言葉は何がどうやっても数が多いことを意味する言葉ではないのだが、『古代の偉人の言葉を知ってるぜ!』という思考がコーラルドラッグと混ざった結果なのだろう。その辺りは全くもって理解不能、分析不能だ。うん、きっと全部コーラルが悪い。

 

 とにかくサモスはそれらの『数が多い』ことを信望するようになり、『数が多い方に味方する』という考えとなっていった。

 実際に戦場において『数』は勝敗にかかわる大きな要素だ。だから『多くの友軍で攻める』『大量の弾幕で攻める』ことを続けていたら上手くいってしまい、サモスの見いだした真理の正しさは失われることは無かった。用心棒を仕事とし『ジャンカー=コヨーテス』に所属していたのも、『ジャンカー=コヨーテスがドーザーの中で一番数が多い』からというのが徹底している。

 しかし『RaD』との戦いで大幅に『ジャンカー=コヨーテス』は数を減らした。サモスの望む『数』がない『ジャンカー=コヨーテス』にはもはや興味はなく早々に見切りを付け脱出、しかしそれによって『ジャンカー=コヨーテス』の壊滅に巻き込まれずにすんだのだから、彼の判断は正しかったのだろう。

 

 そう、常に『数が多い方に味方する』のが正しいのだ。だから娘の仇として『RaD』を恨む『ジャン=リー』に声をかけられてもそのことに特に興味も関心もなかったが、惑星封鎖機構の後ろ盾と大量の数の友軍を見ていつも通りの『数が多い方に味方する』という考えで『ジャン=リー』の話に乗った。

 だが……その真理が今、揺らぎつつある。

 惑星封鎖機構の大部隊は各所で押さえ込まれ、自身に付けられた大量のMT部隊の友軍は次々に撃破され数を減らしてきている。それでいて相手の損害は小さい。

 

 

『こっちの方が数が多いのに、何故こっちが押される!?

 理解不能、理解不能ォォ!!』

 

 

 重装二脚AC『ピタゴラス』の中でサモスはコーラルドラッグのキマッた頭を振り乱す。

 そこに……。

 

 

「そりゃ、『数』の差は絶対ってわけじゃ無いからな」

 

『なにぃ! 俺の真理にケチをつける気か!』

 

 

 言葉とともにショーンの『ハニーカム』が降り立つ。

 

 

「戦場じゃ『数』も大事だが、『質』も大事なのよ。

 そして『質』を極めると『数』を簡単に覆してくる」

 

 

 そういってショーンは、あの『地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)』の底の見えないような『質』を思い出し身震いした。

 

 

「とにかく……お仲間のMTどもはこっちの味方が引きつけてくれてる。

 『質』の差を見せてやるから……俺っちとやろうかぁ!!」

 

『舐めるなよ! 大量の『数』で押し潰してやる!!』

 

 

 そして『ハニーカム』と『ピタゴラス』は同時に戦闘態勢に入った。

 『ハニーカム』が両手の包囲型ハンドミサイルを構えるが、動いたのは『ピタゴラス』の方が速かった。

 

 

『オラオラオラオラオラァァァ!!』

 

 

 『ピタゴラス』の両手のガトリングガンが火を吹き、弾の嵐が吹き荒れる。

 スピードのために装甲を犠牲にしている『ハニーカム』はたまらずクイックブーストで回避に専念、その隙に『ピタゴラス』は両肩からミサイルを発射した。

 大型の単発ミサイルが上空を旋回すると、大量の小型爆弾をばら撒いてくる。その正体は地上に対して小型爆弾での爆撃を行う自律ミサイル、クラスタミサイルだ。

 2発のクラスタミサイルと両手のガトリングガンによって単機で行われる大量の弾の『数』での制圧……これこそがサモスの必勝戦法だった。

 

 

「こいつは……なかなか嫌な『土砂降り』だな!?」

 

 

