祝福の花を君に   作:キューマル式

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今回は主人公の『53』の絡んでいないところで起こった外伝的なもの。
今後は主人公不在のこういった裏でミッションを進めているハウンズの姿も見せていく予定。


第08話 『苦戦理由→装備縛り』

 『アイビスの火』……半世紀前にコーラルによって引き起こされた、星系を焼くほどの被害を出した大災害だ。

 その災禍を再び起こさせないために惑星封鎖機構はルビコン3を封鎖、監視に努めてきた。

 しかし最近になって『レイヴン』を名乗る独立傭兵によって『アイビスの火』で消失したと思われていたコーラルがルビコン3で再発見されたという確度の高い情報が企業に流れ出したのだ。

 その情報を受けて、コーラルの利権に目のくらんだ企業たちは次々にルビコン3を目指す。そして、動いたのは何も企業だけではない。大企業同士が仲良くコーラルを半分こ……など出来るはずもなく、そこに巻き起こるのは独占のための戦乱だ。そして、大きな戦いには、必ず金の匂いがするものだ。組織や傭兵、あるいは個人がそんな金の匂いに引き寄せられるようにルビコン3を目指した。本来、それを抑止するはずのルビコン3の駐留艦隊だが、ステーション31ごと消滅してしまい、抑止力は無い。

 崩壊する秩序に歯止めをかけようと、惑星封鎖機構は無許可での宇宙船離陸をすべて禁止、違反者は問答無用で高エネルギー砲台『サイレントアイ』で撃ち落とすと決定した。

 『サイレントアイ』は離陸しようとする無許可宇宙船を地上から高精度で狙撃できる能力を持っている。また、その砲口は地上に向けて撃つことも可能な万能砲台である。しかしその能力を発揮するには目となり耳となる高精度レーダー施設が別途必要となり、その重要度は『サイレントアイ』本体と同等である。そのため、この高精度レーダー基地には『サイレントアイ』本体を設置している基地と同等の防衛戦力が置かれていた。

 そこに襲撃、しかもたったAC3機だけでの襲撃である。通信妨害をかけて外部に増援を呼ばせないような工夫はしているものの、どう贔屓目にみても自殺志願としか思えない。すぐに襲撃者は排除され、基地にはいつも通りの時間が戻ってくるはずだった。

 しかし……。

 

「ば、馬鹿な……!?」 

 

 惑星封鎖機構のMTは通常の市販品はもとより、大企業の最新戦闘用MTと比べても勝るほどの戦闘能力を持っており、下手なACなど完封できる性能がある。だがその高性能MT軍団がたった3機のACによって蹂躙されていた。

 すでにレーダー施設は完全に破壊されており、『サイレントアイ』の目としての役割は喪失、『サイレントアイ』はただの高価な置物に成り変わってしまった。しかし、惑星封鎖機構の面子を丸潰れにした狼藉者をそのまま帰す道理はない。

 

「バルテウスだ! バルテウスが来てくれたぞ!」

 

 異変を察知したのか惑星封鎖機構の誇る無人戦闘兵器『バルテウス』が飛来し、何とか破壊されたMTから脱出したパイロットは歓声を上げる。

 バルテウスの戦闘能力はACごときとは比較にならない。異常なまでの数のミサイル、散弾にグレネードランチャー、近接攻撃に火炎放射器も備え付けられている。

 さらにその有り余る出力からACのものとは比べ物にならない高出力パルスアーマーを展開しており、それを破ったとしても待っているのは分厚い装甲だ。それらの機能を持ちながら高速で空中を飛行する姿はまさに機動要塞。ACなど束になろうと敵うはずはない。

 

「やっちまえ、バルテウス!!」

 

 その声を聞いたわけではないだろうが、バルテウスは戦闘形態へ移行、展開したミサイルユニットから数え切れないほどのミサイルが発射される。それを避けきるなど不可能だ。次の瞬間には爆散するAC3機を予想するMTパイロット。

 だが……。

 

「……は?」

 

 そのAC3機は全機が即座にアサルトブーストを起動、バルテウスの放つミサイルの雨に飛び込んでいく。空中で最小限の動きでミサイルを避け、バルテウスの真下へと到達。ミサイルの旋回半径の内側に入り込み、ミサイルの嵐を回避していた。

 

