「うん、そっか……いや君は悪くないよ」
シャーレにて先生はとある人物と話していた。
「でもそうだね。当てはないんだよねぇ…」
それは電話。いや、詳細に書くならばキヴォトスの外でも連絡を取れる、キヴォトスのオーパーツ『シッテムの箱』
彼はその箱を用いてキヴォトスの外の人物と話し合っていたのだった。
「ふむ、まぁ仕方ないよね小母さんの危篤だもんね……流石にそれで実家から離れろなんて言えないよ。その内私の葬儀案内も来るんだろうけど……あぁ、いや何でもない。弱気になっちゃってた……もう切るね、じゃあ……」
電話を一方的に打ち切る。先生はシッテムの箱をデスクの上に丁寧に置いた後けだるそうに、イスの背もたれにもたれかかる。イスは先生の体重に悲鳴を上げるようにギシギシと音を立てる。
「はぁー何だかどっと疲れた気分……まだ朝7時のはずなのに…」
そう言って先生は両目を押さえていた手を外し、首を真横のキッチンへと向けるのだった。
「そういえばまだ朝ご飯も食べてなかったね……何か作ろうかな」
そう言って先生はイスから立ち上がった……その瞬間…
「あ……れ…?」
先生の視界がぐらりと、まるで洗濯機の中に入ったような荒々しさで回転する。わずかに唇からは温かい感覚もする…
「はは……デジャヴかな…、前にも似たようなことあったような気がする…」
そう言って先生は倒れてしまう。
―――
「先生当番に来た……ぞ?」
サオリがシャーレオフィスの扉を開け最初に目にしたのは、血の池の中沈む先生の姿だった……
「なっ!?」
動揺と共に倒れる先生のもとに駆け寄り、首を持ち上げて話しかける。
「どうしたんだ先生!誰に……」
「あ、うぅ……サ、オリ?」
微かに先生は意識を取り戻したようで薄目を開けてこちらを瞳にとらえる。
「ふぁたま…がフラフラ…ふる……」
喉が切れているのか、碌に呂律の回らない口で不調を訴える先生。なんとなくその言葉はサオリに伝わったようで……
「身体がどこか悪いのか…!?急いで病院に……」
「送るなら…連邦生徒会直轄の病院にしてね…住所は…」
先生は机の二番目の引き出しを指差しながら鍵を取り出す。
「…わかった。先生を無事に送り届けてやるから安静にしててくれ」
―――
「……ごめんねサオリ今まで黙ってて」
病院のベットにて先生はサオリに事の経緯を説明していた。
「……のせいだ」
サオリはうつむいたまま何かをボソッと発言する。
「サオリ…?」
「私のせいだ、私があの時先生を…撃ったから…私たちの事情に巻き込んだから…」
思い出すのはエデン条約での出来事。先生の腹を撃ったこと、姫を助けるために大人のカードを使わせたこと……私の罪はきっと拭えない、ずっと贖罪は……
「サオリ。私の目を見なさい」
「先生……」
先生の言葉は今までの優しさを含ませていながらもどこか怒りと厳しさを孕んだものであった。
「私が後悔しているように見える?」
その目は強い覚悟と慈悲を持った目だった。
「先生は後悔していないのかもしれない。でも私は……」
「……自分を許せないって言うなら、自分を許せる大人になりなさい」
先生はシッテムの箱の端末にある資料を映す。それをサオリに見せる。
「シャーレ顧問?私がか……?」
「勿論今すぐってわけにはいかない。私が死ぬまでにできる限りの引き継ぎ作業をやるつもりだし。先生になった後も辛い道があるかもしれない…でも、選ぶのはサオリ自身だよ」
「私は……」
―――
「先生!サオリ先生!」
羽の生えた生徒が一人の“大人”に手を上げて自身の存在をアピールする。
「なんだ?なにか聞きたいことでもあったか?」
「私、沢山悪いことしちゃいましたけどそれでもやり直せますか!?」
その言葉にサオリ先生はハッとした表情を一瞬だけ浮かべたが、すぐに口角を上げ、いつもの帽子をかぶり直しながら…
「なれるとも。後悔しない行動を心がければその内自分を許せるようになる。だが、忘れるなよ?後悔しない人生は虚しいからな」
「はい!」
そうして先生と生徒の二人はシャーレに向かって歩んでいく。
「……そうだろ先生?」
この中で一番最高のエピソードと言えば?
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コユキ
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ノア
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ミネ
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黒服
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ヒマリ
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アスナ