 回避に専念しながらもその厄介さに舌を巻くショーン。だが、その弾の嵐も無限ではない。

 連射を続けたガトリングガンがオーバーヒート、強制冷却に入ってその弾の嵐が止んだ。そして、ショーンはその隙を見逃さない。

 

 

「今度は俺っちの『土砂降り』を喰らいな!」

 

 

 クイックブーストで瞬時に距離を詰めながら包囲型ハンドミサイル、そして実弾オービットによる全方位(オールレンジ)攻撃が『ピタゴラス』に襲い掛かる。

 

 

『その程度の『数』の攻撃で『ピタゴラス』が墜ちるか!』

 

 

 しかし重装甲を誇る『ピタゴラス』はその猛攻を耐えながらアサルトブーストを起動、キックを叩き込んでくる。重量の乗ったキックに『ハニーカム』が派手に吹き飛ばされ、その間に冷却が完了したガトリングガンによる弾幕が再度展開された。

 だが再開される弾の嵐の前に、今度は『ハニーカム』は退かない。ここで距離を取ったとしてもジリ貧になると理解していたショーンは、巧みなブースト機動で最小限の被害でガトリングガンの弾幕をやり過ごしていく。

 そして、その瞬間は来た。『ピタゴラス』が再びクラスタミサイルを発射しようとしたのだ。

 

 

「ここだ!!」

 

 

 その一瞬に、ショーンはクイックブーストを連射し高速機動に入る。

 クラスタミサイルは大型であるがゆえ、発射の際に硬直が発生する兵器なのだ。そしてその瞬間はガトリングガンの弾幕も消え去る。ショーンはその一瞬の隙を狙ったのだ。

 クイックブーストの連射で一瞬で『ピタゴラス』の死角に回り込むと同時に、包囲型ハンドミサイルと実弾オービットの集中砲火が『ピタゴラス』に叩き込まれる。

 

 

『こ、これは……『ピタゴラス』が揺らぐぅぅ!!?』

 

「こいつもおまけだ!!」

 

 

 そしてショーンは『ハニーカム』の切り札、アサルトアーマーを起動した。パルス爆発が巻き起こり、爆撃をはじめたクラスタミサイルを弾き飛ばす。そしてパルス爆発に巻き込まれた『ピタゴラス』のACSが負荷限界に到達、スタッガー状態に陥った。

 だがせっかくのチャンスだというのに、『ハニーカム』の武装はすべてリロードの真っ最中で有効な追撃手段がない。

 その時だ。

 

 

『では私も加勢させていただきます』

 

 

 アサルトブーストを全開にしたフィーメルの『ネゴシエーション』が飛び込んでくると、そのままパルスブレードを抜き放ち『ピタゴラス』に叩き込んだ。

 

 

『うぉぉぉ、援軍だと!?』

 

『MT部隊はすべて一時『ペット』に任せました。

 これは戦いです。 2対1……もちろん卑怯とは言いませんよね?』

 

 

 フィーメルの攻撃で出来た隙に、『ハニーカム』の武装のリロードが完了する。

 

 

「さぁ、これで終わりだ!!」

 

 

 三度、『ハニーカム』の全方位(オールレンジ)攻撃が『ピタゴラス』に襲い掛かる。そして、それを防ぎきるだけのAPは『ピタゴラス』には残されていなかった。

 

 

『2対1で負けた! やはり俺の『数』の真理は正しかったぁぁぁぁ!!』

 

 

 スパークする『ピタゴラス』、やがてジェネレータに火が廻り内部から爆発を起こして『ピタゴラス』は爆発四散したのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……終わったな」

 

『ええ、とりあえずこのブロックのドーザーどもは総崩れですね』

 

 

 フィーメルの言葉通り、一番強く扇動役だったサモスの『ピタゴラス』が撃破されたことでドーザーたちが逃げに転じ始めている。

 

 

『おい、いい加減にこっちに手を貸せ!