 次の瞬間、ACの1機が両手のレーザーハンドガンと肩のパルスキャノンを乱射、それがバルテウスの巨体に吸い込まれていく。パルスアーマーは同じパルス兵器で攻撃することで干渉し合い、相殺される特性を持っている。パルスキャノンによってバルテウスのパルスアーマーはガリガリと一気に削られ、トドメに振り下ろされたパルスブレードがバルテウスのパルスアーマーを打ち砕く。

 

 パルスアーマーを砕かれスタッガー状態に陥ったバルテウスに、タンク型ACから両肩のプラズマキャノンが突き刺さる。強烈なプラズマ爆発がバルテウスの装甲を焼き、同時に両手から放たれるガトリングガンの凶悪な弾丸の嵐がバルテウスを抉った。

 

 そして最後の1機、軽量型ACも動いていた。両肩から浮き上がった実弾オービットが射撃を開始し、手にしたショットガンの散弾がすべてバルテウスに突き刺さる。そして左手の、巨大なチェーンソーが赤熱しながら起動した。幾重もの回転刃が、スタッガー状態でまともに姿勢制御できないバルテウスに押し付けられる。

 響く悲鳴のような金切り音。バルテウスの装甲が、あまりにも原始的な刃によって引き裂かれていく。

 そして……チェーンソーによってバルテウスのコアユニットがバラバラに切断された。同時に制御を失ったジェネレータが暴走を始め、内側から大爆発を起こす。

 

「……」

 

 バルテウスが……惑星封鎖機構の誇るバルテウスが、まるで出来の悪いおもちゃのようにバラバラに解体される様を、そのMTパイロットは呆けたように見つめていた。悪い夢であってくれと願うが、鼻孔をくすぐる灼けた匂いと視界に飛び込むバルテウスの残骸が、これが現実であると語っていた。

 

 やがて基地を破壊しつくした3機のACが去っていく。その姿を見つめながら、この世にはどうしようもない理不尽な暴力が存在するのだということを思い知った……。

 

 なお彼はこの後ルビコン3へと送り込まれ、乗機となったエクドロモイごとその『理不尽な暴力』に焼き尽くされるのだが、それはまだ先の運命である……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

 

AC名:『撫子(ナデシコ)

パイロット名:『C4-620』

 

R-ARM UNIT:VP-66LH(レーザーハンドガン)

L-ARM UNIT:VP-66LH(レーザーハンドガン)

R-BACK UNIT:KRANICH/60Z(パルスキャノン)

L-BACK UNIT:HI-32:BU-TT/A(パルスブレード)

 

HEAD:VP-44S

CORE:VE-40A

ARMS:VP-46D

LEGS:LG-011 MELANDER

 

BOOSTER:BST-G2/P06SPD

FCS:FCS-G2/P05

GENERATOR:VE-20B

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 

解説

『C4-620』ちゃんの愛機。光が綺麗……と言いながら相手を焼き尽くすエネルギー兵器の申し子となった。

エネルギー兵器適正最大のジェネレータで使用されるエネルギー兵器の威力はかなりのもので、本来は連射力重視で威力がそこそこというスペックのはずのレーザーハンドガンが、かなりの火力を誇るようになった。

さらに2脚でも隙なく撃てるエネルギー兵器であるパルスキャノンは瞬間火力にかなり優れており、これとレーザーハンドガンの連射はかなりの脅威。

パルスブレードも装備し、ハウンズたちの機体の中では攻撃も援護も格闘戦もできるバランス型に近い、実に優等生的なアセンに仕上がっている。

 

一番組むのに苦労した機体。コンセプトは前述の通り『エネルギー兵器使用のバランス型機体』なのだが……問題はジェネレータ出力。

コアの出力補正を高くする必要があるが、『AM、技研、アイスワーム砲使用不可』という縛りのため、エフェメラが使えないのが痛かった。そのためコアを重量型にし、出力を誤魔化して組んでいる。

しかしフレーム構成も総じて優秀、レーザーハンドガンと意外にも瞬間火力が高かったパルスキャノン、導きの初期ブレードと武装も悪くない。今回のようにパルスアーマー付きのボスには特に強い。

ミッション・アリーナともにかなり戦えたので、当初予定通りなかなかのバランス型に仕上がっている。

 

 




というわけで物語の『チャプター0』にあたるところまで毎日投稿でした。次回からはついに舞台はあの惑星『ルビコン3』へと移ります。
ここからは日曜日更新の週一ペースでゆっくり更新していこうと思いますので気長にお付き合いください。
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