 死ぬ! このままだと私が死ぬ!!』

 

『まったく……五月蠅い『ペット』ですね』

 

 

 通信機から必死の声をあげるノーザークに苦笑しながらフィーメルは『ネゴシエーション』を残敵の方へ向けた。

 

 

『お疲れさまです。 あなたの活躍は必ずカーラに伝えると約束しますよ』

 

「それはありがたいね。

 じゃあ、この流れで残敵の掃討も手伝うさ」

 

『それはありがたいですね』

 

『なんでもいいから早く来い!!』

 

 

 ノーザークの言葉に、『ネゴシエーション』と『ハニーカム』のアサルトブーストに火が入る。

 惑星封鎖機構の後ろ盾を得て攻め込んできた略奪目的のドーザーたち……その攻勢は完全にストップし、掃討戦へと移行していた……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「何故だ! 惑星封鎖機構の後ろ盾もあったんだぞ!

 寄せ集めとはいえ、何故これだけの数が押し返される!?」

 

 

 後方で戦況をつぶさに確認していた老年の男は乗機である四脚AC『アラクニッドα』、そのモニターを苛立ちとともに叩いた。

 この男こそドーザーたちをまとめ上げ、惑星封鎖機構の後ろ盾を得てドーザーたちとともに攻め込んできた娘の仇に燃える男、『ジャン=リー』である。

 惑星封鎖機構の圧倒的な質と数、そしてドーザー崩れとはいえ大量の数……それだけの数があれば町の一つなどすぐに灰燼に帰すはずだった。しかしジャンは今や地元ルビコンの代表的企業として『アライアンス』を形成するまでに強大化した『RaD』の戦力と、この町に集っていた傭兵たちの実力を読み誤ったのだ。

 

 

「ッ!!?」

 

 

 そんなジャンの長年の勘……それが反応し、『アラクニッドα』を急機動させる。同時に、今まで『アラクニッドα』のいた空間を強力なレーザーが通り過ぎていった。

 そしてジャンの前に、2機の軽量タンク型ACが現れる。その右肩には『A1』と『A2』の文字がペイントされていた。

 『アマゾネス隊』の『A1(アマゾネス・ワン) アナスタシア=ロマーノ』と『A2(アマゾネス・ツー) ナターシャ=ロマーノ』のロマーノ姉妹の機体である。

 警戒するジャンに通信が入った。

 

 

『……あの日も雪が降っていた。 白い粉のような雪と……』

 

『父さんと母さん、そして暖かかった家を焼いた灰が、まるで雪みたいだった……』

 

「……何をわけの分からないことを言っている?」

 

『私たち姉妹は、お前にすべてを奪われた……!』

 

「ふんっ……お前たちのことなど知りもしない」

 

『だろうな。 お前にとっちゃ、よくある日曜日の出来事だったんだろうよ。

 でもなぁ! オレたち姉妹にとっちゃ、永遠に忘れられない日なんだよ!!』

 

 

 同時に殺気が膨れ上がり2機が戦闘態勢に入ると、ジャンの『アラクニッドα』も戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

『『ずっとこの時を待っていた……必ず死なす!!』』

 

 

 

 

 万感の思いを込めたロマーノ姉妹のその言葉とともに、戦端は開かれたのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『フォールンライフ』

パイロット名:『ノーザーク』

 

R-ARM UNIT:MA-E-210 ETSUJIN(バーストマシンガン)

L-ARM UNIT:MA-E-210 ETSUJIN(バーストマシンガン)

R-BACK UNIT:BML-G1/P20MLT-04(4連ミサイル)

L-BACK UNIT:HI-32:BU-TT/A(パルスブレード)

 

HEAD:HC-2000 FINDER EYE

CORE:CC-3000 WRECKER

ARMS:AC-2000 TOOL ARM

LEGS:2C-2000 CRAWLER

 

BOOSTER:FLUEGEL/21Z

FCS:FCS-G2/P10SLT

GENERATOR:VP-20S

 

EXPANSION:TERMINAL ARMOR

 

 

解説

借りた金を返さない借金王『ノーザーク』は、アマゾネス隊の副官であるフィーメル=トンプソンの手によってついに捕縛された。

色々なところから借金の恨みで『すぐにでも殺せ』の声が多かったが、捕まえたフィーメルには殺すつもりは毛頭無かった。

 

 

「殺すのはただの弾の無駄です。

 殺すにしても、出来る限り金を搾り取ってからですよ」

 

 

そう言って、ノーザークは『アマゾネス隊のペット』という立場と、AC『フォールンライフ』が与えられ、爆弾付き首輪をつけて『RaD』の独房と戦場やアマゾネス隊に関する荒事の現場を行ったり来たりの生活をすることになったのである。

 

人権? 何ですかそれ? 食べ物ですか? 美味いんスかソレ?

 

ノーザーク本人は『必ずこんな生活は抜け出してやる!』と逃げる気満々で意気込んでいるが、『アマゾネス隊』を相手にそんな隙は訪れることは無いということを知らないのは幸せなのか不幸なのか……。

 

 

「人生を買い戻すだけの金を稼げ。

 まず話はそこからです」

 

 

今日もフィーメルの監視の下、独立傭兵稼業に真面目に付かされるノーザークだった……。

 

機体フレームは探査用初期パーツを多用しながらコアパーツだけは『金を稼がずに簡単に死んでもらっては困る』という考えのもとで、安めで土建用ながら高い剛性と信頼性を持ち、なおかつ『RaD』製ということで手に入りやすいということから『レッカー』を採用している。

さらに内装に関してはノーザークの以前の愛機『ビタープロミス』のものをそのまま移植しており、かなり質がよいため生存率を上げることに一役買っている。

簡単に死なれちゃお金稼げないからね!

 

武装も傑作バーストマシンガンのエツジンを両手に装備、ミサイルはFCSのおかげでロック速度が速く回転率が高いため絶え間なく撃て、格闘戦にパルスブレードも装備している。

正直元の最新パーツで固めていますと言われていた『ビタープロミス』よりも使いやすくバランスが取られており、何とも言えないものがある……。

 

AC名は『転落人生』の意。借金踏み倒し王の末路としてはふさわしい機体名である。

 

 

 

 

AC名:『ピタゴラス』

パイロット名:『サモス=スィッチ』

 

R-ARM UNIT:DF-GA-08 HU-BEN(ガトリングガン)

L-ARM UNIT:DF-GA-08 HU-BEN(ガトリングガン)

R-BACK UNIT:WR-0999 DELIVERY BOY(クラスタミサイル)

L-BACK UNIT:WR-0999 DELIVERY BOY(クラスタミサイル)

 

HEAD:HC-3000 WRECKER

CORE:CC-3000 WRECKER

ARMS:AC-3000 WRECKER

LEGS:DF-LG-08 TIAN QIANG

 

BOOSTER:BC-0600 12345

FCS:FCS-G2/P10SLT

GENERATOR:AG-T-005 HOKUSHI

 

EXPANSION:なし

 

 

解説

元『木星戦争』帰りを自称するドーザー。

本人曰く、『木星戦争』の圧倒的な数の脅威と、偶然知った古代の偉人『ピタゴラス』の『万物は数なり』という言葉を間違って理解したことで、『数が多けりゃ強い、最強!』という真理を理解した。

これが本当なのか、コーラルドラッグにキマッた頭に出てきた妄想なのかは全くの不明。

実際に戦場で『数が多い』ことは勝敗を分ける大きな要素なのでその間違いが正されることはなく、『数が多い方に味方する』という思考になる。

 

ドーザーに雇われる用心棒をしていて『ジャンカー=コヨーテス』に雇われていた。理由は『ドーザーの中で一番数が多いから』。

しかし『RaD』との戦いの敗北で『ジャンカー=コヨーテス』が大きく数を減らしたことで見限り脱出、『ジャンカー=コヨーテス』壊滅に巻き込まれることはなかった。

そうして生き残ったところを娘の仇として『RaD』を恨む『ジャン=リー』に声をかけられる。惑星封鎖機構の後ろ盾と大量の友軍を見ていつも通り『数が多い方に味方する』という考えで『ジャン=リー』の話に乗った。

約束通りの大量の数のMTを配下にし勝利を確信するものの、『数』を覆す『質』の前に敗れ去ることになる。

 

戦法は爆撃を行うクラスタミサイルを発射後にガトリングガンの弾幕を張り、空と地上から同時に弾の雨を浴びせかけるというもの。

クラスタミサイルは撃ち合いの間にバラバラと爆撃されるため地味にウザい。しかも広めの範囲を爆撃するため対集団戦能力もあり、本人の希望する『大量の弾幕』を形成することができる。

奇しくも今回戦うことになったAC『ハニーカム』とは軽量級と重量級と機体特性は真逆ながら、『単機での多方面同時攻撃』というやろうとしているコンセプトは同じだったりするのが面白い。

 

コンセプトは『レッカー腕の有効活用をかんがえてみようその3』である。

レッカー腕の全腕部中最大の反動制御に注目し、これでガトリングガンの反動を押さえ込み集弾性を高めてダメージ増加を狙うという考え。

クラスタミサイルを撃ってから接近、爆撃とガトリングガンの同時攻撃で相手をハチの巣にするという戦法を想定している。

実際運用した結果だが……確かにガトリングガンの集弾性は上がったかもしれないが効果が実感できるほどでは無かった。これならガトリングガンはばらけるものと割り切って他の腕を使ったほうがいい。

 

結局、以前ドーザー『トーマス=ゴードン』のミサイル引き撃ち近距離は拡散バズーカで対応する軽量タンクAC『クレイジートレイン』、前回の跳躍の立体的な動きでミサイル戦を行い近接はマインスロアーで対処というAC『イエローハット』、そして本機『ピタゴラス』と3回ほど『レッカー腕の有効活用』を考えてみたが、『ピタゴラス』は一番効果を感じられなかった。

『レッカー腕ならミサイル機』が正解なのだろうと思う。しかし『だからといってレッカー腕を使う必要はない』ともなってしまうのが悲しい。土建用ACのパーツだし、仕方ないのか……。

 

AC名はそのまま『ピタゴラス』。

パイロット名は偉人ピタゴラスが『サモスの賢人』と呼ばれていたことからと、『スイッチ』という単語を足したもの。

NHKの幼児番組『ピタゴラスイッチ』が元ネタである。

うちの息子が大好きで録画したものを見せるだけで洗濯や料理の時間が稼げるので、いつも大変お世話になっております。

今までの流れで分かるかもしれないが、『レッカー腕有効活用シリーズ』はすべて息子の見ている幼児番組がAC名とパイロット名の元ネタになっているので、次があるなら『アンパンマン』とか『パディントン』とか『ワンワン』とかになるかもしれない……。

 

みんな知ってるか? もうじゃじゃ丸もピッコロもポロリもいないんだぜ。

今はライオンの男の子と、カッパの女の子と、ヘチマ(性別なし)なんだぜ。

ヘチマ(性別なし)ってなんぞや? 性別なんて関係ないという今の教育を反映しているのだろうか?

時代は変わったなぁ……。

 




……セリフだけで分かる人に先に言っておきますが、この作品は人はバカスカ死にますが、リョナはないのでロマーノ姉妹の手足もぎもぎをする気はありません。
ちょっとでも残念に思った人は落ち着くために、

「バーリアー!平気だもーん!」

という最高にムカつく挑発に耐えながらウェヒヒ蜂を撃破して来ましょう。
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